夏のシメはクラシック三昧! NHKオンデマンドに充実のタイトルが勢揃い
シェーンブルン宮殿前の特設ステージで歌うルネ・フレミング。指揮はクリストフ・エッシェンバッハ
NHKオンデマンドには『連続テレビ小説』や『大河ドラマ』はもとより、さまざまなジャンルの番組が並んでいる。クラシック系の音楽番組もなかなか充実していて、『N響コンサート』やBS『プレミアムシアター』『クラシック倶楽部』の選りすぐりをはじめ、音楽ドキュメンタリーなどの特番に至るまで、豊富なライブラリーを安価で楽しめる。オンタイムで見逃しても、繰り返し見聞きできて重宝する。
直近のお勧めは、世界2大オーケストラの野外コンサート。7月末に『プレミアムシアター』でオンエアされたウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の『シェーンブルン夏の夜のコンサート2017』やベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の『ワルトビューネ・コンサート2017』だ。
『シェーンブルン夏の夜のコンサート2017』は、今年5月25日にウィーンの世界遺産・シェーンブルン宮殿の庭園で、『ワルトビューネ・コンサート2017』は6月30日と7月1日にベルリン郊外の森に囲まれたワルトビューネ(ヴァルトビューネ)野外音楽堂で収録。どちらも、クラシックファンはもとより、最高峰のオーケストラ公演を気軽に聴きたい旅行好きに至るまで人気が広まって、旅行社が毎年パッケージツアーを組むほどである。
たとえば『シェーンブルン夏の夜のコンサート』は、2004年スタートと歴史はまだ浅いが、正月の『ニューイヤー・コンサート』と並ぶウィーン・フィル恒例の行事として定着。イス席は限られるが、庭園の広い通路や宮殿を見渡せる斜面などで毎年10万人越えの観客が無料で演奏を楽しむ。60カ国を超える国や地域で放送もされている。
今年はクリストフ・エッシェンバッハの指揮で、チャイコフスキーのバレエ音楽『眠りの森の美女』やフンパーディンクの歌劇『ヘンゼルとグレーテル』、映画『ハリーポッター』などから、ファンタジックな音楽を演奏。米国のディーヴァ、ルネ・フレミングがゲスト出演し、ドヴォルザークのオペラ『アルミーダ』『ルサルカ』からアリア、さらにラフマニノフの歌曲と、数多の十八番を披露するのも聴きどころだ。
宮殿前に設営された舞台に楽団が鎮座。公園の両サイドに巨大スクリーンも設置され、楽団員の演奏の様子はもとより、ウィンナ・ホルンをはじめウィーン独特の楽器使い、宮殿や手入れの行き届いた庭園、それを囲む通路や宮殿と向き合う丘の斜面などで音楽に耳を傾ける聴衆・・・と、さまざまな映像が、工夫を凝らしたアングルで映し出される。
コンサートは、日の入り前にドヴォルザークの序曲『謝肉祭』で開演。フレミングが登場して『ルサルカ』のアリア『月に寄せる歌』などを歌う頃から次第に日が暮れ始める。フレミングが衣装を替えて再登場し、ラフマニノフの歌曲を歌い終えると宵闇が迫り、舞台のみならず宮殿や庭のオブジェなど会場のあちこちが徐々にライトアップされていく。そして『ハリー・ポッター』の『ヘドウィグのテーマ』がブルーや赤の照明の中で演奏され、すっかり幻想的な雰囲気に・・・。
こんな独特のコンサートをエアコンのきいた部屋で繰り返し見られるのも、オンデマンドならでは。アンコールの『ウィーンかたぎ』で、観客がそこかしこで楽しげに手を取り合って踊る様子に、文字通りの「ウィーン気質」を感じることだろう。
一方、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に関しては、緑の森でピクニック気分で音楽を満喫できる『ワルトビューネ・コンサート』の他に、5月1日の楽団創立記念日に欧州の歴史的建物を訪ねる『ヨーロッパ・コンサート』の公演映像が数年分揃っている。
他にも、世界的な音楽祭の『バイロイト音楽祭』や『ザルツブルク音楽祭』などのラインナップが複数キープされている。残り少なくなった夏休み、オンデマンドで手軽にクラシック三昧のひとときを過ごしてみては。いずれ現地で聴いてみたい人にとっては、旅行時に役立つ手軽な下調べにもなりそうだ。
(文:原納暢子)
■収録日時:2017年5月25日
■収録会場:シェーンブルン宮殿の庭園(オーストリア・ウィーン)
■出演:ルネ・フレミング(ソプラノ、歌唱は☆)、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、クリストフ・エッシェンバッハ指揮
■曲目:
1.序曲「謝肉祭」(9分36秒)
2.☆歌劇「アルミーダ」から「すらりとしたガゼルに狙いをつけて」(4分49秒)
3.☆歌劇「ルサルカ」から「月に寄せる歌」」(6分51秒)
4.バレエ音楽「眠りの森の美女」 パ・ダクシオンから「アダージョ」(6分30秒)
5.バレエ音楽「眠りの森の美女」から「ワルツ」(5分06秒)
6.☆「歌曲集 作品21」から「たそがれ」」(2分17秒)
7.☆「歌曲集 作品4」から「歌うな 美しい人よ」(5分21秒)
8.☆「歌曲集 作品14」から「雪解け」(2分04秒)
9.歌劇「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲」(8分29秒)
10.映画「ハリー・ポッター」から「ヘドウィグのテーマ」(5分07秒)
11.バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)から「カッチェイ王の魔の踊り」(4分49秒)
12.バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)から「子守歌」(3分34秒)
13.バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)から「終曲」(3分32秒)
<アンコール>
14.歌劇「売られた花嫁」から「旅芸人たちの入場と道化師の踊り」(3分56秒)
15.ワルツ「ウィーンかたぎ」(9分45秒)
■NHKオンデマンド http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017080804SA000/