風煉ダンスの問題作『泥リア』復活。井の頭公園にて野外上演中。
写真:添田康平
3.11からの問題に真正面から取り組んだ問題作
東京都三鷹市の「井の頭恩賜公園」西園(ジブリ美術館奥の広場)で、毎年恒例の「野外劇フェスタ」が行われている。9月19日からは劇団「風煉ダンス」による野外劇『泥リア』(作・演出:林周一)が上演中だ(9月28日迄)。
会場受付近辺
『泥リア』は2011年5月末、震災と原発事故の傷跡がまだ生々しい中、調布市せんがわ劇場で初演が行われた。シェイクスピア『リア王』をベースに、娘たちに疎まれた痴呆症の老人が王と道化に人格が分裂、封印したはずの記憶に迷い込み、魂の荒野を彷徨う物語。そこで描かれる記憶とは「あの日」=3.11のもたらした忌まわしき混乱。初演から4年が経つ今なお、多くの問題が未解決のまま、政治・社会はさらなる不安な状況へと突き進みゆく。そんな時代に痛烈な一撃を加える演劇作品こそ、今回の『泥リア』なのである。といっても、けっしてシリアス一辺倒でなく、「風煉ダンス」ならではの庶民的で低俗なユーモアがふんだんに飛び交う楽しい舞台であることは強調しておこう。
開演前の会場風景
往年の「風煉ダンス」はユニークな美術・装置を自分たちの手で作り上げ、音楽の生演奏とコラボしながら、野外空間で壮大なスペクタクルを魅せることを得意とする劇団だった。今や有名となった「渋さ知らずオーケストラ」の代表曲『犬姫』や『悪漢』も、そんな「風煉ダンス」の劇伴音楽として生まれたものだった。しかし近年の「風煉ダンス」は劇場での公演が多くなっていたため、持ち前の野生味が抑え気味の傾向にあった。それゆえ、かつてのようなスケールの大きなスタイルを懐かしむ声も多かった。そんな中、今回満を持しての野外劇復活となった。
通行人も見物可能といえるオープンな劇空間(ただし舞台裏側から)
井の頭公園の「野外劇フェスタ」ではテント劇団の公演が多いが、『泥リア』は全く屋根のない完全な野外劇。公園を散歩する通行人でも簡単に見物できてしまう(ただし舞台裏からだが)オープンな上演だ。劇の開演はまだ空の明るさの残る夕刻17:30からだが、ほどなくして陽も沈み辺りが暗くなると、井の頭恩賜公園・西園の鬱蒼とした森林が天然の背景として神秘的な風情を醸す。幻想的な照明、美術や音楽と溶け合う祝祭的パフォーマンスは、まさにそこでしか味わえない野外演劇の醍醐味といえるだろう。
写真:添田康平
SPICE編集部は9月21日(火)終演直後、作・演出の林周一氏から生の声を聞くことに成功した。次の動画をご覧いただき、関心を深めていただければ本望である。
日時:2015/09/19(土) ~ 2015/09/28(月)
会場:井の頭恩賜公園西園(ジブリ美術館奥の広場)
作・演出:林周一
出演:飯田孝男、河内哲二郎、内田晴子、塚田次実、佐々木潤子、反町鬼郎、リアルマッスル泉、飯塚克之、山内一生、吉成淳一、園田シンジ、御所園幸枝、堀井政宏、田中田田田、春田奨、吉田佳世、横山展子、外波山流太、林周一、みぞぐちあすみ、辰巳小五郎、関根真理、ファン・テイル
公式サイト:http://furen-dance.info/
特設サイト:http://furendance.wix.com/dorolear2015