細貝圭・佐藤祐基・加藤虎ノ介「オーファンズ」、マキノ「引き裂かれるほどセクシー」

レポート
舞台
2017.10.4
「オーファンズ」公開稽古より。左から細貝圭、佐藤祐基

「オーファンズ」公開稽古より。左から細貝圭、佐藤祐基

マキノノゾミが上演台本と演出を手がける「オーファンズ」の公開稽古が、本日10月4日に都内で行われた。

ライル・ケスラーによる「オーファンズ」は、1983年のアメリカ・ロサンゼルス初演以後、イギリス、トルコ、ポーランドなど世界各地で上演され、日本では1986年に劇団四季が初演。今回はアメリカ・フィラデルフィアの廃屋で暮らすトリートとフィリップの孤児兄弟を細貝圭佐藤祐基、そこへ迷い込むやくざ者のハロルドを加藤虎ノ介が演じ、3人の疑似家族のような日々が描かれる。

公開稽古では、作品の冒頭となる第1幕の1場と2場のシーンが披露された。細貝は粗暴な性格の兄・トリートを荒々しく、ときに繊細に表現。佐藤は支配を受けながらもトリートを慕う弟・フィリップを熱演した。そして加藤はそんな兄弟の住む廃屋に突然やってくる男・ハロルドを豪快に演じ、“オーファン(孤児)”という共通点を持つ3人の奇妙な関係性が徐々に浮かび上がっていく濃密なシーンが紡ぎ出された。

稽古後の囲み取材にはマキノ、細貝、佐藤、加藤が登壇。本作の魅力について聞かれたマキノは「なんだろう? 少人数で稽古しやすいことかな……」と笑いを誘いつつ、「人間がむき出しになっているお話なので、俳優が嘘をつけないです。僕にとっては稽古場が楽しい。男3人のがっつりした芝居が楽しめるのが魅力だと思います」と答えた。

細貝は「僕はそんなに翻訳劇に馴染みがなかったんですが、『オーファンズ』は本が読みやすくて世界観にスッと入って行けました。いざ稽古に入ると本当に繊細なお芝居なんだと改めてわかって、3人しかいないのでやりがいがあります」とコメント。

加藤は「もう理屈じゃなくて、とにかく没頭してます! 『ここを観てくれ!』とかそんなんじゃなく、夢中になってやれている作品なので、身体も頭も疲れるんですが、ちょっとでも隙があったら台本を読んだり。そういうことができる時間が自分にとってはありがたいです」と熱弁した。

佐藤は「やっと膨大なセリフも頭に入り、台本から離れて、一番楽しい探求する作業をしています。噛めば噛むほど味が出る作品ですし、稽古するたびに、『ここはこういう解釈でもいいのかな?』という発見が生まれます。泥臭く男3人で演じているのが気持ちいいです」と心中を明かした。

キャスト3人の印象についてマキノは「1本芝居を作ると、ようやくその俳優さんのことがわかるんですが、3人とも一緒にやるのが初めてなのでね……」と切り出し、「今回はかなり無茶を言って最初から飛ばしたので、それに対する耐性がある人と知恵熱を出す人とがいるなという印象です。誰が誰とは言えませんが……」とキャストたちを苦笑いさせる。続けてマキノは「3人をできるだけ色っぽく見せたいんです。人間って“引き裂かれている状態”のときが魅力的なんですね。例えば細貝くんのトリートはすごく凶暴なところと、それを必死で抑制しようとするところ、弟への支配と愛情、弟が自分から離れていく寂しさや孤独……。大きく引き裂かれるほど人間らしく、セクシーに見えると思っています」と語った。

細貝は稽古について「マキノさんには『とにかくビートを刻んでろ!』と言われます。トリートはすぐキレるし、感情のアップダウンが激しいので、落ち着きなくいろんなことに気を張っている人間を意識しています」と明かし、一方の佐藤は「フィリップはすごくピュアで純粋なので、常に新しい発見があるようにしています」と述べた。

加藤は「僕自身も翻訳ものって苦手だったんですが、この台本はスッと読めたし、楽しめたので、お客様にも楽しんでいただければと思います」とコメント。佐藤は「この座組には『たちどころにできろ!』というスローガンがあります。男3人が汗をかきながらやってる芝居をぜひ観にきてください」と呼びかける。そして細貝は「僕らにしかできない色の『オーファンズ』になっていると思います。翻訳劇を敬遠されている方も一度お試しあれということで、ぜひご来場ください」と語った。

最後にマキノは「テーマ自体はとても普遍的でシンプルですが、深いですし、なおかつ観ていて退屈しない芝居を目指していますので、構えずに観にきていただきたいです。濃密な三人芝居。秋に観るにはいい作品です」と締めくくった。公演は10月14・15日に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール、10月18日から22日に東京・草月ホールにて。

「オーファンズ」

2017年10月14日(土)・15日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

2017年10月18日(水)~22日(日)
東京都 草月ホール

脚本:ライル・ケスラー
翻訳:小田島恒志
上演台本・演出:マキノノゾミ
出演:細貝圭、佐藤祐基、加藤虎ノ介

ステージナタリー
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