LUNA SEAというモンスターの進化、ニューアルバム『LUV』に漲る“光”とその果てに見た至福の絶景

LUNA SEA『LUV』ディスクレビュー　文＝東條祥恵

闇ではなく光、明るい開放感、各々がソロで表現してきたクリエーションまでをも飲み込んだLUNA SEAというモンスターの進化。こんなLUNA SEAが聴けるなんて、という衝撃が曲を追うごとにどんどん更新されていく。そして、その先に待ち構えるのは、そんな衝撃をさらに上回る感動的なエンディング!!

やはり、LUNA SEAはまだまだ進化する“怪物”だった。

アルバム『LUV』を聴きだして、すぐさま2017年のバンドの結成記念日である5月29日に彼らが日本武道館で開催した『LUNA SEA The Anniversary 2017.5.29』のアンコールラストに演奏した「MOTHER」の残像が、頭のなかでパチンと音を立ててつながった。やはり、あのときの「MOTHER」は、未来のLUNA SEAを示す重要なカケラでありヒントだったのだ。これまで何度となく大切なライブの幕引きを飾ってきた「MOTHER」が、あの日はまったく違うものとしてパフォーマンスされていた。いままで神々しいまでの緊張感を持って厳かにプレイされていたLUNA SEAを象徴するバラード「MOTHER」はあの日、これまで聴いたことがないような人間的な温もりややさしさを内包した、慈愛に満ちたナンバーとして武道館を包み込み、やがてそれはあの曲でいつも真っ白い強い光を放っていた光源までも、レインボーカラーの彩りを持ったまばゆい光を放つラインティングへと変えていったのだ。

※【ライブレポート】LUNA SEAが新しいモンスターになった夜 5.29 日本武道館

バンドとしてのモードが、このときから闇ではなく光にあったことは明らか。ニューアルバム『LUV』の根源に脈々と流れているものは、まさにそのようなものだった。曲を追うごとに、あの日「MOTHER」が持っていた長年のイメージをガラリと変えた衝撃や破壊力がとめどなく続いていく。新作『LUV』は、LUNA SEA史上もっとも光のパワーを放った、明るい開放感をまとったものになっている。タイトルが示す通り、このアルバムのテーマは“愛”だ。武道館のライブ中にそれを伝えたRYUICHIは、そのときすでにこの新作について「いまはこんな時代だからこそ、愛や愛情が必要なんじゃないかと。サディスティックな愛もあれば、温かいバラードみたいな愛もあったり。俺ららしい愛を形にして届けるから楽しみにしてて」と話していた。

“俺ららしい愛の形”をいまから13年前、1994年に発売した3rdアルバム『MOTHER』で表現したときは、同じ“愛”を扱った作品でも、オープニングから彼らは「LOVELESS」と嘆き、最後はひたすら＜愛が欲しい 愛して欲しい＞と懇願する「MOTHER」で終わっていった。新作は、それとはまったく対極のベクトルの方向に突き抜けた作品といえるだろう。目の前の視界は良好、心地よい風を受け止め、とてつもなく晴れやかで開放感いっぱいの光に包まれたアルバムのリード曲「Hold You Down」から新作はスタート。＜輝け 輝け 思いのままに＞と歌い、未来の扉をさらに開いていく爽快なロックチューン「Brand New Days」、＜まだ足りないものがある＞と探しに行くパワーポップ「誓い文（チカイブミ）」、メジャーコードがこれでもかと押し寄せる。驚きが隠せないEDMなインスト「Ride The Beat, Ride The Dream」、切なさをあたたかいメジャーコードで包み込んでいったアルバムのハイライトとなるバラード「So Sad」など、本作はあちこちに彼らがソロワークで培った表現を躊躇なく注ぎ込んでいった結果、従来のLUNA SEAのイメージをズカズカと解体して“これがLUNA SEA？”という未来の扉をどんどん開けていくことになったに違いない。すごいのは、それらをすべて飲み込んで、さらにブランニューなLUNA SEA印の入ったモンスターを生み出していっているところだ。5曲目の「The LUV」は昔といまの姿のLUNA SEA、それぞれが曲の中でバトルしているような存在で、ライブではモンスター級の爆発が期待できる。とにかく全編を通して、いまバンドがポジティブなものに向かっていて、淀みのない、突き抜けた光を放つ音楽へと変換されていくエネルギーに心と体が満たされていく本作。そのフィナーレに置かれた「BLACK AND BLUE」で、LUNA SEAがソウルフルな推進力をもってグルーヴしていった先に、青の世界の扉を開け、進化の果てに見た至福の絶景――。そこには、天使が舞い降りた。 

この作品を出して、LUNA SEAのライブは大きく変わりそうな予感がする。

文＝東條祥恵