Koki MITANI's 『ショーガール』Vol.2稽古場訪問、川平慈英&シルビア・グラブにインタビュー

インタビュー
舞台
2018.1.5
(左から)シルビア・グラブ、川平慈英 (撮影:荒川潤)

(左から)シルビア・グラブ、川平慈英 (撮影:荒川潤)

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1974年から1988年までシリーズ上演された伝説のショー『ショーガール』(福田陽一郎脚本・構成・演出)の世界を、再びパルコ劇場へ――。そんなコンセプトで企画された三谷幸喜版『ショーガール』は、川平慈英シルビア・グラブのコンビで2014年に上演開始。好評を博し2016年にも再演された。その待望の第二弾、Koki MITANI's 『ショーガール』Vol.2 ~告白しちゃいなよ、you~ が2018年の年明けに上演される。年末の稽古場を訪ねた。

■稽古場を満たす“うきうき感”

この日進められていたのはショー部分の歌稽古。作曲・編曲・ピアノ演奏を担当する荻野清子のピアノの前に川平とシルビアが座り、近年トニー・ベネットとレディー・ガガのデュエットも話題となったスタンダードの名曲『Cheek to Cheek』を歌い上げていく。

「♪Heaven~」の歌い出しから、二人の豊かな声が重なり合い、稽古場を満たすと、それだけでうきうきと心弾む楽しい雰囲気に。

「ここは掛け合いにしましょう」とシルビアが川平に提案したり、演出の三谷幸喜が「ここの歌詞の一部は日本語で『ときめいて』にして」などと指示を出し、歌詞をその場で組み立てていく姿も。

川平とシルビアの二人は今回のアレンジに合わせ、荻野とリズムや歌い方を細かく調整していく。稽古場の別の場所では、振付を担当する本間憲一が、助手と共に自らタップを踏んでステップを紡ぎ上げていく姿も。

すべての要素が組み合わされたとき、どんな極上のショーが実現するのか。年始の作品の開幕に向け、期待で胸がふくらむ。

 

■川平慈英&シルビア・グラブにインタビュー

――第一弾の時の思い出はいかがですか。

川平 探偵役だったんだけど、早替わりも多くて、セリフをしゃべってお芝居してということより、とにかく汗をかいて走り回っていた記憶の方が(笑)。

シルビア 私も芝居の中で何回着替えただろうという感じで。

川平 もう、相方しかいないという状態ですからね。

シルビア 相方って(笑)。

川平 俺の中ではもう、相方ですよ。「M-1グランプリ」の「M」にミュージカルを入れてくれたら、いい線行くんじゃないかと。最近、母とじっくり話す機会がありまして。そうしたら、僕の先祖、ドイツ系アメリカ人だと思ってたのが、実はスイス系で。あれ、スイス系といえば、シルビアもそうじゃんって、ものすごくびっくりして。DNAレベルでつながってたのかっていう。だから、最近決まった二人のユニット名が……。

川平シルビア (声を合わせて)私たち「スイススイス」です(笑)。

シルビア 日本とスイスがルーツってなかなかいないですよね。それも、20年以上知り合いだったのに、最近になってわかったという。でも、そう言えば、『国民の映画』に出たとき、三谷さんに言われたんですよね。「外国人っぽい、明るくてハッピーなところがあると思いきや、案外繊細な日本人的なところもある。そんなところも川平さんにそっくりですね」って。いつどこで観察されてたんだろうと思いましたね。とにかくずっと観察されますから(笑)。

川平 シルビアとはデビュー当時から一緒にタップのレッスンをしてるし、『Shoes On!』(福田陽一郎演出)も長いこと一緒にやってきたし、阿吽の呼吸というところはあるよね。

シルビア 楽っちゃ楽というところがある。

川平 今どんなムードかなとか、今はツッコミどころかなとか。

シルビア お互いの機嫌もわかって。個人的に楽なのは、英語と日本語混ぜてしゃべるのが一番楽なんですけど、両方ちゃんと理解してくれるので。

川平 たまに、三谷さんやスタッフさんには聞かれたくない魂の叫びみたいなのを英語で発していて。「今なんて言ってたの?」って聞かれますけど(笑)。

シルビア 自分がまだデビューする前、それこそ福田陽一郎さん演出の『THE SHOW フレンズ』という作品を客席で観ていて、慈英がいて、「あ、仲間がいる! この人と絶対いつか共演したい」と思ったんですよね。何か、似たような空気を持っている人がいるなという(笑)。

川平 同種族っていうことだよね(笑)。

シルビア そのときはまさか、こんなにたくさん共演することになるとは、しかもこうして二人での舞台をやることになるとは思ってもみなかったけど。

川平 僕はもう、時間の問題で、確実に共演することになるだろうと思った。福田さんって、僕を拾ってくれた演出家なので、シルビアももう、二重丸、三重丸で狙いに行くだろうなと。それから長いつきあいですけど、楽しいですよ、この人との共同作業は。”Play”という感覚に近いですよね。リスペクトしつつも、ワンクッションツークッションおかないと波長が合うところまで行かないという方もいる中で、シルビアに対してはまったくそういうのがない状態で始まるから。お互い好き嫌いもわかってるしね。この動き嫌いだろうなとか、これはハマるなとか(笑)。

――そんなお二人と三谷さんとで創り上げる作品です。

シルビア 普段求められることも当然求められるんですけれども、三谷さんは、そうじゃない、意外な部分とかも探し出そうとしてくださっているので。だから、お芝居の部分とか、稽古で割と苦労することもあるんですが。そういうところを客観的に、慈英、おもしろいなと思って見ていたりもしますし。いい部分なんだけど表現するのが難しいなという悩みがあったりして、そういうところも含めて素敵な現場だなと思いますね。自由にさせられたら自分たちがやりやすい方向に持っていったりもするんですが、そこを敢えてそうじゃないよと手綱を引いてくださるので。

川平 三谷さんはもう、自分の大好きな玩具を手に入れて、好きなようにいじって遊んでるっていう感じなんじゃないかと(笑)。おもしろいように逆転の発想で攻めてきますよね。そう来るか! って、目から鱗という感じで、それをシルビアがされているのを見ると、対岸の火事じゃない、次は絶対自分に来るなって(笑)。

シルビア 第一弾ではまさかの“地味な女”の役で、そんなの今まで求められたことがなかったので。今回も割と(笑)。

川平 今回、物理的にセリフの量が初演と比べて何十倍という感じだよね。

シルビア 前回は着替えが多かったから(笑)。

川平 こんなにしゃべってるシルビア見たことないと思いながら、相槌を打っていて(笑)。マーケティング的にいつも求められるシルビア、川平ってあるじゃないですか。うれしいのは、三谷さんには、そうじゃないもの、見たことのない二人を、自分の料理法で世間に見せたいという思いがあるので。役者はやっぱり、新しい色、新しい引き出しをつけてもらえるのが一番の喜びなんですよ。この舞台を観た方が、あ、こういうのも行けるんじゃんと思ってくださったら、三谷さんが一番してやったりでしょうね。

シルビア それにしても、『Shoes On!』をやっていたとき、福田先生がよく『ショーガール』の話をしてくださって、「いつか慈英とシルビアで観たいよね」っておっしゃってくださっていたんですよね。そういうものを背負う思いが、初演のときはありすぎたかもしれないなと思っていて。

川平 失敗できないって、肩肘張ってたね。復活だから、継続させていかなきゃいけない。もともとの『ショーガール』のお二人、木の実ナナさんと細川俊之さんに対してのリスペクトもあって、レベルを下げられない、極上のものを見せなきゃいけない、エポックメイキングなものにしなくちゃいけないと思ってた。今回、より軽くなって、よりエンターテインメントになって、より三谷さんカラーの『ショーガール』になってきたというか、より自由になったというか。

シルビア 初演のときは稽古場の空気もちょっと重くなって、二人しかいないから、ちょっと喧嘩っぽくなったりもしてたのが、今回はいっさいないかも。

――どんなところに三谷さんカラーを感じられますか。

シルビア 芝居の要素が濃いところかな。

川平 福田さんの『ショーガール』は割とわかりやすくてストレートというか、単純明快な起承転結のある男女の物語だけれども、三谷さんの場合はシットコムのおもしろさ、どんでん返しがあるというか。どんでん返し、今回のキーワードでもあるんですけれども、お客さんを裏切って裏切って、ショーの部分の歌と踊りと同じくらい、心躍る華やかなカラフルさが芝居の部分にもありますよね。

シルビア ただの恋愛もの、男女の関係では終わらないというか。

川平 そこは第二弾でより肉厚になっていて。自分で言うのもなんだけど、今回のオチは秀逸だよね。お客さんにも、裏切られるスタイリッシュな心地よさをぜひぜひ味わっていただきたいですよね。音楽もよく知っている、映画もよく知っている、そんな大人の方たちが来て楽しめる、大人のための極上でゴージャスな舞台にしたいなと。力技でごまかさない、ちゃんとトレーニングをしてきた人たちが千本ノックを受けて、稽古場でああでもないこうでもないと悪戦苦闘のプロセスを積み重ねた上で見せている、そういう舞台ですよね。それは、衣装や照明や装置といったスタッフワークすべてを含めてですけど。

シルビア 若い頃を思い出すと、頑張って頑張って汗かいてみたいな感じだったけれども、もちろん今も頑張るんですけれども、ちょっと一歩引いて落ち着いたところも見せられたらいいなと。それと、二人とも英語が話せるので、スタンダード・ナンバーについてもネイティブとして歌えるというショーの部分での強みはありますよね。大人のお客様が若いときにラジオで聞いていた洋楽のニュアンスなんかも出していきたいですし。

川平 手前味噌かもですけど、ブロードウェイやウエストエンドに行く必要はない、電車に乗って六本木に来てくだされば、極上のショーが観られますよと。

シルビア 色で言ったらピンクとかオレンジとか黄色とかが若さだったら、深い赤とか黒とかシルバーとか、ベルベットな感じのイメージですよね。

川平 ショー部分もいい曲揃ってるしね。『ギャラクシー街道』の曲とかね。

シルビア 毎回、三谷さんの映画で使われていた曲と、福田先生にちなんだ曲が入るというのはお約束で。

川平 ミュージカル・パロディも入ってくるしね。本間憲一振付のタップもありますよ。

シルビア ショータイムの衣装もさらに豪華になるし。

川平 日本でなかなか大人のためのショーがないことを考えると、『ショーガール』って昔、ミュージカル界でも相当草分け的なことをやっていたんだなって思うよね。それにしても今回、稽古場で一番笑ってるのが三谷さんなんですよ。言われたことを崖っぷちでやっているだけなのに、うっしゃっしゃと笑っている。それがうれしいんですよね。

シルビア 三谷さん含め、みんながリラックスしている稽古場だし、ショーの部分はみんなでアイディアを出し合って作っていっているから、クリエイティブな作業ができているということもすごく楽しくて。

川平 豪華ゲストも思いっきり踊らせますからね。草刈正雄さんも思いっきり踊りますからね!

取材・文=藤本真由&SPICE編集部  写真撮影=荒川潤

公演情報
パルコ・ミュージック・ステージ
Koki MITANI's 『ショーガール』
Vol.2 ~告白しちゃいなよ、you~

■日程:2018/1/8(月・祝)~1/14(日)
■会場:EXシアター六本木 (東京都)
■脚本・作詞・構成・演出:三谷幸喜 
■作曲・編曲:荻野清子 
■出演:川平慈英 シルビア・グラブ 
【日替わりゲスト】 
1月8日(月・祝)19:30公演:長澤まさみ
1月9日(火)15:00公演:髙嶋政宏(※「髙」の字は「はしごだか」)
1月10日(水)19:30公演:草刈正雄
1月11日(木)15:00公演:斉藤由貴
1月11日(木)19:30公演:三谷幸喜
1月12日(金)19:30公演:戸田恵子
1月13日(土)15:00公演:新納慎也
1月13日(土)19:30公演:中川晃教
1月14日(日)15:00公演:竹内結子
演奏:荻野清子(ピアノ)/一本茂樹(ベース)/萱谷亮一(ドラム)
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