<フランス革命ものエンタメ作品>を楽しむための人物ガイド-魅力溢れる登場人物が織りなす世界-[プロローグ]

コラム
舞台
2018.7.14


7月14日は、フランスの代表的な祝日「パリ祭」である。1789年のこの日にパリ市民によるバスティーユ牢獄への襲撃がおこなわれ、フランス革命の狼煙が上がったのだ。そして翌年の同日には、革命を締めくくる一周年式典が行われ、この日がフランス共和国の建国記念日となった。その記念すべき日にSPICEでは、フランス革命とエンターテインメントを結ぶ連載コラムをスタートさせる。

「フランス革命」──その言葉を聞くだけで、観劇好きや読書好きは心躍る気持ちになるかもしれない。それだけフランス革命を題材にした芝居、ミュージカル、映画、小説、漫画等は沢山ある。あまりフランス革命について詳しくなくても、次に挙げるミュージカルのタイトルくらいは聞いた事があるのではないか。

例えば、いま(2018年7月14日現在)博多で上演中の『1789~バスティーユの恋人たち』。また、今秋より上演される『マリー・アントワネット』。そして、おなじみ『ベルサイユのばら』、『ひかりふる路 ~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~』、『スカーレット・ピンパーネル』、『愛と革命の詩 -アンドレア・シェニエ』、『瑠璃色の刻』等々。それだけ、フランス革命を題材にした作品は多い(とくに宝塚で)。

『レ・ミゼラブル』は?と尋ねる向きもあろう。よくフランス革命時の話だと誤解されがちなのだが、こちらは1832年のパリ蜂起=六月暴動(1830年から始まった七月王政政権に対する反乱)を背景とする作品なので、1789年からのフランス革命を描いた作品とは区別しなければいけない。

■フランス革命とは

18世紀後半、当時フランスの置かれた様々なきびしい情勢の中で、長きに亘りフランスを支配してきた王族、僧侶、貴族の特権階級に対して民衆の怒りの矛先が向けられ、ついには反旗が翻された。それがフランス革命である。1789年7月14日のパリ・バスティーユ牢獄への襲撃をきっかけに騒乱はフランス全土に拡大し、国民議会が発足し、国王一家の逃亡未遂事件を経て、ブルボン朝による絶対王政が打倒された。だが革命後、粛清・内乱・諸国との戦争など混乱は長期間続いた。

それでも、この革命により、それまでの旧体制から、時代は共和制を主体とする近代へと大きく変わっていった。では、なぜ革命は起こったのか。それには主に三つの要因があった。

■フランス革命が起こった三つの主要因

(1)戦争 当時のフランスは、欧州七年戦争に参戦したり、アメリカ独立戦争にも軍事支援をした(敵国イギリスに痛手を負わせるため)。この軍事費が恐ろしく巨額になり財政難に陥る。そのため、この財政難により全国民の98%を占める第三身分(平民)の人々に重税が課せられた。しかし、第一身分(僧侶)、第二身分(貴族)は免税とされていた。

(2)パン 1784年のフランスのラキ山の噴火による降灰と気温の低下で、歴史的な小麦の凶作に見舞われ、パンの価格が高騰。これにより国民は食べる物がなくなった。

(3)思想 この頃、ルソーやモンテスキューを始め、多くの思想家は当時の階級制度に異論を唱えはじめ、民主的な近代国家体制を提案。そんな思想家の考えが民衆にも伝わり、「働いても裕福な生活が送れない。今の生活を変えられるかもしれない!」と、彼らを革命へと駆り立てたのだった。

国家の財政危機を打開するために、当初国王は僧侶と貴族への課税を図った。しか貴族に与する高等法院が拒否。そこで、この問題が全ての身分の代表者たちによって話し合われるようにと、三部会が召集された。しかし、その議決方法を巡り議会は紛糾、やがて政府が平民階級を軍事力で弾圧した。怒った民衆が蜂起し、武器を得るためにバスティーユ牢獄を襲撃したことで、革命が勃発したのである。

ある舞台では、民衆が怒り、クワを持ってバスティーユ牢獄を背景に踊る、というシーンを見ることができる。まさにそのシーンは革命の始まりを意味する大事なシーンなのだ。

■様々な革命の中で「フランス革命」が、ひときわ際立つのはなぜか

歴史上の「革命」はあまた存在するが、「フランス革命」が、これほどまでに舞台や書籍等の題材として際立って取り上げられているのは何故か? それは、フランス革命を取り巻く人物の一人一人が、物語の主人公になれる程の魅力的な個性を持っているからであろう。

まずフランス革命関連で必ず取り挙げられるのは王妃マリー・アントワネットだ。最期には断頭台の露と消えるこの人物の周囲には、夫である国王ルイ16世はもちろんのこと、ベルサイユ宮殿に関連する人物たちがそれぞれに興味深い。

なお、舞台や書籍では、マリー・アントワネット王妃の浪費が革命の直接的原因となったかのように描かれることも少なくない。だが史実は少し異なる。そうした情報も踏まえて舞台鑑賞をすると作品をより豊かに楽しむことができるだろう。

一方、革命をリードした側も、ロベスピエール、ダントン、デムーランらを始めとする、実に個性的で時に強引すぎるキャラクターを持つ人物たちがひしめく。さらに、史実の人物ではないが、例えば『ベルサイユのばら』のオスカル等、心をグッと掴まれるような魅力的な人物たち。これらフランス革命に関わる人物たちこそが、フランス革命というものに強烈なスパイスを与えていると言っても過言ではないだろう。

次回からは、ミュージカルなど<フランス革命ものエンタメ作品>と関係の深い革命関連人物たちをクローズアップしながら、作品と共にフランス革命の顛末を追っていきたい。それにより読者の皆様が、今後<フランス革命ものエンタメ作品>に出会った時に、今までの何倍も心ときめくような体験をしていただければ幸いだ。

次回は、王妃マリー・アントワネットを取り上げる。

文=清川永里子

<フランス革命ものエンタメ作品>を楽しむための人物ガイド[プロローグ] 
<フランス革命ものエンタメ作品>を楽しむための人物ガイド[王妃マリー・アントワネット①]
<フランス革命ものエンタメ作品>を楽しむための人物ガイド[王妃マリー・アントワネット②]
<フランス革命ものエンタメ作品>を楽しむための人物ガイド[王妃マリー・アントワネット③]

公演情報

新演出版 ミュージカル『マリー・アントワネット』
 
<福岡公演>
■日程:2018年9月14日(金)~30日(日)
■会場:博多座

 
<東京公演>
■日程:2018年10月8日(月)~11月25日(日)
■会場:帝国劇場
※イープラス貸切公演も発売中
2018/10/21(日)13:00、2018/10/27(土)12:00、2018/11/18(日)13:00

 
<愛知公演>
■日程:2018年12月10日(月)~12月21日(金)

■会場:御園座
 
<大阪公演>
■日程:2019年1月1日(火祝)~1月15日(火)

■会場:梅田芸術劇場 メインホール
 
■脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
■音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
■演出:ロバート・ヨハンソン(遠藤周作原作「王妃マリー・アントワネット」より)
■キャスト
マリー・アントワネット:花總まり、笹本玲奈
マルグリット・アルノー:ソニン、昆夏美
フェルセン伯爵:田代万里生(福岡、東京のみ出演)、古川雄大
ルイ16世:佐藤隆紀、原田優一
レオナール:駒田一
ローズ・ベルタン:彩吹真央
ジャック・エベール:坂元健児
ランバル公爵夫人:彩乃かなみ
オルレアン公:吉原光夫
ロアン大司教:中山昇
ギヨタン博士:松澤重雄
ロベスピエール:青山航士
ラ・モット夫人:真記子
荒田至法、石川剛、榎本成志、小原和彦、川口大地、杉山有大、谷口浩久、中西勝之、山本大貴、横沢健司、天野朋子、石原絵理、今込楓、岩﨑亜希子、首藤萌美、堤梨菜、遠山さやか、原宏実、舩山智香子、山中美奈、吉田萌美
■公式サイト:http://www.tohostage.com/ma/

公演情報

『ベルサイユのばら45 ~45年の軌跡、そして未来へ~』 
池田理代子原作「ベルサイユのばら」より
 
■監修:植田紳爾 
■構成・演出:谷正純 
■音楽監督:吉田優子

■出演:
<公演替わりキャスト>  
初風 諄、榛名由梨、汀 夏子、安奈 淳、麻実れい、  
日向 薫、紫苑ゆう、杜けあき、涼風真世、一路真輝、  
麻路さき、稔 幸、和央ようか、湖月わたる、星奈優里  
彩輝なお、朝海ひかる、貴城けい、水 夏希、壮 一帆  
白羽ゆり、凰稀かなめ  
<全公演出演>
(宝塚歌劇団 特別出演)汝鳥 伶、華形ひかる および宝塚歌劇団卒業生

 
<東京>
■会場:東京国際フォーラム ホールC
■日程:2019年1月27日(日)~2月9日(土)

 
<大阪>
■会場:梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)
■日程:2019年2月16日(土)~2月24日(日)

 
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