舞台『半神』観劇レポート~新たな観客との出会いをつくる挑戦

レポート
舞台
2018.7.14
舞台『半神』ゲネプロより【撮影:田中亜紀】

舞台『半神』ゲネプロより【撮影:田中亜紀】

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プロレスと演劇を並列に語って共感してくれるのは、カムカムミニキーナの松村武くらいかなと思うけれど、長く見続けている人ほど、当たり前だが語りたいものがあって、時間の経過とともに名作(名試合)に対する思いが強くなるジャンルはないかもしれない。「あのときのあれはよかった」そんな話は、見ていない人間にとっては単なる自慢にしか聞こえないし、最近はユーチューブでかなり見られてしまう場合もあるけど、その瞬間の熱量までは体感することもできない。決して“かつて”は再現できないけれど、しかし新たな息吹を吹き込み、今という時代と呼吸する形でなら生き続けられる、それが演劇の戯曲だと思う。プロレスはそうはいかないけれどね。そういう意味で、柿喰う客の中屋敷法仁の挑戦は、語れる事件だと思うし、まずはその挑戦自体を評価してもよいのではないかという気もする。『赤鬼』に続いて、野田秀樹の『半神』を手がけたのだ。

舞台『半神』ゲネプロより【撮影:田中亜紀】

舞台『半神』ゲネプロより【撮影:田中亜紀】

少女漫画というジャンルを軽々と超えて高い人気を誇る萩尾望都との共同脚本、メディア出演の相乗効果もあって波に乗る1986年に劇団夢の遊眠社が初演した代表作は、再演を繰り返すことで伝説になった。99年にはNODA・MAPで、2014年には東京芸術劇場と韓国の明洞芸術劇場との共同制作として野田が演出したが、つくり手も観客も思い入れの強い作品だけに、なかなか手の出しずらい状況にあるのかもしれない。いや、自作を自分で演出する傾向が強い小劇場文化(あえてそう位置づけますが)の中では、他人の戯曲に手を出そうとする演出家がまずいない。そういう意味では、故つかこうへいの『熱海殺人事件』などは幸福な作品だ。野田秀樹マニアの松村が、自身が野田の演じた役を引き受けたこととともにプログラムで語っていたけれど「リスク」なのかもしれない。でもリスクがある挑戦こそ面白い。

舞台『半神』ゲネプロより【撮影:田中亜紀】

舞台『半神』ゲネプロより【撮影:田中亜紀】

痩せこけて醜い容姿ながら高い知能を持つ姉のシュラと、誰からも愛される美しい容姿だが知能が低く話すこともできない妹のマリア。二人は身体の一部がつながっている結合双生児の姉妹。シュラは無邪気で周囲の愛を一身に集めるマリアを疎ましく思いながらも、彼女を支えて面倒を見ながら生きていた。孤独に憧れるシュラだったが、10歳を前に二人の身体は衰弱し、切り離さなければどちらも生きられない自体に……。

「1/2+1/2=2/4」物語のキーポイントとなる、らせん方程式。ほかの作品に比べればわかりやすいと野田も語る『半神』だが、数学が苦手で頭の固いボクのような人間は、入り口でつまづいて混沌の渦に取り残されてしまったりするのだが、そこは、そういうものだと思ってススメ! 中屋敷版は、ボルダリングの壁のような、最近では見たこともないような切り立った八百屋の舞台装置にまず圧倒される。装置を駆け登ったり、物語の象徴となる渦を描いたり、踊ったりと役者たちが狭いアクティングエリアを駆け回る。このステージングが、双子と家族、双子を仲間に引き寄せようとする化け物集団のいる世界という構造をわかりやすくさせていたと思う。

舞台『半神』ゲネプロより【撮影:田中亜紀】

舞台『半神』ゲネプロより【撮影:田中亜紀】

シャムの双子を演じる乃木坂46の桜井玲香と日本舞踊家でもある藤間爽子という意外性のある組み合わせが健闘していた。二人はたくまずして幼さを醸し出す。桜井のシュラが生と孤独へのこだわりゆえに見せる悪魔の表情は、アイドルのイメージをかなぐり捨てた、どこか向こう側へ観客を誘うような印象を持った。一方、天使のようにキラキラと笑う藤間のマリアは奔放でありつつも、不機嫌なシュラを愛し、信頼を示すように纏わりつき、強く抱きしめる。

シャムの双子を生まれた時から見ている家族のあきらめに反して、二人を成長させようとしてきた家庭教師は、どちらかを残すという判断に「割り切れなさ」を感じる。中屋敷演出は、そこにスポットをグッと当てようとしていたように思う。どんなに割り切れなくても、大人はぐっと飲み込んで折り合いをつけるものだ。その割り切れなさを口にする家庭教師は、何かと善悪、白黒、右左などなどすっぱりと色分けしたがる現代の風潮に、もやもやであり、ハザマにあるグラデーションという答えもあってもいいことを投げかけてくる。折り合いをつけてしまったら、なかったことにしてしまっていいものか、と。スフィンクス、ガブリエル、マーメイド、ユニコーンら化け物たちが人間とは、世界とは、を説くせりふには物語を壮大な世界観へと昇華させるというよりは、もっと現実的な家庭教師の葛藤へと向かっていた。そして葬られる形になってしまった者への鎮魂として引用された萩尾の『霧笛』の一節は、やっぱり素敵だ。

舞台『半神』ゲネプロより【撮影:田中亜紀】

舞台『半神』ゲネプロより【撮影:田中亜紀】

そして、この舞台を担っていたのは、らせん方程式の謎とボケを持ち込んで物語を混乱に陥れる老数学者と老ドクターの兄弟を一人で演じる松村武だと思う。野田のイメージを乗り越えようと鬼気迫る演技だった。オープニング、シュラとマリアと同じ9歳の子供たちが教室で演じる『半神』というオリジナルの設定による導入で、彼らの担任として登場するが、夢の遊眠社『半神』を見て演劇に本格的に目覚めたという松村自身がこの稽古場で似たような存在だったのかもしれない。

『半神』は、野田や萩尾、それに携わった役者だけでなく、出会えた観客にとっても大事な作品なのだと思う。だから伝説になった。中屋敷版『半神』は、混沌を整理し、わかりやすい演出だったかもしれないが、観客に感動を届けられていたと思う。「もっとこういうことが描かれていたはず」という意見もあることだろう。それは逆に野田戯曲のすごさ、深みを改めて伝えることにつながる。だからこそ若い演出家が先人の名作をもっともっと発掘し、演出して、独自の視点で新たに舞台化してほしいと思う。昭和初期までの近代戯曲は現代の演出家によって上演される機会は多いが、現代演劇においてはなかなかそれがなされない。本当に素晴らしい戯曲が次世代によって引き継がれることは小劇場文化の重要性を裏付ける財産になる。そのときは、前の方がよかったと伝説に囚われた感覚で一蹴するのもいいが、今の時代に生まれた作品として、新たな観客との出会いのきっかけとして素直に評価することも大事ではないか。

文=いまいこういち

公演情報

『半神』
■原作・脚本:萩尾望都 ■脚本:野田秀樹
■演出:中屋敷法仁
■出演:
桜井玲香 藤間爽子/太田基裕/
七味まゆ味 永島敬三 牧田哲也 加藤ひろたか 田中穂先 淺場万矢
とよだ恭兵 村松洸希 齋藤明里 エリザベス・マリー/
福田転球 松村 武
■公式サイト:hanshin-stage.jp
 
【東京公演】
■日程:7月11日(水)~7月16日(月・祝) ※プレビュー公演 7月11日(水)
■会場:天王洲 銀河劇場
■チケット料金:S 席 7,800 円 A 席 6,500 円(前売・当日共/全席指定・税込/未就学児入場不可)
※7/11(水) はプレビュー公演 S 席 6,800 円 A 席 5,500 円
 
【当日券の販売について】
当日券は全ステージご用意しております。
各公演とも開演の1時間前より受付にて抽選販売をいたします。
当日券の枚数には限りがございますので、抽選に参加した方全員がご購入いただけるとは限りません。
お支払いは現金のみで、クレジットカードはご利用いただけません。
※会場運営の安全上の理由から、販売方法、時間などが変更となる場合がございます。
 
【抽選方法及びお願い】
各回、開演の1時間15分前から1時間前までにお並びいただいた方を対象に、抽選・販売をいたします。
1時間15分前より早い時間にはお並びいただけません。
徹夜、横入り、並び直して複数枚受け取る、ご観劇意思の無い方がお連れ様の当選率を上げる為に抽選に参加する等の行為は厳禁です。そういった行為が発見された場合は、その方の入場をお断りいたします。
当日券はお1人様1枚とさせていただきます。抽選券もお1人様1枚までです。
販売は先着順ではございません。
抽選の場合、ご当選の方はその場で受付にてご購入いただき、ご購入されたご本人のみご観劇いただけます。
お座席・位置はお選びいただけません。また、舞台が見えづらいお席や立見になる場合もございます。
公演回により、ご用意のお席は異なります。あらかじめご了承ください。
立見券につきまして
各回、座席券が完売した場合に限り、立見券を販売いたします。
お立見いただく位置は 2 階後方、3 階後方エリアとなります。券面に記載された番号の位置での立見観劇となります。
指定された立見位置以外でのご観劇は出来ません。また、折りたたみ椅子等のお持ち込みはご遠慮ください。
ご購入後の返金及び振替等のご要望は一切お受けできません。あらかじめご了承ください。
当日引換受付について
公演直前のご予約は当日引換受付をご利用ください。見切れ席に残券がある回に限り、e+(イープラス)にてお求めいただけます。
 
【受付URL】
e+(イープラス) http://eplus.jp/hanshin-stage/(PC・携帯)
各公演とも前日18:00までご購入いただけます。
支払方法:クレジットカード決済のみ
店頭での販売はございません。
 
【引換方法】
公演当日、開演の1時間前より会場受付にて座席指定券(見切れ席)とお引換えいたします。
見切れ席の販売となります。見切れ席は劇場の構造上一部舞台が見えにくいお席です。
当日券で一般席が販売される可能性があります。ご購入後の返金・振替等は一切お受けできません。あらかじめご了承の上お求めください。
受付にてご本人確認できる書類(免許証、保険証等)を提示の上、お名前・引換番号をお伝えください。
お連れ様とお席を連番でご用意できない場合もございます。また、お座席・位置はお選びいただけます。
 
 
【大阪公演】
■日程:7月19日(木)~22日(日)
■会場:松下 IMP ホール
■チケット料金:7,800 円(全席指定・税込/未就学児入場不可)
 
■チケット取扱い:http://eplus.jp/hanshin-stage/ 
■東京公演のチケットに関するお問い合わせ先:イープラス 0570-06-9919(10:00~18:00)
■東京公演に関するお問い合わせ:ゴーチ・ブラザーズ TEL:03-6809-7125(平日10:00~18:00)
■大阪公演に関するお問い合わせ:キョードーインフォメーション TEL:0570-200-888 (10:00~18:00)
■企画協力:NODA・MAP/株式会社小学館
■主催:
<東京公演>ネルケプランニング/ゴーチ・ブラザーズ/イープラス
<大阪公演>サンライズプロモーション大阪
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