大衆演劇の入り口から[其之三十三] 本川越駅から3分、旅芝居の世界へ!川越湯遊ランドの誘い
上:館内には最近公演した劇団の看板が順に並ぶ 左下:劇場係の芝田卓朗さん 右下:川越湯遊ランド看板
埼玉県・川越――和風情緒豊かな「小江戸」として、近年熱い注目を浴びているお出かけスポットですね。都内からも近いので(新宿から西武線で1時間)、訪れたことがある方も多いのではないでしょうか。その中に、大衆演劇=旅芝居を楽しめる温浴施設があるんです!
川越湯遊(ゆうゆう)ランド
こんにちは!大衆演劇にどっぷり浸かりながら生きている、お萩と申します。芝居と芸、そしてギラギラした役者さんたちの生命力あふれる大衆演劇の世界。その魅力が一人でも多くの方に届けばと、広報のチャンスを探しています。全国に100箇所以上の公演場所を持ち、約120劇団が活躍している、実はとてもパワフルな舞台ジャンル!なんです。
この夏、浴衣姿で川越へ遊びに行く女性グループを見かけ、ふと思いました。秋以降も10/20・10/21の盛大な「川越まつり」をはじめ、川越に人が集まる機会はたくさんあるはず。ならば大衆演劇初めての方も、観光で川越を訪れた際にはきっと足をのばしていただきたい!
駅のすぐそば
まずは川越湯遊ランドへの道案内です。最寄り駅は西武新宿線の終点、「本川越」駅。
蔵のまち口(東口)を出ます。
左折し、駅を左手にしてまっすぐ歩きます。
十字路にぶつかったら横断歩道を渡って、三菱UFJ銀行の赤い看板の見える道路へ。
銀行を過ぎた角で左折します。そのまま百数十メートル歩くと…。
川越湯遊ランドの看板が右手に現れます。本川越駅出口から約3分と、とても便利な距離。中に入り、エスカレーターを上がってフロントで入館料金1,840円を払います。
きれいなフロント。
3階の「小江戸座」に続く階段。
大衆演劇公演を行う3階の「小江戸座」へ。階段の踊り場で劇団のタペストリーが迎えてくれ、芝居小屋感が高まります。階段を上がると待っているのはこんな空間!
予備知識なしでも大丈夫
客席を縦断する長くて広い花道!
「小江戸座」は食事処と劇場が一体になった空間。ハンカチや上着が置かれている席はすでに他の人が場所取りしているので、それ以外で空いている席を見つけて座ります。
取材当日のお外題(演目)。
「小江戸座」入り口に当日のお外題(演目)が貼り出されています。え、じゃあ毎日演目が替わるの?と思われた方へ。そう、大衆演劇最大の特徴は公演内容が日替わりなこと!一か月間、全部違う演目をするのでハマると毎日通い詰める人もいます。
さて13:00、第一部・お芝居の開演です。
保下田の久六「お蝶の姐さんが病なのか…かわいそうになぁ…」
刀がぶつかり合う迫力ある立ち回りも見どころ。
公演劇団は毎月代わります。取材日9/19は人気劇団・新生真芸座(しんせいしんげいざ)が公演中で、お芝居は『東海遊侠伝 石松』でした。石松は大衆演劇ではおなじみのアウトローの登場人物です。
ここで大事なこと。大衆演劇のお芝居について、「予備知識がないとストーリーが分からないのでは?」という心配は無用です!なぜかというと、基本的にシンプルな筋立てであることに加え、劇団側が「お客さんの反応を見ながら演じる」ということを徹底しているから。舞台上で客席の反応を確かめつつ、絶対お客さんを置いて行かないよう、アドリブのセリフなどで噛み砕きながら演目を進めてくれます。
14:30からは第二部・舞踊ショーになります。
新生真芸座・舞踊ショー
新生真芸座・舞踊ショー
客席と超至近距離なのが大衆演劇の特徴。
音楽に合わせて役者さんが踊ります。妖艶だったりキュートだったりアイドルみたいなカッコよさだったり、一種の異空間が出現します。写真撮影も可。
※フラッシュ撮影と動画撮影は禁止です。時々、撮影自体が禁止の劇団もあります。
昼の部は15:30に終演です。「送り出し」といって、役者さんが入り口に立ってお客さんを見送ってくれます。2時間半の公演は長いようですが、体験すると「もう終わりか」というくらいあっという間です。
フロントでお土産も多種類売っています。帰り際にチェック。
担当スタッフの語る大衆演劇の魅力とは
劇場係・芝田卓朗さん
大衆演劇担当のスタッフ、芝田卓朗(しばた・たくろう)さんに話を伺いました。芝田さん自身、5年前に勤め始めるまで、大衆演劇を観たことはなかったといいます。
「事務の仕事をしながら館内の様子を見ていて、初めて観た芝居は人情劇でした。感動しましたね。こういう演劇を観るのは初めてでしたが、あぁ、良いなぁって」
――芝田さんが感動したポイントとは。
「どの芝居を観ても、自分の人生を振り返るときがいつもあって…。自分がその立場だったらどうするだろうとか、色々考えさせられるような感じになりますね。芝居に共感できるんです。観終えた後、芝居の余韻に浸っているお客様がたくさんいらっしゃるんですが、その気持ちがよく分かります。仕事中は舞台を観る余裕がないので、お休みの日にもプライベートで観に来たりしています」
――初めて大衆演劇をご覧になるお客様はどんな反応でしょう。
「やっぱり驚かれますね。多分、客席と役者さんの距離が近いことが新鮮なのではないでしょうか。お芝居や踊りを観に行くというと、文化センターや公民館など、どうしても遠いところから小さい人を観ているイメージを持つ方が多いと思うんです。でもここでは、距離が本当に近いところで生のお芝居をやっていますから」
花道に役者さんが来ると、客席の中に降り立つような近さ。
「この花道は『小江戸座』の自慢ですね。川越湯遊ランドは『ホテル三光』を併設しているので、週末に川越観光に来て、ここでお芝居を楽しんでホテルに泊まっていかれるお客様も多いです。ぜひ一度お越しください!」
最後に。「なんで大衆演劇をそこまで推しているの?」と筆者は時々聞かれます。理由はいっぱいありますが、大衆演劇を通して、人生を違う角度から見つめる「真実」に気づくことがあるから、というのが答えの一つです。
新生真芸座の舞台より
目にも鮮やかな着物の色彩、キリリと化粧のラインを引いた役者の面構え、ムッと匂い立つ艶。これらが創り出す異空間は、なぜか心を呼ぶなつかしさに満ちています。旅芝居には古くから受け継がれてきた演目も多く、その中に昔の人々の涙や吐息が、まだ染み通っているのかもしれません。
日替わりの演目を、各劇団が汗とともに届け続けている旅芝居。その芝居のどれかが、きっとあなたの人生と重なります。
10月の公演劇団は芸達者な兄弟が率いる「南條隆とスーパー兄弟」、11月は美形の座長と若手が揃う「劇団美鳳」です。
こんにちは、小江戸・川越から。ようこそ、旅芝居の世界へ!
★昼の部を観るなら…11:00頃に入館し、お風呂に入ったり、「小江戸座」でランチしたりしてから13:00~15:30の舞台を楽しみ、そのあと夕方の川越の街を散策。
★夜の部を観るなら…川越観光を日中楽しんだ後、17:30頃に入館し、一日の疲れを取りつつ18:00~20:30の舞台を楽しむ。
文・写真=お萩
施設情報
川越湯遊ランド・ホテル三光
10月公演 南條隆とスーパー兄弟 10/1(月)~10/30(火) 休演日10/17(水)
11月公演 劇団美鳳 11/1(木)~11/29(木) 休演日11/27(火)
※月に1度の休演日と、月末の千穐楽以外は毎日公演しています。最新の公演情報は公式サイトでご確認ください。
昼夜どちらも芝居・ショーの2部構成(計2時間半公演)
公式サイト:http://kawagoe-yuyu.com/play/
公式Twitter:https://twitter.com/LandInTheBox
入館料:大人1840円
座席予約料: 500円 座椅子料金: 300円
座席予約はフロント・電話で受付可能。
予約受付時間:9:00~24:00
※施設自体は24時間営業ですが、夜中は電話がつながりにくいことがあります
TEL:049-226-2641
埼玉県川越市新富町1-9-1
西武新宿線「本川越駅」から徒歩約3分
関越自動車道「川越IC」より10分
地図はこちら(googleマップ)