日本音楽コンクールピアノ部門優勝の黒岩航紀さんに聞く
一位という結果に恥じない演奏家として、更に気を引き締め頑張りたい
10月24日、東京オペラシティコンサートホールにて第84回日本音楽コンクールピアノ部門の本選会が行われた。応募者216人の中から3度の予選を通過した4人が協奏曲を演奏し、黒岩航紀さんが第1位に選ばれた。
黒岩さんは今回の結果にてついて「本番では全てが上手くいったという訳ではありませんが、楽しく演奏することができました。また、多くのお客様に喜んでいただけたようだったので素直に嬉しいです。それと同時に、この権威あるコンクールの一位という結果に恥じない演奏家として、更に気を引き締め頑張りたい」と語っている。
東京音楽コンクールで第1位、東京芸術大学を首席で卒業するなど輝かしい経歴の持ち主である黒岩さんは今回、日本音楽コンクールを受けるつもりはなかったという。昨年3度目の挑戦で最後と決めて受けたこのコンクールで3次予選まで進んだものの本選には進めず、結果が出てからは「自分の中では良い演奏ができて、手応えもあったのに…」と悩む日々が続いたという。しかし次第に気持ちは次に向き、日本音楽コンクールはもう受けないと改めて決意してからはコンクールの行われる9月、10月にもどんどん演奏会の予定を入れていった。しかし、いざ今年の4月にコンクールの募集要項が出ると「リベンジしたい」という気持ちが強くなり「今回は本選に進めないなんてありえない。必ず本選に進むんだ。」と昨年以上に強い気持ちを持ってこのコンクールに臨んだ。
予選は約1週間の間に3度演奏する。黒岩さんはこの3回を「コンクールではなく自分の演奏会だ」と思ってステージに上がった。「その気持ちがあったからなのか、本番前にナーバスになることはなく良い緊張感を保てた」と振り返る。また、高校からの後輩である鐵百合奈さんも本選まで進み、お互いに本選で演奏する協奏曲のオーケストラパートを弾き合って本番を迎えた。黒岩さんにとってはとても心強い存在だったそうだ。
黒岩さんは、ソロはもちろんアンサンブルピアニストとしての活動も多く行っており、最低でも月に10回は本番がある。「素晴らしい演奏家との共演は学ぶことが多いし、刺激を受ける。特にサックスの須川展也さんや上野耕平さんとのアンサンブルは刺激的」と話してくれた。黒岩さんの恩師の紹介で4年ほど前から須川さんと共演するようになった。須川さんの演奏を真横で聴いて感動したと同時に自分との距離を感じた黒岩さんは「少しでも須川さんに追いつきたいとがむしゃらにやった。これが自分にとって大きかった」という。
今後はアンサンブルも続けていきたいが、ソリストとしての演奏を軸にやっていきたいという黒岩さんは「アルゲリッチやホロヴィッツの演奏に憧れる。彼らのようなソリストになりたいです」とインタビューの最後に力強く語ってくれた。