劇団ジャブジャブサーキット、1年4ヶ月ぶりの新作公演『ビシバシと 叩いて渡る イシバシ君』が名古屋、東京、大阪で
前列左から・小木曽木林、三井田明日香、荘加真美、空沢しんか、まどかリンダ、林優花 後列左から・高橋ケンヂ、作・演出のはせひろいち、伊藤翔大、栗木己義、松本詩千、岡浩之
土砂災害により避難所に残された12人を巡る、はせひろいち書き下ろしのネオミステリー
前作『月読み右近の副業』から、新作としては1年4ヶ月ぶりとなる劇団ジャブジャブサーキットの『ビシバシと 叩いて渡る イシバシ君』が、9月27日(木)~30日(日)に名古屋・大須の「七ツ寺共同スタジオ」で上演。続いて、10月下旬には東京・下北沢の「ザ・スズナリ」、11月半ばには大阪・心斎橋の「ウイングフィールド」と、3都市ツアー公演を行う。
劇団ジャブジャブサーキット『ビシバシと 叩いて渡る イシバシ君』チラシ表
2016年の作品『猿川方程式の誤算あるいは死亡フラグの正しい折り方』に次ぐ長さで、一見標語のようでもある不思議なタイトルがまず気になるところだが、「毎度のことながら何の構想もないところから始まるので、変なタイトルにしたいなと思って、五七五になりながら三行五文字ずつ、という絵面も考えて付けました。その時点ではまだ内容は決まっていなかったんですがなんとなく予感だけはあって、結果的にこのタイトルが謎解きになっています。『猿川方程式…』の時も6文字×4行のボックスに収まるようビジュアル的なことも考えましたけど、あれはちょっとカッコイイ感じだったので、今回は「はぁ?」と言われるようなものにしたかったんですよ。誰か止める奴いなかったのか、って思われるような(笑)」と、作・演出のはせひろいち。
物語の舞台は、とある公共工事の現場に隣接する、廃校になった中学校の再利用施設である。台風による豪雨で施設の裏山が崩れ、その土砂が駐車場を直撃、車が流され身動きできず取り残されてしまった工事関係者と施設の職員、自主映画のロケに訪れていた映画サークルの若者たち、そして怪しげな女2人に謎の男…。通信状況が限られた中、土砂崩れが起きた夕方から翌朝まで待機を余儀なくされた12人の持つそれぞれの事情や過去にまつわる出来事が、タイトルに絡めた謎解きを含めミステリー仕立てで描かれていく。
稽古風景より
登場人物たちを足止めする土砂災害が起こる、という構想を練った今年の春頃には、「この夏がこれほど異常気象になるとは思っていなかったし、土砂災害もこんなに頻発するとは思っていなくて、はからずも…という感じですね。タイムリーすぎるのもいかんなぁと。自然災害だから誰が悪いわけでもないというところもありますけど、あまりにも近かったので、それをネタにしているという罪悪感も持ちつつ書き進めました」と、はせ。
まだ記憶に新しい西日本豪雨や、異例のコースを辿った逆走台風、25年ぶりに非常に強い勢力のまま上陸した台風21号、さらには大阪北部や北海道で起きた大地震、連日の記録的猛暑など、この夏次々と巻き起こった現実の異常気象や自然災害は、物語の展開に影響を与えた部分も少なからずあったという。
稽古風景より
そんな自然災害を機に、同じ場所で一夜を過ごすことになった人々を描いた本作は、彼らの何気ない会話をベースにしながら、不穏な行動、不思議な出来事、謎の表情や仕草といった不安要素を散りばめつつ、終盤に向けて、謎解きやそれまで隠されていた人間関係を通して過去のある出来事を浮かび上がらせる…という構造だ。
「相変わらず「これがテーマです」というのが明確になる作品ではないし、最近は物語を丁寧に紡いでいくことに飽きていて(笑)、順当なミステリーなんかもう書きたくないという思いもあって、かなり変則的なサスペンスになっています。ちょっと違う角度から迫った、“ネオミステリー”にしたいな、と。そういう意味では、いつもより難解度は高いかもしれませんね。途中で起きている違和感とか、「あれ、なんでこのシーンでこんなことを語っているんだろう?」というのが、最後の最後にわかる仕掛けになっている。それをじゃあ、ラストでどこまでフィードバックできるだろう…というのがあるので、よく言えばもう1回観たくなる作品かもしれません」
稽古風景より。
また、キャストについては今作の上演に向けてこの春オーディションを実施し、見事通過した三井田明日香、イヲリ、林優花、松本詩千、小木曽木林の5名がジャブジャブメンバーと共に出演。オーディションの合格基準をはせに尋ねると、「演技の実力というより、変だな~コイツ、という人を好んで取ります。だから芝居の経験値が高くない人もいて苦労する部分もあるんだけど(笑)、客演として役柄にバリエーションを出してくれているのは間違いないですね」と。
さらに、名古屋は中内こもる、東京はコヤマアキヒロ、大阪ははしぐちしんと、三都市それぞれのご当地ゲストも登場。“謎の男”として劇中における「不条理を全部引き受けてもらっている」という役割だけに、各地で三者がどんな人物を演じるのかも楽しみだ。尚、各地で1ステージずつ、ゲストを招いてのアフタートークも予定されている(詳細は公演情報を参照)。
取材・文=望月勝美
公演情報
■出演:栗木己義、荘加真美、空沢しんか、伊藤翔太、まどかリンダ、高橋ケンヂ、岡浩之(以上、劇団ジャブジャブサーキット)、三井田明日香(劇団B級遊撃隊)、イヲリ、林優花、松本詩千、小木曽木林 ご当地ゲスト/名古屋:中内こもる(劇団中内(仮)/クリアレイズ) 東京:コヤマアキヒロ 大阪:はしぐちしん(コンブリ団)
<名古屋公演>
■日時:2018年9月27日(木)14:00・19:30、28日(金)14:00・19:30、29日(土)14:00・18:30、30日(日)11:00・15:00 ※29日(土)18:30の回公演後は中尾達也(オイスターズ)をゲストに迎え、アフタートークを開催
■会場:七ツ寺共同スタジオ(名古屋市中区大須2-27-20)
■料金:前売一般2,800円 前売U-22 2,000円 前売高校生以下1,000円 ※当日は各300円増し。U-22、高校生以下は当日受付で年齢を確認できる証明書や学生証を提示
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「伏見」駅下車、鶴舞線に乗り換え「大須観音」駅下車、2番出口から南東へ徒歩5分
<東京公演>
■日時:2018年10月26日(金)19:30、27日(土)14:00・18:30、28日(日)14:00 ※27日(土)18:30の回公演後は毛利亘宏(少年社中)をゲストに迎え、アフタートークを開催
■会場:ザ・スズナリ(東京都世田谷区北沢1-45-15)
■料金:前売一般3,500円 前売U-22 2,500円 前売高校生以下1,000円 ※当日は各500円増し。U-22、高校生以下は当日受付で年齢を確認できる証明書や学生証を提示 プレビュー2,000円(劇団扱いのみ)
■アクセス:小田急線・京王井の頭線「下北沢」駅北口から徒歩4~5分
<大阪公演>
■日時:2018年11月16日(金)14:00・19:30、17日(土)14:00・18:30、18日(日)14:00 ※17日(土)18:30の回公演後は広田ゆうみ(このしたやみ)をゲストに迎え、アフタートークを開催
■会場:ウイングフィールド(大阪市中央区東心斎橋2-1-27 周防町ウイングス6F)
■料金:前売一般2,800円 前売U-22 2,000円 前売高校生以下1,000円 ※10/5までは早割300円引き、当日は各300円増し。U-22、高校生以下は当日受付で年齢を確認できる証明書や学生証を提示
■公式サイト:http://www.jjcoffice.com/