『特別展 挑む浮世絵 国芳から芳年へ』が開催 怪奇・快感……残虐な「血みどろ絵」は閲覧注意!?

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2018.11.21

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『特別展 挑む浮世絵 国芳から芳年へ』が、2019年2月23日(土)〜4月7日(日)まで、名古屋市博物館で開催される。

歌川国芳「浮世よしづくし」より国芳自画像 名古屋市博物館蔵(高木繁コレクション)

歌川国芳「浮世よしづくし」より国芳自画像 名古屋市博物館蔵(高木繁コレクション)

歌川国芳(1797-1861)は、旺盛な好奇心と柔軟な発想、豊かな表現力を武器として、武者絵や戯画に新機軸を打ち出し、幕末にいたって浮世絵のさらなる活性化につなげた浮世絵師だ。今日では「奇想の絵師」としてその人気は定着してきている。

親分肌の国芳を慕って多くの弟子が集ったが、なかでも「最後の浮世絵師」と称される月岡芳年(1839-92)が特筆される。国芳の奇想をよく受け継ぎ、さらに和洋の融合を推し進めた彼の作品は、近年再び高く評されるようになってきた。

歌川国芳「としよりのよふな若い人だ」 名古屋市博物館蔵(尾崎久弥コレクション)

歌川国芳「としよりのよふな若い人だ」 名古屋市博物館蔵(尾崎久弥コレクション)

本展では、国芳、芳年のほか、芳年とともに国芳門下の双璧とされた落合芳幾(1833-1904)などにもスポットを当て、国芳が切り開いたさまざまな新生面を弟子たちがいかに継承、変化させていったのかをたどる機会とする。人々の嗜好に合わせ最後まで新しい画題と表現に挑み続けた、国芳を領袖とする「芳ファミリー」。展示作品には残虐な絵も含まれるので、用心してほしい。

なお本展は、名古屋市博物館が所蔵する浮世絵の二大コレクション、国文学者尾崎久弥(1890-1972)の幕末浮世絵を中心とする収集作品(尾崎久弥コレクション)と、医学者高木繁(1881-1946)の国芳武者絵が大半を占める収集作品(高木繁コレクション)の計2,100タイトルほかより抜粋した名古屋市博物館の所蔵品から構成される。

第1章 ヒーローに挑む

歌川国芳の出世作であり、その後も得意としたのが歴史上や物語に登場するヒーローの勇ましい姿を描いた「武者絵」。そのDNAは弟子たちに確実に引き継がれていった。国芳や弟子が逸話やヒーローたちをどのように表現したかを展観する。

第2章 怪奇に挑む

歌川国芳「相馬の古内裏」名古屋市博物館蔵(高木繁コレクション)

歌川国芳「相馬の古内裏」名古屋市博物館蔵(高木繁コレクション)

ヒーローの勇ましさを強調するためには、彼らが対峙する怪奇をいかに恐ろしく表すかということが重要だ。また状況が異常であればあるほど画中のドラマ性は高まる。国芳は血がほとばしる残虐な場面を描いた作品を描いているが、時代の要請だったのだろう、弟子もまたその路線を受け継いだ。本章では、そうした怪奇を描いた作品や「血みどろ絵」と呼ばれる作品を紹介する。

特に、落合芳幾と月岡芳年が手がけた「英名二十八衆句」は全点を一挙公開。体調を整えた上で鑑賞することをおすすめする。

月岡芳年「英名二十八衆句 福岡貢」 名古屋市博物館蔵(尾崎久弥コレクション)

月岡芳年「英名二十八衆句 福岡貢」 名古屋市博物館蔵(尾崎久弥コレクション)

落合芳幾「英名二十八衆句 げいしや美代吉」 名古屋市博物館蔵(尾崎久弥コレクション)

落合芳幾「英名二十八衆句 げいしや美代吉」 名古屋市博物館蔵(尾崎久弥コレクション)

第3章 人物に挑む

国芳が描く美人像は、現実味にあふれ、はつらつとした明るさを放っている。一方で芳年の描く美人は妖艶な雰囲気をたたえている。そうした女性たちは、国芳一門では、「しぐさ」や「気持ち」をまとって表現される。ここでは、美人画を中心に役者絵も含めたそれぞれの人物表現をみる。

第4章 話題に挑む

歌川国芳「里すゞねぐらの仮宿」名古屋市博物館蔵(高木繁コレクション)

歌川国芳「里すゞねぐらの仮宿」名古屋市博物館蔵(高木繁コレクション)

国芳の戯画(滑稽な絵)はバリエーションの豊富さと、そしてアイデアの奇抜さにおいて他の追随を許さない。第1章の武者絵と並んで彼が浮世絵界に残した新機軸といっていいだろう。さらに一見、ユーモラスに見える国芳の戯画のなかには、幕政を風刺しているとしてさまざまな憶測が飛び交い大評判をとったものもある。ここでは当時、話題となった見世物に取材したものや、世相をネタにした戯画など、ニュースソースとしての作品を紹介する。国芳が時代をどう捉え、いかに商品としたのか、その挑戦を目の当たりにできる。

終章 「芳」ファミリー

月岡芳年「東名所墨田川梅若之古事」名古屋市博物館蔵(尾崎久弥コレクション)

月岡芳年「東名所墨田川梅若之古事」名古屋市博物館蔵(尾崎久弥コレクション)

新機軸を次々と生みだし、晩年にいたってもなお浮世絵界を活性化させた国芳は親分肌だったと言われ、芳年の他にも画号に「芳」のつくたくさんの弟子がいた。「新聞錦絵」で印象深い芳幾、パノラマ歴史画で秀作を残す芳艶のほか、芳虎、芳盛、芳員、芳藤などが出て明治の浮世絵を彩る。ここ終章では、弟子による明治浮世絵の展開に目を向け、浮世絵最後の光芒を確認する。

イベント情報

特別展 挑む浮世絵 国芳から芳年へ
会期:2019年2月23日(土)〜4月7日(日)
会場:名古屋市博物館
 
【巡回展情報】
〈第2会場〉広島県立美術館:2019年4月13日(土)〜5月26日(日)予定
〈第3会場〉福岡市博物館:2019年11月16日(土)〜12月22日(日)予定
ほか2020年以降も全国を巡回予定。
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