林檎、エレカシ宮本からSKY-HI、石川さゆりまで登場、亀田誠治の手がける『日比谷音楽祭』2日目をレポート

レポート
音楽
2019.7.12
(写真提供:日比谷音楽祭)

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日比谷音楽祭・Day2  2019.6.2  日比谷公園

「フリーで誰もが参加できる、ボーダーレスな音楽祭」という理念のもと、今年からスタートしたのが『日比谷野外音楽祭』だ。実行委員長を務めているのは音楽プロデューサー、ベーシストの亀田誠治氏。毎年6月から10月にかけてニューヨークのセントラルパークで行われている“サマー・ステージ”がひとつのお手本になったというこの音楽祭の舞台となったのは、日比谷公園とその周辺にある日比谷野外大音楽堂、小音楽堂、第二花壇、日比谷図書文化会館大ホール、小ホール、草地広場、にれの木広場、東京ミッドタウン日比谷の日比谷ステップ広場、パークビューガーデンなどの会場。6月1日、2日の2日間に渡って、ライブ、ワークショップ、トークショー、公開放送など、数多くの音楽イベントが行われた。このフェスの大きな特徴は年齢、性別、障害の有無、国や地域、音楽ジャンル、経済格差など、あらゆるボーダーを取り払って、誰もが自由に音楽を楽しめるというところにある。大音楽堂、小音楽堂でのライブに関しては、抽選制のものもあるが、すべて無料。「みんなで作る音楽祭」ということで、クラウドファンディングによる支援、音楽関連の様々な企業の協賛などによって運営されている。1日は約3万5千人、2日は約6万5千人が集まって、様々なスタンスで音楽を楽しんでいた。ここではその2日目の模様をレポートしていこう。

(写真提供:日比谷音楽祭)

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6月2日の最初の催しは小音楽堂で午前10時半から始まった。ステージに立った東京消防庁音楽隊は1964年の東京オリンピックでも演奏していて、来年の東京オリンピックでの演奏も決定している歴史のある音楽隊だ。午前中の早い時間ということもあり、開演前は空席がかなりあったが、演奏が始まると、その音に誘われた人々がどんどん入ってきて、客席が埋まっていった。音楽隊のファン、家族連れ、お年寄りのグループ、カップルから、散歩のついでに寄ったという雰囲気の人まで、老若男女、客層は様々だ。演奏されたのは「威風堂々」「カントリーロード」「夢をかなえてドラえもん」「ボヘミアン・ラプソディ」などなど。吹奏楽団だが、「カントリーロード」では口笛、「ボヘミアン・ラプソディ」ではギター・ソロもフィーチャーして、大きな拍手が起こった。流行りの要素を取り入れながら、あらゆる世代が楽しめる間口の広い構成となっている。ボーダーレスなフェスを象徴するオープンな演奏が気持ち良かった。ステージの背後は噴水広場、第二花壇、日比谷公会堂が見える。つまり音楽を遮る天井も壁もない。

(写真提供:日比谷音楽祭)

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にれの木広場では楽器メーカーによるブースがたくさん出ていて、様々な楽器を体験できるワークショップやデモンストレーションライブが行われていた。子どもたちがドラムを叩いたり、キーボードを演奏していたりする。音楽の楽しさを次世代へと繋いでいくこともこのフェスの趣旨のひとつだ。公園内には音楽マーケット、フードコートなどの他に、シートを広げられるピクニックスペースもある。たくさんの人でにぎわってはいたが、休憩する場所もある。都心のアクセスの良さと公園の気持ち良さとが両立するなど、このロケーションはオープンなフェスに適していると言えそうだ。

(写真提供:日比谷音楽祭)

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午前11時すぎ。日比谷公園から東京ミッドタウン日比谷の日比谷ステップ広場へ移動するとDannie Mayのステージが行われていた。ステージ前には数列のベンチがあって、小さな子どもからお年寄りまで、様々な年齢層の人が座っている。そのベンチの後ろにも人々が立っている。ショッピング中に足を止めて、彼らの音楽に聴き入っている人もいるようだ。Dannie Mayはファンク、ソウル、ディスコなどの要素を取り入れた音楽を生み出しているトリオのユニットだ。おそらくこういう音楽を聞いたことがないであろう高齢者も、うちわと手のひらを合わせてハンドクラップしていた。彼らは街角で映えるシティ・ポップを奏でていた。路上とはまた違う広場で奏でる音楽のおもしろさと可能性を感じた。

Dannie May (写真提供:日比谷音楽祭)

Dannie May (写真提供:日比谷音楽祭

日比谷図書館大ホールでは11時40分から12時40分まで、“はじまりのヒップホップとヒップホップのこれから”というテーマで、GAKU-MCとCreepy NutsR-指定によるトークショーが行われた。MCはダイノジの大谷ノブ彦。1時間のトークショーだったのだが、ヒップホップの魅力に目覚めたきっかけなどの個人的な話から日本でのヒップホップの歴史、展望まで、盛りだくさんの内容で、途中、GAKU-MCがアコギを弾きながら歌を披露する場面もあった。それぞれのヒップホップへの愛情もしっかり伝わってくると同時に、ヒップホップをより深く理解するきっかけを与えてくれる有意義なトークショーとなった。

大谷ノブ彦 / GAKU-MC / R-指定 (写真提供:日比谷音楽祭)

大谷ノブ彦 / GAKU-MC / R-指定 (写真提供:日比谷音楽祭

13時半すぎ、日比谷公園から東京ミッドタウン日比谷の6階にあるパークビューガーデンのKOTONOHAに移動すると、小倉博和のライブが行われていた。このパークビューガーデン、ロケーションも抜群で、空中庭園になっていて日比谷公園が一望できる。芝生に座っていると、頭上には空が広がっていて、都会のど真ん中にいるのを忘れそうになる。一瞬、フジロックフェスの山の中にあるステージ、Gypsy Avalonにも似た心地良い開放感を感じた。ギターによるインストのステージなのだが、透明感のあるギターの音色が風に乗って、ふわっと届いてくる。リラックスした穏やかなナンバーから躍動感を備えたナンバーまで、ギター1本で多彩な音楽の世界を表現していくところはさすが。最後はスタンディングでのライブとなった。ステージと空とのボーダーがないようなライブが気持ち良かった。

小倉博和 (写真提供:日比谷音楽祭)

小倉博和 (写真提供:日比谷音楽祭

日比谷野外大音楽堂では14時30分からHibiya Dream Session 2と名付けられたセッションが行われた。トップバッターは1MC1DJのヒップホップユニット、Creepy Nuts。客層の幅が広く、初めてヒップホップのライブを経験する人もかなりの数ではないだろうか。Creepy NutsのMC、R-指定はそんな状況も踏まえて、「ヒップホップのライブ、注意事項はかなり命令します。“手をあげろ!”だの“声をあげろ!”だの、失礼があるかもしれませんが、ご了承ください。その命令に乗っかると、楽しくなってきます」と丁寧に説明してから演奏を始めた。「数え歌」では観客も声をあげて盛り上がった。さらに「ご起立願えますか? ヒップホップのライブでお客さんが座ってるのって、あまりないので緊張しました」とのこと。ほとんどの人が立ち上がって、「合法的トビ方ノススメ」へ。これは演奏する側にとっても新鮮なシチュエーションだったのではないだろうか。ヒップホップの魅力を一般の人々にもわかりやすく伝えていくような、楽しくて親しみやすいステージとなった。

Creepy Nuts (写真提供:日比谷音楽祭)

Creepy Nuts (写真提供:日比谷音楽祭

椎名林檎 (写真提供:日比谷音楽祭)

椎名林檎 (写真提供:日比谷音楽祭

R-指定のラップによる呼び込みで登場したのは同志社大学の軽音楽部に所属するビッグバンド、The Third Herd Orchestra。2018年に開催された『THE 49th YAMANO BIG BAND JAZZ CONTEST』の最優秀賞を受賞している実力派だ。まずはブライアン・ブロンバーグのジャズ・フュージョン・ナンバー、「slap happy」からスタート。「夢にまで見た野音で演奏できるので、ドキドキしてます。スペシャル・ゲストとコラボさせていただきます」というメンバーの紹介で、観客から驚きの歓声があがる中、シークレットゲストの椎名林檎が和服姿で登場して、The Third Herd Orchestraの演奏で「人生は夢だらけ」を披露した。起伏に富んだ椎名の歌声とみずみずしいビッグバンドの演奏が見事にマッチしている。大学生のバンドとトップ・ミュージシャンが同じステージに立つ。これは夢のような共演だ。さらにホーンによるイントロが鳴り響くと、もうひとりのシークレットゲストとして、エレファントカシマシの宮本浩次も登場して、「獣ゆく細道」を椎名とデュエットする超豪華な顔合わせも実現した。椎名と宮本のスリリングなかけ合いをカラフルな演奏が彩って、観客がハンドクラップで参加していく。プロとアマの垣根もない。ボーダーレスな音楽祭を象徴するシーンとなった。

宮本浩次 (写真提供:日比谷音楽祭)

宮本浩次 (写真提供:日比谷音楽祭

The Third Herd Orchestraに続いてはハウスバンド、The Music Park Orchestra――亀田誠治(B)、佐橋佳幸(G)、斎藤有太(Key)、河村“カースケ”智康(Ds)、皆川真人(Key)が登場。このメンバーに弦楽器、管楽器が加わった編成の演奏のもと、新妻聖子がダイナミックかつ凛々しい歌声での「ラ・マンチャの男」と情感豊かな歌声での「Never Enough」を披露。新妻は数多くのミュージカルに出演していて、日比谷は帝国劇場、日生劇場、東京宝塚劇場、シアタークリエなどの劇場がたくさんある日本のブロードウェイとも呼ばれている地域である。彼女はミュージカル代表として、表情豊かな歌声で、ミュージカルの魅力を見事に伝えていた。野音も含めて、日比谷周辺に音楽文化の土壌がある。そうした背景を踏まえて、歴史を継承して、未来へと繋げていくところにも、この日比谷音楽祭の意義がありそうだ。

新妻聖子 (写真提供:日比谷音楽祭)

新妻聖子 (写真提供:日比谷音楽祭

続いて登場したのは2018年平昌オリンピックの開会式と閉会式で音楽監督を務めたピアニスト・作曲家・音楽プロデューサーの梁邦彦。彼はインターナショナルに活動していて、ポップスから民族音楽まで、様々なジャンルを融合して、誰もが親しめる普遍的な音楽を生み出している音楽家だ。まずは平昌オリンピック応援テーマ曲「Echoes for PyeongChang」から。壮大でカラフルでありながら、フレンドリーでピースフル。様々なボーダーを越えて、人々を繋いでいくパワーを備えた曲だ。梁のピアノ、バンドの演奏、そして観客のハンドクラップが一体となっていく。さらにWOWOWのパラリンピック・ドキュメンタリーシリーズの主題歌「WHO I AM」も演奏された。芯の強さ、強靱さと温かさを備えた演奏に観客が聴き入っていた。ちなみに前日の1日には“WOWOW WHO I AMプロジェクト”として第二花壇で障害者と健常者が一緒に参加して楽しめる運動会『ノーバリアゲームズ』が開催され、梁は応援音楽団長を務めていた。人と人を繋ぐ。そんな音楽のパワーはスポーツでも有効に活用されていた。

梁邦彦 (写真提供:日比谷音楽祭)

梁邦彦 (写真提供:日比谷音楽祭

「自由なイベントでみんなとすごせることを楽しみにしてきました」と挨拶したのはCHEMISTRY のメンバーであり、ソロでも活動している堂珍嘉邦だ。まずはCHEMISTRY の「君をさがしてた」を披露。せつなさやいとしさがにじむ歌声に観客が聴き入っていた。野外の空間にぴったりだったのは「BIRDY」だ。歌を空へと解き放っていくようなエネルギッシュなステージを展開。堂珍もミュージカルに出演していることから、新妻が再び登場して、二人のコラボレーションによって、「美女と野獣」も披露された。美声と美声のハーモニーに盛大な拍手が起こった。

堂珍嘉邦 (写真提供:日比谷音楽祭)

堂珍嘉邦 (写真提供:日比谷音楽祭

トリを務めたのはナオト・インティライミだった。世界66国を旅している彼自身がボーダーレスを体現するようなミュージシャンである。彼が歌い出すと、会場内にフレンドリーな空気で染まっていく。ハンドクラップとともに歌われたのは「いつかきっと」。色とりどりのタオルが回させる中での演奏となったのは「カーニバる?」だ。飛んだり、跳ねたり、回ったりしながらのステージ。シンガロングも起こって、ハッピーな空気が会場内を包み込んでいく。Session 2の締めにふさわしいライブだ。終演直後、亀田の呼び込みによって、出演ミュージシャンが再登場して、手を繋いで挨拶。
「一日中公園で楽しめると思うので、遊んでいってください」との亀田の言葉もあった。まだまだ日比谷音楽祭は続いていく。

ナオト・インティライミ (写真提供:日比谷音楽祭)

ナオト・インティライミ (写真提供:日比谷音楽祭

この日は他にも小音楽堂で、日比谷ブロードウェイ Musical Stageというタイトルのもと、井上芳雄・田代万里生・屋比久知奈のステージが行われるなど、あちこちの会場で様々なライブ、イベントが開催されていたが、残念ながら、物理的に観ることが出来ないものもたくさんあった。Session 2終演後の16時30分すぎに草地広場に向かうと、Session 2にも出演していたThe Third Herd Orchestraを中心として、楽器を持参した人が自由に参加できる“スイングカーニバル”が行われていた。演奏曲目はEarth Wind & Fireの名曲「September」など。バンドのメンバーと一緒に練習して、当日参加した人がソロを取るなど、この日だけの自由なセッションが行われていた。何段階か違ったテンポで演奏して、拍手の数で最終的なテンポを決めるなど、自由度の高い演奏になっていて、観ているこっちまで、参加している気分になれるところが楽しい。演奏する側と鑑賞する側という垣根が低い。ボーダーレスの精神が様々な場所で感じとることができる。

スイングカーニバル (写真提供:日比谷音楽祭)

スイングカーニバル (写真提供:日比谷音楽祭

日比谷ステップ広場に行くと、女性ソロアーティスト、xiangyu(シャンユー)のステージが行われていた。ゴミ捨てをモチーフとした「Go Mistake」、タイトルそのままの「風呂に入らず寝ちまった」など、日常生活のありふれた風景を独特の感性でシャープに切り取った歌が披露されていく。シンプルな言葉でストレートに歌っていて、奥深さは皆無なのだが、シュールでナンセンスなテイストには不思議な中毒性がある。歌とともに彼女自身も、たまたま通りかかった人がつい足を止めて聴き入ってしまうキャッチーさを備えている。「風呂に入らず寝ちまった」ではビニールプールに入りながら歌うパフォーマンスを披露。老若男女が楽しそうにハンドクラップしている光景もボーダーレスな音楽祭にふさわしかった。

xiangyu (写真提供:日比谷音楽祭)

xiangyu (写真提供:日比谷音楽祭

日比谷音楽祭』の最後のステージとなったのはHibiya Dream Session 3。The Music Park Orchestraの演奏をバックに、まずはシンガーソングライター/ギタリスト・Reiの「My Name is Rei」から。ギターをたっぷりフィーチャーしたファンキーなロック・ナンバーで、パワフルな歌とソリッドな演奏を展開していく。さらに9歳の天才少女ドラマー、よよかも加わって、ブルースをもとにしたクリームの名曲「Crossroads」を演奏。「ステージ上、年の差がすごいよね」と亀田。「みんなで一緒に同じ曲をやれるのがすごい」とRei。ドラムソロ、ギターソロなども交えて、全員が白熱の演奏を展開。もちろん音楽には年齢によるボーダーはない。

Rei (写真提供:日比谷音楽祭)

Rei (写真提供:日比谷音楽祭

よよか (写真提供:日比谷音楽祭)

よよか (写真提供:日比谷音楽祭

続いてはラッパー、シンガーソングライターであるSKY-HIのステージ。「Double Down」が始まると、ハンドクラップとシンガロングが起こっていく。「一緒に参加してもらいたんだよ。初めての人も知ってるフリしてついてきてほしいんだよ」とあおって、観客を巻き込んでいく。彼の音楽を知らない層をも置いてきぼりにせず引き付けていく吸引力と統率力はさすがだ。さらにバンドによるCheryl Lynnの「Got To Be Real」の演奏に、フリースタイルのラップを乗せて披露。「こういう現場で歌いたい」「ヒップホップだ、日比谷」といったリアルタイムの思いを表現した言葉を繰り出しながら、どんどんテンポをあげていく。会場内のテンションも上がっていく。即興でありながら即効性のあるラップがダイレクトに伝わってくる。さらに観客のハンドクラップの中で「リインカーネーション」へ。「クラップを、スナップを、スネアを生み出している君たちも出演者と言っていいですか? 仲間だね」という言葉も印象的だった。全員が参加するボーダーレスなステージとなった。

SKY-HI (写真提供:日比谷音楽祭)

SKY-HI (写真提供:日比谷音楽祭

アコーディオニストcobaのステージでもボーダーを軽々と越えていく音楽の圧倒的なパワーを堪能した。まずは「リベルタンゴ」から。この曲、アストル・ピアソラ作曲のタンゴの名曲で、スペイン語のタイトルを直訳すると、“自由なタンゴ”という意味になる。まさに自由な音楽祭にぴったりな曲だ。超絶テクニックでの自在な演奏が観客を魅了していく。アコーディオンがcobaの肉体の一部のように歌い、叫び、鳴り響く。ジャンルなど関係なく、すごいものはすごい。観客から感嘆の声と拍手の嵐。さらにヴァイオリン奏者の金子飛鳥が加わって、cobaのオリジナルの名曲「泣カナイデ」へ。The Third Herd Orchestraも加わって、人間味あふれる演奏を展開。温かくて、力強くて、明るくて、せつなくて、朗らか。様々な感情が同時多発的にあふれだし、ほとばしっていく。バンドの演奏もエモーショナルだ。曲の後半はcobaが歌い、「泣カナイデ」というフレーズを連呼。タイトルとは真逆に、多くの人に熱い涙をもたらしていく感動的な演奏となった。

coba (写真提供:日比谷音楽祭)

coba (写真提供:日比谷音楽祭

coba、金子飛鳥がそのままステージに残って、夢のような共演が実現した。石川さゆりが登場して、「津軽海峡・冬景色」を披露したのだ。彼女の歌のパワーはやはりとてつもない。一瞬で日比谷が津軽海峡に、初夏という季節が冬へとワープしていくかのようだった。演奏とアレンジも見事で、間奏ではジャジーなクールなセッションとなり、アコーディオン、バイオリン、ギター、ベース、ドラムなど、それぞれのソロの見せ場もある。歌謡曲、演歌という枠を越えて、海峡もボーダーも越えていく。唯一無二の音楽がそこにあった。
「みんな、みんな、素敵!」と石川さゆり。「みなさんがとても温かく迎えてくれて、ありがとう。亀田さんが夢見て作った音楽祭ってこういうことなんだなって。ジャンルも年齢も関係なく、ボーダーレスに音楽を楽しもうよっていうみんなが集まっていて、素敵だなと思います」との言葉もあった。希望が見えてくるような柔らかな歌声が素晴らしかったのは亀田がプロデュースした「オリーブの島」と「花が咲いている」。未来への光を示すような滋味あふれる歌声に熱烈な拍手が起こった。

ミッキー吉野&タケカワユキヒデ from ゴダイゴ (写真提供:日比谷音楽祭)

ミッキー吉野タケカワユキヒデ from ゴダイゴ (写真提供:日比谷音楽祭

Hibiya Dream Session 3のトリであり、『日比谷音楽祭』のフィナーレを飾ったのはミッキー吉野タケカワユキヒデ from ゴダイゴだった。彼らの音楽には老若男女、すべての人々に届くポップなパワーが備わっている。よよかもドラムで参加して、まずは「Monkey Magic」から。魔法のような、そして夢のような空間が出現。観客も一緒に歌い、ハンドクラップしている。さらに「銀河鉄道999」へ。これはまさに“Dream Session”だ。ハンドクラップがさらに大きくなって、会場内に高揚感が漂っていく。つい夜空を見上げて、銀河鉄道を探したくなった。曲のエンディングではアカペラのコーラス。最後の曲は亀田からのこんなMCがあった。
「次にやる曲は今回、ぜひ僕からやりたいとお願いした曲です。40年前にゴダイゴさんが歌っていたこの曲の素晴らしい思想と思いと音楽性とで育てられてきました。本当に感謝してます」
亀田の言葉に続いてのフェスのラストの曲は「ビューティフル・ネーム」だった。Session 3の参加者も再登場して、全員でのステージ。タケカワがリードして、観客も一緒に歌って、感動のフィナーレとなった。音楽は本来、ボーダーなんかないものだ。音と音が混ざり合っていく。声と声が一体となっていく。そんな音楽の本質、真髄が核になっているのがこの『日比谷音楽祭』ということになるのではないだろうか。

亀田誠治 (写真提供:日比谷音楽祭)

亀田誠治 (写真提供:日比谷音楽祭

「2020年5月30日、31日、『日比谷音楽祭』第2回目、やります。みなさん、また応援して、みんなで観に来てください」との亀田からのお知らせもあった。第1回目の『日比谷音楽祭』、音楽の素晴らしさを満喫した。見事に種はまかれた。この先、続けていって、根付いた時に、このフェスの理念が真に実現されたということになるのだろう。


取材・文=長谷川誠

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