『CHESS THE MUSICAL』世界中で絶賛を浴びる伝説のミュージカルが日本で開幕、圧倒的な歌唱に拍手喝采が止まらない

レポート
舞台
2020.1.27
『CHESS THE MUSICAL』 撮影=岸隆子(Studio Elenish)

『CHESS THE MUSICAL』 撮影=岸隆子(Studio Elenish)

画像を全て表示(7件)

世界中で賞賛されている伝説的なミュージカル『CHESS THE MUSICAL』の日本公演が1月25日(土)、大阪・梅田芸術劇場メインホールで開幕した。

●ロンドン初演版の台本を用いた新たな演出

1984年、初演に先駆けてリリースされたコンセプトアルバムが大ヒットを記録。1986年にイギリス・ロンドンのウエストエンドで初演され、1988年にはブロードウェイでも開幕。以降は世界各国をまわり、日本では2012年、2013年にコンサート版、2015年にはミュージカル版が上演された。今作は、日英ドリームキャストの共演が実現し、ロンドン初演版の台本を用いながらも新たな演出が施されている。

アナトリー(ラミン・カリムルー)、フローレンス(サマンサ・バークス)撮影:岸隆子(Studio Elenish)

アナトリー(ラミン・カリムルー)、フローレンス(サマンサ・バークス)撮影:岸隆子(Studio Elenish)

物語の背景にあるのは、米ソの冷戦関係。イタリアのメラーノでチェスの世界一を決める選手権が開かれ、ソビエト連邦のアナトリーが、アメリカ合衆国が誇る世界チャンピオン・フレディに挑戦。アナトリーは国家を背負うことへの重圧に苦しみながらもゲームを優位に進行。フレディが精神的に追い詰められて試合を放棄したため、不戦勝で新王者につくことに。

さらにアナトリーは、故郷に妻子がいながら、フレディのセコンド・フローレンスと敵味方の関係を超え、恋に落ちてしまう。フローレンスは、1956年にハンガリー動乱で親を亡くし、孤独な身の上。アナトリーは亡命を決意し、フローレンスと生きることを選択する。

第三次世界大戦の可能性も膨らんだ、当時の米ソの睨み合い。チェスの世界試合も単なる王者決定戦におさまらず、両国の威信をかけたものとなる。その異様な緊迫感に襲われながら闘いに挑むアナトリー、フレディの姿が劇中では巧みに描かれている。また、「国」という大きなテーマをもとに、故郷を捨てて亡命の道を選ぶアナトリー、敗北によりチェス界を去るフレディ、ホームを持たないフローレンスの三者が、個人にとっての居場所を探す物語にもなっている。

●ABBAのベニー・アンダーソン、ビョルン・ウルヴァース作曲のナンバーと出演者の圧倒的な歌

アナトリー(ラミン・カリムルー) 撮影:岸隆子(Studio Elenish)

アナトリー(ラミン・カリムルー) 撮影:岸隆子(Studio Elenish)

アナトリー役には、『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』など多数のミュージカルに出演するラミン・カリムルー。政治の駒として利用されてしまうことや、うまくいかない夫婦関係など、様々な憔悴と葛藤の中で生きる男を演じている。

フローレンス(サマンサ・バークス)撮影:岸隆子(Studio Elenish)

フローレンス(サマンサ・バークス)撮影:岸隆子(Studio Elenish)

フローレンスに扮したのは、映画『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役で印象を残したサマンサ・バークス。幼少期の出来事を乗り越えられない苦しみを、観る者に訴えかけてくる。

フレディ(ルーク・ウォルシュ)撮影:岸隆子(Studio Elenish)

フレディ(ルーク・ウォルシュ)撮影:岸隆子(Studio Elenish)

フレディを演じたのは、『ロック・オブ・エイジズ』UKツアーで主演を務めたルーク・ウォルシュ。カリスマ性があり、自信をみなぎらせながらも、実は愛情に飢えていて弱さを備える複雑な心情を表現している。

アービター(佐藤隆紀)撮影:岸隆子(Studio Elenish)

アービター(佐藤隆紀)撮影:岸隆子(Studio Elenish)

各出演者の芝居はもちろんだが、それぞれの圧倒的な歌唱力もステージに凄みを与えている。ABBAのメンバーでも知られるベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァースが作曲した「Endgame」「Anthem」などのナンバーが次々と披露され、一瞬たりとも目が離せない。ボーカルグループ・LE VELVETSのメンバーで、今作では世界選手権の審判・アービター役でストーリーテラーの役割も担う佐藤隆紀のパワフルな歌声にも心が揺さぶられる。

CHESS THE MUSICAL』は1月28日まで梅田芸術劇場メインホール、2月1日から2月9日まで東京国際フォーラムホールCで開催される。

取材・文=田辺ユウキ 撮影:岸隆子(Studio Elenish)

公演情報

『CHESS THE MUSICAL』
 
作曲:ベニー・アンダーソン/ ビョルン・ウルヴァース
原案・作詞:ティム・ライス
演出・振付:ニック・ウィンストン
出演:
ラミン・カリムルー サマンサ・バークス 
ルーク・ウォルシュ 佐藤隆紀(LE VELVETS)
 
エリアンナ 増原英也
 
飯野めぐみ 伊藤広祥 大塚たかし 岡本華奈 柴原直樹 仙名立宗
染谷洸太 中井智彦 菜々香 二宮愛 則松亜海 原田真絢
武藤寛 森山大輔 綿引さやか 和田清香(五十音順)
※都合によりキャストが変更になる場合があります。
 
日程:発売中
<大阪公演>開催中~28日(火)梅田芸術劇場メインホール
<東京公演>2020年2月1日(土)~ 9日(日)東京国際フォーラムホールC
 
お問合せ:梅田芸術劇場(10:00~18:00)
〔大阪〕06-6377-3800 〔東京〕0570-077-039
 
公式ホームページ:https://www.umegei.com/chessthemusical2020/
公式Twitter:@musical_chess
 
企画・制作・主催:梅田芸術劇場
シェア / 保存先を選択