【10/9追記分更新!】ReoNaがアルバム『unknown』制作で見つめ直した、メメント・モリの先にある「名もなき歌」

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インタビュー
アニメ/ゲーム
2020.10.5
ReoNa 撮影:池上夢貢

ReoNa 撮影:池上夢貢

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※2020.10.09  シークレットトラック「ピルグリム -ReoNa ver.-」についてのインタビューを巻末に追加しました!

「絶望系アニソンシンガー」ReoNaがついに待望の1stアルバム『unknown』をリリースする。「ANIMA」「forget-me-not」などのアニメタイアップ曲から、自分自身をさらけ出した収録曲まで聴き所しかない一枚となっているが、彼女がこのアルバムに込めた思いと、ReoNaがReoNaになれたのは何故か、そして「終わらなかった理由」まで、濃厚に話を聞いた。撮り下ろし写真とともにお送りする。

記事の最後には、直筆サイン色紙が当たるプレゼント情報も掲載。最後までお見逃しなく。


自分自身をさらけ出せないことへの苦しみがある

――いよいよコロナ禍を超えて、1stフルアルバム『unknown』が出ます。全曲聴かせて頂いて、ReoNaさんは凄いポップネスを身に着けたなと思ったんです。でも、今作凄いドロドロしてる部分もあるじゃないですか(笑)。

はい、ドロドロですね(笑)。

――キラキラしているのに中身がドロドロで『ミッドサマー』みたいだなと思ったんです。このアルバムが完成して最初の感想っていかがでしたか?

完成したって痛感したのはマスタリングの現場だったんですけど、クリエイターのハヤシケイさんと毛蟹さんにもお越しいただいて、制作メンバーでそろって聴いたんです。音楽として紡いでいる人間として、またあこがれにたどり着いたというのをすごく感じました。大切な方々と一緒に曲を作れて、本当に大切な1枚ができたなとすごく思います。

――お話を伺うとして、まずは表題曲の「unknown」という曲に関して聞かせてください。MVも拝見しましたが、ずっと顔のアップだけっていうのはかなり意欲的ですよね。

私にとってもチャレンジに近い撮影でした。

――ここまで楽曲を沢山作ってファンの人も増えて、『ソードアート・オンライン』(以下SAO)の主題歌を担当したりしているなかで、今「unknown」と言うのは意図的なものを感じました。なぜ「unknown」“何者でもない”というタイトルをつけたんでしょうか。

最初のアルバムをどうしようかという話し合いの時に、私のほうから「unknownというタイトルはどうですか」と提案させていただいたんです。前に「ReoNa ZERO」っていうプロジェクトがあって、その時自分自身に立ち返って考えたときに、改めて色という切り口で色々と考えてきたことが多かったなと思って。

――昨年行われたツアータイトルも「Colorless」でしたしね。

そうですね、色がない。そしてシングルも「Null」、「何もない」ってつけたり。その先に「まだ知られていない」というような意味の「unknown」という単語が私のなかで生まれてきて、提案をさせていただいたんです。

――なるほど。

「ANIMA」っていう全身全霊でアニメに寄り添った楽曲があって、それをすごくたくさんの人に聴いていただいているなかで、その次に改めて「unknown」で、ReoNaとは? という切り口で私自身を反映したアルバムができたことっていうのは、すごく意味があることというか。

――「unknown」という楽曲自体を聴いて思ったのは、サビの部分で「あなたらしく生きられないとしたら それは優しいあなたのせいじゃない」と語りかけているじゃないですか。最近、コロナ禍でいろんな楽曲だったり人の話を聴いて思うのは、アーティストが語り掛けることって下手すれば鏡映しで「こう言ってほしい」という言葉も内包されているものもあるんじゃないかなという気がすごくしているんです。

はい。

――だから、そうだとしたら「あなたらしく生きられないとしたら~」って、ひょっとしたらReoNaさんが誰かに言われたい言葉なんじゃないかな、と。

まさに本当にそうで……今でもなんですけど、自分自身が抱えていた孤独感とか絶望だったりとかのなかに、自分自身をさらけ出せないことへの苦しみみたいなものがあって。どうしても、相手にとっての自分って何なんだろうとか……どういう自分を求められているんだろうとか、こうあらなければいけないんじゃないか、こういう答えを私はしなければいけないんじゃないかっていうのを考えてしまうことが自分のなかで壁としてあるんです。

――はい。

そこを優しい言葉で寄り添ってくれたというか。MVを撮るときだったり、レコーディングをするときだったりも、この楽曲は過去本当に孤独だった自分自身が聴いたときに、ものすごく救われるって気がしたんです。今そういう傷つきかたをしている人、孤独を抱えている人に、本当に寄り添えたら、届けられたらっていうのは考えました。

――今デビューしてもう3年目で、アルバムを出せるところまで来ましたが、自分のなかで「私、人に合わせてしまっているなぁ」っていうことってあるんですか?そういうのはだいぶ減ってきたんでしょうか。

減ってきたと思います。前は本当にまっすぐな感情表現をまったくできなくて。怒る、悲しむ、喜ぶみたいなものも周りの顔色を窺ってきたんですけど、音楽をやるときはそうじゃないんだよ。思ったままでいいんだよ! と言ってもらえる人たちが周りにできて、初めて思ったままを自分が届けるということを少しづつ続けてきて。まだまだこう……言葉にできない自分自身というのもあるんですけど、そこは少しずつ近づけてきている気がします。

――アルバムを通して聴くと、「forget-me-not」もそうだし「ANIMA」もそうだし「怪物の詩」とかずっと歌われている曲も入ってますが、アルバムの収録曲としては「BIRTHDAY」とか「いかり」「心音」とかも含めて、けっこう重いテーマじゃないですか。

はい。

――今伺ったように、ある程度は環境とか、周りをとりまく人間関係とかも含めて変わってきているなかで、改めてReoNaさんがずっと抱えているプリミティブな感情を噴出させてきたのはなぜなのか? というのは聞きたい部分なんです。

めぐり合わせとかタイミングっていうのは必ずあるなと思っていて。今だからこそ、というのはすごく感じています。今だから吐き出せる傷があって、今じゃないときっと今後吐き出せなくなってしまうんじゃないかなって。

――今だからこそ、と言われれば確かにいい機会だとは思います。

撮影:池上夢貢

撮影:池上夢貢

「痛い」と思ってほしいわけではない

特に「絶望年表」とかは自分の人生のルーツにかなりフォーカスしています。これは今以上過ぎたら違った感情に私自身なってくるだろうし、今だからこそと思うんです。

――まさにその「絶望年表」の話は時間を割かざるをえないと思っています。大前提として聞いておきたいのは、ReoNaさんは「絶望系アニソンシンガー」を標榜していて、自分の経験や感情を楽曲の中にもさらけ出していますが、それのどこまでがノンフィクションで、どこまでが歌としての表現かというのは明言されていないと思うんです。でもこの「絶望年表」はあまりにも生々しいと言うか。

これは私自身の人生をもとにしています。そもそも「絶望年表」っていうタイトルで、メモというか年表みたいなものを書いていたんです。

――なんて重たいものを……(笑)。

自分自身の絶望を羅列するというか、思い出して書いていたらすごく本当に長い分量になっていて。最初は「私は1284gで緊急救命手術で生まれました」っていうところから始まる長い文章なんですけど、その文章をひとつの楽曲にしたいですっていうお話を、作詞・作曲・編曲を担当したハヤシケイさんと毛蟹さんにさせていただいたんです。

――それも“今だからこそ”ですかね。

はい。私自身も、むき出しの私自身をどこまで音楽という形に変換できるんだろうというのは未知数だったんです。でも、ケイさんと毛蟹さんだからこそ信じて預けてみようと思って。文字だけ見るとそうとう重たいものがある年表なんですけど、それが音楽になったときに、すごく優しくしてもらえたなと感じました。

――このアルバムを通しての印象として、「ANIMA」や「forget-me-not」というタイアップを含めたシングル曲っていうのはもちろん華やかだったり激しかったりするんですけど、それだけじゃなくてバラエティに富んでいる一枚だなと。「いかり」なんかはすごくシンプルな曲だし、「BIRTHDAY」はいわゆる堀江晶太くんらしい楽曲になっている。じゃあこの「絶望年表」はどうなんだろうと思ったらまさかのフォークソングで、驚きました。 

この曲のサウンド面の会議は自粛期間ということもあってリモートで行われたんですけど、まず毛蟹さんから「こんな感じのサウンドでいかがでしょう?」とふたつ作っていただいたんです。その片方を。カントリーっぽいフォークっぽい感じで、でもブルースも感じるサウンドにしてもらえませんかってお願いしてできた音なんです。

――結構しっかりと注文されてますね。

やっぱり私自身の物語の曲だし、私自身のルーツになる音にしてもらいたいっていうところから、カントリーやフォークソングを感じるできあがりになりました。

――日本では70年代のフォークソングのブームがあったんですけど、その中で「四畳半フォーク」と呼ばれるような、自分の身の回りにある日常をちゃんと描いて、そのなかのささやかな幸せや悲しみを描くっていうのがあったじゃないですか。

そうですね。

――あれは60年代安保闘争から70年代の高度成長期の若者の気持ちを代弁するみたいなところがあったと思うんですけど、自分のことを徹底的にさらけ出す曲を作るときに“そういうジャンル”をチョイスするというのは、日本の音楽ルーツをReoNaさんの形でなぞっている感じがしたんです。「Till the End」みたいな壮大な曲にはならないよなぁ、と(笑)。

ならないと思います。いちばん伝わるし、でも伝わりすぎないというか。痛くなりすぎてもそれって、なんか、違うなと思うんです。もちろん自分自身の人生なのでこれは大切な1曲ですし、しっかり受け止めてもらいたいという思いはあるんですけど、曲そのものが「私自身」になりすぎて、誰にも寄り添えないものにはなりたくないなと。

――痛みを与えたいわけではない。

そうですね、痛いなと思ってほしいわけではない。そのなかに「わかるな」とか「自分もそうだな」っていうのがほんの少しでもあったら、それでいいと思うから。

撮影:池上夢貢

撮影:池上夢貢

自分が欲しかったものが、無かったので自分で作っている気がする

――その流れでお聞きしますが、今回、どうしても聞きたいと思ったことがあるんです。

はい。

――僕たちは普段生きていて、嫌なことがあっても、違う楽しいことで上書きしたりして、その辛さを忘れたり薄めながら日々を過ごしていると思うんです。でも、ReoNaさんはお歌という形で遠慮なく過去の痛みをさらけ出し続けている。それは、そこでしか満たされないからなのか、わかってもらいたいからなのか。改めて今、このアルバムを聴いて思ったのは、「なぜReoNaさんはそこまで自分を捧げ続けるんだろう?」ってことなんです。

そうですね……これは少し「unknown」にも通じてくるところがあるんですけど、基本的にすごく私、自分がしてほしいことをしてきたなと思っているんです。

――してほしいこと?

私凄くイエスマンだったんです。人前で、ちょっと嫌なことを押し付けられても「うん!いいよいいよ!」って言うし。悲しい話をつらつらと話されても、「そうだよねえ、つらかったよねえ」って。できる限り全部を受け止めて。わりとひどいことをされても怒れなかったし怒らなかったし。今でも怒れないし。

――はい。

でも、それって結局自分が誰かにそうされたかったのかなって思うんです。怒られたくない、ぜんぶ受け入れてほしい。ぜんぶ認めてほしいって。それで、こう……きっと、過去の私が私が歌っている楽曲を受け取ったとしたら……なんだろうな。癒されるというか、寄り添ってくれる楽曲たちだと思うんです。自分自身が求めていた傷に寄り添ってくれる音楽、自分自身がしてほしかったこと……これって、自分自身がしてほしかったことを今しているっていうのは、「自分がやりたいことをやっている」っていうことになるんでしょうか?

――そうですね……「ずっと欲しかったものを、無かったので自分で作った」じゃないですかね。

確かに、そうですね、すごくその言葉な気がします。私は私が欲しかったものが、無かったので自分で作っている、という感じです。

――この「絶望年表」でも、「音楽があった」という言葉が出てきます。「何も救われなくても、ただそこにあった」という歌詞を見て、曲を聴いた時に「ReoNaさんは歌を歌って生きていきたいって言っていたけど、そこに至るまでのルーツのなかで音楽に救われてはいなかったのか」と知って驚いたんです。なので今の質問をさせて頂いたんですが。その話を聞くとなんか納得がいきますね。だから自分で歌うのか、って。

根底というか、自分自身が音楽を誰かに届ける側になった、芯のところかもしれません。このアルバム制作で改めて私自身を見つめなおす事ができたのはあります。

――めちゃくちゃ陳腐な言い方をすれば「セラピー」なのかもしれないですけど、そこだけに収束していないのがこのアルバムの凄さで、アルバム1枚を聴いた感覚としては決してくどくない、むしろ軽快なくらいですよね。

よかったです。歌もやっぱり2年通して変わってきた部分が自分のなかでもあるなと思っていて。スタートが何を歌っても暗くなるというところだったので。

――ははは!

2年前だったらこの「絶望年表」をこんなふうには歌えなかったなとは思いますし。言葉を届けるということにずっと向き合って歌を紡いできて、その果てに軽やかさだったりとか、今までなかったものもきっと少しずつ作れてきたんじゃないかなと。

――今回毛蟹さんやハヤシさんだけじゃなくて、草野華余子さんとか、堀江晶太さん、傘村トータさんなど、ちょっと今までと違うラインで作られた楽曲も増えましたが、それに関してはいかがでしたか?

経験したことがないことがたくさんありました。堀江さんの楽曲に関してはボーカルディレクションを堀江さんにやっていただいたりもしましたし。

――「BIRTHDAY」ですね、聴いた瞬間に堀江晶太だ!って思いました(笑)。

この楽曲も1個テーマを決めていて。去年の終わりにライブでご一緒したときにお話しさせていただいたんですけど、「それでも死ななかった理由って何なの?」っていう話になったんです。それが去年の最後のお仕事だったので。それでも死ななかった理由か……と思いながら奄美大島に帰省して。

――「それでも死ななかった理由」ですか。

夜中、周りもみんな寝ている時、月明りでキラキラしている海が見えて。窓を開けたら星があって。周りも東京と違って月明りと星だけ、波の音だけという状況で。それでも私が死ななかった理由って何なんだろうって考えたんです。

――東京とまた環境が違う中で考えられたんですね。

はい、生きていたくなかった私にとっての、弊害とも言えるものたちを改めて洗い出して、書き出して。それを初めて堀江さんにお見せしたときに、ノイズっていう言葉が出てきたんです。それは死にたい自分にとってのノイズなのか、生きていたい自分にとってのノイズなのか。またそこから考えて書き留めたものをお渡しして、そうしたらまさか堀江さんから来たタイトルが「BIRTHDAY」で。ああ、生まれなおしたかったのかな……って。

撮影:池上夢貢

撮影:池上夢貢

自分が終わった先の世界があるから“飛ばなかった”

――突っ込んだ話なんですけど、「それでも死ななかった理由」ということは、「もう死んでしまおう」と思ったことはあるってことですよね。

あります。ある波のなかですごくブワッとそう思ったタイミングは何度かありました。

――たしかにそう考えると、なんで死ななかったの?とは思ってしまいますね。

生きるって、わりと当たり前みたいなことだと思われていると思うんです。でも、私のなかではその当たり前を続けていくのにも理由が必要で。生きる意味だったりとか、存在している意義だったりとか。そういうことを考えたことは何度もあったんですけど、改めて「じゃあなんで死ななかったの?」って言われると考えさせられました。そういえばなんで死ななかったんだろうなって。

――なんででしょうね。僕らみたいな人間でも、仕事辞めちゃおうかなとかありますし。でもその道をなかなか絶てない理由って、確かにすぐに言葉が浮かばないかもしれません。

それをひたすら見つめ続けて出てきた答えのなかに、明日の予定がまだあったから、猫を拾ったからとかっていうのがあって。自分がいなくなっても自分の存在がそもそもなかったことにはならないっていうのがすごく大きくて。

――ああ、それはわかります、物凄くわかる。

自分のなかでは終われるけど、自分が終わった先の世界が周りの人にはあるじゃないですか。その想像がすごく私にとって、“飛ばなかった”ことに対する壁になってくれました。

――ファンも関係者も、ReoNaさんがもしいなくなっても、その後も世界は続きますからね。

それが私にとっては大きくて。

――表現者になってしまったら、表現者であるがゆえの責任もでますもんね。だとしたら端的に、あんまり死にたいと今は思わない?

思わない……思わない? 思わない……思わない……。

――例えば、ReoNaさん個人が命を絶つということの”死ぬ”ですけど、ReoNaであることをやめるというのも、「ReoNaの死」だとおもうんです。そういう衝動に駆られることは今はない?

ないです。やっぱりもともとの私から逃げた果てにこのローマ字の「ReoNa」があるので。いつか来るんですかね、このReoNaから逃げたくなるときが……。でも今はそうは思わないです。

――ここにいたいと思える場所ができたことは、とても素敵なことだと思います。それがない人もたくさんいますし。

そうですね、なかった自分を知っているので。

撮影:池上夢貢

撮影:池上夢貢

最後までちゃんと聴ききって「-plus unknown-」を感じ取ってもらいたい

――アルバムの話に戻りますね。今作は一曲目から全部通して聴くと、今まで聴いていた「怪物の詩」とか「Let it Die」の印象が変わるのも面白かったです。

それは凄く考えました。曲順や言葉のつながりはかなり意識して作ったので。

――「絶望年表」のあとに「ANIMA」が来るのが絶妙だなと思っていて。

曲順を並べたときに、私は最初もっと重たい並びを考えていて、「ANIMA」は「forget-me-not」の並びとかのところに持っていこうと思っていたんですけど。そうすると全体がどうにも重すぎちゃって。

――確かにバランス的にはそうかも知れないですね。

「絶望年表」は曲が長いんですけど、最初私はその後に「Till the End」を並べていたんです。でも「Till the End」も6分あるし。 ここに「ANIMA」をはめ込んだときに、これだ!って。ひとつの世界が変わるというか、戻るというか。

――1曲目の「unknown」で「私は何者でもない。何者でもなくありたい」という言葉から始まって、「forget-me-not」「Untitled world」というタイアップで、「ReoNaはこんな感じです」を伝えた後に、「実はこういう人なんですよ」という曲が続くじゃないですか。

そうですね。

――全部自分をさらけ出して、そして「Till the End」という楽曲で「成功はなくても、正解じゃなくても、きっと命は続いていく」って言うのは、デビューからお歌を歌い続けてきた“今のReoNa”だなって思ったんです。

「Till the End」~終わりまで~タイトルそのままの思いです。

――そして最後に「SWEET HURT -plus unknown-」が入ってくる。ずっと歌っているこのデビュー曲をちゃんと1stアルバムの最後に入れるっていうのが、チームのReoNaさんに対する愛だなって僕は感じました。

絶望系アニソンシンガーを始めさせてくれた1曲なので、やっぱり大切ですし。今回、アルバムになって改めて「forget-me-not」だったり「SWEET HURT -plus unknown-」は少しだけ音が変わっているんです。過去の楽曲もアナログを通した音になっているので、音がすごく温かいんですよ。

――いい意味でざらつきもありましたね。

その音に乗って、「SWEET HURT」を最後に改めてこう。聴いてほしいですね。最後までちゃんと聴ききってほしい。

――そうですね、最後まで聴いてもらいたいですねこれは。

今は本当に便利な時代なので、聴いたことある曲は飛ばしたりすると思うんです。でも、一度でいいので、頭から最後まで本当に作ったとおりの形に聴いてもらえたらいいなと思います。

――今はサブスクもありますし、買うとしてもデジタルで単曲を買うことも多いと思うんです。そのなかで今回のアルバムは流れに意識とこだわりを持たれたんですか?

こだわりはあります。曲の終わりから次の曲の始まりの音とか聴いて「違う」とか「意外とこれが合うかも」って思いながら色々と。「怪物の詩」と「Let it Die」は近くに置きたいとか、チームの共通の認識もあったりとかして。どうやったら言葉が届くだろう、どうしたらイントロが始まった瞬間にハッとなるだろうとか……プレイヤーにディスクを入れる姿を想像して考えました。でも私も、気に入った曲を1曲リピートとかはしたりするので。それはいいと思うんですけど、でもその前に1回、是非この順番で最後まで。なぜ「-plus unknown-」とついているかっていう所まで聴いてほしいです。

撮影:池上夢貢

撮影:池上夢貢

自分自身と向き合うことには終わりはない

――今回アルバムの話に加えて、凄くReoNaさん個人のお話を聞かせていただいてますが、その流れで一つまた質問したいんです。

どうぞ。

――改めて、ご自分の声は好きですか?

それは難しいですね。自分の声……。月並みな答えになっちゃうんですけど、好きなときと嫌いなときがあって。自分の声を聴くのはすごく緊張するんです。でも感情を乗せられたときとか、自分のなかの正解に近い歌を歌えたときの自分の声は、すごく「これだ!」「いいな」って思います。

――なんでこの質問をしたかっていうと、僕は初めてReoNaさんのお歌を聴いたときから、いい声だと思っていたんです。でも、賛否両論は絶対にあるんじゃないかなとも思ったんです。

はい、それは絶対にあると思います。

――ReoNaさんが成長されたなと思うのは、その賛否両論が出てきたことだと思うんです。すごくいいという意見と、あれはどうなの?という意見が沢山出てきたことが、アーティストとしての成長なんじゃないかなと。

そうですね、そうかもしれない。

――このアルバムって、アーティストとしてのエゴイズムが詰まっている1枚なのに、それをReoNaさんの声の魅力と楽曲のポップネスできれいにまとめているなかなか稀有な1枚だと思うんです。楽曲の良さはもちろんですけど、全体のボディになっているのはReoNaさんの声。それに対して自分の印象をどう持っているのかは聞いてみたかったんです。

いわゆる”ReoNaの声”っていうのはデビュー前からすごく大事にしていて。正直ぜんぜん違う歌い方をしていた時期もあったんです。もっと芯があるというか、つんざくような声を目指していた時期もありましたし。

――試行錯誤があった。

はい、でもそうじゃない今にたどり着いて、この声だから乗せられる思いがあって、この声だから届くものがあって。例えばアッパーな楽曲を歌った時に賛否両論があったとしても、この声を守っていきたいものになったなと思います。

――そう思えることは素敵なことだと思います。アルバムを出して3年目になって、12月には配信ライブも控えている。コロナ禍でもどんどん活動を増やしていらっしゃいます。いつか終わりが来るとしても、今後どうしていきたいか、今見えている未来の理想図みたいなものを教えてもらえたら。

未来の理想……。

――前は何かそこまで先の話を聞きづらかったというのはあるんです。いついなくなってしまうかわからないというか。

そんな危うげでした?(笑)

――正直そういう印象は(笑)。

危うげでしたか(笑)。そうですね……どうなっていきたいんだろうな……。絶望系アニソンシンガーでありたいという思いはきっとまだしばらく私の大きな芯のひとつとしてあるんですけど。それがもし叶ったと思えた時、私は次、何を目指すんでしょうね。

――逆に言うと、どこのタイミングで「絶望系アニソンシンガーをやりきった」と思うのかっていうのはありますよね。

そうですね。一生かかってそこにたどり着けるのかどうかもまだわからないですけど。まだ吐露しきれていない自分自身もありますし。

――「絶望年表」を超えてもまだありますか。

まだあると思っています。私の知らない私もきっといるし。とくに今回の「unknown」では、私の見て見ぬふりをしてきた私自身に目を向けられたんです。きっと音楽を続けることって、自分自身と向き合い続けることなんじゃないですかね。あくまで私は自分自身を乗せ続けていくので、自分自身と向き合うことには終わりはないです。

――逆に「あのときはそう言いましたけど、ちょっと考え方が変わったので話を聞いてもらいたいんです」って言われたいとも思ってしまいました。

もしかしたら、いつかそんな日もあるかもしれないですね。生きていたら絶対はないと思うので。

――だからこそ、まずは「何者でもない」ReoNaを味わってもらいたいです。

はい、「名もなき歌で、名もなき絶望に」というキーワードを自分のなかで持って作ったアルバムなので。最初から最後まで聴いてほしいです。


【インタビュー追記 シークレットトラック「ピルグリム -ReoNa ver.-」について】

――ここからは発売日以降に追記される追加分のインタビューになります。

はい、凄い仕組みのインタビューになりましたね(笑)。

――「SWEET HURT -plus unknown-」の後に、シークレットトラックとして「ピルグリム -ReoNa ver.-」が入っているんですが、なぜこういう形に?

制作の時に隠しボーナストラックみたいなものを作ろうという話になって、最初の想像としては、もうちょっとネイキッドな感じというか、弾き語りとか、私がそれとなく部屋で歌っているようなものにしようと思っていたんです。でも、やっぱり「ピルグリム」は大切な始まりの楽曲で、私自身が本当に人生で初めてアニメに携わった楽曲。人生で初めてCDになったお歌なんです。

――そうですね。

ライブでも長く一緒に歌ってきて、今歌う「ピルグリム」って、きっとあのときの「ピルグリム」とは違っているんだろうなという感覚が自分のなかでもあったんですけど、今回のレコーディングは今まででいちばん雑念を捨てて取り組めたというか。

――無心で歌えた?

そうですね、普段はここをもうちょっとこうしたら……とかディレクションがあったりするんですけど。今回の「ピルグリム」に関しては、本当に私が好きに歌えたんです。私自身の今まで一緒に歩んできたステージや時間を思って歌ったものになりました。

――神崎エルザの「ピルグリム」ではなくて、ReoNaの「ピルグリム」になっていたのが良かったなと、なんか温かかったんです。神崎エルザの「ピルグリム」は、終わりのない部分にエスケープしていく決意の歌ですけど。この「ピルグリム」はけっこういろんなものを抱えているというか。

はい、神崎エルザというキャラクターは、ものすごく死への渇望というか、エスケープしたいと思っている存在だと思うので。でも今回は私自身の2年の足跡があったからこその音の温かみというか。アレンジをずっとライブで演奏してくださった荒幡亮平さんにお願いしてるんですけど、すごくストリングスが効いているなと思ってるんです。

――そうですね。

そこの音の柔らかさと温かさだったりにすごく寄り添ってもらっているなと思いますし。「SWEET HURT -plus unknown-」が終わってから、あのピアノの音で、グッバイと始まりと言う部分でハッとしてほしいです。

――最初はおかしいなと思ったんです。「長いな、こんなに長い楽曲だったっけ?」って(笑)。でもこれが最後にあることにすごく意味がありますよね。

最後の曲にというのはなんとなく共通認識としてあって。終わったかなと思いきや、アナログのサーっという音が鳴っていて、そこからまたこう進んでいく。

――はい。

私の一番unknownな頃の楽曲というか、本当に何もなかった頃の楽曲のひとつなので。あと、「SWEET HURT -plus unknown-」とつながっていることで、「ピルグリム」を聴きなおしたいという人がもう一回「SWEET HURT」も聴いてくれるだろうなっていう気持ちもありますね。

私自身の絶望も含めて愛してくれる人がいる

――最後に「ピルグリム」をこういう形で入れているのを見て、改めて本当に今、ReoNaさんは愛されているなと感じました。そんな人が「絶望系です」「こんなに悲しかったことがあるんです」って言うと、普通はイヤミになると思うんですよね。でも、そう思わず観れるのは、本当にギリギリのバランスの天秤の上にいるんだなって。

私自身の絶望も含めて愛してくださっているというか。絶望があるからこそ私自身だというのを、一緒に大切にしてくれている人が周りにいてくれているので。

――ReoNaさんのお歌を聴いていると、改めて絶望と希望は表裏一体なんだなと感じます。

本当にそうだと思います。光あるところに影があるように、私の絶望は切って捨てられるものじゃないので。楽しい経験をしたことがある人には必ず悲しい経験もある。心ってそういうものじゃないですか。プラスがあったらマイナスが必ずあって。

――それが生きるっていうことなのかもしれませんね。それをわかってしまったら、「死」という選択肢はもう選びづらいですね。

そうですね……。

――死んだら歌えなくなりますし。

本当に、死んだら歌えなくなっちゃう。うん……改めて「死にたい」って思うことは今、本当にないんだと思います。死にたかったなあ、とか、死にたい気持ちへの理解だったり共感だったりは深く残っているんですけど、でも自分自身はいま、そこにはいない気がします。

――端的に、ほっとしますね(笑)。 まだ歌ってくれるということじゃないですか。

まだ歌いたいです。楽曲たちもまだ皆さんにお届けもできていないものがあるので。実は「ANIMA」もまだ皆さんの前でリアルに歌っていないので。

――そうか。配信やカメラの前ではあるけど。ライブでは未公開なんですよね。ぜんぜんそんな印象がなかった。

配信だったりテレビだったりとかで、いろんな人にお届けしているんですけど。

――じゃあ、未来の理想の話はしましたが、当面の目標としては、ライブの開催ということですね。

はい、生きるために、お歌を届けるために。

撮影:池上夢貢

撮影:池上夢貢

インタビュー・文:加東岳史 撮影:池上夢貢

プレゼント情報

ReoNaさん 直筆サイン色紙プレゼント

<抽選で1名様>に、ReoNaさん​の直筆サイン色紙をプレゼントいたします。応募方法と注意事項を必ず読んで、ご応募ください。

【応募方法】
※Twitterでご応募ください。
STEP1:お持ちのTwitterアカウントにログイン
STEP2:SPICEアカウント<@spice_anige>をフォロー(当選案内DM用に必要です)
STEP3:あとは該当ツイートをリツイート(RT)するだけ!
応募用ツイートは【コチラ

【応募期間】
2020年10月15日(木)23:59まで
※当選者には、ツイッターのDM(ダイレクトメッセージ)でご連絡いたします。

【応募条件】
・日本に居住されている方(賞品配送先が日本国内の方)。
・応募に関する注意事項に同意いただける方。
 
【注意事項】
※本キャンペーンに関して、弊社が不適切な行為がされていると判断いたしましたアカウントは、キャンペーン対象外とさせていただきます。
※弊社は、応募いただいた方のツイート内容には一切の責任を負いません。
※当選発表は、当選者様への当選のご連絡をもってかえさせていただきますので、ご了承ください。
※当選通知後、2日間ご連絡がない場合は、当選を無効とさせていただきます。
※当選結果に関するお問い合せは受け付けておりませんので、ご了承ください。
※当キャンペーンの掲載内容や条件は、予告なく変更する場合がございます。あらかじめご了承ください。
※当選の権利の譲渡はできません。
※譲渡・転売・オークション転売防止の為、色紙の裏面に当選者様のお名前とご住所を記載させていただきますので予めご了承ください。
※キャンペーン参加にあたっては、必ず弊社個人情報保護方針「プライバシーポリシー」をお読みください。
※当選時にご連絡いただく住所、氏名、電話番号は、その確認などの関連情報のご案内のみに使用し、キャンペーン終了後は弊社の定める方法に基づき消去いたします。
※インターネット通信料・接続料およびツイートに関しての全ての費用はお客様のご負担になります。
※次の場合はいずれのご応募も無効となりますのでご注意ください。
・応募時の内容に記載不備がある場合。
・お客さまのご住所が不明、または連絡不能などの場合。

リリース情報

ReoNa1st フルアルバム『unknown』

■発売日:2020 年 10 月 7 日(水) レーベル:SACRA MUSIC
■商品仕様:
【完全数量生産限定盤(CD+Blu-ray+フォトブックレット付豪華仕様)】VVCL1744-46 / \5,500+税
【初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】VVCL1747-48 / \4,000+税
【通常盤(CD)】VVCL1749 / \3,000+税
■CD 収録楽曲
01.unknown
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:傘村トータ(LIVE LAB.) 編曲:PRIMAGIC
02.forget-me-not TV アニメ「ソードアート・オンライン アリシゼーション」2nd クール ED テーマ
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:rui(fade) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
03.Untitled world スマホ RPG「明日方舟(アークナイツ)」中国版 1st アニバーサリー主題歌
作詞:草野華余子 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:堀江晶太
04.怪物の詩
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
05.Let it Die
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
06.BIRTHDAY
作詞:堀江晶太 作曲:堀江晶太 編曲:堀江晶太
07.いかり
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
08.心音
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:rui(fade) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
09.絶望年表
作詞:毛蟹(LIVE LAB.)・ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.)・ハヤシケイ(LIVE LAB.)
編曲:毛蟹(LIVE LAB.)・ハヤシケイ(LIVE LAB.)
10.ANIMA TV アニメ「ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld」2nd クール OP テーマ
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
11.Till the End 「ソードアート・オンライン」原作小説刊行 10 周年テーマソング
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
12. SWEET HURT -plus unknown- TV アニメ「ハッピーシュガーライフ」ED テーマ
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 編曲:PRIMAGIC
 
■Blu-ray 収録映像内容
・Music Video(完全数量生産限定盤・初回生産限定盤に収録)
01.unknown -Music Video- / 02.SWEET HURT -Music Video- / 03.forget-me-not -Music Video- /
04.怪物の詩 -Music Video- / 05.トウシンダイ -Music VIdeo- / 06.ANIMA - Music VIdeo-
・「ReoNa ONE-MAN Live “Birth 2019”」ライブ映像(完全数量生産限定盤のみ 収録・ライブより 8 曲セレクト)
01.怪物の詩 / 02.forget-me-not / 03.カナリア / 04.ピルグリム / 05.虹の彼方に / 06.トウシンダイ /
07.ALONE / 08.Till the End ※2019.10.20 Zepp Tokyo のライブ映像となります。

ライブ情報

ReoNa Online Live "UNDER-WORLD"

・日程:12/8(火)
・開場/開演:18:00/19:00
・会場:LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
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