出演声優の視点から語られる数々の制作秘話!機動警察パトレイバー トークイベント「遊馬と大田のナイショ話」レポート到着

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2020.11.9
古川登志夫 喜屋武ちあき 池水通洋

古川登志夫 喜屋武ちあき 池水通洋

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1988年からアニメ、マンガ、小説など様々な分野で展開されているメディアミックス作品『機動警察パトレイバー』。そのアニメシリーズの30周年突破を記念して開催され、アニメシリーズの30周年突破を記念して全国を巡回してきた『機動警察パトレイバー』30周年記念展。OVA~劇場版一作目をフィーチャーし、現在開催中の新潟会場で終了するが、改めて『パトレイバー』誕生の頃の様子を炙り出すトークイベントがキャスト篇・スタッフ篇の2回に分けて開催された。

今回、11月3日(火/祝)渋谷・Living Room Cafeにて開催された、機動警察パトレイバー トークイベント『遊馬と大田のナイショ話』と題されたキャスト篇では、パトレイバー広報室担当のタレント喜屋武ちあきのMCのもと、篠原遊馬役の古川登志夫・太田功役の池水通洋がゲストとして登壇し、出演者の視点からの『機動警察パトレイバー』誕生にまつわる内容が語られた。遊馬と太田が揃う、大変貴重な機会となる今回のトークイベントをリアル会場からレポートする。


OVA~劇場版一作目『機動警察パトレイバー the Movie 』さながら、はじまりのナレーションを読み上げる池水、客席の奥から縫うように登場した篠原遊馬役の古川登志夫・太田功役の池水通洋。二人のゲストに対し、会場のボルテージが一気に上がり、大きな拍手で幕を開けたイベント。

今年夏に4DXで公開されたOVA~劇場版一作目『機動警察パトレイバー the Movie 』の感想からスタート、会期わずかとなる新潟会場の展示に触れ、池水は「こんなに愛される作品になるとは驚いた!」と当時を振り返りながら話す。

第一部:キャラクターとの出会いと、長いシリーズを演じるなかでの変化

今尚根強いファンを持っている『機動警察パトレイバー』。

パトレイバー広報室担当のタレント喜屋武ちあきが、ゲスト二人に作品のキャスティングについて伺うと、「『うる星やつら』の録音監督をしていた斯波さん(斯波重治氏)の繋がりなので、オーディションがなく、そのまま起用されたんだ」と語られた。音響監督やキャストが被る作品『うる星やつら』では、古川は主人公・諸星あたるを、池水は温泉マークを演じている。

「録音監督の斯波重治さんとはどんな人物だったのかという質問には、古川は「斯波さんは、新たな課題を課すような人で、厳しくもあるけれど愛のある人。台詞の一言でもあっても、じっくり膝詰めで演出指導し、何回も録り直しさせられた」と。そして、池水は「演劇・舞台が好きでよく見に行っていた。斯波さんの目に止まった舞台役者さんは、アニメ作品に起用されたエピソードあったね」と教えてくれた。

斯波氏のキャスティングによって選ばれたふたりに、担当キャラクターを演じていて難しかったことについて聞かれると、篠原遊馬役の古川からは「監督の押井さん(押井守)やプロデューサーから、「自分のまま、ナチュラルに」と言われて、本当に困ったな…当時の一般的なアニメ作品では、テンションを乗せたり、演じることが普通だったからこそ、その逆をすることが難しかった」と振り返る。

アフレコ現場では“自然な演技”という言葉がキーワードであり、当時アニメーションとして珍しい演出方法だったという。その声優たちの“自然の演技”があったからこそ、作品にリアリティが生まれ、30年経過しても愛されている所以なのかもしれない。古川も「あの作品(機動警察パトレイバー)から“自然な演技”を用いるアニメ作品が増えてきた。当時を振り返っても斬新な演出だった」と語っている。

続く、太田功役の池水からは「古川ちゃんに対して…僕なんかはコメディリリーフだから、テンションを求められていた。」と話す。そんな怒鳴ることがデフォルトである太田の声については「1970年に、演じていた仮面ライダーの怪獣の声で鍛えられた。当時は怪獣の声を演じる人は少なく、僕と飯塚昭三さんしかいなかったから…すぐ自分のターンがきちゃうんだよね。怪獣の声を作るんだけど…主役の人が何度でもとちっちゃうから、大変。そのうち変身後の主人公の声は僕がやることになったんだ」という知られざるエピソードが飛び出した。

現在ではテストと本番を入れて3回ぐらいで録音できるが、当時は30秒ほどのロールを10回以上かけて録音し、その声を発するタイミングに合わせて、エフェクトなどもかけていたという。怪獣の声によって鍛えたれた技術が太田の怒鳴り声の源だと思うと、双方の画が浮かんでにやりと感慨深い。

初期OVA版、劇場版、テレビアニメ、、、劇場版とシリーズがつづく本作品。長く演じるなかで変化していった気持ちについてを伺うと、古川は「前回よりもよくしよう。という意気込みと、一貫してある“ナチュラルな喋り”というものですね。スタジオには演技巧者という方々が多く、毎回何かやり残したことがあるように感じ、落ち込んでしまうことが多かった。だけど、その経験のおかげで随分と鍛えられた」という、仕事に対してとても誠実な姿勢が感じられた。

池水からは「太田は怒鳴り声が多いからこそ、作中で浮かないように意識していた。作り物のフェイクにならない、リアリティを持って怒鳴ること」と言う。太田なりの感情を持って怒鳴り声に持っていく、その難しさに対して何か参考にされたものがあるのかを聞かれると、「太田みたいなキャタクターは自分の身の回りにはいないですね…あんな終始、大声で怒鳴るような人、嫌じゃないですか(笑)」と会場の笑いを誘った。太田のキャラクターは台本を書いてもらい演じているのだったそう。

第一部の締め括りは、ストリーミング配信視聴者からの質問に答えて幕を閉じた。

第二部:『機動警察パトレイバー』アフレコ現場の様子とエピソード

休憩後、パトレイバーの性能を読み上げるテレビのオープニングナレーションを、篠原遊馬役の古川登志夫がすらすらと読み上げてスタートを切った第二部。台詞を読み上げて、ステージに上がると、「今日一番緊張しました」と安堵の表情を見せる。

そんな古川は、MC喜屋武ちあきから「アフレコの時に緊張しますか?」と質問を投げかけられ「緊張します!」と即答。池水は逆に「生放送やってたから…緊張なんかしてられない。目の前のやることに集中しないと、とちっちゃう。緊張を忘れちゃう。」と余裕。

イベントとアフレコどっちが好きかには、古川は「読み違えるのが怖いからアフレコです。過去のイベントで選挙者の氏名を間違えて読んでしまったことがあり、テレビ局に苦情の電話が殺到して始末書を書いたエピソードが飛び出した。その一方で、池水は「ハプニングも含めて生が好きだ」と、両者とも生放送の番組でのナレーションを経験しているだけに、それ以外にもさまざま面白エピソードが飛び交った。

そして、録音現場の出来事の様子に質問が差し掛かると、新潟展だけで特別に聞ける泉野明役の冨永みーなと南雲しのぶ役の榊原良子からコメントから、会場限定でゲストについて語る榊原のコメントの一部がOA。

「古川さんは、OVA~劇場版一作目『機動警察パトレイバー the Movie 』の宣伝で一緒になった際に、「普段話すような演技になるといいんですけど…」という思いの丈をぶつけると、同じ想いを抱えてくれていたことや、演技について研究している古川さんの存在に勇気づけられた」と語る榊原。

「池水さんについては自身は知的でしゃきっとなさっている方なのに、太田という生き方が不器用なキャラクターとのギャップを感じて面白かった」と教えてくれた。

そんなふたりに対してのコメントから榊原自身のアフレコについて話が及ぶと、「榊原さんは胸式呼吸を多用させて、溜息を含んだ台詞の言い方が、とても色っぽくて素敵だ」というテクニックの話に夢中。

話は、両者にお互いの印象や役者についての質問に古川は「僕には全くない演技論が凄いですね。例えば、太田の豪快な笑いである『ガハハ』は、台詞に起こしてしまと簡単ですが、台詞を発しながら混ぜることや、しかもそれが違和感がないという技術はすごいですよね。笑いながら喋る、起こりながら喋る、それを多用されいて上手だなと思ってしまうんです。僕なんかがやると肺活量が保たないんですよ。」という言葉に対して、池水が「古川ちゃんの軽くて、シャープで、若々しい。そんな真似はできないよ!」と照れながら答えてのが印象的だ。

そんな照れていた池水からの「古川ちゃんを深く知る前は、『うる星やつら』の主人公・諸星あたるような存在だと思っていた。じゃないと、あんな軽さ…軽薄な表現はできないと思っていた。」という話に会場がドット沸いた。

古川を深く知るきっかけとなった出来事について聞かれた池水は、「古川ちゃんが書いた芝居に出たことがあるんだ!脚本がかけるってすごいよね!」という話から、古川の知られざるエピソードが飛び出した。ふたりの、本作品の遊馬役・太田役という間柄だけでなく、芝居でもつながっていると言う関係の深さに会場の観客も驚いていた。

その後は、当時のアフレコ現場、レギュラーキャストのなかで「演技馬鹿だなと思った役者さんは?」との質問が。古川からは「ご飯を食べに行かないほど、一言の台詞でも練習続けている…千葉繁ですね。彼は、不思議なオーラを身に纏っていて、最初は脇役を演じてたんですけど、主人公をやらせたくなる不思議さがありますね。しかも、台本に対する姿勢というか、食いつきかたが半端ないので、一緒のシーンになるのが嫌ですね」と称えつつも、負けず嫌いな姿勢が伺える!

対して池水からは「山崎ひろみ役の郷里大輔ですね。優しいキャラクターを演じているけれど、しっかりした声を持っている郷里ちゃん。あいつの優しさがひろみ役に滲み出てくるんだよね、他者の痛みが自分の痛みとして感じられる人だよ」と、共演していた生放送番組や被災地支援のエピソードが語られた。

その他、進士幹泰役の二又一成にはじまり、香貫花・クランシー役の井上瑤、後藤喜一役の大林隆介、泉野明役の冨永みーな、本作品を作り上げた各キャストに触れた話題が飛び交い、第二部の締め括りは会場の参加者からの質問に答えて幕を閉じた。

最後に…

本イベントに参加した池水からは「歳を取ったけど…新しいドラマを作って、OBとして登場したい!」という願望と、古川からは「この名作のファンはマニアックな方が多いので、またいろんなかたちでこういうイベントを企画して欲しいし、自分もどんどんアイディアを出したいと思います」という意気込みが伺えるメッセージでしめられた。

会場では、新型コロナウイルス感染症対策に配慮し、ソーシャルディスタンスが守られた限定62席で行われ、ファンたちはゆったりとした空間で飲み物片手にリラックスしながら、古川と池水の繰り広げられるトークを堪能していた。

また、会場物販コーナーでは通信販売は行っていない新潟会場で販売されたグッズが並び、会場を訪れたファンたちが各々手を取っては購入し、それぞれ嬉しそうな表情を浮かべていた。このイベントは、11月10日(火)23:59までアーカイブ配信で楽しめるので、気になる方はそちらもチェックしてみてほしい。

次回11月13日(金)は、機動警察パトレイバー トークイベント  言いたいことが山ほどある!「暴走トークショー」スタッフ篇と題して開催。本作品の誕生秘話や現場の裏話など、さまざまなエピソードが飛び出すことだろう。ぜひスタッフ篇のトークイベントにも参加することで、『機動警察パトレイバー』の世界を多角的に味わってみてはいかがだろうか。

取材・文:新 麻記子 
アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるパラレルワーカー。
日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に…#日本酒がある暮らしをコンセプトにしたメディア&コミュニティ『酒小町』の編集長をつとめるほか、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

写真提供:GENCO

イベント情報

機動警察パトレイバー トークイベント「遊馬と大田のナイショ話」

2020年11月3日(祝)~11月10日(火)
イープラスStreaming+にて配信 
出演 古川登志夫(篠原遊馬役) 池水通洋(大田功役)
MC 喜屋武ちあき(広報課)
 
機動警察パトレイバー トークイベント -スタッフ篇-
 
2020/11/13(金)~2020/11/20(金)
イープラスStreaming+にて配信 
出演 伊藤和典(脚本) 鵜之澤伸(プロデューサー) 真木太郎(プロデューサー)
MC 鈴木咲(広報課)
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