中村蓉がソロダンス公演『ジゼル』を開催、不滅の愛の物語が抱える“生”の向かう先とは

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2021.6.12
中村蓉 撮影:江野耕治

中村蓉 撮影:江野耕治

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中村蓉ソロダンス公演『ジゼル』が2021年6月18日(金)~20日(日)神奈川県立青少年センターHIKARIにて行われる。

中村は2010年より創作を始め、2013年には若手ダンスアーティストの登竜門である横浜ダンスコレクションEX 2013で審査員賞・シビウ国際演劇祭賞をダブル受賞。創作のほか、全国各地でワークショップを行い、「歌謡曲スイッチ」と称する歌謡曲の歌詞に登場する人物になり切って踊るダンスも人気だ。2021年5月には、二期会ニューウェーブ・オペラ劇場『セルセ』の演出・振付を担当し、ヘンデルのバロックオペラとダンスを見事に一体化させ好評を博した。

中村蓉『ジゼル 特別30分版』 (C)bozzo

中村蓉『ジゼル 特別30分版』 (C)bozzo

世代を問わず観る者の心に訴える中村は、コンテンポラリーダンスの若き旗手として広く注目を浴びるが、主催公演でも独創的かつ魅惑的な世界を追求する。2020年4月には、ソロ活動10周年記念ソロダンス公演『ジゼル』予定していた。だが、感染症拡大の影響により中止に。

でも、中村は転んでもただでは起きない。同年4月25日(土)14:00より『ジゼル 特別30分版』を配信したのである。会場は東京都内某所の、取り壊される予定の民家。そこで撮影した“30分ワンカット編集なし”の映像を“ほぼ生配信”したのだ。最初の緊急事態宣言が発令され、舞台公演は軒並み中止となった状況下において、一早く映像での刺激的な取り組みを行ったのである。

【動画アーカイブ】ジゼル 特別30分版


 

題材は名作バレエ『ジゼル』。原作の展開はこうだ。踊ることが好きな村娘ジゼルは貴族の身分を隠していた青年アルブレヒトと愛しあっていた。しかし、アルブレヒトには婚約者がいて、ショックのあまり息絶える。ジゼルの死後、彼女の墓の前にアルブレヒトが現れるが――。

中村蓉『ジゼル 特別30分版』 (C)bozoo

中村蓉『ジゼル 特別30分版』 (C)bozoo

ウィリ(精霊)になったジゼルは、裏切られ死んでもなお恋人を愛する。生と死の間を結ぶ深い愛は何ゆえ生まれるのだろうか。中村は民家の居間や階段、台所を移動しながら、踊り、歌う。ヴァージニア・ウルフの言葉やアデルの歌を印象深く用いる。ジゼルの張り裂けそうな思いは、どこに昇華されるのか――。また、中村は、クラブのママのミル姉にも扮し(バレエ『ジゼル』には、ミルタというウィリたちの女王が登場する)、男に裏切られ身を滅ぼした女の業をユーモアとペーソスをこめて表す。喜怒哀楽がたっぷりと詰まった30分だった。

中村蓉『ジゼル 特別30分版』 (C)bozoo

中村蓉『ジゼル 特別30分版』 (C)bozoo

自粛期間中の土曜日の午後に鮮烈な印象を残した『ジゼル 特別30分版』から1年が過ぎた。今回中村が寄せたコメントによると、昨年の公演を準備していた頃に始まり、配信を経て、彼女の内部で物語の焦点に変化が見られたという。中村が捉える“生”とは何か、そして、何のために踊られるのか。鬼才が2年越しで取り組んできた、愛と生と死の物語の行方をしかと見届けたい。

中村蓉コメント

『ジゼル』を創り始めた2019年当初、ロクでもない男に引っかかってしまったジゼルの自嘲と鬱憤を盛大に描くことを考えていた。それが今日までの時間の中で、物語の焦点が「アルブレヒトの生」に移っていった。ロクでもない、でも心から愛した彼の中に「生」を嗅ぎ取って「私の先を生きて」と願う。
当たり前に在った人・物・事が唐突に姿を消した日々の中で、たくさんのジゼルたちが差し出してくれた存在の延長に「自分の生」があることに、ようやっと私は気付いた。私とあなたの中で、共に生きていくジゼルに向けて踊りたい。

【動画】中村蓉ソロダンス公演『ジゼル』予告編

文=高橋森彦

公演情報

中村蓉ソロダンス公演『ジゼル』


振付・構成・出演:中村蓉

【日時】
2021年6月18日(金)~20日(日)
6月18日(金)19:00開演※
6月19日(土)14:00開演/18:00開演
6月20日(日)14:00開演

受付開始は開演の40分前、開場は開演の20分前
※当初19:30開演を予定しておりましたが、神奈川県のまん延防止等重点措置延長により開演時間を19:00に変更いたしました。

【会場】
神奈川県立青少年センターHIKARI
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ch3/cnt/f602/p7333.html
・JR根岸線「桜木町駅」下車、「北改札」(西口)から徒歩約8分
・横浜市営地下鉄線「桜木町駅」下車、徒歩約10分
・京浜急行線「日ノ出町駅」下車、徒歩約13分
・みなとみらい線「みなとみらい駅」下車徒歩約20分

 
料金】
全席自由席
一般3,000円・学生1,500円・高校生以下1,000円
当日券は各500円増し

【スタッフ】
舞台監督:熊木進
照明:久津美太地
音響:相川貴
映像:中瀬俊介
衣装:田村香織(HAReGI)
美術:板倉勇人 石原朋香
音楽協力:長谷川ミキ
宣伝美術:江野耕治
制作:中川歩美

主催:神奈川県 ヨウ+
 
お問い合わせ:ヨウ+ yoplusnnn@gmail.com
中村蓉ホームページ:https://yo-nnn.wixsite.com/yo-nakamura/
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