ティーファクトリー・川村毅が振付家・中村蓉とのコラボでインド哲学に挑む~新作『不思議の国のマーヤ』
劇作家・川村毅作品のプロデュースカンパニーであるティーファクトリーは、新作『不思議の国のマーヤ』(作・演出:川村毅/振付:中村蓉)を、2025年2月15日(土)~24日(月休)、吉祥寺シアターで上演する。
ティーファクトリーはこれまで、吉祥寺シアターからの要請で、W.シェイクスピアシリーズ『荒野のリア』(2014年初演、2016年再演ツアー)、ヘルマン・ヘッセをテーマとしたイメージの舞台芸術『ヘルマン』(2024年)と、川村自身ではとりあげないであろうテーマを基に舞台を創り上げてきた。そして今回、吉祥寺シアターからティーファクトリー/川村に依頼されたのが、「古代インド哲学」についての考察と、気鋭の振付家「中村蓉」とのコラボレーションだった。
川村と中村は初めて出会い、意気投合。二人ともこれまでインドには特に興味もなく、縁遠かったが、観客と同じ目線で古代インドを探検するなかで、自作に通じるテーマ、現代への問い掛けを見出し、演劇と舞踊の融合した、新たな面白い舞台を創作するに至ったという。
その劇世界とは…… 一人の少女マーヤが迷い込んだ不思議世界の探検から、インド哲学と連動する物語そして現在日本に繋がる世界を描き出す。白ウサギを追って穴に落ちるのがルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」ならば、マーヤは猫を追って何処かへ迷いこむ。なぜ猫なのか。其処は何処なのか。サンスクリット語で「幻影」という意味の名を持つマーヤの旅は一体、何処に向かうのか。多くの謎を観る者に投げかける問題演劇といえる。
振付を担う中村蓉は、豊かなアイディアと優れたバランス感覚により、踊る身体を媒介に、音楽・言葉・物語・小道具・関係性、すべてを総動員してひとつの世界を創り上げる。ルーマニア・シビウ国際演劇祭、イギリス ナショナル・シアター・ウェールズでのレジデンス、ドイツ・マインフランケン劇場製作オペラ振付など国内外で活動している、注目の若手コレオグラファー。2013年に〈ヨウ+〉を旗揚げ。向田邦子やウィリアム・シェイクスピアなどの小説や戯曲を原案にしたダンス作品を多く創作している。
オリジナル音楽を手掛けるのは杉浦英治。SUGIURUMNとして世界にその名を知られるミュージシャン、DJ。近年バンドを再結成し新たな楽曲づくり、アルバム製作にも取り組んでいる。今回はインドの旋律を研究し、どこにもない音楽を創り上げた。
出演者は、演劇と舞踊の境無く身体表現を探求する10-60代の多様なパフォーマーたち18人。今どきの東京の高校生「マーヤ」に、新人 酒井美来。透明な真っ直ぐなきらめきが魅力。マーヤが追いかける「猫」に大駱駝艦舞踏手・鉾久奈緒美。自身の舞踏代表作『阿修羅』に川村毅が感動したことから今回の出演となった。マーヤたちと不思議の国を探検する「男」に 阿岐之将一。川村作品『ノート』『カミの森』と本作すべてに出演している唯一の俳優。影のように寄り添う「ある男」にミステリアスな存在感のある吉原シュート。語り部として彼らを見守る謎の「黒い女」に文学座の三浦純子。そして古代インド・ヴェーダ時代の神々ほかに、ダンサー陣 鈴木彩葉・山崎愛弓・鶴家一仁、俳優陣 小林彩・佐織迅・千田美智子(文学座)・佐々木優樹・星野李奈(アマヤドリ)・阿比留丈智(劇団チャリT企画)・青木素姫・β(WAHAHA本舗)・高木珠里(劇団宝船)・のぐち和美(青蛾館)という個性色鮮やかなパフォーマー陣が揃った。役柄に差違は無く、ダンサー陣も台詞を語り、俳優陣も踊る。殆どがティーファクトリー初参加のメンバー。
あらあらあら、
猫ちゃんを追って穴の中にスッテンコロリン
目の前の世界は
ナンデモアリ!?
マーヤは世の中をクソだと思っている。だからといってなにかをしようとは思わない。なにをするのにもめんどくさい。息をするのもめんどくさいと思いながら、雑居ビルの路地裏に向かう。居心地がいいとわかって、毎日路地裏でゆらゆら立っている。
カメラマンの父は、物心つく前に消えた。インドに魅せられた父。インドに旅立ったまま、行方不明になった。
路地裏で、マーヤは自分に良く似た猫と、自分の名前を呼ぶ男に出会う。逃げ出す猫を追いかけたらぐんぐん暗闇に落ちていった。男も落ちてきた。
マーヤと猫と男。
不思議な出会いが待ち受ける、探検の旅が始まった。
■川村毅(作・演出)コメント
『ノート』(2019年)、『カミの森』(2023年)と、宗教、神について書いてきました。日本人にとって創唱宗教は必要か否か。自然宗教でいることが健全だろうかといったことを考えてきました。今回の舞台は、私にとって新たな視点でこれらのことに取り組んだつもりです。が、みなさん、難しく考える必要はありません。歌あり踊りありの不思議世界を存分に、ご堪能ください!
■栗原一浩(吉祥寺シアター支配人)コメント
川村毅にヘルマン・ヘッセというアウトサイダーとして流浪する巨人の舞台化をお願いした私は、次作としてインドを舞台にしたいと考えた。西洋とも中国とも違う世界。かつてウパニシャット哲学を研究したが、哲学を演劇にするのは難しい。ウパニシャットはヴェーダの最後の部分でもあり、それ以前の神々と人間が自然に共存していたヴェーダを演劇にすることが可能なのではないかと考えるようになる。経典であるがゆえか、演劇になりにくい初期ヴェーダの世界は、宗教に強い関心を示す川村毅にとって、取り組む価値のある素材だと考えた。振付家・中村蓉とのコラボレーションが浮かんだ。彼女は天性のバランス感覚で周囲の世界と調和する。インドをやるなら踊らないとならない。インド舞踊ではなく、ヴェーダを、マハバーラタをラーマーヤナを超えて新しいダンスを創造し、それが川村毅のつくるものと合わさって止揚する。西洋と日本に、インドの原点が加わると何かが生まれるのではないかと願うのだ。
公演情報
『不思議の国のマーヤ』
究極のダイバーシティ
古代インドの神々ワールドは
ナンデモアリのインクルージョン
■振付:中村蓉
■音楽:杉浦英治
阿岐之将一・酒井美来・鉾久奈緒美(大駱駝艦)・吉原シュート
小林彩・佐織迅・千田美智子(文学座)・佐々木優樹・星野李奈(アマヤドリ)
阿比留丈智(劇団チャリT企画)・鈴木彩葉・青木素姫・山崎愛弓・鶴家一仁
β(WAHAHA本舗)・三浦純子(文学座)・高木珠里(劇団宝船)・のぐち和美(青蛾館)
■公演日程:
2025年2月
15日(土)15:00 ※初日特別価格・全席自由3800円
16日(日)13:00/18:00 ★1ポストパフォーマンストーク有 (川村毅・中村蓉)
17日(月)19:00
18日(火)15:00
19日(水)14:00/19:00
20日(木)19:00
21日(金)15:00
22日(土)13:00/18:00 ★2バックステージツアー有
23日(日)13:00/18:00
24日(月祝)15:00
■共催 ヨウ+ 公益財団法人武蔵野文化生涯学習事業団 吉祥寺ダンスLAB. vol.8
■助成 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
■公式サイト:http://www.tfactory.jp/data/maya.shtml