aiko、アンダーグラフ、石崎ひゅーい、JUNNA、高橋優、Chage、秦 基博、wacci豪華ゲストが祝福、『LIVE from“Great Studio”2021~島田昌典 あざみ野サウンドの世界~』レポート
LIVE from“Great Studio”2021~島田昌典 あざみ野サウンドの世界~
LIVE from“Great Studio”2021~島田昌典 あざみ野サウンドの世界~
2021.11.03 ぴあアリーナMM
11月3日、ぴあアリーナMM(神奈川)にて『LIVE from“Great Studio”2021~島田昌典 あざみ野サウンドの世界~』が開催された。30年以上の長いキャリアの中でアレンジャー/プロデューサーとして活躍してきた島田昌典が還暦を迎えた誕生日に、縁ある8組の豪華アーティストが集った大イベント。開演時刻になると、神奈川県あざみ野にある彼のプライベートスタジオ“Great Studio”内の映像が写し出され「ようこそGreat Studioへ!今日はぴあアリーナMMへ出張してお届けしたいと思います!」という挨拶でスタート。ステージにはGreat BandとしてPf:島田昌典/Dr:神谷洵平/Ba:須長和広/Gt:佐々木”コジロー”貴之/Gt:浜口高知/Key:トオミヨウ/Per:朝倉真司/Str:室屋光一郎ストリングス/Sax:庵原良司、Sax:中ヒデヒトがスタンバイ。まずは本日の出演順にwacci、JUNNA、高橋優、Chage、アンダーグラフ、石崎ひゅーい、秦 基博、aikoの名曲たちを3分44秒のインストゥルメンタルにして次々と奏でていく。島田のピアノに重なるストリングスとバンドサウンドの甘美な広がりに、しょっぱなからワクワクさせられる演出だった。
wacci
“みなさん、こんばんワッチ!”という橋口洋平(Vo/Gt)による挨拶から始まったwacciのステージでは「別の人の彼女になったよ」をGreat Bandと共に披露。曲が終わると“もう、このアレンジでレコーディングしたいですね!”と橋口が興奮気味に語り、続く「君なんだよ」ではハッピーでふんわり春風のようなサウンドを会場に満たした。ラストは初めて島田が彼らの曲をアレンジした「結」。柔らかなストリングスとバンドサウンドの中心を大きな歌が射抜く、黄金比とも言うべきアレンジをwacciの5人が噛みしめるように届けてくれた。
wacci/橋口洋平
JUNNA
続くJUNNAは島田と1日違いの誕生日、11月2日に21歳になったばかりの“島田会の末っ子”。長い髪とロングスカートがまるでおとぎ話のプリンセスのようなキュートさだが、1曲目の「はじまりの唄」から落ち着いた輝きのある声で魅了する。2曲目は同じ島田会のアーティストでありJUNNAも“小学生の頃から大好き”だという、いきものがかりのカバーで「キミがいる」。アップテンポでポップなナンバーを彼女なりの感性で真摯に届ける姿が感慨深く、ラストの「いま」では一転してシリアスに。ドラマチックなアレンジと共に歌の物語を表現する姿が見事だった。
JUNNA
高橋優
“こんばんワッチ!”、この日2度目となる挨拶で登場したのは島田もデビュー当時から注目していたという高橋優。そういえばメガネといい髪型といいwacciの橋口と似ていて観客の笑いを誘う。そのエンターテイナーぶりで会場の空気を一気に緩ませながら、島田が感動して泣きながらアレンジしたという「産まれた理由」を歌い上げる。「明日はきっといい日になる」では、お客さんもスタンディング&手拍子で最高の盛り上がりとなった。
高橋優
Chage
Chage
そしてこの日、唯一、島田の先輩アーティストであるChageが登場すると“出会ってから3年足らずですが、島田マジックに惚れ惚れしています!”と賞賛。ジェントルなポップソング「それが愛ならOK」で会場を盛り上げ、ビートルズをリスペクトする二人によるサイケデリックなサウンドが光る「No.3」を披露。先に還暦を迎えた63歳のChageが“(60代になって)人生の着陸態勢に入っていくのかと思ったらとんでもなかった、成層圏を突き抜けてるからね!”と島田にエネルギッシュなメッセージを送ったのも忘れられない。
島田昌典、Chage
島田昌典
休憩と場内換気を挟み、第2部はGreat Bandによる島田会メドレーで始まった。島田を育み、島田サウンドの礎となるような名曲たちを次々とインストで披露していく。サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」、ハービー・ハンコックの「カメレオン」、大瀧詠一の「君は天然色」、レディオヘッドの「Creep」、ジャクソン5の「I Want You Back」、オフコースの「さよなら」、エンニオ・モリコーネの「Love Theme」などなど18曲を4分半で聴かせる、まるで名曲ジェットコースターのような時間。島田もバンドも凄まじい集中力で、しかし楽しそうに演奏してくれた。
アンダーグラフ/真戸原直人
次に登場したアンダーグラフは、島田との2枚のアルバム制作を通して“本物の音楽を教えてもらった”と真戸原直人(Vo/Gt)が語った。かき鳴らされるギターのイントロが印象的なデビュー曲「ツバサ」を披露すると、彼らがこの曲に込めた想いに誠実に寄り添うようなアレンジであることをあらためて感じた。島田の楽曲への深い理解もまた、この曲が大ヒットした要因のひとつだっただろう。「四季」と「ユビサキから世界を」の3曲を披露し、このステージが約2年ぶりのライブだったという彼らは“僕らも音楽を続けて良かったなと思えました!”と晴れやかな表情を見せた。
アンダーグラフ
石崎ひゅーい
お次は、ステージ上のミュージシャンたちを見渡して“豪華客船に乗っている気分です!”と石崎ひゅーいが登場。スタンドマイクで「トラガリ」を披露したら、場内は一気にひゅーいワールドに。今回はテレビでの共演を機に、島田から出演依頼をしたという。Great Bandのトオミヨウはデビューから石崎の作品に多数関わっているだけあって、いつもの彼らしいパフォーマンスを発揮。MCでは島田に“Great Studioに行ったらヴィンテージ楽器をひとつもらえるって聞いたんですけど……?”と人懐っこさも炸裂させながら、続く「さよならエレジー」では石崎ひゅーいのでっかいエネルギーを生かすパワフルなアレンジで、豪華客船は宇宙まで飛んでいく勢いだった。
島田昌典、石崎ひゅーい
秦 基博
秦 基博
イベントも終盤に差し掛かり、“どうもー、【島田会の長男】がやってきました!”と秦 基博がステージへ。島田のリクエストで1曲目は「ひまわりの約束」。爪弾くアコースティックギターのワンフレーズで、歌い出したその一瞬で、オーディエンスが一気に集中力を高めるのがわかる。2曲目の「朝が来る前に」は繊細なピアノと、ヒリヒリするような心情を歌う声を中心にした丁寧なアレンジで、聴き手にひとつのドラマを見せていく。島田マジックと秦の表現力が凄まじい相乗効果を生み出すのを生で体感できた、まさに“バラスーシ!”(島田が生み出した“素晴らしい”を意味する音楽用語)な時間だった。
島田昌典、秦 基博
aiko
島田昌典、aiko
そして最後のゲストは、aiko。島田にとってaikoはインディーズの頃から24年ほどの付き合いで“音楽的には自分自身の半分がビートルズで、半分はaikoちゃん”と語るほどかけがえのない存在。一方、aikoも多数のヒットソングを島田と共に世に送り出してきたことはかけがえのない経験だろう。この日の1曲目は3rdアルバム『夏服』に収録されている「飛行機」だった。真っ直ぐ空に伸びていくようなストリングスのイントロで幕を開けるこの曲は、一聴してaikoと島田のタッグならではの切ない美しさを感じさせ、サビで大きく物語が展開するようなアレンジも特徴的。ステージではピアノを弾く島田の傍らで、重ねてきた歴史を回想するように堂々と歌声を届けていくaiko。華やかで柔らかなサウンドが気持ち良い「くちびる」に続き、今年9月にリリースされた新曲「食べた愛」を披露。この曲はアレンジをトオミヨウが、レコーディングでは島田が鍵盤を担当していたこともあり“トオミさんが島やんと一緒に弾いてるのも感動!”“みんながいるからaiko幸せやねん!”と嬉しそう。そして、時代に残る名曲とも呼べる「カブトムシ」は冒頭から島田のピアノとaikoの歌声だけで届け、この二人で紡いできた音楽の純度の高さを感じさせた後に、バンドサウンドが加わったアレンジの更なる広がりまで、堪能させてもらった。これまで何度もライブで聴いてきた「カブトムシ」だが、島田が鍵盤を弾いていることを含め、もしかしたら最も純度の高い「カブトムシ」を生で聴く体験だったかも。「beat」「キラキラ」と続くと、aikoもバンドもオーディエンスもひとつになる、幸せな時間。そして最後に“みなさんにまた会える日を願って”と「約束」を、島田のピアノと阿吽の呼吸で届けた。歌い終わると“ありがとうございました! イエーイ!”と叫んで島田をハグし、飛び跳ねるようにしてステージを去ったaiko。終始、島田への信頼と感謝が溢れっぱなしのライブだった。
島田昌典、aiko
島田昌典
イベントの最後は島田が“集まってくださった皆さん、ありがとうございました”と感謝を伝え、ビートルズの「Let It Be」を情感たっぷりなピアノで披露した。出演者たちがケーキでお祝いをしたり、aikoが赤いマフラーをプレゼントしたり、記念撮影したりと、最後までアットホームな楽しい時間だった。それはChageが“本当に居心地が良い”と語っていたGreat Studioの雰囲気に近かったのかもしれない。音楽を愛する者たちが集うそのスタジオから“バラスーシ!”な楽曲の数々がこれからも届けられることを期待せずにはいられない、そんな奇跡の一夜だった。
島田昌典
取材・文=上野三樹 撮影=冨田望