舞台『観劇者(再)』キャスト座談会【後編】 長戸勝彦×井上薫×外岡えりか×伊藤あいみ 今、隣に座っている人を身近に思える作品に

インタビュー
舞台
2022.4.27
左から 伊藤あいみ、外岡えりか、井上薫、長戸勝彦

左から 伊藤あいみ、外岡えりか、井上薫、長戸勝彦

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2022年5月4日(水・祝)より、シアターグリーンBIG TREE THEATERにて、舞台『観劇者(再)』が開幕する。昨年6月の上演から約一年ぶりの再演。タイトルにあるように、この物語の主役は観客だ。<客席にこそドラマがある>をテーマに、舞台上に作られた客席で10名の個性豊かな俳優たちが、観劇マナーを守りながらそれぞれの役どころを演じる。

十人十色の事情や思いを胸に、同じ時間に同じ劇場へ立ち会う観劇者たちは果たしてどんなドラマを持っているのか。脚本・演出は、前回に続いて開沼豊が手がける。

稽古を目前に控えるキャスト陣への特別座談会インタビュー後編は、前作に引き続き同役を続投する長戸勝彦外岡えりか、今作で初参加となる井上薫伊藤あいみが登場。それぞれが思う本作の魅力と見どころを聞いた。

――約一年ぶりの再演です。今回は二回目のご出演の方と初参加の方がいらっしゃいますが、それぞれ再演の知らせやご出演の話を聞いた時の心境からお聞かせいただけますか?

長戸:僕は演出の開沼さんと何度かご一緒させていただいているのですが、役者に自由を与えてくださる演出家さんだと感じています。役者が持ち寄ったものの中から表現を深めていってくださるので、初参加組の方も不安にならず、どんどん個性を出して新たな作品を一緒に作っていけるのではないかと思っています。

長戸勝彦

長戸勝彦

井上:初参加組としては、嬉しくありがたい情報です! 今作で私は長戸さん演じるお父さんの妻で、舞台に立つ娘の晴れ姿を観に来る母親の役を演じます。前作の映像を観た時に、お二人をすごくいい夫婦だと感じたんですね。同時に、「前作の夫婦と同じイメージを求められたらどうしよう」という不安も正直あって……。

長戸:そこは全く心配いらないと思います! 役者が能動的に動けるとても素敵な稽古場なので、それぞれの発想でぶつかっていけば答えが返ってくると思っています。井上さん、一緒に新たな夫婦を、家族を築いていきましょう!(笑)。

井上:心強いです! そうですね、イメージに囚われすぎず、前回とはまた違う夫婦を生みだしていけたらと思います。このお父さんだからこそ、このお母さん。そんな風に人間関係をしっかりと感じる瞬間が物語になっている作品なので、長戸さんとともに夫婦を、初共演のみなさんとこの作品を作っていけることが今からとても楽しみです。

井上薫

井上薫

外岡:私も長戸さんと同じく二回目の出演ですが、今回は新たなキャストの方も参加してくださり、伊藤さんが演じる前回はいなかった新たな登場人物も増えているので、すごく楽しみです。座組が変われば、作品も変わる。前作の経験を活かしつつ、そんな変化も楽しんでいけたらと思っています。

伊藤:私は去年にこの作品を客席でまさに観劇者として目撃しているので、そんな体験も活かせたらと思っています。私が演じる新キャラクターは田舎から上京してきて、人生の一つの岐路に立っている女性。私も田舎が九州で上京の経験もあり、今は二十代後半で人生を今一度具体的に考えるタイミングでもあったので、自分と似ているところの多い役ができることはとても嬉しいです。

――そうですよね。『観劇者』はそれぞれの事情や状況を胸に抱えたお客さんたちが主役の物語なので、響くところや共感する登場人物も観る人によって変わる作品だと感じました。

外岡:初演を観てくださった方々の感想の中で印象的だったのが、「自分の観るタイミングや状況によって感情移入する役やシーンが違う」という感想でした。私自身、自分の役以外の登場人物にも共感できる部分がたくさんありました。

伊藤:わかります! 私も台本を読みながら登場人物のいろんな心境に共感しました。個々の日常が切り取られていて、会話もとてもさりげないものなんですけど、だからこそ、役を作りすぎずに、自分自身が素直にやることで作品が出来上がっていくのかなって感じています。観客の方にも誰かしらに共感してもらえる作品だと思っています。

外岡えりか

外岡えりか

伊藤あいみ

伊藤あいみ

長戸:そうですね。僕は娘の舞台を観に行く、いわば子どもを送り出す父親という立場を演じるのですが、いろんなことを想像しています。そんな風に役を通して感じることを気張らず自然体で表現することができたら、と前作から思っています。

伊藤:最初に観た時、家族のシーンにすごく心を動かされました。娘の立場になると、共感のあまりつい泣いちゃうくらい……(笑)。お母さんやお父さんの会話を覗き見る中で「そういう気持ちで送り出してくれたのかな」とか思って、ジーンとしましたね。長戸さん演じるお父さんには、ある過去があって……。そこにも響くものがありました。

長戸:そうそう。そこは、本番のお楽しみということで!(笑)でも、伊藤さんが仰ったように、若い子たちには「お父さんはこんな風に自分を思っていたのかな」と感じてもらえるかもしれないし、逆に僕と同年代の人に対しては「こんな気持ちで子どもを送り出すのか」と実感したり……。そういった等身大の気持ちを共有できたらいいなと思っています。

井上:どのシーンも思いやりに溢れていて、どのキャラクターにも共通して温かさがある。台本や映像を拝見する中で、この作品を好きだなって素直に思えるところがそういった部分でした。あと、普段舞台に立つ側の私たちが忘れがちな気持ちも思い出させてくれる作品でもありますよね。お客さんって、いて当たり前じゃない。特に今は時世も相まって、何もかもが当たり前じゃないと痛感することが多くて……。

井上薫

井上薫

長戸勝彦

長戸勝彦

――お客さんの存在の大きさについては、前編のインタビューでもみなさん語ってくださっていました。普段は「舞台」に立つ側の人たちが、美術ではあるけれども「客席」でお芝居をする。そんな中で感じることがそのまま客席へ還元されるお芝居ですよね。

伊藤:私は少し前に仕事で四国に長く滞在していたことがあって、オフの日に電車で片道1時間くらいかけて映画館に通っていたんです。そういった体験の中で、時間を作って費やして劇場や舞台に足を運んでくださるお客さんの存在をすごく考えさせられました。そんな体験からまもなく、この『観劇者』という作品に出演させていただくことになったことにも、大きな意味を感じています。

井上:そうですよね。どれだけたくさんの稽古をしても、舞台は完成しない。お客さんが入ってくださって初めてその日のその回の作品が出来上がるのが演劇であって、劇場という場所なんですよね。お客さんが変われば、芝居も変わる。そんな景色を舞台上の客席で見つめながら、演劇そのものの輝きを伝えられたらと思います。

外岡:お客さんが一人変わっても、全く違うものになりますよね。私もそんな瞬間をお客さんとともに大切にしたいです。この作品をやっていると、お客さん一人一人にインタビューしたくなるんですよね(笑)。みなさんがどんな物語とともにこの劇場にきてくださるか。そんな想像にも思いを馳せています。

外岡えりか

外岡えりか

長戸:一人一人がを買って、時間をかけて劇場に足を運んでくださる。もちろん毎回そういった思いをわかったつもりで芝居をやってきたのですが、この作品を通して改めて、お客さんあっての舞台だとしみじみと痛感しました。なので、この作品を観てくださった方に舞台の魅力や楽しみを噛み締めていただけたら言うことはありません。

――今作品の“観劇者”の中には、演劇自体が初体験という方もいらっしゃるかもしれません。そんな中でみなさんが改めて思う、本作の魅力や見どころ、演劇の醍醐味を最後にお聞かせください。

外岡:この作品の登場人物は、みんなが各々の生活や人生を一生懸命生きているんですよね。それは客席に座ってくださっているみなさんも全く同じで……。そんなシンクロの中で、何かを感じてくだされば嬉しいです。役者、スタッフさん、そしてお客さん含めて、同じ場所に立ち会って同じ時間を共有する。それってとても素敵な瞬間だと思います。

井上:そんな大切さが当たり前になってはいけない。人ってつい鈍感になってしまうものだから、そんなことを痛感しながら作品と向き合っています。私が好きなシーンは、お父さんが家族のために仕事を一生懸命頑張る中で「仕事をつまんないと感じたことない、一生懸命やるから楽しいんだ」というニュアンスのセリフを言うシーン。とても共感しました。何気ない、優しいセリフがそこかしこに散りばめられていて、誰にでもわかる言葉の端々に共感ができる。そんな瞬間がこの作品の魅力だと感じています。

伊藤:舞台上のキャラクターが愛おしくなるにつれて、隣に座っているお客さんのこともとても身近に感じる。私が去年客席でこの作品を観た時に感じたのはそんなことでした。「この人はどんな気持ちでここにきたんだろう?」と、そんなことをずっと考えてきました。舞台が初めてという方も、きっと「一人じゃないんだ」と思える作品だと思うので、一人でも多くの方にそんな清々しい気持ちを届けられたらと思います。当日券もありますので、ふらっとでも是非!

伊藤あいみ

伊藤あいみ

長戸:ふらっと! そう、是非気軽に観ていただきたい作品ですよね。「演劇なめんじゃない」っていうセリフがあるんですけど、いいセリフだと思いましたね。演じる役者にとっても、観る方にとっても、演劇や観劇の貴重さが胸に沁みる。今ってそんな時代だとも思います。舞台に出る僕たちと一緒に演劇を作って、支えてくださればと思います。

外岡:前作を経て新たに加わったセリフがあるんですけど、それがまたいいセリフなんです! 折々のシーンにいい言葉が散りばめられていて、どこに刺さるかはそれぞれ違う。そんな多様な魅力が詰まっている作品だと思います。初演を観ていない方も、演劇が初めての方も是非この作品で演劇の魅力を堪能していただければと思います。

取材・文=丘田ミイ子 撮影=

公演情報

『観劇者(再)』
 
【公演日時】2022年5月4日(水・祝)~8日(日)全9公演
※開場は開演の45分前
【会場】シアターグリーン(池袋)BIG TREE THEATER
 
【脚本・演出】開沼豊
【出演】毎熊宏介 外岡えりか 林明寛 大滝樹 岩佐祐樹
清水麻璃亜(AKB48) 伊藤あいみ/吉田翔吾/井上薫 長戸勝彦
 
【料金】7,000円(全席指定/税込)
【一般発売】2022年4月9日(土)10:00~
 
【企画・主催】エーディープロジェクト/サンライズプロモーション東京
【制作】エーディープロジェクト
【公式サイト】https://www.kangekisha.jp/top
【Twitter】@kangekisha2021
【Instagram】kangekisya_2022
【お問合せ】サンライズプロモーション東京0570-00-3337(平日12:00~15:00)
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