二宮和也主演映画『TANG タング』の三木孝浩監督×劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の演出 小山ゆうなが特別対談
――先ほど首が伸びる部分は舞台版からインスピレーションを受けた旨をお話しされていましたが、そのほか映画に生かしたいと思ったところはありますか。
三木:舞台版を観て好きだったのは、東京のシーン。日本を舞台にしているんだけど、海外の人が見た東京というか、ちょっとオリエンタルでデフォルメされた世界観がすごくいいなと思いました。映画では、日本を舞台に置き換えて、日本人キャストでやるんですけど、リアルな日本のドメスティックな空気感でやるのではなくて、逆にちょっとアメリカンでレトロなアンティーク感があって、それでいて近い未来の話……という世界観をうまくデフォルメして表現したくて。なので、デフォルメの仕方は、結構参考にさせてもらいました。
――反対に、映画のここは面白いなと思ったポイントや、この先ミュージカルをブラッシュアップさせていくにあたってインスピレーション受けたところはありましたか?
小山:映像でしかできないことにすごいなと思ったことが大きいですね。舞台では生かせないんだけど、私がすごく好きだったのはタングがコーヒーを買ってくれるシーン。あれは映像でしか表現できないんじゃないかな。あのシーンは一番最初に二人の関係がよく分かるシーンだし、いいシーンでしたね。
三木:ありがとうございます!
小山:それから、最後のボリンジャーのところも映画ならではで、すごくドキドキしたし、面白かったですね。あとは、小手くんの役がとても魅力的でした。原作とかなり変わっていた部分の一つですよね。
――改めてタングというキャラクターのどこに魅力を感じますか?
三木:何もできないところですかね(笑)。何もできないから、すごく愛おしいんです。いろいろ助ける道具を出してくれるわけじゃないし、ただそばにいてくれるだけ。それこそペットの犬や猫に話かけていると、なんとなく自分と対話しているような感じになるじゃないですか。それと似ていて、タングを見つめることが自分を見つめることにつながる気がします。
小山:舞台版のタングはゆっくりしたことしかできないし、できることも少ない。人間なら一瞬なのに、舞台上をはけるのも時間かかるんですよ(笑)。だから、最初はどうしよう!と思いました。お客さんはこの時間を待たないといけないのか、と。でも、いや、待てよ、その価値観があっているのかな、このゆっくりというところにあわせてみたときに何が見えるのかなと考え始めたんです。
タングが最後に「ようこそ。この世界へ。」というんですね。旅をしてきて「この世界ってめちゃめちゃ素敵なんだよ!」ということを伝えてくれる。それに私は毎回感動するんです。生きていると嫌な事も沢山あって、なかなか、世界のささやかな素晴らしさや美しさに目が行かなくなるけれど、タングは真っ直ぐにその事を教えてくれる。タングには、原作でも映画でも、すごくシンプルなことに立ち返らせてくれる力があると思います。
劇団四季オリジナルミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』(撮影=阿部章仁)
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