BOND52 Vol.1『山笑う』松本哲也(小松台東)×山﨑静代(南海キャンディーズ)インタビュー 「この役はきっとしずちゃんに合うと思った」
稽古場で起こる全てに反応したい
――稽古場での豊かな時間が伝わってくるお話でした。お笑いをはじめ、あらゆる表現の場で多彩なご活躍をされている山﨑さんですが、ご自身にとってお芝居や演劇の場はどんな存在なのでしょうか?
山﨑 初めてお芝居をやらせてもらった時から、どんどん難しさを感じるようになりました。いろんな人と出会って、今の稽古場でも個性のそれぞれ違う俳優さんの表現を間近で見たりする中で奥深さを痛感しています。今回は松本さんの演出を思いっきり吸収させてもらって、今後の自分の表現にも活かしていきたいなって思っています。この2時間弱のお芝居で人の気持ちやその交錯や衝突の全部にぎゅっと反応していかないとと思っていますね。普段の私はぼーっと生きているというか、あんまり反応せずに生きてるから……。
松本 マイペースにね(笑)。
山﨑 そう(笑)。でも、お芝居って反応の連続じゃないですか。表現にそのまま反映しない部分はあるにしても、全部に反応して作っていくものだから。だから、いつもの自分よりもずっとずっと気を張らないといけないと日々思っています。
山﨑静代(南海キャンディーズ)
松本 でも、役にすごく人柄が滲み出ていますよ。昨日はラストシーンの稽古をしたんですけど、あとは僕自身の頑張り次第かなと感じました。劇団で上演したものと大きな見た目は変わらないかもしれないけど、5年の間に僕も経験を積んで、当時は気づかなかったことや言えなかったことが演出で伝えられるようにもなりました。ご一緒する役者さんも違うので、みなさんが発信されたことに新しい気づきもあって、それがまた演出に反映されたり……。確実に深くなっていると思いますね。熟成というか。そういう意味では、再演の機会を与えてもらって本当に良かったと思います。
――お二人のお話をお聞きして開幕がさらにが楽しみになりました。ここから稽古は大詰めに入りますが、最後に初日開幕までの展望をお聞かせいただけますか?
松本 舞台の価値ってやっぱり生であること。物語そのもの以前に、目の前の人が生きて、呼吸をしているということ。その息遣いを感じながら一緒の時間を過ごすという特別さが舞台の醍醐味だから、稽古でも「呼吸を伝えたい」というのはよく言っています。宮崎の田舎でこの瞬間を生きている人々の呼吸を感じてもらえるお芝居に仕上げていきたいと思っています。
山﨑 松本さんが仰るように、劇場ではお客さんとの距離がすごく近いから、舞台で起きている全てを客席で同じ温度や質感で感じとっていただけると思うんです。逆に言うと、ちょっとしたところや小さな所作までしっかり丁寧につくっていかないといけないなって。お茶を淹れるシーンがあるんですけど、それもすごく近くで見られるわけじゃないですか?とにかく、しっかり溢さずやっていきたいですね。
松本 しずちゃん、それは演出を取り溢さないっていう例え?
山﨑 いや、あのシーンうっかりしてたら本当にお茶溢しそうになるから……。
松本 お茶の方だった!(笑)。
山﨑静代(南海キャンディーズ)、松本哲也(小松台東)
取材・文=丘田ミイ子 撮影=池上夢貢