BOND52 Vol.1『山笑う』松本哲也(小松台東)×山﨑静代(南海キャンディーズ)インタビュー 「この役はきっとしずちゃんに合うと思った」
全編宮崎弁で描く、「家族」や「故郷」における葛藤と愛着
――故郷を去った妹と故郷で生きてきた兄。そんなきょうだいを中心に様々な人間模様が紡がれますが、「家族」や「田舎」の煩わしさや憎みきれなさがぎゅっと詰まったその会話劇にふと記憶を呼び起こされたり、郷愁を覚える方も多いのではないかと感じました。松本さんがこの作品を書くに至られたのには、どんな背景やきっかけがあったのでしょうか?
松本 これを書いたのは7年くらい前だったかな。『山笑う』のきょうだいは田舎に残った兄と田舎を出て行った妹という設定なんですけど、僕自身には姉がいて……。だから、しずちゃん演じる妹の菜々には、家を出て好きなことやってきた自分を投影している部分が少なからずあるんですよね。宮崎に長く住んでいた姉はそんな自分をあまりよく思ってなかっただろうな、親も心配してんだろうなとか。実際長らく帰省もしていなかったので、僕が突然宮崎に帰ったらどうなるんだろう?って。そういう思いで書きましたね。
山﨑 田舎に帰った時に感じる、あの時間が止まっている感じ。そういう特有の感覚ってたしかにありますよね。稽古しながら色々想像しています。この空気が嫌で菜々は都会に飛び出したのかなとか、でも生まれ育った場所と自分はどうしても切り離せなかったりもして。田舎の人が考えや常識を押し付けてくるようなシーンもあって、つい苛立ったり……(笑)。それでも家族に代わりはいなくて、そこにしかいなくて。煩わしく感じたり、でもやっぱり大事だなって思ったり。そういう葛藤を感じるお話ですよね。
山﨑静代(南海キャンディーズ)、松本哲也(小松台東)
――宮崎弁でのお芝居も見どころの一つだと思うのですが、台本を拝見して、やはりこれだけの方言を会得するのはご苦労もあるのではないかと想像しました。方言は松本さんがレクチャーされているんですか?
松本 そうです。最初に僕が本を読んで録音したものをキャストの皆さんに渡して。
山﨑 方言はとにかく何度も聞いて話す、を繰り返すしかないないのかなと思っていますね。「昨日は言えてたのに今日は全然言えへんなあ」とかまだ全然ありますよ。頭ではできていたはずが、いざ発してみたらその音が取れなくて言い直したり……。無意識で発しても音を間違えないくらいに仕上げていかないと!
松本 でも、僕ほとんど修正してないんですよね。方言という意味合いではしずちゃんが一番大変だと思うんです。菜々は東京に住んでいるから標準語を話すところもある。目の前の人と宮崎弁を話して、隣の人と標準語でしゃべるみたいなシーンもあったりして。でも、上手なんですよね。なんだろう、バレにくいのもあるのかな? バレやすい人とバレにくい人がいますよね、方言って(笑)。
山﨑 あはは。そうかも。私、ボソボソしゃべるから……。
松本 ははは。しかも、しずちゃんは普段関西弁だからね。スイッチの切り替えが多くて大変だろうなって。でも、本当いい感じですよ。
松本哲也(小松台東)
>(NEXT)稽古も大詰め。「しっかり溢さずやっていきたい」