HYDE、ソロデビュー20周年に行われたアニバーサリーライヴ先行上映会、舞台挨拶をTOHOシネマズ六本木ヒルズで実施
HYDE
HYDEのソロ活動20周年を記念して2021年に開催されたコンサートを収録したライヴ映像作品(Blu-ray & DVD)『HYDE 20th Anniversary ROENTGEN Concert 2021』のリリースに先駆け、2022年7月7日に全国の映画館にて本作の先行上映会が実施された。東京都・TOHOシネマズ 六本木ヒルズではHYDE本人が舞台挨拶のため登壇。その模様は各地の先行上映会会場にもライヴ・ビューイングで生中継され、駆けつけたのべ10,000人のファンを熱狂させて七夕の夜を盛り上げた。
上映会は、『HYDE 20th Anniversary ROENTGEN Concert 2021』に収められている2021年開催のツアー“20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021”から 8月15日の神奈川県・パシフィコ横浜公演と、7月31日、8月1日の2日間に渡って京都府・平安神宮にて繰り広げられた“20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU”公演2日目のコンサート映像を2回に分けて上映。
コロナ禍によってアートやエンターテインメントには不要不急のレッテルが貼られてしまうような過酷な状況下でもけっして歩みを止めることなく、自身の音楽表現の在り方を追求し続けてきたHYDEだが、この日上映された2本のコンサート映像にはそうした彼の不屈のアティテュードがありありと示されていた。
ニューノーマルな対応が求められる情勢を冷静に見据えたHYDEはそれまで彼が身上としてきたアグレッシヴな“動”のパフォーマンスを封印、一転してじっくりと聴かせる“静”のモードにきっぱりとシフトすることで、さまざまに課される制限や困難を果敢に乗り越え、ロックとオーケストラを融合させた新たなアプローチによってHYDEはソロ活動20周年の歴史にひときわスペシャルなマイルストーンを打ち立てたのだ。
1回目に上映された“20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU”の映像には、会場となった平安神宮の幽玄なる光景をバックに雅な白の衣装を纏ったHYDEが16名の雅楽奏者と22名から成るオーケストラのアンサンブルに乗せ、まるで天上へとその音楽を捧げるかのような佇まいで歌声を放つ姿がつぶさに捉えられており、これまでになく凛として厳粛なその表情は、壮大なプロジェクションマッピングをはじめ、石笛(いわぶえ)奏者の特別演奏や幕間に能楽師の舞を盛り込むなどドラマティックに構築された優美な和の世界観とともに観る者を陶酔へと誘った。
一方、2回目に上映の“20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021”は、HYDEのキャリア史上初となるオーケストラツアーながらも、洗練され円熟味を増した歌唱と演奏で魅了。今ツアーでは2002年にリリースされて以来、約20年間に渡ってほぼ生演奏されることのなかった1stアルバム『ROENTGEN』の楽曲を完全再現することが大きなコンセプトのひとつとして掲げられていたが、同時に「NOSTALGIC」「FINAL PIECE」といった新曲も盛り込まれ、20年間、たゆまぬ進化を遂げてきた彼の今をも心ゆくまで味わえる。まさに集大成と呼ぶべき充実したステージの様子がふんだんに映し出されたその映像は、HYDEというアーティストの“静”の魅力を改めて印象付けた。
舞台挨拶も上映に伴って2回行われ、“20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU”上映直後、初回の舞台挨拶に浴衣姿のHYDEが登壇すると場内のムードは映像の感動的な余韻も相まって一気にヒートアップ。感染予防のため歓声などの発声は禁止されていたが、「みんな、観ちゃった? いいでしょ? すごくいいライヴですよね」と満面の笑顔で客席に呼びかけると割れんばかりの拍手に包まれた。
その後、ラジオDJの下埜正太を進行役に30分にも及ぶトークショーを展開。本公演を振り返り、「歌っているときも空や(平安神宮の)建物を見ながら、こういうステージってなかなかできることじゃないし、本当に感謝しながら歌わなきゃいけないな、この情景を目に焼き付けたいなと思って歌っていた」と当時の心境を語り、「この平安神宮公演は僕の音楽人生の中でも強く記憶に残る2日間になりました。(コロナ禍という)この時期に、こうした美しいコンサートを作ることができたのは、やっぱりお客さんが観てくれているから。いいものを作りたい、観たことを絶対に後悔させないものを作りたいという気持ちがあって実現できたんだと思います」とファンの存在が活動の原動力であることにも言及。下埜から「ZIPANG」や「MY FIRST LAST」で見せた平安神宮ならではの演出を絶賛されると「平安神宮でやるからにはそういうハイライトが欲しいなと思って、いろんなアイデアを持ち込んで。あれは僕ぐらいしかできないんじゃないですか……なんて(笑)」と冗談めかしつつ、「やっぱり“あの場所”で生死を懸けた物語を歌うと、宇宙に吸い込まれるような気がして」と彼自身にとっても一世一代の特別なステージとなったことを窺わせた。
さらに“20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021”上映前に行われた2回目の舞台挨拶では、コロナ禍にツアーを開催するにあたってどうすれば各会場で観客収容率100%のステージができるかと考え、着席スタイルのクラシックなコンサートであれば可能だという答えに辿り着いたこと、偶然にも20年前にリリースした1stアルバムではツアーをしていなかったこと、それらがソロ20周年というタイミングに重なり「(やるなら)今しかない、このツアーのために『ROENTGEN』を作ったのかもしれないという気持ちになりました」と明かしたHYDE。
映像化された横浜公演は「もちろんカメラが入っているというのもあるけど、集大成をあの場所で作り上げたかった。そこに向けてみんな頑張っていた。コロナ禍のツアーですから(オーケストラメンバーもスタッフも)一人ひとりが毎日抗原検査をするわけですよ。一人でも陽性が出たらえらいことになるって毎日ピリピリしながら。普通だったらライヴのあとに一緒に食事いったりするんですけど、それもできず、ずっとツアーをしてきて。(そのおかげで)素晴らしいコンサートができたと思います」とメンバーやスタッフを労い、「表面上、映像を観てもそういうところは伝わらないけれど、実はそういう大きな流れがあるんですよね。チームみんなの努力とお客さまひとりひとりの努力が結集したコンサートです」と今ツアーに関わったすべての人たちを讃える場面も。初回でも「みんな、やっぱりエンターテインメントが欲しかったし、(僕もみんなも)会いたかったと思う。そういう気持ちが全部重なったライヴだったし、普通のライヴじゃなかったよね。どれもみんなの想いが詰まったライヴでした」と20周年全体に触れてHYDEは口にしていたが、まさしく誰一人の想いが欠けても成り立たなかったアニバーサリーだろう。
七夕にちなみ、トークの最後にはHYDEが用意された短冊に今の願いをしたためるという一幕も。「こういうのって大きな願い事をしがちなので、“世界平和”とか。たまには地味なのもいいかな」と言いながら初回に観客の目の前で書き上げられたのは“猫アレルギー治りますように”(原文ママ)。
小さい頃から猫を飼っていたが、ある日突然猫アレルギーを発症したという。以来、Instagramなどにアップされる猫画像を見ては「かわいい、触りたいと思うけど、触れない。シザーハンズみたいな気持ち」でいるのだそう。そして2回目での願い事は“今年もドラえもんが来てくれますように”。HYDEによれば昨年の七夕に「ドラえもんが来てくれますように」とツイートしたら、『ドラえもん』公式Twitterからドラえもんが「なぁに?」とリツイートしてくれたため「七夕パワーすごいな、と。なので調子に乗って今年も(笑)」とのこと。果たして今年のドラえもんのリアクションはいかに。結果はぜひHyde公式Twitterで確認してほしい。
「今日はよくきてくれました。ありがとうございます。こうやって慕ってくれるファンの方がたくさんいてくれるから、僕らもその想いに負けないように、映像もライヴも気合いが入って。一つひとつ観てもらって“やっぱりHYDEのライヴよかったな”と思ってもらえるのが僕の生き甲斐なので。みんながいなければ、こんなに頑張ることもないし、みなさんのおかげでいい作品が作れたと思っています。今後とも応援よろしくお願いします」全国のスクリーンで見守る観客にそう感謝を告げ、会場をあとにしたHYDE。織姫と彦星のような刹那の逢瀬ではあったが、想いは確実につながり合った格別の一夜となったに違いない。
この日上映された2本の映像がコンパイルされたライヴ映像作品『HYDE 20th Anniversary ROENTGEN Concert 2021』は7月27日に発売される。なお、完全数量限定の豪華Box仕様の『HYDE 20th Anniversary ROENTGEN Concert 2021 Complete Box』には、両公演のドキュメンタリー映像も収録。さらには雷雨に見舞われた平安神宮初日公演の舞台裏などの様子も収められている。「雨は悔しかったけど、その2日間を一つと考えれば、すごく美しいライヴだったと思います。今回の映像を観て初めて雨でよかったと思えた。この映像作品ができてやっと満足しました」とHYDEが言う伝説の記録をぜひ確かめてみてほしい。
現在、HYDEは念願の対バンツアー“HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH”を敢行中、毎回異なるゲストを迎えて各地で大暴れしている。「自分でも信じられないぐらいキャラが違う」とはこの日のHYDEの弁だが、そうした多面性も彼の大いなる魅力であり、HYDEのHYDEたる所以。次は何が飛び出してくるのか心待ちにしよう。