おとなもこどもも、夏休みの“自由研究”に！ 指揮者・藤岡幸夫にきく、関西フィル×ザ・シンフォニーホール『親子定期演奏会』の楽しみ

おとなも子どもも楽しめる、気ままな”自由研究”に

――「研究シート」は、このまま学校に提出できるのですね。

ザ・シンフォニーホールのスタッフのアイディアです。奇抜なアイディアを持っているスタッフの人がたくさんいるんですよ。“自由研究”だけど、あまり難しいことを考えずに！とにかく、ザ・シンフォニーホールは素晴らしいホールです。ただ、このホールに来たことのない関西の人もいるのです。

――ザ・シンフォニーホールの響きは、カラヤンが絶賛したことでも知られていますよね。

ザ・シンフォニーホールは日本屈指のホールなので、そこに足を踏み入れてもらってオーケストラを聴いてもらう。クラシック音楽の、しかもオーケストラを聴くためにできたホールですから、超贅沢ですね。このシリーズは、クラシックに興味のない人や、このホールに足を運んだことのない人に来てほしいと始めたのです。

――私はこのシリーズを息子と2回聴きました。お子さまはもちろんですが、おとなも多く聴きにいらしているのが印象的でした。

このシリーズをきっかけに、ザ・シンフォニーホールへ初めて来るおとなも多いのです。「また来たいな」と思ってもらえるようにしたいのです。

――コンサートホールへ足を運ぶきっかけに？

そう。コンサートホールへ来たことのない人は、ホールに足を運びにくいと思います。「俺は行ったことないけど、“自由研究”はこどものためだし、連れて行ってみるか」と、この記事を見て思う親御さんがいれば嬉しいですね。

“自由研究”って、いいタイトルだと僕は思うのです。東京では見たことないから。

おとなになった時、こどもの頃にクラシック音楽を聴いている人とまったく聴いていない人とは、全然違うんですよ。こどもの頃にまったく聴いたことのない人は、おとなになってもホールに来ないのです。でも、こどもの頃に1回でも2回でもホールで聴いた経験があれば、おとなになって「ちょっと行ってみるか」という人はいると思うのです。だから、将来のために、こどもたちにそういう経験をしてもらいたいのです。

――これまでのシリーズで、手ごたえは感じられますか？

おとなに「すごく楽しめる」と言われたのは、とても嬉しかったですね。

「おとなだけですが、行ってもいいですか？」と、ファンサイトにメッセージが来たりするんですよ（笑）。「ぜひ来てください！」と返信しています。

――確かに！私も楽しめました。普段、クラシック音楽を聴いているおとなでも楽しめる内容でした。

でも、語りだけは気をつけないと（笑）。例えば、『アルルの女』の劇中には、アルルの女は登場しません。アルルの女に騙された男が主人公なのです。最後の有名な「ファランドール」は、アルルの女に騙されて嫉妬に狂った主人公の男が自殺するシーンの音楽で、「なんてエキサイティング」って思うわけ。「アルルの女に僕も騙されたい」と言いたいんだ！そういうものなんだよ、クラシック音楽は……と僕はこどもたちに言いたいんだけれどね（笑）。

――最後に、SPICEの読者にメッセージをお願いします。

普段クラシックを聴かない人こそ、お子さまを連れて……おとなだけでも大丈夫です。お一人でいらっしゃる方もいますので、多くの人にザ・シンフォニーホールに足を運んでいただき、関西フィルのゴージャスなサウンドを楽しんでいただきたいです。

取材・文＝道下京子　撮影＝荒川潤