『納涼!大阪城音泉』、岡崎体育とキュウソネコカミが野音でショーマンシップ満載の初ツーマン
『納涼!大阪城音泉』 撮影=河上良
『納涼!大阪城音泉「ソロ?否、バンド?編」〜清水音泉成人記念〜』2022.8.19(FRI)大阪城音楽堂
岡崎体育とキュウソネコカミが出演した、関西の名物イベンター・清水音泉主催のライブイベント『納涼!大阪城音泉』が8月19日(金)、大阪・大阪城音楽堂で開催された。
■キュウソネコカミ
ヨーヨー釣りや京都のライブハウス・KYOTO MUSEによるドリンク販売があるなど、ちょっとした縁日風の出店がお祭り気分を上げてくれる大阪城音楽堂。夕暮れ時で暑さも少し和らいだ中、突如響きわたるほら貝の音を合図に、壱番風呂のキュウソネコカミがお出ましだ。そのBGMに流れるのは東京スカパラダイスオーケストラの「Paradise Has NO BORDER」!?
キュウソネコカミ
「どうも、西宮から来たキュウソネコカミとスカパラみたいな人たちです!」(ヤマサキセイヤ、Vo.Gt)と、スカパラホーンズの参加で話題となった新曲「優勝」をぶっ放す! ステージ上では、段ボール製のホーン隊が華麗にパフォーマンスする中、その正体は主催・清水音泉の面々にあげくはセイヤの実の父と、視覚からの情報処理が追いつかないまま、あっという間に「スカパラみたいな人たち=ニセパラ」は退場。続く「推しのいる生活」ではオーディエンスがたくさんの拳を天に突き上げる絶景が生まれ、「住環境」「ハッピーポンコツ」と緩急自在に攻め立てていく彼ら。「湯加減はいかがでしょうか、心を整えて帰ってください!」(セイヤ)と叫び、そのままパンキッシュなショートチューン「家」へと突入! <家>の2文字だけでこんなに楽しくなれちゃう35秒は彼らにしか成し得ない。
キュウソネコカミ
「清水音泉のボケは分かりづらいものが多いんです。楽屋ではかき氷が食べられるんですが、イチゴ味の値段が105万円だったり。「誰が気付くん!?」っていう。今日のタイトルも成人記念らしいんだけど、20周年ではない。成人年齢に合わせて18周年です!」(セイヤ)
「何かしっくりこんね(笑)」(ヨコタシンノスケ、Key.Vo)
「20周年やと思わんかった? 盛大にボケてるねんけど気付いてた!?」(セイヤ)
キュウソネコカミ
なんてわちゃわちゃしつつ、トロピカルなサウンドを奏で始める彼ら。セイヤはココナッツのお香をステージ中央にそっと置き、「南国の気分を少しでも味わってもらえれば。ではバージョン違いの「涼しい家」を。自然の涼しさを音楽で表現します」と、先ほどと打って変わってチル風味の「家」をプレイし、納涼を体現していく。と思いきや、「TOSHI-LOWさん」では、ハンドマイクで縦横無尽に客席を駆け回るセイヤ。サビでは瓦割りやら水を飲むやら最早その手にマイクはなく、「実は口パクでした!」(セイヤ)とネタバレするも、会場全員が「知ってる!」と破顔。岡崎体育へのリスペクトから前日に急遽録音した歌と生演奏での披露とあって、これぞ対バンならではのケミストリーか。
キュウソネコカミ
キュウソネコカミ
サポートベースのシンディ(LOW-PASS、空きっ腹に酒、JYOCHO、YOU MUST SEE I)がグルーヴィーなリズムで踊らせる「夏っぽいことしたい」を経て、「これからどんどん音泉の温度を上げていきたいと思います、まだまだ遊べるか!?」(セイヤ)と、「ビビった」ではヨコタのアグレッシブな鍵盤さばきでも魅了。
キュウソネコカミ
レキシとのコラボ曲「KMTR645」では、手をクロスしたお馴染みのQポーズで凄まじい一体感を見せつけるだけでなく、オカザワカズマ(Gt)はネズミくんボディのギターで弾き倒し、なぜかかき氷を早食いしたセイヤは歌声がしょぼしょぼするなど、一瞬の瞬きも許されないカオス。ドリーミーなイントロからなだれ込む「わかってんだよ」では焦燥感を駆り立て、ラストはソゴウタイスケ(Dr)の怒涛のドラムソロも圧巻な「The band」で、いつまでも冷めないロックバンドの初期衝動を詰め込んだキュウソネコカミのステージとなった。
キュウソネコカミ
■岡崎体育
岡崎体育
「俺の中ではパンクバンドのようなヤツです!」(セイヤ)と、この上ない賛辞を送られた岡崎体育が弐番風呂で入浴。初っぱなの「Insane」から、踊りまくりジャンプしまくりのフルスロットルで、「音楽は楽しいようになってるんですよ、大昔から!」(岡崎体育、以下同)と、次なる「Open」でも大阪城音楽堂を一気にクラブ化させていく。そして「コロナ禍だから、なかなか声も出せないじゃないですか。どのアーティストも独自のお客さんとのコミュニケーション、楽しみ方を見出してますよね」との思いから生まれたという新曲「フランスパンゲーム」をお披露目。何と前日に作ったというできたてほやほやの新曲で、彼の「フランス」というコールに続けて観客が「パン!」と手を叩き、「フランスパン」を完成させるというシンプルなもの……のはずが、時折「焼きそば」「ラフランス」のフェイクが入ったり、「お腹」の後は「パンパン!」と2回叩かねばならなかったり、厳しいルールにもしっかりついていく客席とのあうんの呼吸は、さすがの一言だ。
岡崎体育
「一回座る? 俺はじゃがりこ食べよう」とマイペースに進行する中、最近本格的に聞き出したというレゲエを岡崎体育流に落とし込んだ「サブマリン」では、リラクシンなサウンドメイクに彼らしい刺激的な歌詞がじわじわ脳内を侵食。
岡崎体育
「キュウソネコカミは、2010年代以降のコミックソングとか明るくて元気が出る楽曲の道を切り開いてくれた存在だなと。僕とかヤバイTシャツ屋さんがいるのは、キュウソのおかげだなとよくヤバTのこやま(たくや)とも話してます。あのスタイルでメジャーに行って暴れ回れるんだって教えてくれた存在。フェスなんかではよく一緒になってましたが、2マンライブをやらせてもらうのは初めてです。キュウソのことがすごく好きだし、一緒に出られてうれしい。そんなキュウソに捧げる歌を」と、泣けるMCに続いて届けたのは「FRIENDS」。
岡崎体育
「ステージ上での唯一の友達」というペンギンのてっくんを召喚しハートフルな歌世界を繰り広げるも、原曲を知るオーディエンスからはクスクス笑いが止まらない。てっくんがキュウソネコカミや清水音泉への素直過ぎる気持ちを暴露し双方から怒られるシーンは、この日ならでは(笑)。
岡崎体育
「日本全国いろんなところに行ってライブさせてもらうわけですが、大阪のお客さん大好きです。めちゃくちゃ温かいです。楽しもうという気持ちがすごく伝わってきて、皆さんの前でライブができて本当にうれしい!」と感謝を告げ、「Quick Report」ではステレオタイプなライブレポをもじったシニカルな歌詞さながら、<観客のボルテージは一気に最高潮に!>(と書かざるを得ない)。さらに、岡崎体育とのじゃんけんで勝った人々だけが踊りまくることができる「R.S.P」を経て、盆地テクノの真髄を宿した「XXL」、朗らかに歌い上げる「なにをやってもあかんわ」でシメへ!
岡崎体育
アンコールでは、一足早く出てきた岡崎体育から「呼びますか、あのダサいバンド〜!」と、てっくん節で呼び込まれたキュウソネコカミの面々がカムバック。誰一人楽器を持たない中、キュウソ+岡崎体育の5人によるSMAPの「夜空ノムコウ」のカラオケで大団円へ!
どこか寂しげな歌声の中居体育、絶唱する木村セイヤ、オカザワ吾郎と草彅シンノスケ、ソゴウ慎吾が美しいハーモニーを空まで響かせていく。そんな『大阪城音泉』ならではのコラボレーションをブチかまし、最後の最後までショーマンシップたっぷりに仕掛けた岡崎体育とキュウソネコカミだった。
取材・文=後藤愛 撮影=河上良