『蝶々夫人』をベースした市原佐都子/Qの海外制作作品『Madama Butterfly』京都&城崎で日本初演
ノイマルクト劇場&市原佐都子/Q『Madama Butterfly』。 ©Philip Frowein
「第64回岸田國士戯曲賞」を受賞した『バッコスの信女 ─ ホルスタインの雌』を始め、特に女性の視点から見た現代社会への違和感を、ユーモアと痛みを交えて描き出す舞台に定評のある「Q」の市原佐都子。スイス・チューリヒの[ノイマルクト劇場]と共同制作した注目作『Madama Butterfly』が、京都と城崎(兵庫県)の2ヶ所で日本初演を果たす。
『Madama Butterfly』はその名の通り、プッチーニの名作オペラ『蝶々夫人』がベース。「アメリカ人軍人と恋に落ちた日本人女性の悲劇」という、西洋人男性の視点から日本人女性を描き出したこの作品とは逆に、日本人女性の視点から「西洋」と「男性」について考察する。ハーフの子どもを生むために、白人男性を追いかける日本人女性の姿を、映像を駆使した演出や、刺激的な笑いも交えながら描写。それによって、日本人──特に女性の西洋的な容姿へのコンプレックスや、西洋人から期待される“日本”像など、今もなおはびこる様々な偏見や先入観に、痛烈な疑問を投げかけていく。
ノイマルクト劇場&市原佐都子/Q『Madama Butterfly』。 ©Philip Frowein
2021年9月にスイスで世界初演を迎え、その後オーストリアやドイツでも上演。「西洋のフェミニズムの紋切り型と戯れてみせる勇気は、日本人女性は自らの解放のために、西洋のフェミニズムの助けなど必要としていないという、言外のメッセージを伝えている」(ヴィンダ・ミグナ)「ラディカルな設定により、文化的帰属についての議論を活発化する」(リサ・カマン)など、高く評価された。
ノイマルクト劇場&市原佐都子/Q『Madama Butterfly』。 ©Philip Frowein
日本では2022年2月に初演が予定されていたが、新型コロナウイルスの蔓延により延期され、ようやく実現されることに。現在市原が共同創作を行っている京都市の公立劇場[ロームシアター京都]と、芸術監督を務めている兵庫県豊岡市のレジデンス施設[城崎国際アートセンター]で、相次いで上演される。ちなみに兵庫公演は、平田オリザ(青年団)がフェスティバルディレクターを務める「豊岡演劇祭2022」ディレクターズプログラム作品となる。
私たちがうっかりと享受してしまっている感覚を「それ、おかしくないですか?」と、残酷なほど無邪気に問いかけてくる市原の世界は、人によってはかなりショッキングで、不愉快にすら感じるかもしれない。しかし私たちはそれによって、自分たちの“常識”を考え直し、予想もしなかった思考や答を得ることができる可能性もあるのだ。関西圏のみの公演となるが、幸いどちらも観光には事欠かない都市なので、旅行がてら足を運んでみてほしい。
ノイマルクト劇場&市原佐都子/Q『Madama Butterfly』。 ©Philip Frowein
公演情報
■作・演出:市原佐都子
■出演:竹中香子、Yan Balistoy、Sascha Ö. Soydan、Brandy Butler(映像のみ)
※推奨年齢中学生以上
〈京都公演〉
■日時:2022年9月15日(木)~17日(土) 15・16日=19:00~、17日=14:00~
■会場:ロームシアター京都 ノースホール
■料金:一般3,500円、25歳以下2,000円、18歳以下1,000円
■問い合わせ:075-746-3201(ロームシアター京都カウンター)
■公演サイト:https://rohmtheatrekyoto.jp/event/71136/
■日時:2022年9月22日(木)~24日(土) 22日=19:00~、23日=14:00~、24日=11:00~
■会場:城崎国際アートセンター
■料金:一般=前売3,500円 当日4,000円、25歳以下&障がい者=各1,000円引 高校生以下=無料(要事前申込)
■問い合わせ:050-5527-7241(豊岡演劇祭フェスティバルセンター)
■公演サイト:https://toyooka-theaterfestival.jp/program-event/4555/