<2015年末回顧>吉永美和子の「関西発の舞台」ベスト5

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維新派『トワイライト』(宣伝ビジュアル) 撮影:井上嘉和

維新派『トワイライト』(宣伝ビジュアル) 撮影:井上嘉和

「関西発」にこだわった、吉永美和子が選んだ5作品。

一応「演劇に詳しい関西在住のライター」を売りとしている身としては、やはりここは関西発のステージパフォーマンス作品のベスト5について書かなきゃいけませんよね。ってことで期待に応えまして、いろいろと印象に残った5つの公演を上げました。あ、順位とかはつけておりません。純粋に上演順で。

■メイシアター×sunday play 日本の名作#3『やぶのなか』
その謎めいた内容ゆえに、様々な形で上演&上映されてきた芥川龍之介の名作だけど、sundayのウォーリー木下演出版は、鏡や映像スクリーンが空中に浮かんだ、マジックハウスのような美術が印象的でしたね。しかもパフォーマンス性の強い「モノローグ」と、スタンダードな会話劇風の「ダイアローグ」の2バージョンで上演。この作品の持つ底なし沼感をより実感しただけじゃなく、彼の演出の引き出しの多さに改めて恐れいった次第です。

メイシアター×sunday play 日本の名作#3『やぶのなか』(宣伝ビジュアル)

メイシアター×sunday play 日本の名作#3『やぶのなか』(宣伝ビジュアル)

■桃園会『うちやまつり』『paradise lost,lost』
昨年夭折した、劇団主宰の深津篤史作品の2本立て。彼の岸田國士戯曲賞受賞作『うちやまつり』と、その後日譚『paradise…』を一挙に再演したんですが、これって並列して上演すべき作品だったんですなあ。ある団地の中の謎めいた人間関係を嫌な感じであぶり出す前者に対して、後者はそれらの謎に決着を付けることで浄化する作品だったと、初演の時になぜ気づけなかった私。どうか彼の才能が、これからもずっと語られていきますように。

■劇団壱劇屋「MASHUP PROJECT」の3作品
関西の劇団が発表した隠れた名作舞台を、自分たちの肉体を使ってマッシュアップするシリーズ。アクション系の『GOLD BANGBANG!!』、ゆるい会話劇の『Windows5000』、ポストドラマ演劇風の『サンプリングデイ』と、全くスタイルの異なる3作品を元の舞台と遜色なく演じてみせたその多芸ぶりもすごいけど、やはり上演されては消えていく定めのような小劇場の舞台を、このような形で再現する試み自体に意義がありましたね。他の作品のマッシュアップも熱望!

劇団壱劇屋MASHUP PROJECT VOL.1『GOLD BANGBANG!!』 撮影:河西沙織

劇団壱劇屋MASHUP PROJECT VOL.1『GOLD BANGBANG!!』 撮影:河西沙織

■Dance Fanfare Kyoto vol.03 上田誠 ダンスコメディ『呼び出さないで! アフタースクール』
ヨーロッパ企画の上田誠が、ダンス作品に初挑戦した舞台。様々な感情や衝動を本能的にダンスにしちゃう女子高生たちが、その技を駆使して宇宙人と戦うという「それどんなB級SF(笑)」な内容だけど、ダンスがストーリーを上手く引っ張っているのに加えて「ダンスがどうやって生まれるのか」ってのもわかるという思わぬ副産物が。ダンス未体験の人も楽しめる(実際そういう感想が多かった模様)、この先もコンテンポラリーダンスの啓蒙活動に使ってほしいコメディです。

■維新派 野外劇『トワイライト』
都会の喧騒の中で都市論を語る維新派も好きだけど、個人的には大自然の中で、地球とか宇宙にまで思いを馳せてしまうような風景を見せていく、ネイチャー系の野外劇の方が好みだなあ。会場の向こうに広がる星空と一体になるような、宇宙的な風景の数々に興奮する一方で、この地上はヒロインの子が「普通って何やねん!」と叫ばずにはいられないような世界なんだよな…なんて切なさを感じたりも。千秋楽の日に、中秋の名月の下で鑑賞できたことは一生の思い出に決定です。

維新派 『トワイライト』 撮影:井上嘉和

維新派 『トワイライト』 撮影:井上嘉和

この他にも、木ノ下歌舞伎『黒塚』ArCairo『Phantom Form,Invisible Move』(関西発と言うより、関西&東京共演という感じですが)、THE ROB CARLTON『CREATIVE DIRECTOR』匿名劇壇『プレゼントタイム・ハローグッバイ』(上演順)も、2015年の関西を盛り上げた作品として特筆しておきたいところですね。来年もまた関西で、他のエリアの人に自慢したくなるような良き舞台にたくさん会えますように。

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