約八年ぶりに舞台に立つ浅香航大を独占インタビュー! 多くの初体験が待つ、文豪トルストイの大作『アンナ・カレーニナ』への期待を語る
「人間の説明書」みたいな作品
――今回はフィリップ・ブリーンさんが上演台本も手がけられるそうですが、どんな戯曲になるんでしょうね。
先日、リモートでお話をさせてもらったんですけど。フィリップさんならではの、映画などとは違う切り口で原作を読まれていて、表現したいものがあるそうで。まださわりしか聞かされていませんが、その部分だけでもすごく魅かれる考え方でした。
――たとえばどういうことですか、少しヒントをいただけますか。
ただのラブストーリーではない、とおっしゃっていました。それは僕も原作を読んでいて思いましたけど、この作品は人間の説明書というか、人間とは?人生とは?みたいな本だな、と。そこに登場するキャラクターたちがみんな実に魅力的なわけです。19世紀の時代に生きるロシア貴族の話なのに、現代に生きる日本人の自分でも、なぜかとても親近感を覚えましたし。
――人間臭い人物が多いかもしれませんね。
そうなんですよ。ですからぜひ、そういう魅力溢れるキャラクターを自分も演じていけたらと思っています。
――海外の演出家から演出を受けることに関してはいかがですか。
初めての経験なので、とても楽しみです。やはり、日本と海外では芝居の作り方や感覚がきっと違うでしょうし。フィリップさんはレベルの高いイギリス演劇界の一線で活躍されている人ですから、その方の世界観の一部になれるというのは貴重な経験になると思います。フィリップさんが演出をされた舞台『罪と罰』を拝見したんですが、それも本当に素晴らしかった。出演されていたキャストのインタビュー動画を見たらみなさんすごく輝いている表情で、フィリップさんに信頼を寄せているのが伝わってきましたね。
――『罪と罰』で、気に入ったところはどんな点でしたか。
世界観を、実に細かいところまで作り込んでいらして。印象としては、まるで絵本を見ているような感覚でした。物語の内容は激しかったりするんですけれども、あくまでも美しい舞台でした。
お客様と作品の入口みたいな存在に
――現時点では、リョーヴィンはどういう人物で、どう演じたいと思われていますか。
リョーヴィンは、僕自身も大好きな人物です。なんだか、ある意味ちょっと犬みたいじゃないですか?(笑)とても素直でね。いろいろな刺激を受けながら、失敗も犯すけど、何か憎めない。だけど自分の思想はしっかりあって、周りに流されたりしない強い信念を持っている。不器用なところもあってそこが可愛くもあり、すごくいい奴なんです。そういうところを丁寧かつおおざっぱに表現しつつ、愛されるキャラクターにできたらいいかなと思っています。
――もしかしたら、お客様にとっては共感しやすい人かもしれないですね。
確かに、そうかもしれません。お客様との距離を近くする、入口みたいな存在になれたらいいですね。
――アンナ役の宮沢りえさんを始め、共演者の方々については。
宮沢さんとは初めて共演させていただくんですが、これもまた楽しみです。なんなんでしょうね、あの魅力。もちろん、素晴らしい女優さんだということはわかっているんですけれども、僕の周りの業界関係者もみんな口を揃えて「宮沢さんは、いい!」って言いますから。そして小日向さんとも初共演。というか、僕の場合、今回は梶原善さん以外は初めましての方ばかりなんです。長い稽古期間と本番中に、このキャストのみなさんたちがお芝居を組み立てていく過程を間近で見られて、自分もその座組の一員としてやっていけるなんて。きっと、あっという間に時間が過ぎてしまうだろうと思うので、一日一日を大事にしながら過ごしたいと思っています。
――ご自分に目標を立てるとしたら。
この舞台に関わる期間中は、常に貪欲でいたいなと思っています。ゴールとか限界は決めずに、いろいろなことを吸収したいですね。
――では最後に、お客様にお誘いのメッセージをいただけますか。
個人的なことでは、直接人の前に立って演じる機会はこの約八年なかったわけですので、そういった意味でも30歳になって再び挑戦する自分を見てほしいという気持ちはやはりあります。今の自分が出せるものをここですべて出すつもりでいますので、ぜひ見守っていただきたいですね。フィリップさんにはまだリモートでしか会っていませんが、今から期待と信頼を抱いていますし、気が早いかもしれませんが絶対に素晴らしい作品になると確信しているので! そこに加えて、こんなに素晴らしいキャストのみなさんとご一緒できるんですからね。お客様にもたくさん期待していただきたいです。一生懸命がんばりますので、みなさん、ぜひ劇場へ観に来てください!
取材・文=田中里津子 撮影=荒川潤