弛まぬ筋トレの先に築き上げた“majikoサウンド”。傑作ニューアルバム『愛編む』に迫る
──「こういう作品にしたい」という全体的なテーマはありました?
全世界の人間が全員一瞬だけでも幸せになることって、いろんな答えがあると思うんですけど、わたしは会いたい人に会えることだと思うんです。それは愛だったり、ある種の救いのようなもので、会いたい人に会える、会いたい曲に会える、そういうものをテーマにしようと思いました。チーム内で話し合った結果の共通認識として、どんな形でもいいから結局救いになればいいみたいな、大きな枠組みの救いを書いてみようか、という話になって。そのテーマを自分なりに、捻くれたりまっすぐ出してみたりした結果、形になったと思います。
──なるほど。今のお話や『愛編む』というタイトル通り、愛についても多く歌われていますね。
そうですね。こないだのライブも「愛」が入ってるし、歌詞に入ってる曲もかなりありますけど、そこまでがっつりではなく、さらっとした印象で書いてた気がします。サブリミナルというか……深層心理的には今わたし愛に溢れてるのかもしれないなっていう感じですかね(笑)。
──愛にも色々あるわけで、「Princess」なんかはちょっとアブナイ愛というか。
そうですね(笑)。この曲は最初、スタッフさんとの打ち合わせで聴かせたときに、絶対採用されないだろうなと思ってたんですよ。わたしの暗い曲はみんな嫌いだろうなと思ってたんですけど(笑)、でも「いいじゃん!」「え、これいいの!?」みたいな。今までのわたしの「暗いの作りたい、暗いの作りたい、ぬ~~!!」っていう思いを出した曲で。「これで良いんだったら結構作れちゃうけど?」みたいになったのを覚えてます。
──かなりプログレッシヴというか、どういう展開?っていう曲ですけど、最初からこうだったんですか?
最初からやってましたね。アイディアがどんどん出てきちゃって。
──まあ、知らない人にmajikoさんを紹介するときにこの曲かどうかはアレですけど……
たしかに(笑)。
──でもめちゃくちゃカッコいいし刺さりましたよ。
ありがとうございます。すごい好きな曲です。
──MVも、ね。
すっごいですよね? 自分でもすごいなと思って。オールバックに挑戦してみたいというのはあって、そうしたらああなったんですけど(笑)。あの日、朝の2:30起きだったので撮っているときの記憶が飛び飛びで、吊るされもしたし、どうなってるんだ!と思ったけど、出来上がったら良かった。
──という曲からの、飛び道具のような「TENGIC」、一種のボカロ曲成分も感じる「ジャンプ」というアルバムの始まり方で。
「ジャンプ」は、「アップテンポが足りない」となって最後の最後にできた曲で。ワーッと書いた曲だから、マスタリングのときも「良い音像よりバカっぽい音にしてほしい」って言ったんですよね。これは歌詞もちょっとバカっぽいし、でもいいじゃん!みたいな感じ。「ジャンプ」が一番、筋トレ終わりの感情に似てると思います。
──同時にJ-POP的要素も感じましたけどね。それこそ、いきものがかりとか。
たしかに。嬉しいなぁ。これはわたしが辿ってきたものが出ているのかもしれないですね。
──次の「時空小箱」。これ、僕は好きですね。
結構これ好きな人いるんですよね、男の人で。最初はこれ入る予定じゃなかったんですよ、アレンジで行き詰まっちゃって。この曲はデモからははるかに良くなったので嬉しいです。やっぱり人間の力ってすげえって思って。柏倉(隆史)さんのドラムも素晴らしかったし、魂が乗るというか。パソコン上で作っているのとは全然違うんですよね。
──柏倉さん、超絶テクニカルなこともパンク的でシンプルなフレーズもどちらも行ける方ですし。
生きるエモっていうか。前作の「23:59」という曲でも柏倉さんがドラムを叩いてくださったんですけど、レコーディングで叩いてる姿を見たら泣いちゃって。そういう音を出す方が「時空小箱」という曲を叩いてくださったことがすごく嬉しいし、(中村)圭作さんや(村田)シゲさんも含め、高校とかで聴いてた人たちがこうやって奏でてくれること自体がエモだな、これがまさに“タイムカプセル”だなって思いました。
──もう一つ好きだったのが「アイアム」なんですけど。これもめちゃめちゃ良い曲ですねえ。
ありがとうございます! これも最後まで入れるかどうか迷っていた曲で。
──事実上のタイトルチューンなのに?
タイトルは後から決まったんです。曲自体は入れるか入れまいか最後まで迷って、「入れよう!」と。今の時代にバラードって、あんまりどうなんだろう?というのがあって、しかも年齢層が上目のことを歌っているから、若い子たちはわからないんじゃないか?と思っていたんですけど。でも「買ってくれてありがとうね」という感謝の気持ちと、ライブも含めファンあってのわたしたちだなという思いも込めて入れました。
──普遍的なバラードソングという括りになると思うんですけど、これが最後に構えることで、いろんな方向に尖った作品に安心感が生まれてる気がします。アブナイ愛から始まったのが、最後に安らかな愛を感じて。
アブナイ愛(笑)。たしかに! ……誰かが「このジャケ写で1曲目が『Princess』ってヤバいね」って言ってて、「たしかに!と」。でもめっちゃ面白いな、良い順番だなと思います。
──majikoさんのお気に入りソングだとどのあたりですか?
個人的には「いろはにほへと」がすごく好きで。和チルっていうんですかね? あんまり聴いたことがなかったので作ってみようと。「春、恋桜。」で学んだ大和言葉だったりがわたしと相性が良いみたいで……日本語って素晴らしいなと毎回思うんですよね。サウンドもとにかくカッコよくなって良かったと思って。
──洋楽的なメロディには日本語が綺麗に乗りづらいという話がよくありますけど、大和言葉という手法は一つの解決方法になりうるかもしれないですよね。
そうですね。すごく楽しいですし、「春、恋桜。」は海外の人にも受けが良いみたいなので、そういう日本っぽい感じは好きなんじゃない?と。普通に聴いても全然カッコいいので気に入ってます。
──それで言うと「TENGIC」にも独特なワードセンスが出てますよね。
メロディだけ聴いたら日本っぽいメロですしね。すごく好きな曲です。
──リリース後にはワンマンもあります。タイトルに「強行突破編」と入っていて。
前回のライブでいきなりわたしが「やろう!」と決めたので(笑)。
──ここにもそこはかとなくマッチョ精神みたいなものが伺えます。
多分そうだと思います(笑)。だからポスターも変にお洒落な感じにしないほうが良いと思って、「習字するぞ」って言って出したんですけど、ファンの方が「お金なかったんだな」とか言っていて。「違うから!」「あえてだから!」みたいな(笑)……そういう感じのライブです。
──レコ発でもありますが、どんなライブにしようと考えてますか。
いろいろアイディアはあって、それが可能なのかだけで、あとは強行突破!みたいな。いつものキャパから半分くらいのホールなんですけど、それも強行突破感があって良いなと。だから、楽しもうというのが第一にあるし、あとはしっかり新曲を聴かせて、その後のツアーが終わった頃にどうみんなの中に浸透していくんだろう?っていう、その始まりとして楽しみですね。
──モードとしては依然、筋トレ効果のポジティヴなものということですね。
そうですね。一ヶ月くらい前から毎日セトリ通りに練習してるくらいで。今までのライブって、若さゆえのムラもあったんですけど、もうそろそろしっかり見せるところは見せるというふうな考えにシフトチェンジしたいなと思っていて。そのためにはもっと前から準備をしようっていう。……それもなんか脳筋みたいな考えなんですけど(笑)。やる気満々ですぞ!っていう感じですね。
取材・文=風間大洋 撮影=高田梓
リリース情報
2022年11月16日発売
初回盤
通常盤
●初回限定盤[CD+DVD (Live)] UICZ-9224 6,000円+税
●通常盤[CD] UICZ-4613 3,000円+税
【収録曲】
[CD]*初回限定盤、通常盤共通
01.Princess
02.TENGIC
03.ジャンプ
04.時空小箱
05.交差点
06.いろはにほへと
07.UP-DOWN
08.ラブソング
09.FANTASY
10.劫火のエトワール
11.白い蝉
12.No More Robot
13.アイアム
ライブ映像「majiko one man Live 2022 “愛わかる” at The Garden Hall」
01. 狂おしいほど僕には美しい 02. エスカルゴ 03. 白い蝉 04. 劫火のエトワール 05. 勝手にしやがれ 06. 一応私も泣いた 07. ひび割れた世界 08. エミリーと15の約束 09. 世界一幸せなひとりぼっち 10. 交差点 11. ミミズ 12. FANTASY 13. ワンダーランド 14. パラノイア 15. グリム 16. 23:59 EN1. 心做し EN2. 声
ライブ情報
2022年12月18日(日)東京都 浅草花劇場
OPEN 16:45/START 17:30
¥6,800(税込)
※全席指定。
※6歳以上よりが必要となります。
※未就学児入場不可。
※ご入場時は別途ドリンク代がかかります。
「majiko Presents "愛編む"Release Tour〜愛縁奇縁 編〜」
2023年4月29日(土祝) 愛知・名古屋ボトムライン
2023年5月7日(日)東京・日本橋三井ホール
2023年5月21日(日)大阪・梅田クラブクアトロ