Royal Scandal 音楽性をより拡げ、“新章”の始まりを告げるアルバム『777 -Three Seven-』を3人の言葉で紐解く
luz
ーーなるほど、そういうことでしたか。では、曲のタイトルどおりにファンタジックな空気感やほのかなノスタルジーが漂う「マーメイドシアター」については、ここにはどのような背景があることになるのでしょう。
奏音69:この曲に限らず、今回もサウンドプロデュースで関わってくださっている岸利至さんにはサウンドの面でいろいろと相談させていただいたんですけど、これも明らかにこれまでのRoyal Scandalとは一線を画する音の作り方をしていった曲でした。メロディ自体は私らしいものなんですけど、アコーディオンやシェイカーといったあまり使ったことのなかった楽器の音を取り入れていくことによって、この独特の世界が生まれていくことになったんです。
luz:この曲は詞の面でもロイスキャの新しい世界を提示しているところがあって、従来のセクシーな要素やカッコ良さが色濃く漂っていた歌詞たちと比べると、これは切なさや優しさを感じさせる詞になっているんですよ。そこのところは、僕が歌っていく時にも聴いてくれる人たちの胸の中にしっかりと残るように、という気持ちで細かい感情表現を大事にしていきました。
ーーこの「マーメイドシアター」は特にそうですが、確かに今作は以前のRoyal Scandalと比べると全体的にお色気は控えめですね。
奏音69:なんでですかね? 最近あんまりお色気系の曲って書かなくなっちゃったんですよ。前より私がちょっとまるくなったのかなぁ。
ーーというよりも、おそらくRoyal Scandalの表現領域が以前よりも拡がったことで、色っぽいテイストのものがやや目立ち難くなったなではないかなと。
奏音69:あぁ、そういうのはあるかもしれないです(笑)。
luz:あと、もはやRoyal Scandalにとって色っぽさというのは意図して出さなくても良いものになってきてるというのもあるんじゃないかなと思います。今回はレコーディングの時に奏音69さんから「luzは普通に歌うだけでも声に色気があるボーカリストだから、別に色気を出そうとしなくてもいいよ」って言われたことがあって、そこで初めて「それもそうだな」って自分でも思ったんです(笑)。
ーー確かにそうですね(笑)。そうしたさりげないセクシーさや上品な色気というものは、RAHWIAさんがイラストを描いていくうえでも大切な要素のひとつになっていますか?
RAHWIA:最初に「チェリーハント」の世界を描いた時から、私のイラストに対してはカワイイという評価よりもセクシーという評価の方が多かったので(笑)、そこは私にとっても自然に表現ができているところなんだろうなと思います。
ーーそれでいて、今作のイラストではピンク系の色など淡いトーンの色も駆使されている印象があるせいか、これまでの赤黒の2色のイメージが強かったRoyal Scandalの視覚世界にもさらなる拡がりが生まれたように感じます。
RAHWIA:そこは新章が始まった時に、もう少し色使いの幅を増やしたいと考えたんですよ。曲としてもいろいろなものが出てきている中だったので、やっぱりイラストや動画の中でも世界観を拡げていきたかったんです。
ーーRoyal Scandalの世界が拡がったからこそ生まれた曲としては、R&Bのニュアンスを多分に含んだ「PLAY」も実に面白い仕上がりをみせることになりましたよね。
luz:これは先に僕がボーカルをとって、そのあとに奏音69さんが歌を重ねてこうなったんですよ。初のデュエット曲ですね。
奏音69:曲を作った時点からこれはふたりで歌おうと思ってたんです。アルバム曲だったらデュエットが1曲くらいあってもいいのかな、というコンセプトで作りました。
ーーファンの方々からするとこれは待望の楽曲であるはずです。
奏音69:なんだかんだでluzとは8年くらい一緒にやっていますし、luzのソロの曲も書かせてもらっていて、luzの他の人とのコラボ曲も作ったりしてますけど、ふたりで歌うっていうのはなかったですからね。やる機会としてはluzのソロでもなければ、私のソロというのもちょっと違うなと思い、やっぱりRoyal Scandalしかないでしょうということで今回これも初めての試みです。いつもとは少し違う味付けのRoyal Scandalをぜひ楽しんでください(笑)。
ーーluzさん、この「PLAY」のボーカリゼイションについてはかなりの手応えを感じられているのではないですか?
luz:Royal Scandalのボーカリストでありながら、僕はもともと“裏拍”というものが苦手でしたからね。それを克服したくてリズム感を鍛えるためにダンスレッスンに通ったりしたこともあったんですけど、今回もこの曲をもらった時はまだちょっと苦手意識がどうしてもあったんです。奏音69さんは一番得意なんですけど(苦笑)。
奏音69:あははは、そうなんだよね(笑)。
luz:だから、かなり自分としては今回も試行錯誤しつつ歌っていったところはありましたけど、最終的には思っていた以上に完成度の高いものにすることができたので良かったです。大満足ですね(笑)。
ーーそんな「PLAY」はそれこそカジノを舞台にしたドラマであり、歌詞の中には〈777号室[スリーセブン] 〉という言葉も出てきます。これはアルバムタイトルの『777 -Three Seven-』ともつながるものと考えてよろしいでしょうか。
奏音69:順序としてはまずアルバムタイトルの方が先にあったんですよ。でも、各曲の中にそことつながるフレーズが入っていないなということに後から気付いて、ちょうど「PLAY」の歌詞は一番最後に書いたものでもあったので、〈777号室[スリーセブン] 〉という歌詞を入れました。
RAHWIA
ーーなるほど。今作はここからいよいよ佳境を迎えることになります。最後を締めくくるのは「魔法」という曲になりますが……良い意味でこれはRoyal Scandalの楽曲として極めて特殊ですね。
RAHWIA:最初、私はこのアルバムの中で「チェシャーゲーム」が特にいいなと思っていたんですけど、今は「魔法」がとても好きです。聴いていると、この先のRoyal Scandalに対する期待も膨らんでくるような曲になっていると感じるんです。
奏音69:良かった。「魔法」は絶対RAHWIAが好きになってくれると思ってた(笑)。
ーー「魔法」は物語の中における役割も当然のごとく大きいのですが、それと同時に戦争・紛争、そしてパンデミックに翻弄される現実世界ともリンクするところが多く見受けられる点がとても特徴的ですね。
奏音69:Royal Scandalとしての根本的な枠組みというのは、もちろんファンタジーの世界なんですけどね。でも、その枠組みの中にある物語は人間そのものであったり、現実というものを描いているところがあるんですよ。童話と現実ってかけ離れているようで実はそうでもないよね、というか。
ーーグリム童話しかり、各国の民話しかり、子供向けに書き直される前の原作は往々にして残酷であったり辛辣であることが多いですものね。
奏音69:そうそう。ドロドロしてて、そこに教訓が含まれてるものが多いじゃないですか。童話と現実の境目はない、という視点で作ったのがこの「魔法」です。
luz:そして、これはまず曲としてとても素敵なんですよ。僕もこの曲大好きです。
奏音69:ありがとう(笑)。締切に追い詰められながら作ったせいなのか、何故か今まで自分では開けたことのなかった引き出しから突然このメロディが生まれてきて、あのマーチングドラムみたいなリズムもRoyal Scandalではやったことないのに自然と浮かんできたんですよ。自分で作ってても、新鮮なのに不思議としっくり馴染んでくる感じもあって、これはまた特別な存在感を持つ曲になった気がします。
ーーluzさんはこの「魔法」とどのように対峙されていくことになりましたか。
luz:これは今の僕だから歌えた曲だと思いますね。昔の僕だったら、きっとここまでの深みは出せていなかった気がするんですよ。人間って……誰もが幸せを求めてながら生きているはずで、ここではその大切な幸せっていうものを歌で表現したかったんです。
奏音69:まぁ、この詞の中にあるのは理想論なんだけどね。現実ってこんなにうまくいかないよねっていう皮肉もそこには込めてるんですよ。
luz:そう。だからこそ、ここではできるだけ幸せな理想を歌いたかったですね。
奏音69:どうせ理想論だろうとか、理想論なんて語るだけ無駄とか、なんとなく理想論を語っちゃいけないような風潮もあるのかなとは思いつつも。童話の中でくらい、理想を語ってもいいし、夢を見てもいいし、平和や幸福があってもいいと思うんですよ。これは童話やファンタジーという大きな枠組みを持っているRoyal Scandalだからこそ描けるものだと自信を持って作りました。
ーー「魔法」の中には〈いつか世界があの日のように戻るなら、ここでまた会おうよ。 こんな運命に魔法をかけて、大声で笑って、歌える日が来ますように。〉という歌詞も出てきます。今後のライブに向けた願いがここには込められているのでしょうね。
luz:そこ、僕もすごくグッときました。
奏音69:状況的には今度の『Royal Scandal 2022 TOUR』でもみんなに声を出してもらうことはできないと思うので、それを考えるとこういう歌詞の曲を作ることには少し葛藤や迷いもありましたが、この曲をいずれお客さんたちとみんなで歌える日がやってきたら、その時この曲は本当の意味で完成するんだと思います。
ーー今度の『Royal Scandal 2022 TOUR』は、きっとそこに向けての第一歩となっていくのでしょうね。そして、ライブといえばRAHWIAさんが今度のツアーためになにかしら新規で描き下ろしをされることはあるのでしょうか。
RAHWIA:はい!
luz:グッズのイラストとかは描き下ろしですごく可愛いものを描いてもらってます。
RAHWIA:ポスターもすごくかっこいいものができたので、楽しみにしていてください。
ーー『Royal Scandal 2022 TOUR』は全6都市での計7公演になるそうですが、果たしてアルバムの世界をRoyal Scandalはどのようなかたちで具現化していくことになるのでしょうね。
luz:今回は777にかけての計7公演ではあるんですけど、僕としては1本ずつ違う見せ方をしていきたいなと思ってます。この信頼できる相棒たちと一緒に作ってきたこの世界を、全力で表現できるようなパフォーマンスを目指したいです。
奏音69:アルバムでは新しいことにもたくさん挑戦しましたが、2018年と2019年にやった過去のツアーに来たことがある方には「帰ってきたな」という感覚を味わっていただきたいですし、私たち自身も3年ぶりのツアーを楽しみながら「ロイスキャといえば、そうそうこれこれ!」っていう空間を作っていくつもりです。あとこの3年の間に新しく知っていただいた方たちにも「これぞRoyal Scandal」というライブをお届けしたいと思っています。
取材・文=杉江由紀
リリース情報
KING盤/JACK盤/QUEEN盤 3形態
発売日:2022年12月7日(水)
収録曲数:7曲
発売元・販売元:株式会社ポニーキャニオン
ツアー情報
特設ページ:https://royal-scandal.com/live2022
2022年
12月23日(金) 福岡・Zepp Fukuoka
OPEN17時30分 START18時30分
問:キョードー西日本 0570-092-424(11時00分~17時00分 ※日・祝除く)
OPEN17時00分 START18時00分
問:サウンドクリエーター 06-6357-4400(平日12時00分~15時00分 ※祝日を除く)
OPEN17時00分 START18時00分
問:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100(12時00分~18時00分)
昼の部 OPEN13時30分 START14時30分
夜の部 OPEN17時30分 START18時30分
問:DISK GARADE 050-5533-088(電話対応:平日12時00分~15時00分)
1月5日(木) 宮城・SENDAI GIGS
OPEN17時00分 START18時00分
問:キョードー東北 022-217-7788(平日13時00分~16時00分/土10時00分~12時00分 ※祝日除く)
OPEN17時00分 START18時00分
問:WESS https://wess.jp/contact/