磯村勇斗、衝撃を受けた『オールド・ボーイ』パク・チャヌク監督との対面に感無量 映画『別れる決心』ジャパンプレミアで語り合う
左から、磯村勇斗、パク・チャヌク監督 映画『別れる決心』ジャパンプレミア
12月26日(月)、映画『別れる決心』のジャパンプレミアが東京・TOHOシネマズ 日比谷で行われた。イベントには、本作PRのために来日中のパク・チャヌク監督が登壇。解説ゲストとして古家正亨氏、特別ゲストとして俳優の磯村勇斗が参加した。
『別れる決心』は、第57回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した『オールド・ボーイ』や、『渇き』『イノセント・ガーデン』『お嬢さん』などで知られるパク・チャヌク監督による、6年ぶりの最新作。今年2022年5月の第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門での監督賞を受賞し、本年度アカデミー賞(R)国際長編映画賞部門の韓国代表に選出。先日開催された韓国・青龍賞では、監督賞をはじめ6冠を獲得している。
物語は、刑事ヘジュンが崖から転落死した男の妻ソレの調査を開始することから始まる。取り調べが進む中で、お互いの視線は交差し、それぞれの胸に言葉にならない感情が湧き上がってくる。いつしか刑事ヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたヘジュンに特別な想いを抱き始める。本作では、刑事ヘジュン役でパク・ヘイル(『殺人の追憶』『グエムル ~漢江の怪物~』『殺人の追憶』など)が主演。ソレ役でタン・ウェイ(『ラスト、コーション』『ブラックハット』など)が共演している。
左から、磯村勇斗、パク・チャヌク監督 映画『別れる決心』ジャパンプレミア
映画『お嬢さん』以来、5年10ヶ月ぶりの来日となるパク監督は、日本のファンを前に「今日は寒い中、このように集まっていただきありがとうございます」と感謝しながら「この作品は『お嬢さん』以来となる私の映画監督作であり、コロナ禍を経て初めて作った映画でもあります。とても意味深い作品であり、ベストを尽くして制作した作品です」と挨拶した。
古家氏は「映画賞を総なめしているのみならず、作品としての質も高く評価されている。これまでのパク・チャヌク監督作に比べて暴力や性描写が抑えられているけれど官能的。かなり興奮しました」と絶賛した。
韓国では、本作の脚本集がベストセラーになり、決め台詞がSNSで流行しているという。BTSのRMがInstagramで映画のセリフを話す映像を投稿したことに触れ、パク監督は「RMさんは自分でお金を出して何度も本作を観てくれたようで本当に嬉しいです。次回お会いする際にはお礼を言おうと思います」と笑顔を浮かべた。また、本作制作において古典的スタイルをテーマにしたという。パク監督は「それが私がこれまでに作ってきた刺激的な作品よりも好評を博しているということが非常に興味深いです。人を愛する感情や別れの辛さというものはどの国のどの世代でも共通するものであると再確認することができました」と、手応えを感じていることを明かしていた。
舞台挨拶中盤には、特別ゲストの磯村が花束を抱えて登壇。磯村は自身の出演作『PLAN 75』でパク監督と同じく第75回カンヌ国際映画祭に参加しているが、ふたりはこの日が初対面。10代の頃にパク監督の映画『オールド・ボーイ』を見て衝撃を受けたという磯村は、「あの作品を見たときに“俺はこういう作品に出るような俳優になるんだ”と思ったくらい衝撃を受けました。それを手掛けた監督とお会いできているなんて本当に夢のよう」と感慨無量。これに、パク監督は「私も今日こうしてお会いできて嬉しいです。今後磯村さんは大俳優になって簡単にはご挨拶できなくなると思うので、お会いできてよかった」と応える。当の磯村は「そんなことを言われたら……頑張るしかない!」と自らに気合を入れていた。
左から、磯村勇斗、パク・チャヌク監督 映画『別れる決心』ジャパンプレミア
また、磯村は『別れる決心』について、「中毒性のある映画で面白かったです。過激なシーンを抑えつつも登場人物たちの心情にフォーカスを当てて、刑事ヘジュンと容疑者ソレの掛け合いに胸がウズウズ。何度も観たくなる大人の危険なラブストーリーだと思いました」と絶賛。古家氏も「美術セットにもすべて意味があり、セットから聞こえてくるセリフもあって、見ていてドキドキする。あんなにもセクシーなハンドクリームは初めて」と見どころを挙げていた。
さらに、磯村はパク監督に対し、「撮影現場で心掛けていることは?」と質問。これに監督は「対話」と明かし、「私の作品を見た方は、私という人間は一人で色々なことに拘り、周りの意見を聞かないような人間だと思われるかもしれませんが、私は誰よりもキャスト・スタッフと話をして彼らの話をよく聞きます。ディスカッションすることでそこから良いものを選択することができるし、そこから自分の考えが発展成長もする。これはとても重要なこと」と説明した。これに、磯村は「一番大切なことですね。僕も改めて仲間たちと会話をしながら作ることを大切にしたいと思いました」と感銘を受けていた。
司会の古家氏からパク監督作品への参加の意思を問われると、磯村は「出られるものならば出たいですよ!そのためには韓国語を頑張って勉強しようと思う!」と前のめり。するとパク監督も「磯村さんが韓国語をマスターするのではなく、私が日本語を勉強して日本映画でご一緒するのもありかもしれませんね」と応じていた。
最後に、パク監督は「私にとって幸せな瞬間は、この作品を見て観客の皆さんが笑ってくれた時です。ユーモアとは言語の壁を超えるのが難しいものですが、そのユーモアの部分を外国の皆さんが笑ってくださるということは、この映画で描かれているユーモアが通じたということ。皆さんもこの映画を見て面白いと感じたら、躊躇することなく笑ってくださいね」と日本の観客に呼びかけた。
『別れる決心』2023年2月17日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー。