井上道義(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

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クラシック
2016.1.5

復活を祝うロシアの躍動とオーストリアの至福

 遂にこの日が来るとは…。2014年4月から病気で休養し、同年10月に復活を果たした井上道義が、東京フィルの1月定期に登場。14年7月に叶わなかった幻のプログラムが実現する。これには、代役に立った盟友・尾高忠明が、あえて異なる演目を指揮し、本来のプロは「井上が復活した際に演奏するよう」励ましのメッセージと共に温存した経緯がある。今回両者の想いが現実となるのだから、かくも喜ばしいことはない。

 そのプログラムが、サントリー定期(1/15)&オーチャード定期(1/17)で演奏される、ハチャトゥリアンの「ガイーヌ」第1組曲とショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」。土臭い旋律とリズムが魅力の「ガイーヌ」は、躍動感に充ちた井上のタクトに相応しい作品だし、交響曲全曲演奏を成し遂げたショスタコーヴィチは、彼の最大の十八番。中でも、戦争への怒りなど多様な思いが交錯する壮大な第7番は、井上いわく「最初にこの作曲家の真の魅力を知った曲」だけに、全力投球の熱演間違いなしだ。

 また東京オペラシティ定期(1/21)では、モーツァルトの交響曲第33番とマーラーの交響曲第4番を披露。前者は明朗な佳品で、喜々としたフィナーレは井上の独壇場となる。マーラーも彼が交響曲全曲演奏を行った十八番作曲家。天上的で幸福感に充ちた第4番では、チャーミングに弾む演奏が耳目に浮かぶ。また井上との共演も多い人気ソプラノ歌手・森麻季が「天上の喜び」、ひいては「再共演の喜び」を歌うのも見逃せない。

 井上の東京フィル復帰に相応しい両プロは、我々にも「生きる喜び」を与えてくれるに違いない。

文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年1月号から)


井上道義(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第872回 サントリー定期シリーズ
2016.1/15(金)19:00 サントリーホール
第873回 オーチャード定期演奏会
2016.1/17(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
第98回 東京オペラシティ定期シリーズ
2016.1/21(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京フィルサービス03-5353-9522
http://www.tpo.or.jp

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