『OTODAMA'23~音泉魂~』2日目ーー強い気持ち・強い愛・強い魂で成り立つ、唯一無二なフェス

レポート
音楽
2023.5.26

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『OTODAMA'23~音泉魂~』2023.5.4(THU)大阪・泉大津フェニックス

2日目の5月4日も初日に引き続き「鈴木が覗いた『OTODAMA』」として書いていけたらなと思います。初日は「清水音泉とは」「『OTODAMA』とは」「初日5月3日の演者たちの物語とは」という3点を重点的に掘り下げたので、2日目は、もう少しグローバルな視点でも書いていきたい。と言っても別に、そんなたいそうなことでも無くて。

この日、まず象徴的だったのは会場の泉大津フェニックスに向かう途中で見かけた、観客たちが乗車するシャトルバスだった。色々なフェスへ行く時に電車やバスに乗ると、満席な上に立ちながらでも乗客が乗れるだけ乗せるなんてことはざらにある。商業的興行的には完売が正解であるし、満杯の電車やバスに揺られている時にワクワクドキドキを実感して、ちょっとくらいの苦労ならいとわないという人もいるだろう。でも、みんながみんな外へ出るのが大好きで、アウトドア上等で体力がある人ばかりではない。大人気テーマパークでアトラクションを何時間も待つ状況が苦にならない人もいれば、地元動物園や遊園地で空いている状況が落ち着く人もいる。私は明らかに後者であり、清水音泉や『OTODAMA』の観客も後者が多いはずである、単なる決めつけだが。で、何を言いたいかというと、タクシーから観たバスがガラガラに空いていたのだ。偶然そのバスがガラガラだっただけで、他のバスは満杯だったかも知れない。でも、開演1時間前という混みまくってておかしくない時間帯に、1台でもガラガラのバスを観れたのは何だかホッとしたのだ。生き急がず好きなモノを落ち着いた状況で観れるにこしたことはない。

もう10年くらい前だろうか、四星球が『OTODAMA』のステージ上で、<RUSH BALLは2万人 音泉魂数千人>と、同じ泉大津フェニックスで開催する『RUSH BALL』との比較を「オトダマーチ」という歌にして披露した。腹がちぎれるくらいに大爆笑したし、こんなに的確に言い当てる歌を初めて聴いたので、歌詞を書いた北島康雄を天才だと思ったのを未だに覚えている。清水さんも風呂具(=ブログ)でソーシャルディスタンスなんて言葉が生まれる前から、ソーシャルディスタンスは保てていたと自虐的に書いていた。こちらの勝手な話ではあるが、商業興行として成立するのならば、なるべく空いていて並ばなくていい緩やかな空間がありがたい。コロナ禍前は「オトダマーチ」が懐かしくなる年が増えてきたし、清水さんは観客1万人を超える状況になっても過ごしやすさを常に第一に考えてくれていた。

このコロナ禍でライブへ行く習慣が途絶えた人もいるだろうし、どうしてもコロナ禍前の状況に戻ることは難しい。そんな中でも去年『OTODAMA』が春に復活して、少しづつではあるが観客が戻ってきていることにも気付けた。肝心の今年だが、元々、モッシュダイブは厳禁だし、まだスタンディングエリア前にギュウギュウに詰めるコロナ禍前の行為も禁止である上に、去年より慌てず焦らず楽しもうという観客も多いのか、とてもとても過ごしやすかった。何度も言うが商業興行として成り立つ上で、この落ち着いた楽しみが堪能できる『OTODAMA』が根付いて欲しい。しっかりと踊れるけど、しっかりと安らげるみたいな。序文なのに何故か〆の様な流れになっているが、来年以降も続くために、もっともっと多くの人に知って欲しくて、この文章を書いている。

そして、現在の野外フェス、野外イベントではもはや当たり前となったステージ横のスクリーンについても記しておきたい。これまで『OTODAMA』で基本的に導入してこなかった理由は、「生身の人間のライブを、肉眼でしっかりと観てもらいたい」という清水さんの信念であった。しかし、この御時世では前に詰められない状況もあり、遠くからでも観られるようにと導入されることになったのが去年の話。今年はソーシャルディスタンス的問題が緩和されたこともあり、スクリーンは導入されなかった。やはりスクリーンがあると、どうしてもスクリーンに甘えてしまうのだが、スクリーンが無いと絶対に自分の肉眼で確かめたいという思いが強くなり、自然と何度も前へと足を運んでいた。これも緩やか穏やかな『OTODAMA』だからこそ為せることであり、とても個人的には自由度を感じた出来事であった。

Yogee New Waves 撮影=オイケカオリ

Yogee New Waves 撮影=オイケカオリ

今時に言うところのチルアウトだが、清水音泉的に言うところの快適なユルさをお伝えしたくて、相も変わらず序文から長々と書いてしまった。さて、そろそろライブについても書いていきたい。初日はヤング→ベテラン→ヤングというスタートダッシュだったが、2日目のROTEN壱番風呂からのDAIYOKUJOH壱番風呂は、Yogee New WavesからOKAMOTO’Sという同世代の流れであり、また一味違う。若手だった2組も立派な中堅であり、本番前の楽屋エリアでも仲良く話していたが、リハから高め合うような気合いが入ったサウンドが聴こえてくる。この2組のスタートダッシュ目当てで、朝11時から凄く賑わいを感じられた。Yogeeは、その名も「SISSOU」から鳴らされたが、疾走感でしかない抜けの良い音を届けてくれた。落ち着いて踊れるのに、しっかりと骨太な硬派さも感じられるのが良い。

OKAMOTO’Sも一発目から「Dance With You」を鳴らし、縦ノリだけでない横ノリの気持ち良さを体感させてくれる。オカモトショウが「2019年にトリを任せてもらったり、長らくご恩を感じている」と話していたが、OTODAMAだからこその気合いが伝わってきた。後、場内後方に設置された読売テレビキャラクターであるシノビーの巨大バルーンキッズスペースを、シノビーの背中部分しか見えなかったため、ハマ・オカモトが謎キャラ的に喋っていたのも、彼ら特有のユーモアで思わず笑ってしまう。以前、清水さんはスポンサーについて貰い方がわからないとさえ言っていたが、去年から読売テレビや牛乳石鹸など応援してくれるスポンサーが付いてくれているのは、『OTODAMA』LOVERとしては喜ばしい案件。

OKAMOTO'S 撮影=渡邉一生

OKAMOTO'S 撮影=渡邉一生

「アップデートされているOTODAMA!」

だからこそ、このショウの言葉は嬉しかった。「大好きな大好きなOTODAMA!」と言って、最後は「Beautiful Days」で〆られたが、実に美しき日であることを実感できた壱番風呂の流れだった。GENSEN TENTO壱番風呂もODD Foot Worksという躍らせてくれるバンドであり、この3ステージ壱番風呂並びの型にはまらなさは朝から心が弾んだ。ODDの「本邦初公開宇宙最速初披露メガMAX」という新曲の紹介も大胆で惹かれた。ODDも初登場だったが、この日のGENSEN TENTOも初日同様に、弐番風呂の鉄風東京、参番風呂の家主、伍番風呂のクボタカイと初登場組が並んだ。初という型に良い意味ではまらない家主のデッカい音は、むちゃくちゃ強烈であり、もっとデッカいステージで浴びたらエゲつなくパンチあるだろうなと妄想してしまった。ポップでキャッチーな爆音なのも最高だ。

何気に型にはまらないという言葉が連発されているが、この日はジャンルという意味も含めて型にはまらない演者が多かった。その最たるものはROTEN弐番風呂である水曜日のカンパネラ。先代のコムアイは過去に出場しているが、二代目の詩羽としては初。トラックにのせて歌うのでステージ上には彼女ひとりだが、その何事にも動じない肝の座りっぷりは驚異的だ。リハから「ディアブロ」の<いい湯だね いい湯だね>という歌詞と振り付けをレクチャーしたりと、もう既に何度も出場していると錯覚してしまいそうな貫禄。清水音泉の祭で、この歌が聴けるのも悦ばしい。「赤ずきん」では布団を被ったオオカミが出てくるし、赤い車や招き猫も出てきたりとハチャメチャだが、先代からの伝統芸であるスケルトンボールの中に入って観客の上をゴロゴロ回る破壊力は桁違い。

CHAI 撮影=オイケカオリ

CHAI 撮影=オイケカオリ

水曜日のカンパネラのように、若いながらも『OTODAMA』常連組の風格を感じさせるROTEN参番風呂のCHAI、DAIYOKUJOH参番風呂の羊文学、GENSEN四番風呂の崎山蒼志といった演者にも目が行く。CHAIに関しては最早、外タレの様な風格すら感じる。去年は初々しさを感じた羊文学も堂々とした佇まいであり、清水音泉への愛も感じた。去年『OTODAMA』で貰ったという入浴剤やブラシの話をしつつ、塩塚モエカが担当するラジオ番組で「清水さんの事を知らないでしょ?」と何気にリスナーに投げかけた話をする。するとTwitterで「『OTODAMA』の最初か最後に出てるよ」とリスナーから反応があり、みんなが知っている事に驚いたという。「清水さんに拍手!」と塩塚が呼びかけたら、実際に大きな拍手が起きた。私の横にいた清水さんと同年代の関係者が「愛されてんな」と独り言みたく呟く。

羊文学 撮影=渡邉一生

羊文学 撮影=渡邉一生

そう清水さんは愛されている。こんなことを書くと、そんなことより演者のことを書くようにと清水さんから怒られるが、演者にも関係者にも観客にも愛されているんだから仕方ない。じゃあ、それは何故かと言ったら、本気でライブを取り巻く環境のことを真剣に誠実に考えてくれているから。初日編にも書いたが清水さんは決して出しゃばりではない。必要最低限なことを伝えるだけなのだが、それはスーパーでよくわからない食材を買うよりも、生産者の顔が見える食材を買う方がみたいな安心感に似ている。2日目は初日のような開演前に清水さんの前説挨拶は無く、この日は無いのかと悪気なく気を抜いていた時、その瞬間は突然やってきた。DAIYOKUJOH弐番風呂サンボマスター出番前のちょうど13時頃である。

要約するとこうだ。マスクが個人の自由になり、声出しも可能になったことについて、マスクを着けてない方はマスクを着けている方のことを尊重し、マスクを着けている方はマスクを着けていない方を理解して欲しいということ。そして、入場制限も100%OKになっているが、主催者としてはギュウギュウよりは人と人が少し触れあうくらいの間隔でのやり方を取っていること。堅苦しい挨拶に恐縮しながら、自分たちに自信は無いが、最後のUAまでの出演者は自信を持ってお勧めできること。

「この後、今日イチのピークを迎えると思います。サンボマスターの登場です。皆様どうか楽しんで帰って下さい」

今、文字に起こしていて思ったが、贔屓目とか忖度とか、そんなもの抜きで、そりゃ、この言葉を丁寧に投げかける主催者のこと、信頼して信用するに決まっているでしょう。 

サンボマスター 撮影=渡邉一生

サンボマスター 撮影=渡邉一生

そしてサンボマスター登場。山さんこと山口隆はキレッキレだった。立川談志の如くキレッキレでキレまくりながら兎にも角にも煽りまくる。例年の山さんだと清水音泉をネタにするくだりがあるのだが、この日は特に無く、日本のロックシーンを盛り上げたいという真っ直ぐな気概を感じた。1曲目「輝きだして走ってく」から「ヒューマニティ!」、「青春狂騒曲」、「世界はそれを愛と叫ぶんだぜ」と爆走していく。続く5曲目でスローバラードな「ラブソング」が歌われる。狂騒の後の静寂……。場が歌声に包まれるって、こういう状況を言うんだなと思いながら聴き惚れる。失った魂への美しき鎮魂歌でもある「ラブソング」。ふと2日前の5月2日が命日である忌野清志郎を想い返す。ラストナンバー「花束」では、山さんが<そうだろ~ 清志郎さんよ~ アイラブユー>と語り掛ける。

「悪い予感のかけらもないさ」

忌野清志郎の歌の一節も歌われる。ずっと悪い予感に振り回されてきたライブシーン。だから、この歌詞は沁みた……。新しき日本語ロックの道と光が啓示された美しき時間。

真心ブラザーズ 撮影=オイケカオリ

真心ブラザーズ 撮影=オイケカオリ

ROTEN四番風呂は真心ブラザーズ。夕刻も近づき、風が一番気持ち良い時間帯。それこそ日本語ロックな清志郎イズムを継承する真心だが、YO-KINGと桜井に加えて、リズム隊はウルフルズのサンコンJr.&フラワーカンパニーズのグレートマエカワ。90年代ROCK日本代表オールスター感謝祭な面子には痺れるのみ。風吹く中の「突風」からの「空にまいあがれ」は最高の始まり。YO-KING御本人も「全く今日も調子いいぜ! 参っちゃうわ!」と言っていたが、大将は本当に絶好調。28年前の名盤「KING OF ROCK」収録曲「マイ・リズム」での長年カルテットを組んできた様なリズムがたまらなく格好良かった。最後は「ENDLESS SUMMER NUDE」から「拝啓、ジョン・レノン」と完璧。

「俺が言いたいのは、これだけ! 今年ははしゃげー! メモれーコピれー!」

うなずきトリオやスチャダラパーでもおなじみの名言も出たが、特筆すべきは「拝啓、ジョン・レノン」。27年前にはラジカルにも感じた歌だが、この日はとても温かく歌いかけられ、とても優しく感じた。素晴らしいロックを聴くと幸せな気分になれる。真心の歌はとても優しい。

ドレスコーズ 撮影=オイケカオリ

ドレスコーズ 撮影=オイケカオリ

ROTEN伍番風呂のドレスコーズも日本語ロックを堪能できる時間となった。そして、志磨遼平はロックスターだ。鮮やかな赤のアイシャドーのメイク、ゴールドなジャケットとインナー、ピンク・グリーン・ブルー・ゴールドを基調としたパンツ。もう本当に眩くて輝かしい……。昭和平成には清志郎がいて、令和には志磨がいる、そう思わせてくれるロックスターな佇まい。キラキラした「ナイトクロールライダー」から幕開けして、「素敵なモリ夫(モリー)」、「ビューティフル」、「コミックジェネレーション」と毛皮のマリーズ時代の楽曲も聴けたが、秀逸だったのはラストナンバー「愛に気をつけてね」。ステージ横のスピーカーが設置された鉄塔に登って足場で歌ったのだが、あまりのロックスターぶりにうっとりするしかない。衝動そのままに熟練の域に達している志磨の堂に入ったロックスターな姿……。ほんまに格好良かった。

SIRUP

SIRUP

初日でも触れたが、『OTODAMA』の醍醐味のひとつに、清水音泉が普段イベンターとして携わっていない演者が出場する点も挙げられる。この日はDAIYOKUJOH四番風呂のSIRUPとDAIYOKUJOH伍番風呂の女王蜂の出場にたまげた人も多かっただろう。SIRUPは地元泉大津出身であり、知り合いのOKAMOTO’Sが地元・泉大津でライブしているのを知る度に興奮していたという。今年は遂に自身が故郷に錦を飾ったわけだが、新鮮なグルーヴを感じさせてくれた。

女王蜂 撮影=渡邉一生

女王蜂 撮影=渡邉一生

女王蜂に関しては、13年前にライブハウステントというテントステージに登場している。地元関西の若き新人ではあったが、明らかに異彩を放ち、その場にいた人たちの目をくぎ付けにしていた事は未だに忘れられない。圧倒的な実力を持ち、圧倒的な人気を持つ今、DAIYOKUJOHに現れた。圧倒的な様式美に見とれるが、圧倒的なサウンドに聴き入ってしまう。ジュリ扇を艶やかに舞う観客たちの光景は壮観であり、必要以上のことは何も語らずライブに専心する女王蜂は妖艶ですらあった。

いよいよ2日間に渡る今年の『OTODAMA』が終盤に差し掛かってきた。18時55分DAIYOKUJOH六番風呂ZAZEN BOYS。「本能寺で待ってる」という鋭い音と言葉が飛び込んでくる。リハで鳴らされる「Honnouji」。リハから切れ味鋭すぎて、心は踊るし胸は騒ぐし、こちとら大忙しである。「また来年逢いましょう!」なんて茶目っ気たっぷりに一度袖にはけ、本番を迎えた。

ZAZEN BOYS

ZAZEN BOYS

「MATSURISTUDIOからやって参りました、ZAZEN BOYSです」

その名乗り声だけで気が引き締まる。「くりかえされる諸行無常 よみがえる性的衝動」という向井秀徳の決まり文句も盛り込まれながら、神々しいリズムとビートのキメとタメに呆然とするしかない。一寸の狂いもない。向井が呑み干した缶ビールを投げ捨てたら、すぐにスタッフが新しい缶ビールを差し出す……、そんな所作ですら神々しく感じる。

<ボールにいっぱいのポテトサラダが食いてぇ>と繰り返される「ポテトサラダ」で脳も心もぶっ飛ばされ、向井、ギターのカシオマン、ベースのMIYA、ドラムの松下敦のバキバキゴリゴリブリブリドカドカの音に没頭してしまう。ドラムに3人が向かって鳴らす音は壮絶猛烈なセッションであり、そのストイックさには恐れ入る。清水さんは「2日目はオルタナ度が高いと言いますか、尖った音が溢れる日」と風呂具で書いていたが、この日一番尖った音だったと言っても過言では無い。尋常じゃないほどの熱湯加減で、ラストバトンがUAに繋がる。

UA 撮影=渡邉一生

UA 撮影=渡邉一生

DAIYOKUJOH六番風呂の大トリ、UA。「まいどUAです! 最後までありがとう。鳳啓介の気分で!」から、慌てて「初っ端からスベりました! いってみよ!」なんて言っていたが、このユルい湯加減から始まるのは心地好すぎた。奇しくも2日続けてトリで登場であり、去年も2日間出場していたが、個人的には清水音泉の女神(Muse)と想っているだけに、〆にふさわしすぎる存在。最後の最後に凄い光を放っているし、「情熱」の全てを巻き込むグルーヴィーさにはぐうの音も出ない。夜風が気持ち良すぎるダンスフロアと化した「数え足りない夜の足音」から、反復的なテクノビートにも昇華してると感じてしまうサウンドに恍惚となる「AUWA~TIDA」と完全なるUAの独壇場。初日のフィッシュマンスでも感じたが、ゆらゆら踊れる音は音量規制の無い泉大津フェニックスに異様に映える。

「ありがとう清水さん、こんないいお湯用意してくれて。また、ここで逢いたい」

ビバノンな「いい湯だな」を歌い出して御機嫌なUA。彼女が御機嫌だったら、僕らも御機嫌なわけで。「魂込めて歌います」と宣誓して「プライベートサーファー」へ。色々な鳥の鳴き声を、まるで鳥が憑依したかの様に鳴らしていくUA。どこか遠くへ飛ばされる様な感覚に陥る浮遊感あるゆったりしたサウンド、この時間が永遠に続けばいいのに……。アンコール「ミルクティー」は温かい気持ちで覆われた愛の歌だった。

「清水さんありがとう」

UAは何度も口にしていたが、愛の温もりしかない清水音泉だから、ここまで彼女は口にするだろう。「いい湯だな」を再び歌い、最後は今年最初の花火が初日同様打ち上がる。「かぎや~! たまや~!」というUAの声が舞台端から我々の元にまで届く。

これはあくまで余談でしかないが、終演後、楽屋エリアで関係者全員がUAを出迎えた時、UAは「いい湯だな」をみんなの前で歌っていた。ずっとステージから聴いていた歌を、いざ目の前で歌われた時の突き刺さり方は凄まじすぎて、明るく楽しい歌なのに涙がこぼれそうになる……。UAの清水音泉を愛する強い想いに感激したから涙がこぼれそうになったのだと思う。

「音泉魂! 魂! 魂!」

UAがライブで叫んでいた。全ては魂や気持ちや愛で何とかなるなんて言うと、時代錯誤も甚だしいかも知れないが、魂と気持ちと愛で成り立つ祭を目撃してしまったのだ、我々は今年も。馬鹿のひとつ覚えみたいに何度も書くが、商業興行としても成立しないと意味ない。なので、もっともっと多くの人に来年は来て欲しい。何万人入ろうと魂と気持ちと愛しかない『OTODAMA』のユルやかさは揺るぎないので。日本一自由なフェスに是非とも入浴してくださいな、あったまりますから。

取材・文=鈴木淳史 写真=清水音泉 提供(撮影:渡邉一生、河上良、オイケカオリ)

■次のページは、音泉魂写真館(初日・5月4日編)

DAIYOKUJOH(2ページ目)、GENSEN TENTO(3ページ目)、ROTEN(4ページ目)のライブ写真を掲載中。清水音泉にて受付している、各出演アーティストの公演情報もチェック!

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