第48回菊田一夫演劇賞授賞式 『ハリー・ポッターと呪いの子』関係者一同、天海祐希、坂本昌行、望海風斗、瀬戸山美咲、渥美博らが喜びのコメントを寄せる
(左から)渥美博 天海祐希 佐々木卓 堀義貴 瀬戸山美咲
2023年6月7日(水)、第48回菊田一夫演劇賞の授賞式が行われた。
菊田一夫演劇賞とは、演劇界に偉大なる足跡を残した菊田一夫氏の業績を永く伝えるとともに、氏の念願であった演劇の発展のための一助として、大衆演劇の舞台ですぐれた業績を示した芸術家(作家、演出家、俳優、舞台美術家、照明、効果、音楽、振付、その他のスタッフ)を表彰するもの。
本年度の菊田一夫演劇大賞を受賞した舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」よりTBS代表取締役社長・佐々木卓とホリプログループ会長・堀義貴、演劇賞を受賞した天海祐希、瀬戸山美咲、演劇賞特別賞受賞の渥美博が出席した。また、坂本昌行の代理で「凍える FROZEN」プロデューサーである株式会社パルコ エンタテインメント事業部 演劇事業担当ゼネラルプロデューサー佐藤 玄が、コロナウイルス罹患により欠席の望海風斗の代理としてワタナベエンターテインメント代表取締役社長 渡辺ミキが登壇した。
以下、受賞者のコメントを紹介する。
<演劇大賞>
舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」上演関係者一同:舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」の高い舞台成果に対して
舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」 撮影:宮川舞子
ホリプログループ会長 堀 義貴
ホリプログループ会長 堀 義貴
2017年に演劇大賞をいただいた『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』をやった時は、人生最大の大博打だと言いました。ハムレットの台詞をもじると、博打というものは手を出すと単体ではなく群れをなしてやってくるもので、その後すぐ『メリー・ポピンズ』の上演、そしてこの『ハリー・ポッター』のお話がありました。私たちは劇場を持っていないので難しいかと思いましたが、今までの作品も共に作ってきたTBSさんと一緒にやる決断をしました。今回受賞された皆さんの作品は全部拝見し、どれも素晴らしい作品でした。その中で大賞をいただき、本当に嬉しく思います。これはこの難しい作品を無制限のロングランでやれる状態にしてくれているキャストとスタッフ、スポンサーさんのおかげだと思っています。前の2作の博打とは違い、この作品は何年かやってようやく勝ち負けがわかる作品です。その代わり、初めて演劇を見るという方も多くご来場くださっています。この賞と菊田先生の名に恥じないよう、これからも色々な作品を作ってまいりたいと思います。
株式会社TBSテレビ 代表取締役社長 佐々木卓
株式会社TBSテレビ 代表取締役社長 佐々木卓(左)
『ハリー・ポッター』のキャストはまるでアスリートのような激しいトレーニングをして連日舞台に立ち、スタッフは1秒のタイミングの狂いもないようにという緊張感の中で舞台を支えてくださっています。心から敬意を表したいです。
TBS赤坂ACTシアターは現在ハリー・ポッター専用劇場に生まれ変わっておりますが、劇場に至るアプローチ部分も色々と作り変え、今ではまるで魔法の街のような風情に仕上がっております。家族連れの方が写真を撮りに来てくださったり、最近では海外からの観光客も増えています。そうした光景を眺めているうちに、世界の人々に日本版の『ハリー・ポッター』を見てもらいたいという野望が渦巻いてきました。菊田先生は世界で初めて『風と共に去りぬ』を舞台にし、ロンドンのウエストエンドで翻訳上演した方です。栄えある賞をいただいたことを励みに、日本の『ハリー・ポッター』を、本家ロンドンを凌ぐ作品と言われるくらい努力したいと思っています。
<演劇賞>
天海祐希:「広島ジャンゴ2022」の山本/ジャンゴ役、「薔薇とサムライ2―海賊女王の帰還」のアンヌ役の演技に対して
天海祐希
『広島ジャンゴ2022』 撮影:細野晋司 写真提供:Bunkamura
劇団☆新感線『薔薇とサムライ2−海賊女王の帰還−』 ©ヴィレッヂ/松竹
菊田一夫演劇賞をいただくことができ、とても驚いていますし恐縮しています。まずは「広島ジャンゴ2022」、「薔薇とサムライ2―海賊女王の帰還」のキャスト、スタッフ、関わってくださった全ての皆様に心から感謝申し上げます。色々と難しい時期でしたが、劇場に足をお運びくださった皆様にも心から感謝しています。
演劇は生ものですから、生の人間が演じ、生の人間が客席で観てくださるもの。大変な時に何もできない自分に対する絶望もありましたが、人間の可能性、そして舞台の可能性をたくさん感じることもできました。希望を持って千秋楽まで走ることができた作品でこのような素晴らしい賞をいただけたことに感謝し、まだまだ精進していきたいと思いますし、たくさんの方に楽しんでいただける舞台を作っていきたいなと心から思います。
坂本昌行:「THE BOY FROM OZ」のピーター・アレン役、「凍える FROZEN」のラルフ役の演技に対して
「THE BOY FROM OZ」
「凍える FROZEN」 撮影:細野晋司 写真提供:株式会社パルコ
この度はとても名誉ある賞をいただき、喜びと驚きで胸がいっぱいです。大先輩の東山さんからいただいた「頑張っていれば、人が必ず見てくれている」という言葉を胸に作品作りをしてきました。まさに今、現実となりました。この賞に恥じぬよう、これからもお客様により良い作品をお届けできるよう邁進してまいります。
望海風斗:「ネクスト・トゥ・ノーマル」のダイアナ役、「ガイズ&ドールズ」のミス・アデレイド役「ドリームガールズ」のディーナ・ジョーンズ役の演技に対して
「ネクスト・トゥ・ノーマル」 写真提供:東宝演劇部
「ガイズ&ドールズ」 写真提供:東宝演劇部
「ドリームガールズ」 ©梅田芸術劇場
この度は素晴らしい賞をいただきましたこと心から感謝申し上げます。授賞式に出席したら実感が湧くのだろうとこの日を楽しみにしておりましたが、残念ながら出席がかなわず、とても悔しいですし、申し訳ない気持ちでいっぱいです。どの役も、一人で作り上げたのではありません。カンパニーの皆さんのおかげでそれぞれの人物を息づかせることができたのだと思います。皆様に感謝申し上げたいです。
ここからは個人的な話になりますが、私は小学生の頃に初めて宝塚歌劇を見に行き、天海祐希さんに一瞬で恋に落ちました。天海祐希さんみたいな男役になりたいと夢見て、今から20年前に宝塚で初舞台を踏みました。私をこの世界に導いてくださった憧れの方と今日、同じ場所に立たせていただけるなんて信じられないという思いが強すぎたのかもしれません。こんな大事なときに健康管理もできない自分がとても情けないのですが、この悔しさをバネに、そしていただいた賞を支えに、これからも一つひとつの作品、役に真摯に向き合い続けたいです。
瀬戸山美咲:「スラムドッグ$ミリオネア」「ザ・ビューティフル・ゲーム」の上演台本と演出の成果に対して
瀬戸山美咲
私はこれまで主にストレートプレイを手掛けてきました。音楽劇の経験も僅かで、ミュージカルに至っては初めてでこのような賞をいただき、身の引き締まる思いです。まずは素晴らしい機会をくださったプロデューサーの皆様に感謝いたします。
「スラムドッグ$ミリオネア」は小説が原作の新作音楽劇でした。音楽制作チームや振り付け、パルクールなど色々な要素を取り入れ、素晴らしい俳優とスタッフ、バンドの皆さんに支えられ、想像力の翼を思い切り広げて作った作品でした。上演は昨年の8月で、コロナのピークでもありましたが、アンダーステディや稽古場代役、臨時のスタッフの方などに支えていただきました。チームワークが活きていた公演だと思っています。「ザ・ビューティフル・ゲーム」は、私にとって初めてのミュージカルで、国内外で活躍してきた先人の皆様の素晴らしさを実感する毎日でした。経験豊富なキャスト・スタッフの皆さんと一緒に作品を作れたことが本当に嬉しかったです。楽譜の中に答えがあると言うのは私にとって初めての経験で、演劇の可能性を改めて知ることができました。どちらも今現実にある問題をエンターテイメントの形で提示した作品でした。私自身もこれから今描くべきことを描いた、力強く骨太で面白い作品を作っていくことで、多くの方にお返ししていこうと思っています。
<特別賞>
渥美博:永年の舞台におけるアクション指導の功績に対して
渥美博
特別賞をいただけるとは思いませんでしたが、お喋りが担当ではないので手短に。諸先輩方にアクションは殺陣の芝居だと言われ、信じて今までやってきましたことを誰かに見ていただけるんだということを証明できたと思います。これからも芝居の一部としてのアクション・殺陣が皆さんに喜んでいただけるように頑張っていきたいと思います。
(左から)渥美博 天海祐希 佐々木卓 堀義貴 瀬戸山美咲
取材・文・撮影(授賞式)=吉田沙奈