開く記憶の扉、蘇るときめき! 「ときめきトゥナイト展」レポート
「ときめきトゥナイト展」 (C)池野恋/集英社
池野 恋による漫画『ときめきトゥナイト』初の大型展覧会「ときめきトゥナイト展」が、2023年7月19日(水)から8月7日(月)まで東京・新宿高島屋(正式表記ははしごだか)11階特設会場にて開催中だ。本作は1982年に「りぼん」(集英社刊)で連載開始したロマンチックファンタジー。それから40年以上にわたり数知れぬ少女たちのハートをキュンキュンさせ続け、現在も「クッキー」(集英社刊)で続編『ときめきトゥナイト それから』を連載中である。
展覧会コンセプトの“記憶の扉”をイメージしたエントランス (C)池野恋/集英社
それではさっそく“記憶の扉"を開けて、「ときめきトゥナイト展」の世界をのぞいてみよう。扉の向こうには、計300点以上の原画やカラーイラスト、そしてときめき必至の様々な仕掛けが、来場者たちを待っている。
※展示内容に触れているため、ネタバレを避けたい方はご注意ください。
ときめきの殿堂へようこそ
展示風景 (C)池野恋/集英社
まずは広間にて、『ときめきトゥナイト』三部作のオールスターが一斉にお出迎え。一部キャラの肖像は見る角度によって姿が変わるようになっているので、左右にステップを踏んで変身を楽しもう。
展示風景 (C)池野恋/集英社
ちなみに姿が変わるのは一部の魔界人のみの仕様なのだが、例外的に曜子(人間)もまた、変身後のアノ姿が見られるのが心憎い。
少女漫画史に輝く、ラブ:コメディの黄金比率
展示風景 (C)池野恋/集英社
展示は「蘭世」「なるみ」「愛良」3人のヒロインそれぞれの記憶をたどるように、年代順に進んでいく。まずは伝説の始まりである、第一部「蘭世編」のエリアだ。
展示風景 (C)池野恋/集英社
1982年7月号に掲載された、記念すべき第1話の肉筆原稿! ストーリーの内容についても丁寧に解説がつけられているので、まだ漫画を読んだことがない鑑賞者でも十分楽しむことができそうだ。
展示風景 (C)池野恋/集英社
物語序盤はドタバタコメディの要素が強めで、蘭世も周りのキャラもなかなかに体当たりなボケ・ツッコミを披露しているのが面白い。……と思えば、右手に展示されている第3話の蘭世のいじらしさに胸を撃ち抜かれた人も多いのでは。「どうして人間の男の子を好きになっちゃいけないの? は 初恋なのに」の名シーンである。初恋をちょっと言い淀んでいるところがもう、めちゃめちゃ可愛い。テンポ良く笑わせておいて、ここ一番で心をキュッと掴む。この黄金バランスが『ときめきトゥナイト』をラブコメの金字塔ならしめているに違いない。
真壁クン! 真壁クン! 真壁キューン!
『ときめきトゥナイト』といえば、真壁くんこと真壁俊のカッコ良さを抜きには語れない。彼に心震わせた多くの女子たちのために、会場には真壁くんの名シーン“壁ドン”を実際に体験できるフォトスポットが用意されている。
真壁くんのフォトスポット (C)池野恋/集英社
フォトスポットのまわりには蘭世の夢の中という設定で、あんな真壁くんやこんな真壁くんの男前シーンがコラージュされている。シャッターが止まらなくなりそうな一角だ。
展示風景 (C)池野恋/集英社
そして物語は魔界の秘密や過去に迫り、だんだんとシリアスな展開に。苦難を乗り越えて絆を深めていく蘭世と真壁くんの歩みを原画で追体験しよう。
あっ、この1枚は……! (C)池野恋/集英社
夢のような淡いタッチのキスシーンにうっとり。このシーンの原画が見られただけで、髪と肌の色ツヤが良くなった気がする。
パンサー・菅良太郎が『ときめきトゥナイト』愛を語る!
パンサー・菅良太郎 (C)池野恋/集英社
会期初日に開催されたオープニングセレモニーには、ゲストとしてお笑いトリオ「パンサー」の菅良太郎が登場。女きょうだいに囲まれて育ち、少女漫画に深く馴染んでいるという菅は、実は本作と同じ1982年生まれ。もちろん『ときめきトゥナイト』も大好きで、ページをめくるごとにキュンキュンしていたという。特にお気に入りは“蘭世の息子・卓の命名シーン”とのこと。「深い愛を感じる、すごいいい話ですよね! コミックはもう、お風呂で読んだの? ってくらい(涙で)フニャフニャです」と熱っぽく語り、会場は和やかな空気に包まれた。
グッズの「毎日真壁くんカレンダー」の名セリフ「よしな 俺はしょせん一匹狼だ」を読む (C)池野恋/集英社
本展で改めて原画を見て「まるで夢の中に入ったような」色のキレイさに感動したという菅。さらに、真壁くんに壁ドンしてもらえるフォトスポットも嬉しい衝撃だったという。「まあ、僕は真壁くん“を”壁ドンしたいので、そのパネルをこうやって二重に壁ドンしようかなって(笑)。そういうふうにも楽しめますよ!」とのコメントにはどっと笑いが。
最後に来場者へのメッセージとして「未読の方でも楽しめるし、友達同士や親子で一緒に、なんなら3世代で来てほしい展覧会です。蘭世にももう孫が生まれてますからね。そうやって世代を超えて受け継いでいきながら、みんなで楽しめるのが『ときめきトゥナイト』なんだと思います」と、笑顔で締めくくった菅。『ときめきトゥナイト』愛が溢れるオープニングセレモニーとなった。
そして物語は第2、第3ステージへ……
展示風景 (C)池野恋/集英社
さて、展示に戻ろう。続いては『ときめきトゥナイト』第二部、「なるみ編」の記憶の扉が開く。物語は蘭世と真壁くんの結婚式後から始まる。蘭世の弟である狼男の鈴世、そのガールフレンドのなるみを中心として進んでいくストーリーだ。
展示風景 (C)池野恋/集英社
「なるみ編」といえば、ロミオとジュリエットを換骨奪胎した感動のラストが忘れられない。名シーンの肉筆原画と一緒に、心は中学校の文化祭ステージへとワープである。
展示風景 (C)池野恋/集英社
そしてさらに奥へ進むと、第三部「愛良編」の展示エリアが。ここでは蘭世と真壁くんの娘である愛良がヒロイン。愛良が幼稚園生〜小学生〜中学生と成長していくのを見守りつつ、その壮大な恋の行方を追いかけるパートだ。
展示風景 (C)池野恋/集英社
魅惑のカラーイラストの展示がたっぷり。改めて見返すと、第三部まできて登場人物も増えている(しかも親族関係多し)というのに、ひとりひとりのキャラクターの明確な描き分けの妙にハッとさせられる。
展示風景 (C)池野恋/集英社
こちらは連載終了から6年後の2000年に発表された、真の完結編『ときめきトゥナイト−星のゆくえ−』の原画展示。本展ではこのほか、番外編である「鏡の国のランゼ」「クリスマスの贈りもの」「真壁俊の事情」「江藤望里の駆け落ち」「江藤蘭世の宝箱」の展示エリアも用意されている。特に「クリスマスの贈りもの」では、真壁くんが初めて蘭世への気持ちを言葉にする、あの名シーン原画も見られるのでお楽しみに。
「それから」の展示がハッピーすぎる!
展示風景 (C)池野恋/集英社
現在「クッキー」で連載中の『ときめきトゥナイト それから』では、再び蘭世がヒロインに。43歳になった蘭世が、家族や友人と一緒に新たなトラブルに立ち向かっていく。お馴染みのキャラたちの可愛さ&かっこよさはもちろん健在、むしろ増している……?
蘭世のSNS (C)池野恋/集英社
原画のほかにぜひ注目してほしいのは、蘭世のSNSである! SNS風のモニター画像が移り変わっていくのを眺めていると、蘭世やフォロワー(愛良や曜子が多い)のコメントがリアルで、ついニヤニヤしてしまう。
「あの人に告白されたいっ」贅沢な欲望が止まらない
展示風景 (C)池野恋/集英社
さて、物語の原画展示をめぐった後は、作中に登場する「想いヶ池」をイメージしたメッセージコーナーへ。オリジナルメモ用紙に、溢れる『ときめきトゥナイト』への想いを綴って残していこう。メモ用紙にデザインされた想いヶ池の花の模様が可愛くて、つい紅茶に入れて飲みたくなる……けどグッと我慢。
想いヶ池告白体験! (C)池野恋/集英社
奥でそっと来場者を待つのは「想いヶ池告白体験」のコーナー。一番会いたい人の元へテレポートできるという魔界の「想いヶ池」を模した装置で、起動させるとランダムでキャラクターが現れて告白してくれるという。想いを込めてスイッチを押すと……キラキラキラ〜と水面(画面)が輝き出す。そして、その向こうから現れるのは……(ちなみに筆者の推しは第二部の鈴世くんである)!?
きゃーーーーーーー! (C)池野恋/集英社
まさかの、一発目での推しの登場! なんてラッキー! 推しへの愛と絆を確認し、さらに奥へと進もう。ちなみに……てっきり登場するのは真壁くん・鈴世・彬水だけかと思いきや、ゲストであるパンサー・菅がこの告白体験を試してみたところ、玉三郎(曜子のパパ)が愛を告白してくれたとのこと。ほかにも、とても多彩なキャラクターが用意されているそうなので、ぜひ実際に会場でチャレンジしてみてほしい。
貴重なラフスケッチを一挙展示
展示風景 (C)池野恋/集英社
展示風景 (C)池野恋/集英社
本展では、連載当時の扉絵やふろくの原案となった貴重なラフスケッチを初公開。一枚一枚を見ていくと、とても“ラフ”とは呼べない完成度で、改めて作家の画力の高さにキュンキュンしてしまう。採用されなかったボツ案はむしろ、蘭世たちのオフショットを見ているようで得した気分である。
蘇る「りぼん」の想い出に、目頭が……
展示風景 (C)池野恋/集英社
「りぼん」連載時に表紙を飾ったイラストの原画・複製原画の展示も。1982年7月号の表紙を見てみると、初回『ときめきトゥナイト』はまだラブもファンタジーも前面に出されておらず、「新れんさい 巻頭カラー 激笑学園コメディ!」のコピーを冠しているのが面白い。
展示風景 (C)池野恋/集英社
展示風景 (C)池野恋/集英社
展示の最後には「りぼん」の付録を集めたコーナーが。数多のときめきが待ち受けていたこの展覧会だが、個人的に記憶の扉がババーン! と開いたのは、この愛良のサマーバッグを見た瞬間だ。これと同じものを確実に、持っていた……! プールの時間に、持って行った……! 少女の頃の記憶と感性が一気に押し寄せ、目頭が熱くなった。きっと誰もが、この展覧会のどこかでこういう瞬間に出会えるのだろう。
いつも心に、ときめきを。
展覧会オリジナルグッズの一部 (C)池野恋/集英社
展覧会特設ショップでは、多彩な展覧会オリジナルグッズが。「毎日真壁くんカレンダー」(税込1,980円)や「ぬいぐるみ〈ヨーコ犬〉」(税込2,420円)、「真壁くんからのプレゼント〈星型ペンダント〉」(税込9,900円)など、心をくすぐる魅惑のラインナップなのでぜひチェックを。また、豊富なカラーイラスト、ラフスケッチ、インタビューなどを収めた「展覧会開催記念 公式図録」(税込2,200円)にも注目だ。これまで池野 恋はイラスト集を出していないため、この図録は『ときめきトゥナイト』のイラストをいつもそばに置いて眺められる、ファン待望の一冊なのだ!
ときめきは、心の滋養強壮剤であり、最高の美容液。これはきっとノスタルジーだけでなく、今日を生きるリアルな活力をくれる、そんな展覧会だ。
「ときめきトゥナイト展」は2023年8月7日(月)まで、東京・新宿高島屋 11階特設会場にて開催中。その後、10月11日(水)から10月30日(月)まで京都高島屋7階グランドホールにて、12月22日(金)から2024年1月9日(火)まで富山大和6階ホールにて巡回予定。
文・写真=小杉 美香
展覧会情報
会場:新宿高島屋 11階特設会場
会期:2023年7月19日(水)~8月7日(月)
時間:午前10時30分〜午後6時30分(午後7時30分閉場)
※ 最終日8月7日(月)は午後5時まで(午後6時閉場)
「ときめきトゥナイト展」京都会場
会場:京都高島屋 7階グランドホール
会期:2023年10月11日(水)~10月30日(月)
時間:午前10時〜午後6時(午後7時閉場)
※ 最終日10月30日(月)は午後4時まで(午後5時閉場)
「ときめきトゥナイト展」富山会場
会場:富山大和6階ホール
会期:2023年12月22日(金)~2024年1月9日(火)
※詳細は決定次第、ポータルサイトで発表
主催:ときめきトゥナイト展実行委員会
ときめきトゥナイト展ポータルサイト:https://tokimekitonight-ex.com
展覧会公式Twitter/Instagram:@tokimeki_ex
高島屋「ときめきトゥナイト展」公式サイト:https://www.takashimaya.co.jp/store/special/tokimekitonight/
【問合せ】
新宿高島屋 TEL03-5361-1111(代表)、京都高島屋 TEL075-221-8811(代表)
(C)池野恋/集英社