京都で「最後の文人画家」の回顧展『没後100年 富岡鉄斎』開催、書の名作や「印癖」を物語る印章のコレクションも

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2024.3.11
『没後100年 富岡鉄斎』

『没後100年 富岡鉄斎』

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4月2日(土)から5月26日(日)まで、京都国立近代美術館にて没後100年を迎え、「最後の文人画家」と称えられる富岡鉄斎(1836-1924)の回顧展『没後100年 富岡鉄斎』が開催される。

幕末、京都の商家に生まれた鉄斎は、近世都市の商人道徳を説いた石門心学を中心に、儒学・陽明学、国学・神道、仏教等の諸学を広く学ぶと同時に、南宗画、やまと絵等をはじめ多様な流派の絵画も独学し、深い学識に裏付けられた豊かな画業を展開した。良い絵を描くためには「万巻の書を読み、万里の路を行く」ことが必要であるという先人の教えを徹底して守ろうとした鉄斎は、何を描くにもまずは対象の研究に努め、北海道から鹿児島まで全国を旅して各地の勝景を探った。そうして胸中に思い描かれた理想の山水を表出し、人間の理想を説いた鉄斎の絵画は、画壇の巨匠たちから敬われ、京・大阪の町の人々に広く親しまれた。さらには新世代の青年画家たちからもその表現の自由闊達で大胆な新しさで注目され、生前から今日まで国内外で高く評価されてきた。

富岡鉄斎 「三津浜漁市図」 1875年 40歳 清荒神清澄寺 鉄斎美術館 ★第3~4期展示

富岡鉄斎 「三津浜漁市図」 1875年 40歳 清荒神清澄寺 鉄斎美術館 ★第3~4期展示

同展では六曲屏風一双の大作「富士山図」、「妙義山図・瀞八丁図」、「富士遠望図・寒霞渓図」、「阿倍仲麻呂明州望月図・円通大師呉門隠栖図」(重要文化財、第一期のみ)や、掛軸の「三津浜漁市図」、「菟道製茶図・粟田陶窯図」双福、「嫦娥奔月図」、「碧桃寿鳥図」、「瀛洲仙境図・西王母図・福禄寿図」三幅対など、代表作を多数展示。また一般に公開されたことのない「土神建土安神社図・椎根津彦像・平瓫図」三幅対や、画集のモノクロ写真で知られるのみだった初期の屏風「山水図」、50年振りの公開となる「渉歴余韻冊」など、従来の鉄斎展では観ることのできなかった作品も紹介する。

富岡鉄斎 重要文化財 「阿倍仲麻呂明州望月図・円通大師呉門隠栖図」 1914年 79歳 公益財団法人 辰馬考古資料館 ★第1期展示

富岡鉄斎 重要文化財 「阿倍仲麻呂明州望月図・円通大師呉門隠栖図」 1914年 79歳 公益財団法人 辰馬考古資料館 ★第1期展示

なお同展は、京都国立近代美術館のあと富山県水墨美術館、碧南市藤井達吉現代美術館へ巡回予定だが、鉄斎作品の所蔵者が京都周辺に集中していることもあり、「妙義山図・瀞八丁図」、「阿倍仲麻呂明州望月図・円通大師呉門隠栖図」(重要文化財)、「雪・月・花・茶詩書」、「蜃楼海市図」などは京都会場のみの展示となる。

展覧会構成

1)序章 鉄斎の芸業 画と書

富岡鉄斎 「勾白字詩七絶」 60歳代 清荒神清澄寺 鉄斎美術館 ★第1~2期展示

富岡鉄斎 「勾白字詩七絶」 60歳代 清荒神清澄寺 鉄斎美術館 ★第1~2期展示

鉄斎の画業を初期から晩期の手前まで一気にたどる。鉄斎は生前、書家としても親しまれていたことから、絵画だけではなく二曲屏風一双の大作「雪・月・花・茶詩書」のほか、親しくしていた画家の今尾景年のため揮毫した「養素斎書」、陶芸家の四代清水六兵衞に捧げた「四代清水六兵衞宛弔辞」など、書の名作も紹介。初期作品の繊細な美しさと、50歳代の作品の力強さ、60歳代の作品の円熟が観られる。

2)第一章 鉄斎の日常 多癖と交友

絵画制作と読書に日々励んでいた鉄斎の画室に置かれていた松花堂昭乗の墨や、池大雅の筆、青木木米が制作した硯、岡田(冷泉)為恭の絵を用いた襖など遺愛の品々も多数展示。都市に生きた鉄斎の日常が垣間見えるような旧蔵の書籍の中には、池大雅の旧蔵本や小田海僊の旧蔵書画も含まれる。また、印章に特別な愛着を持ち「印癖」であった鉄斎。その膨大なコレクションの中から、印譜「鉄老斎印景」に載るものを中心に120顆を公開。研究成果としての「筆録」などを取り上げ、「文人多癖」と呼ばれる彼の関心の広さを通じて彼の交友関係をも窺う。

3)第二章 鉄斎の旅 探勝と探究

万巻の書を読み、万里の路を行くということを標榜した鉄斎は、京都を中心に、鹿児島から北海道まで全国各地を旅した。彼の旅をめぐるさまざまな側面を、作品と資料により紹介。

4)終章 鉄斎の到達点 老熟と清新

富岡鉄斎 「富士遠望図・寒霞渓図」(右隻) 1905年 70歳 京都国立近代美術館 ★第4期展示

富岡鉄斎 「富士遠望図・寒霞渓図」(右隻) 1905年 70歳 京都国立近代美術館 ★第4期展示

数え年89歳まで生きた鉄斎の画業は60歳代までに一つの円熟期を迎えたのち、70歳代から80歳代にかけてさらに自由奔放に展開した。晩期の鉄斎作品の充実と新鮮な魅力を最後に堪能できる。

詳細はHPをチェックしよう。

ライブ情報

展覧会『没後100年 富岡鉄斎』
【開催期間】 2024年4月2日(火)~5月26日(日)*会期中に一部展示替えがあります
  第一期 4月2日~4月14日/第二期 4月16日~4月29日
  第三期 5月1日~5月12日/第四期 5月14日~5月26日
【開館時間】 午前10時~午後6時 金曜日は午後8時まで開館 *入館は閉館の30分前まで
【休  館 日】 月曜日(ただし4月29日(月・祝)、5月6日(月・祝)は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)
【観  覧 料】 一般1,200円(1,000円)、大学生500円(400円)
※( )内は前売と20名以上の団体及び夜間割引(金曜午後6時以降)
※高校生以下・18歳未満は無料*。
※心身に障がいのある方と付添者1名は無料*。
※母子・父子家庭の世帯員の方は無料*。
*入館の際に証明できるものをご提示ください。
※本料金でコレクション展もご覧いただけます。
※前売券は3月1日(金)~4月1日(月)までの限定販売。
【会 場】 京都国立近代美術館[岡崎公園内](〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町)
【主 催】 京都国立近代美術館、清荒神清澄寺 鉄斎美術館、毎日新聞社、京都新聞
【協 賛】 ライブアートブックス
【お問合せ】 075-761-4111
[美術館公式HP] https://www.momak.go.jp/
※詳細は公式HP等で随時お知らせさせていただきます
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