ミュージカル『VIOLET』W主演の三浦透子&屋比久知奈にインタビュー 「心に留まる素敵な作品」「やりきったら泣いちゃうかも」

インタビュー
舞台
2024.4.2
三浦透子(左)、屋比久知奈 撮影=五月女菜穂

三浦透子(左)、屋比久知奈 撮影=五月女菜穂

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ミュージカル『VIOLET』が2024年4月7日(日)からの東京芸術劇場プレイハウス公演を皮切りに、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、キャナルシティ劇場、仙台電力ホールにて上演される。主演のヴァイオレット役には、女優として映画やテレビドラマ、舞台、さらには音楽活動と多彩な才能を発揮している三浦透子と、類まれな歌唱力と表現力を活かし、ミュージカル界で快進撃を続ける屋比久知奈。この実力派二人がダブルキャストで、顔に大きな傷を負いながらも自らの人生を切り開く為バスの旅に出る主人公を演じる。今回、SPICE編集部はヴァイオレット役の三浦と屋比久に作品に懸ける思いや楽曲の見どころなどを聞いた。

三浦透子(左)、屋比久知奈

三浦透子(左)、屋比久知奈

梅田芸術劇場が英国チャリングクロス劇場と共同で演劇作品を企画・制作・上演し、演出家と演出コンセプトはそのままに「英国キャスト版」と「日本キャスト版」を各国それぞれの劇場で上演したミュージカル『VIOLET』。演出家・藤田俊太郎が単身渡英し、現地のキャスト・スタッフと作り上げた2019年のロンドン公演は、『オフ・ウエストエンド・シアター・アワード』で6部門にノミネートされ、中でも日本人演出家の作品が栄誉ある「作品賞」候補に選ばれる快挙となった。2020年にはコロナ禍での中止を乗り越え3日間の限定上演で日本での日本キャスト版が実現。そして、2024年に待望の再演が始動する。


ーー改めて、出演が決まったときのお気持ちや作品への期待感を教えてください。

三浦透子(以下、三浦):まずこんなに大きな役を自分に託そうと思ってくださったことがシンプルに嬉しかったです。自分にとってはものすごく大きな挑戦。挑戦の場をもらえるのは、奇跡みたいなことだと思うんです。その気持ちが本当に純粋に嬉しかったですね。そして、とても魅力的な脚本だなと思いました。ヴァイオレットという女性は、彼女の心に触れてあげたいと思うような魅力のあるキャラクターだと思いました。

屋比久知奈(以下、屋比久):2020年に唯月ふうかさんバージョンの公演を拝見していて、素敵な作品だなと思って。そのときに曲も好きになって、そこから聴いていたりしていて......なので、出演は純粋に嬉しかったです。ただ同時に、あのときに感じた「すごく素敵だけど、すごく難しい役だな」という思いもあって。いろいろな表現の方法があるし、その広さとか難しさを考えたときに、大きな責任があるなと改めて思いました。そういった意味でも、私にとって、すごく挑戦の作品だなと感じましたし、とにかく持てるものを注ぎ込んでやるしかないと思っています。気合い入っています!

三浦透子

三浦透子

ーータイトルロールのヴァイオレット。彼女のどういうところに共感したり、どういうところに魅力を感じたりしていますか?

三浦:もちろん顔に傷を負って生きてきたその人生は、私には想像できないほどの苦しみがあったとは思うんですけど......それと同時に顔に傷を負っているということを理由に、あらゆるすべてのものをマイナスに考えてしまうようなところも、もしかしたらあったのかなと感じていて。顔に傷があるからこうなる、と何か起こってしまった自分にとってマイナスな出来事を全て顔の傷のせいにして、自分の心を守ってきたのかなと。だから物理的な傷を治したいという気持ちの裏側で、心の傷と向き合う旅なのかなと脚本を読んで感じました。そういう心の傷は私にもあるし、多かれ少なかれきっと人間みんなあるんだろうなと思うんですよね。それってやっぱり見たくないものでもある。だから顔の傷のせいにしているけれど、自分が見たくない自分や、自分の心の傷と向き合っていくわけです。その姿勢や成長の姿に、自分自身ものすごく勇気をもらっていますし、自分が感じたのと同じようなことを観ている方にも感じてもらえるんじゃないかな。むしろ、そう感じてもらえるように演じなければいけないなと思います。

屋比久知奈

屋比久知奈

屋比久:いや、もう本当にその通りです! この作品はあえて顔の傷を作らない演出で、顔の傷という表面的なものというよりも、やはり心に傷を負った女性の話だと思うんですね。その心の傷は癒えるというよりも、それと一緒に生きていくというか、決してゼロにはならないじゃないですか。見える傷の方はいつか消える可能性があるけど、心の傷はそうじゃない。でも、それとどう向き合って、どう生きていって、どう選択をしていくか。ヴァイオレットはいろいろな人と出会って、いろいろな人の生き方や考えに触れていくことによって、彼女自身の本質に近づいていく。その経験を通じて、自分が逃げてきたものや、逆に自分が持っていたものに気づく。本当に2日間、3日間の旅なんだけれども、凝縮されているんですよね。きっと誰もが生きているうちに通るであろう道だし、私自身もすごく共感できることがいっぱいあります。だから遠い話として考えないで、身近で等身大な自分でいた方がきっと伝わるのかなとも思って。どうしても傷があって南部に住んで……とかいろいろ考えてしまうんですけど、もちろんそういうことも考えた上で、それらをいかに取っ払って、いかに屋比久知奈としてそこにいられるかがすごく大事なのかもしれないなと思うんです。苦しいところを見せていくというか、えぐられていくというか.......自分もこの作品を通して向き合わなきゃいけないなと思うし、それが自分が進んでいきたい道のりではありますね。

三浦透子

三浦透子

ーー演出の藤田さんは何度も本作の演出を手掛けられていますし、実際にヴァイオレットが辿った道を旅されたご経験もあられるので、いろいろと言葉が交わされるような稽古場なのかなと想像しますが、お二人から見てどんな稽古場だなと思いますか?

三浦:ものすごく丁寧に解釈する時間を設けてくださる現場だと思います。テーブル稽古をしっかりやって、じゃあ立ってみましょうという流れでやっています。それぞれの意見も言いやすいです。

屋比久:絶対に誰に対しても「どう思いましたか?」と最後に聞いてくださるんですよね。

三浦:それから誰も誰かのことを否定しませんね。簡単なことのようでとても難しいことが実感できる稽古場にいられることは、すごくありがたいし、恵まれてるなと思います。

屋比久:もともと個性がすごく光っているキャストが集まっていることもあるかもしれないですけど、でもそれをすごく大事にしてくださっていますよね。引っ張ってくださる先輩方がいて、現場の空気的にもみんなで一歩一歩踏みしめて土台を作っていく......そういう稽古場だなと思います。じっくりなんだけど、でも斬新というか、新しいこともやってみるみたいな。勢いもあって、すごく面白いですよ。

屋比久知奈

屋比久知奈

ーーすでにお稽古を重ねているお二人。お互いの印象を教えてください。

屋比久:めっちゃ素敵です! 一度聞いたら忘れない声をされていて、そこはすごく強みだなぁと思うんですよね。いつも聞き入っちゃう(笑)。それからお芝居も。一つ一つを作って、解釈していく過程がすごく丁寧だし、真面目だし、頭の回転が早いな〜ずっと回転してるんだろうな〜って。

三浦:あはは、聞こえる? 頭が回転している音(笑)。

屋比久:聞こえる(笑)! 本当にいつも回転しているから、すごいなぁと思いながら見ています。稽古場を率先して引っ張って回していくエネルギーがありつつも、でもすごく落ち着いているんですよね。年下には思えないぐらい落ち着いてるんですよ。だからそういう意味では「付いていきます!」と思うし、頼ってしまっているな〜。

三浦:いや、もうその言葉をそのまままお返したいくらい! 教わることばかりですね。自分も歌は歌ってきましたが、やはりミュージカルで必要な「歌う筋肉」はまだまだ足りていないなと思うことばかりですし、踊りも今回初めてやるので......本当に勉強になります。歌も踊りもお芝居もとても素晴らしくて尊敬していますが、まあ何よりもやっぱり人柄ですね! 人柄が本当に最高です!

屋比久:それは私も同じくです!

三浦:初めてWキャストの役を演じるんですけど、どうやって進めていくんだろう、どこまで自分の意見を言っていいんだろうという不安が正直あったんですよね。そこに関して藤田さんがサポートしてくださっている面ももちろんあるんですけど、このやりやすさは、やっぱり屋比久さんだったからだと思うんです。屋比久さんが意見を言ってくれるから自分も意見を言いやすいし、「一緒に考えよう」と言い合えるのがすごくありがたくて。ひとつの役に対して、自分では見えない視点は必ずあると思うんですよ。人が違えば絶対思うことも違うし、気づくことも違うから。だから一緒にやれていることは贅沢だなと思います。

それに舞台の上での存在感というか、声に乗っている魂みたいなもの。それは一朝一夕で学べるものではないと思うけれど、でもせっかくの機会だから、吸収できることは吸収したいなと思っている。みなさんご存知の通り、すごいんですよ! 本当に! 今までミュージカルも観てきましたけど、いざ自分がやってみると、ミュージカルはこんなに大変なんだ! と実感しています。それは屋比久さんもそうだし、今回ご一緒するみなさんを見ながら、毎日感動させられています。

三浦透子

三浦透子

ーーすごく信頼しあっている様子が伝わります。でもWキャストはお二人が同じ本番の舞台上に立つことはないですからね......。

三浦:でも、もしヤングヴァイオレットの子たち3人が体調不良になったら、屋比久さんがヤングヴァイオレットをやってくれるって(笑)!

屋比久:はい。何があってもいいように、子役さんたちの動きもちゃんと見ていますよ(笑)。......こんな感じで(三浦さんは)すっといてくれる。そこはすごく格好いいなと思うし、私自身も「うぇーい!」というタイプではないから(笑)、落ち着けるんですよね。頑張らなくていい感じがありがたい。でも舞台に立ったときの説得力は本当に素敵で.......個人個人の稽古になったらそれが見られなくなるのかな。ちょっと寂しいかも。

三浦:別々になっても、分からないことがあったら聞いていい?

屋比久:もちろん。そういう助け合いは大事だし、二人だからこそ共感し合えるもの、分かち合えるものがあるからね。

ーー楽曲についてお聞きします。音楽監督から楽曲についてのレクチャーがあったりと充実したお稽古をされていると思いますが、一番好きな楽曲はどの楽曲ですか?

屋比久:私は「マイ・ウェイ」が好きだな。やっぱりゾクッとしますよね。<Uh〜>で入ってきたときは特に! なんだかんだ一番好きな曲かもしれないな〜。

三浦:自分は歌っていないんですけど、パパ(父親、演:spi)の曲が素晴らしくて! まだポーカーのところしか稽古していないんですけど、そこもすごい楽しいし......最後の曲を生で聴けるのを楽しみにしています。

屋比久:音楽監督さんから解説を受けたときに改めて、音楽もやっぱり旅をしているんだなと思って、すごく面白かったです。音楽監督さんが楽曲について語るレクチャーの時間は、なかなかないから貴重ですよね。

三浦:うん、すごく勉強になりました。「このフレーズがここで繰り返されてます」とか細かい部分まで教えてくださって。

屋比久:もちろん自分で意味を見つけていくことも大事なんですけど、音楽的に助けてもらえるところも多くて、面白い曲ばかりですね。同じフレーズが結構色々使われているんですよね。通したときに「あっ!」と繋がる瞬間があるんだろうな。

ーー聞き心地もよく、耳に残る楽曲が多いですけど、歌う側としてはどうですか?

屋比久:難しいよね。

三浦:難しい。他の作品と比較はできないですけど、私はもちろん難しいと感じています。

屋比久:細かいリズムの変化が結構あって。聞いてると分からない難しさがあるかな。

三浦:サントラを聞いていたときに、ものすごく喋っているように聞こえるなと思っていたんですけれど、それは多分、リズムが多いということ。リズムの多さとか音階の複雑さとかが最初にあって、それを乗り越えると、本当に喋ってるように聞こえる。そこまでたどり着きたいなと考えながら、現段階ではただただ難しいな〜と思って。

屋比久:しかも動きがつくと、もっときつい曲があって。今、マラソン走っているみたいになっているよね(笑)。でももちろん一人で歌う曲もあるけど、重なってくる曲がいっぱいあって、コール&レスポンスのように、どんどん層が広がっていく面白さがあったり、起伏の激しいところから穏やかになったり、いろいろな技術も必要とされている楽曲たちだなとは、すごく思う。みんなヒーヒーしているよね(笑)。

三浦:やり切ったときは泣いちゃうかもしれない。

屋比久:歌い切った〜! ってね。エネルギーがいる作品だからこそ頑張っちゃうけど、喉は大切にいきたいですね。......でも、二人いるからこそ安心感はあります。

三浦:そういう心の支えが必要だし大事だなとコロナ禍を経て思います。精神的な不安はパフォーマンスにも影響してきちゃいますし、取り除ける不安は取り除いてやれるのが一番パフォーマンスや作品のためになると思うので、そういう意味では本当に心強いです!

屋比久知奈

屋比久知奈

ーーお二人にとって「忘れられない旅」はありますか?

三浦:去年、5か月くらいニューヨークにいました。それは旅だったかな。旅というにしてはちょっと長いですけど。基本的に外にあまり出たくないタイプなんです。腰が重い人間だからこそ「そろそろ吸収してきた方がいいんじゃない?」と思い立って、がつっと一人で行ってみたんです。違う言語の場所に行くことは、本当に冒険だなと思いました。怖かったし、大変だったし、振り返ると楽しかったと言えるけど、滞在中は大変だなと思うことの方が多かった。人間的にちょっとタフになって帰ってこれたかな。

屋比久:私もしてみたいです。私は高校2年から3年にかけて留学をしていたんですけど、それはまた別な感じがするんですよね。ホストファミリーがいて、サポートしてくれる会社があって、家族がいて、友達がいて、学校に行ってと助けてくれる環境だったから。もちろん当時の自分からしたら、めちゃくちゃ大変だったんですけど。でも大人になって、一人で全然違う文化や人たちの場に飛び込んでいくことは、すごく勇気が必要だし、その分受ける刺激も違うでしょうし。だから旅に行きたいですね。

ーー今回は東京公演の他にもいろいろと“旅公演”も予定されています。ぜひ観劇を楽しみにされている皆さんへメッセージをお願いします!

三浦:本当にいい脚本、いい曲だなと思うんですよね。あとはもう私たちが全力で演じるだけで、本当に素晴らしい作品がきっとできる。藤田さん含めスタッフの皆さんも含めて、いい素材は揃えてくださってるので、あとはもう身体に染み込ませて舞台に立つだけだなと思っています。素晴らしい舞台ですと胸を張って言えるように、稽古していきたいなと思います。(屋比久さんの肩を叩きながら)本当にあと彼女が素晴らしいので......!

屋比久:二人をぜひ応援していただけたら。でも、何かこれを伝えたいんですというわけではないんですけど、今なのか、観た瞬間なのか、観たあと何年後なのか分かりませんが、ずっとどこかで心の中に留まってくれるような、そういう力を持った、すごく魅力のある作品だと思うんです。音楽がまたそれを支えてくれている作品だと思うので、ぜひ一緒に旅をしてください。それに今回はお客様の一部がステージ上にいる演出ですから、私たちもきっと毎回受けるものがたくさんあるはず。皆さんと一緒に、最終到達点まで無事に到達できたらいいなと思いますし、このメンバーで今やるからこそ生まれるものがあるかなとも思うので、とにかく一生懸命頑張ります!

取材・文・撮影=五月女菜穂

公演情報

ミュージカル『VIOLET』
 
【日程・会場】
東京公演:2024年4月7日(日)~4月21日(日)東京芸術劇場プレイハウス
大阪公演:2024年4月27日(土)~4月29日(月・祝)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
福岡公演:2024年5月4日(土・祝)キャナルシティ劇場
宮城公演:2024年5月10日(金)〜5月11日(土)仙台電力ホール

音楽:ジニーン・テソーリ (『ファン・ホーム』2015年トニー賞最優秀オリジナル楽曲賞)
脚本・歌詞:ブライアン・クロウリー 原作:ドリス・ベッツ『The Ugliest Pilgrim』
演出:藤田俊太郎
出演:三浦透子/屋比久知奈(Wキャスト)  東啓介  立石俊樹 sara  若林星弥  森山大輔  谷口ゆうな  樹里咲穂  原田優一  spi ほか
 
一般発売:2024年2月10日(土)
 
企画・制作・主催:梅田芸術劇場
共催:東京都歴史文化財団 東京芸術劇場(東京公演)
作品ホームページ https://www.umegei.com/violet/
 
お問合せ
東京公演:梅田芸術劇場(10:00〜18:00) 0570-077-039
大阪公演:梅田芸術劇場(10:00〜18:00) 06-6377-3888
福岡公演:公式ホームページをご覧ください
宮城公演:公式ホームページをご覧ください
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