「大阪4大オーケストラの響演」記者懇談会レポート

レポート
クラシック
2016.1.14
 (左より)外山雄三、飯守泰次郎、井上道義、飯森範親(C)森口ミツル

(左より)外山雄三、飯守泰次郎、井上道義、飯森範親(C)森口ミツル

 

関西フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団、大阪交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団という大阪を拠点とする4つの楽団が、大阪国際フェスティバルという特別な機会に一堂へと会する「大阪4大オーケストラの響演」。初開催となった昨年のステージの好評を受け、第54回大阪国際フェスティバル2016でも、4つの精鋭集団が再び集結することに。本番ステージを前に、4楽団を指揮する4人のマエストロが、会場となるフェスティバルホールで揃って会見。それぞれが抱く、熱い思いを語った。

(左より)外山雄三、井上道義、飯守泰次郎、飯森範親(C)森口ミツル

(左より)外山雄三、井上道義、飯守泰次郎、飯森範親(C)森口ミツル

初めての開催となった昨年は、各楽団が予想以上の熱演を展開し、日本のクラシック演奏史に残る“事件”だったと話題に。「日本では、クラシック音楽は、“高級輸入品”のように扱われる。しかし、関西ではヨーロッパと同様、とても自由に、自然に受け容れているように感じられる。そんな中から、4つの楽団を同時に愉しむ、というとてつもない発想が出たのは、素晴らしいこと。これは大阪だからこそ、成り立つステージなのでは」と関西フィルの桂冠指揮者、飯守泰次郎は話す。
 

飯守泰次郎(C)森口ミツル

飯守泰次郎(C)森口ミツル

さらに、「僕には、とても刺激になったね。例えば、関西フィルの聴衆に対する雰囲気作りなんて、『ぜひ見習うべきだ』と楽員にも話したほど…」と大阪フィルの首席指揮者、井上道義。日本センチュリー響の首席指揮者、飯森範親は「他の楽団のリハーサルをじっくりと聴く機会はなかなかないし、それで刺激を受けた楽員はまず多いと思う。また、ライヴァルでありながら、普段から横の繋がりが強い、大阪の4楽団の舞台裏スタッフの連携プレーの素晴らしさにも、たいへん驚かされた」と語った。
 

飯森範親(C)森口ミツル

飯森範親(C)森口ミツル

今年のステージで、幕開けを告げるのは、大阪交響楽団。4月から同楽団のミュージック・アドバイザーに就任する重鎮・外山雄三の指揮で、音楽的なユーモアに彩られたストラヴィンスキーのバレエ音楽「かるた遊び」を披露する。外山は「非常に若い楽団だけに、他の楽団に比べると、意図せずとも若さが出てしまう。だから、きっちり組み立てれば、何とかなるかもしれない(笑)作品を選んだ。しっかり練習して、聴いていただく。それこそが、最初の難関をクリアすることに繋がる」と説明した。

これに対して、「それに比べると、こっちは少し年を食っているかな…」と、大阪フィルを振る井上は笑う。取り上げるのは、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲。古代ギリシャの濃密な世界を描く作品像について「これをいい音で演奏できなきゃ、話にならない(笑)。大阪フィルが、饒舌で人生を謳歌する人々が大勢いる、大阪と言う土地に根付く楽団ならば、ラテン的な感覚を持つ作品を、どんどんやるべき。今回は、それを前面に出した。忘れられない感動を、与えられる演奏になれば…」と話した。
 

井上道義(C)森口ミツル

井上道義(C)森口ミツル

次に登場するのは、関西フィル。飯守のタクトで、ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「前奏曲」と「愛の死」を披露する。「この楽団との付き合いは、20年以上。特に常任指揮者時代には、ドイツ・ロマン派に的を絞ったレパートリー創りをした。これほど長く関係が続くのは、日本では珍しく、幸運だと考えている。ゆっくりと時間をかけて、音楽を創ってゆくという理想が今、実現しつつある。特に、これまでにも数多く演奏して来たワーグナーを通じて、改めて、私たちの親密な関係をご披露したい」。

そして、飯森の振る日本センチュリー響が、不朽の傑作・ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」で今年の“トリ”を飾る。「諸先輩方とご一緒させていただくだけで、とても光栄。デビューから30年を迎えても、自分はまだまだ、ひよっ子。胸を借りるつもりで取り組みたい。私たちは、ハイドン交響曲全曲演奏をスタートさせたばかり。楽員たちの独墺音楽に対するシンパシーや、和音をどう感じてゆくかということへの思いなど、感じ取ってもらえていると思う。その延長線上にあるベートーヴェンからも、それらを体感していただければ。これまでに楽団が培って来たものを、爆発させたい」と熱っぽく語った。
 

外山雄三(C)森口ミツル

外山雄三(C)森口ミツル

関西楽壇では今、「オーケストラが多過ぎる」との声があるのも事実。統合案すら、取り沙汰されている。しかし、わが国の演奏史と共に歩んで来た外山は、「ここには4人の指揮者がいるが、少なくとも4通りのリハーサルのやり方がある。どれがいいと言うことは決して言えないが、どのようにすれば、より豊かな音楽が創れるか。それを探してゆくと言うことに、変わりはないはず」と断言する。このステージを通じて、四種四様の色彩が迸るハーモニー体感した皆さんは、果たして、どうお感じになるだろうか。

(文/寺西 肇)

公演情報
大阪4大オーケストラの響演

日時:16/4/24(日)
会場:フェスティバルホール (大阪府)

出演者:外山雄三指揮 大阪交響楽団 
    井上道義指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団 
           飯守泰次郎指揮 関西フィルハーモニー管弦楽団 
           飯森範親指揮 日本センチュリー交響楽団

曲目・演目:
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「かるた遊び」 大阪交響楽団(指揮:外山雄三)  
ラヴェル:ダフニスとクロエ 第2組曲 大阪フィルハーモニー交響楽団(指揮:井上道義)  
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」より 前奏曲と愛の死 関西フィルハーモニー管弦楽団(指揮:飯守泰次郎)  
ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 作品67 日本センチュリー交響楽団(指揮:飯森範親)


公式HP:http://www.festivalhall.jp/program_information.html?id=872

 

 

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