DURDN ライブアクトとして覚醒した3人が進む新たなステージとは?
DURDN 撮影=大橋祐希
韓国をルーツに持つシンガーのBakuと、トラックメイカーのSHINTA、トップライナーのyaccoの2人によるプロデューサーデュオ・tee teaからなるプロジェクト、DURDN。
今年4月24日にリリースしたEP『Komorebi』をひっさげた東名阪ワンマンツアー『Live Tour 2024 “Komorebi”』を6月に成功させたばかりの彼らが早くも新たなステージに進むために動き出した。
前述のツアーから6月21日の東京・恵比寿LIQUIDROOM公演のライブ音源をコンパイルした『Komorebi』のライブバージョンと言える『Live Tour 2024 “Komorebi” at LIQUIDROOM』を8月28日にデジタルリリースした彼らは、9月12日の初となる対バン自主企画『Knot vol.1』をステップに11月15日から年を跨いで全国5カ所を回る『Live Tour 2024-2025 GET ON THE BOAT』に突入する。
彼らがライブモードになっていることは明らかだろう――ということで、ライブ音源の聴きどころも含め、改めて彼らのライブスタンスを深掘りしてみたところ、ライブアクトとして覚醒したことをきっかけに、ライブのみならず、楽曲制作においても進化しはじめた今現在のDURDNの姿が見えてきた。
――まずは配信リリースした『Live Tour 2024 “Komorebi” at LIQUIDROOM』の話から聞かせてください。6月21日の恵比寿LIQUIDROOM公演からの音源をコンパイルして、4月にリリースしたEP『Komorebi』をライブバージョンとして再現しようというのは、6月の東名阪ワンマンツアーがDURDNのキャリアにとってマイルストーンと言えるものになったからではないかと思うのですが、『Live Tour 2024 “Komorebi” at LIQUIDROOM』をリリースした意図を改めて教えていただけないでしょうか?
SHINTA:基本的なDURDNのライブスタイルは、いい意味で音源と違うと思っていて。ライブの醍醐味じゃないですけど、音源はかなりアレンジを変えているので、音源ベースで聴いてくださっている方たちにはライブではこんなふうにやっているんだって思ってもらえてるんじゃないかなと。ただ、コンセプチュアルな作品だった『Komorebi』の曲に関しては、ツアーではほぼ曲順どおりに演奏していることも含め、他の楽曲とは逆に音源を再現することにトライしてみたので、これまでになかったスタイルということで作品として残してもいいんじゃないかということになったんです。
――もちろん、6月の東名阪ワンマンツアーが手応えあるものになったからということもあるんですよね?
SHINTA:それはもちろん。楽しいツアーでした。東名阪の前にアジアツアーもやったんですけど、僕たちの音楽を受け入れてくださる方たちがたくさんいるんだってことを手応えとして感じられたっていうのはけっこう大きかったですね。
Baku:みんな乗ってくれたし、楽しんでくれたし、僕自身もライブが楽しかったです。僕は普段、家で静かに過ごしていることが多いんですけど、大勢のお客さんの前で歌うって、こんなに楽しいんだって改めて実感する機会でした。
Baku(バク)
ミュージシャンの本当の力っていうのはライブから生まれるものだと思うので、もっともっとライブ周りを強くしていきたいですね。(Baku)
――ところで、さっき『Komorebi』の楽曲に関しては、音源の再現にトライしたとおっしゃっていたんですけど、『Komorebi』と『Live Tour 2024 “Komorebi” at LIQUIDROOM』を聴き比べて、個人的にはけっこう違っていると感じました。たとえば、音源ではシンセで鳴らしているフレーズをライブではギターで奏でているところも含め、SHINTAさんのギターが前に出ていたり、音源には入っていないドラムのフィルが入っていたりして。
SHINTA:やっぱりライブは生モノなので、プレイヤー自身の持ち味とか、居る意味を生かすことを考えて、フィルとか、そういうオカズはサポートメンバー含め、その瞬間のフィーリングに任せて、けっこうがっつりアレンジしますね。だから、音源の再現にトライしたとは言いましたけど、もちろんライブ現場の空気や会場ならではの響きは感じられるものになっていると思います。そういう意味で言えば、オリジナルの音源プラスαで聴いてもらえるものを目指しているところもあるので、聴き比べて、音源からさらに良くなった部分を探してほしいですね。ライブでやるとこういうふうに良くなるんだ、みたいなところを発見してもらえるライブ盤かなと思います。
――なるほど。プラスαは確かに言い得て妙ですね。
SHINTA:そうですね、ニュアンス的にはそれがいいかなとは思います。
――そんなライブ盤のリリース後、9月12日にはDURDN主催の対バンイベント『Knot vol.1』もあるし、11月15日からはワンマンツアーも始まるし、DURDNがライブモードになっていることは明らかなので、ここからはライブというところでお話を聞かせてほしいのですが、これまでのお話からDURDNにとってライブはやはり欠かせないものではあるんですよね?
SHINTA:そうですね。ライブするのは割と好きなタイプだと思います。ライブで映える曲もDURDNはけっこう持ってますしね。もちろん、音源を作ることも3人とも好きなんですよ。ただ、そういうクリエイティブも好きな中で、作ったものに対する反応を見られるライブっていうのもみんな好きだと思うから、音源制作とは違うクリエイティブの部分だけど、欠かせないものではあるかなと思います。
――結成当初からライブには力を入れていたんですか?
SHINTA:全然だよね。
yacco:そうだね。最初の頃はコロナ禍でできなかったんですよ。
――そうか。結成は2021年でしたね。
SHINTA:最近はかなりやってますけどね。
――もし状況が許していれば、ライブも最初から力を入れていきたいと考えていたんですか?
SHINTA:そうでもないよね。
yacco:確かに。最初はとりあえず音源を出していこう、みたいな感じだったので。こうやって本格的にライブしていくことになるなんて考えてなかったです。
SHINTA:Bakuも本格的な音楽活動がDURDNからだったので、助走が必要だったと思うんです。音源を録りながら、ボーカルとして技術を上げていく期間が。だから、たまたまコロナ禍でできなかったけど、むしろやらなくて正解だったかなってくらい、全員がそこで鍛えられた部分はあると思います。
SHINTA(シンタ)
演奏面を気にせずに楽しめるようになって、エンタメとしても完璧にしたいっていう意識に変わってきた。今はとにかくみんなと楽しみたいんです。(SHINTA)
――その後、ライブの数が増えてきたのは、どこかのタイミングでライブが楽しくなってきたからですよね?
Baku:ライブはいつも楽しいですけど、毎回、何かしらここは直さなきゃいけないってところも探しちゃいますね。
SHINTA:僕ら、反省会をよくやるんですよ。
Baku:でも、ライブはやっぱ楽しいです。どんどん規模も大きくしていきたいし、ミュージシャンの本当の力っていうのはライブから生まれるものだと思うので、もっともっとライブ周りを強くしていきたいですね。
――yaccoさんのライブスタンスを、今一度聞かせてください。yaccoさんはライブに出る時もあるし、出ない時もあるし?
yacco:今のところ昨年の東阪ツアーと今回の東名阪ツアーのアンコールに2回出ただけで、基本的にはいつも後ろで見ています。
――ライブは苦手だと聞きましたが。
yacco:そうですね。注目されることが小さい頃からめちゃめちゃ苦手で。例えば学校の国語の授業で、一人ずつ順番に教科書を音読することがあるじゃないですか。そういう時も自分の順番が来るまでに手汗で教科書が破れるくらい緊張したりしてました。それくらい注目されることが苦手で。でも、DURDNのライブに出た時はアンコールだけっていうのもあるかもしれないですけど、緊張と同じくらい楽しいっていう気持ちもあって。だから、最近は割と苦手意識がなくなってきたかなって感じるんですけど、自分的には私がステージにいないほうがバランスはいい気がするんですよ。今の見栄え的なバランスが私はすごく好きなので、普段は後ろで見ているくらいがちょうどいいなって思ってます。
――でも、もしかしたら、今後、ステージに立つ回数とか割合は増えていくかもしれない?
yacco:考えたことはないですけど、需要があれば、もしかしたらあるかもしれないくらいの感じですね。
――いやぁ、需要はあると思うんですけど。
yacco:でも、アンコールとか、ちょっとだけ出るぐらいがちょうどいいかもしれないです。
――後ろで見ながら、2人のパフォーマンスをチェックしているんですか?(笑)
yacco:その地域とか土地によって、乗り方とか、盛り上がる曲とかが全然違うなって、後ろで見ながら感じることがあるので、それはすごくおもいしろいですね。
yacco(ヤッコ)
踊れる、楽しめるってところは意識するようになったかもしれない。ライブで盛り上がる曲を増やしたいという気持ちは大きくなったと思います。(yacco)
――ある意味、第三者的にライブを見ているyaccoさんの意見が次のライブに反映されることもあるんですか?
SHINTA:ありますね。ある意味、プロデューサー的な立ち位置なので。と言うか、そもそもDURDNは、僕らプロデューサーデュオのtee teaとボーカルのBakuというコンセプトのグループなので、ライブを客観視してくれる人がグループ内にいるっていうのは異色だけど、すごく助かってるところではあると思います。自分のことだったら、たとえば僕だったらギタープレイに関しては、自分で見られるんですけど、全体的なところまではやっぱりなかなか見られない。そこにyaccoの視点があるっていうのは、かなり大きいと思います。
――ところで、ライブに対する取り組み方や熱量は、この3年でどんなふうに変化してきましたか?
Baku:以前はけっこう緊張することもありましたけど、ちょっとずつ慣れてきましたね。今はもう緊張しないですけど、逆に慣れてきたからこそ油断しちゃうことがあって、この前、本当にちゃんとしないとって思いました。だから、油断せず、熱を失わずに、これからもがんばってライブしたいです。
yacco:最初の頃は、ミスなく上手に演奏しようっていう意識だったように感じてたんですけど、ここ最近はちゃんとお客さんを巻き込んで、その雰囲気を楽しもうっていう意識になってきたと思います。そこにフォーカスしてきたことで、会場の一体感とか空気感とかがけっこう変わってきたような気がしますね。
――どこかのタイミングでお客さんを巻き込んでいったほうがいいと思ったんですか? それともライブを重ねる中で、自然とそういうふうになっていったんですか?
SHINTA:そこはめちゃくちゃ意識してます。たぶん、高校生までダンスをやってたことが大きいと思うんですけど、踊らせたいし、踊りたい、みたいなことをずっと思ってたんですよ。ただ、ギターもやりつつバンドマスター、マニピュレーター的なこともしているので、ライブ中はそういったタスクにけっこう追われてしまってたんですけど。yaccoが言ったように、ライブを重ねるごとに客席を見る余裕が出てきて、今年に入ってからは、良いのか悪いのかわからないですけど、そんなに演奏面のことを気にせずに楽しめるようになってきたんです。演奏を完璧にしようとするんじゃなくて、エンタメとしても完璧にしていきたいっていう意識に変わってきたって感じですかね。今はとにかくみんなと楽しみたいんですよ。
――じゃあ、今現在はライブがいい方向にどんどん変わってきている真っ最中というわけですね。
SHINTA:そうですね。まだまだ発展途上ですけどね。
――9月12日の『Knot vol.1』と11月のツアーでは、ライブアクトとして発展しようとしているDURDNの姿もライブの見どころになっていくわけですね。ここからは『Knot』というDURDN主催の対バンイベントについて聞かせてほしいのですが、なぜ対バンイベントを始めようと考えたんですか?
SHINTA:そもそもは都内のライブを増やしたかったっていう意図もあるんですけど。定期的にやれたらおもしろいよね、でも、定期的にやるんだったら、自分たちで動かなきゃねってところから自主企画にしたんです。対バンイベントにしたのは、DURDNのことをまだ知らない人にもDURDNのことを知ってもらいたいっていうのがまずありつつ、近いところで同じようにがんばっている、僕らがリスペクトできるアーティストと単純にやりたいっていうのがあったからなんですよ。今回のBillyrromとtonun君は本当に僕らもすごくリスペクトしていて。曲もすごくいいし、ライブもすごくいいし、人としてもすごく魅力的な人たちなので、ぜひ一緒にやりたいと思いました。同じ志、近しい志を持っている人たちとやれる口実を作ったじゃないですけど、そういうニュアンスが、メンタリティと言うか思考的な部分にはありますね。
――「近いところで同じようにがんばっている」の「近いところ」というのは音楽性の話ですか?
SHINTA:いえ、曲のタイプは全然違うんですけど、Billyrromもtonun君も自分たちがかっこいいと思う音楽をやっていると思うんですよ。それは僕らも同じで、自分たちがかっこいいと思うもので勝負したいよね、みたいな気持ちがすごくあるので、近いっていうのはそういう意味ですね。
――結び目を意味する『Knot』というタイトルには、どんな思いや意味が込められているんでしょうか?
yacco:SHINTAが言ったように、リスペクトしている人たちとしっかり繋がって、みんなで今後の音楽シーンを一緒に盛り上げていこうという意味合いを込めて、『Knot』にしました。
――Billyrromとtonunさんの、どんなところに魅力を感じていますか?
SHINTA:tonun君は1年前ぐらいに初めて会ったんですけど、波長が同じなんですよ。
yacco:テンション感も近いよね。
SHINTA:彼の音楽が持っているネオソウルやアシッドジャズっぽい感じとか、AORっぽい感じとか、そういうテイストがすごく心地よくて。しかも、彼、静かそうに見えて、けっこう熱い感じで。そういう部分もすごく好きなんですけど、楽曲にもそれが現れているような気がして、ソフトな楽曲でも何か芯が感じられるですよ。そういうところも好きですね。
――Billyrromは?
SHINTA:この間、福岡で対バンしたとき、打ち上げで飲んでたんですけど、めちゃくちゃいい人たちなんですよ。あれだけかっこよくて、ちょっとクールな感じもするライブをするのに、喋るとめっちゃ可愛らしくて愛嬌があって。僕より年下っていうのもあるんですけど、なんかすごく人間味のある人たちで、それを知ってから曲を聴くと、そのギャップがまたいいんです。あと、ボーカルのMol君はマイケル・ジャクソンをリスペクトしているそうで、僕もマイケルに多大な影響を受けているから、その話でも盛り上がれたのも嬉しかったです。
yacco:DURDNもBillyrromも2021年から本格的に活動していたこともあるし、Spotifyも同じプレイリストに入ることが多くてそこで彼らを知りました。華があってみんなすごくオーラがあるし、その場にいる人たちを楽しくさせるライブをするところもかっこいいし、リスペクトしてます。tonun君はメンバーみんなでプライベートの時にご飯行くくらい仲良くしてもらってるんですけど、音楽に対して本当に熱い気持ちを持った人なので久しぶりの対バンとても楽しみです。
――『Knot vol.1』の会場である東京キネマ倶楽部は昭和レトロな雰囲気が魅力のハコじゃないですか。都会的に洗練されたイメージのDURDNがそういうハコを選んだところが興味深いです。
Baku:だからおもしろいんじゃないですかね(笑)。
――なるほど。
SHINTA:以前、1回やったことがあるんですけど、雰囲気を含め、けっこうよかったんです。たぶん、天井が高いハコが好きなんです。DURDNの曲は上の音域も下の音域もかなりレンジが広いから、天井が高いと、響きが良くなるんですよ。そういう意味で、天井が高いハコがすごく好きなので、キネマ俱楽部はめっちゃいい印象があります。
――きっとこの先、vol.2、vol.3と続いていくと思うんですけど、「自分たちがかっこいいと思っている音楽をやっている」という意味では、全然ジャンルが違う人たちともやってみたいと思いますか?
yacco:それも全然ありだし、おもしろいと思います。リスナー層も違うと思うから、そこも含め、楽しんでもらえたらうれしいなと思います。
――『Knot』がどんなふうに育っていくのか楽しみにしています。さて、11月15日からは年を跨ぐツアーが始まるわけですが、どんなツアーにしたいと考えているんですか?
SHINTA:まさに昨日、ツアータイトルが『Live Tour 2024-2025 GET ON THE BOAT』と決まったんですけど、引用元がありまして。マイケル・ジャクソンの「Get on the Floor」という曲からつけました。フロアに出て、踊りに来なよっていう意味なんですけど、そんなふうに楽しんでもらえるような曲たちを、今、制作中で。あと、これも今作っているある曲から連想されるものとしてボートが出てくるので、それをタイトルにひっぱってきたんです。セットリストは、まだ組んでないんですけど、お客さんを踊らせることをコンセプトにしたツアーにしようと考えています。前回の『Komorebi』のツアーがけっこう聴かせるライブというか、チルい曲も多かったので、今度のツアーはそれとは逆に踊ろうぜみたいな感じでやりたいなと考えてます。
――最後にライブ以外の今後の活動予定も聞かせてほしいのですが、ツアーの準備をしながら、制作も進めているということですね?
SHINTA:はい、絶賛制作中です。
――最近、ライブのやり方が変わってきたことが制作に与える影響というのは何かありますか?
yacco:踊れるとか、楽しめるとかってところは割と意識するようになったかもしれないですね。『Komorebi』にはコンセプトがあったっていうのもあるんですけど、ライブで盛り上がる曲を増やしたいという気持ちは大きくなってきたと思います。たとえば、踊れる余白を作りたいとか、Bakuがライブでアレンジしたり、歌い上げたりできるような曲にしようとか、ライブで演奏することを考えながら、曲を作ることは多くなってきましたね。
取材・文=山口智男 撮影=大橋祐希
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