40年目のアニー役は、丸山 果里菜・小野 希子に決定～ミュージカル『アニー』2025 オーディション合格発表レポート

【THE MUSICAL LOVERS】ミュージカル『アニー』第56回
丸美屋食品ミュージカル『アニー』2025 オーディション合格発表レポート

2025年の丸美屋食品ミュージカル『アニー』が、4月～5月、東京・新国立劇場 中劇場で上演される。演出は山田和也、音楽監督は小澤時史、振付・ステージングは広崎うらんが前年に引き続き担当する。そして同公演の子役（アニー役、孤児役）オーディションの最終合格者が、2024年10月27日（日）に日本テレビの施設内で発表された。

日本テレビ主催によるミュージカル『アニー』は1986年にスタート。40年目を迎える2025年のアニー役（Wキャスト）に選ばれたのは、丸山 果里菜（マルヤマ カリナ/9歳・小学4年生・東京都出身）、小野 希子（オノ キコ／10歳・小学校4年生・東京都出身）の2名だった。

ミュージカル『アニー』は、1924年からアメリカで新聞連載がスタートした漫画「ザ・リトル・オーファン・アニー（小さい孤児アニー）」をもとに、1977年にブロードウェイのアルヴィン劇場（現ニール・サイモン劇場）で初演。「Tomorrow」や「Maybe」などの名曲、アニーのキャラクター、希望を与える物語は、今なお世界各地で愛され続けている。今年（2024年）は10月に韓国版が上演され、12月にはニューヨークでも幕が上がる予定だ。ミュージカル『アニー』は、どんな時代でも、その時々の観客へ「希望」を届け続けている。

日本テレビ主催によるミュージカル『アニー』は1986年にスタート。2024年までの39年間、全国で、のべ約196万人もの観客を動員。2024年には総上演回数2,000回を突破した。

また、これまでに、74名ものアニーを誕生させてきた（うち、1986年-87年の1名、1987年-88年の1名、2020年中止のため2021年に繰り越した2名の、計4名が2年連続主演）。最近では、2004年のアニー役を演じた澤井杏奈（アンナ・サワイ）が、『SHOGUN 将軍』で第76回エミー賞の主演女優賞（ドラマ部門）を受賞し、米TIME誌の発表した「次世代の100人」に選出されるなど、アニー出身者が各界で活躍を続けている。

そして40年目を迎える2025年の公演に向けた今回のオーディションでは、書類審査および学年に沿った課題曲の歌唱動画審査を突破した約284名（アニー・孤児役のみ）が、10月13日・14日・20日の実技審査（ダンスおよび表現、歌、演技）に進んだ。この審査を勝ち進んできたファイナリスト39名が、10月27日、主役のアニー役2名（Wキャスト）、孤児役12名（Wキャスト）計14名の最終合格者発表の場に臨んだのだった。

ミュージカル『アニー』オーディションを受けられるのは、年長から中学校3年生までの子どもたちだ。ファイナリストたちは小さい順（受験番号A）から合格発表の会場に入るのだが、A、Bの番号あたりは「ワー！」とけたたましく騒いだり、メディアを気にする無邪気さがあるが、C以降は、しずしずと歩いたり、「ハアハア」と呼吸が速くなる子、落ち着き払っている子、と、すでにここから個性が出ていた。

合格者の発表は、夕方5時。最終結果を待つ時間、祈る子、周囲とおしゃべりする子、小さな悲鳴を上げる子、後ろで見守る保護者たち等が眼前にうつる。あと1分で5時になるところで、大勢が「やばい」「ワー！（関係者たちが）来た！」「キャー！」「怖い」と騒ぎ出す。「落ち着いて、落ち着いて」と周囲と自分に言い聞かせる子もおり、カオス寸前のところで、5時ぴったりに関係者たちが入場した。

最初に、主催の日本テレビ放送網株式会社 取締役 常務執行役員 澤桂一氏が挨拶。「ミュージカル『アニー』は、来年で40年目です。これだけ長い間作ってこられたのは、皆さんの先輩である出演者、スタッフ、そして何よりも毎回観に来ていただけるお客さんがいるからです。今日、合格した人は、『アニー』の新たな歴史を生きていくので、いろいろなお話をしたいと思います。合格できなかった人も、今回やったことは無駄ではなく、すごくいい経験になったと思います。ぜひこれを活かして、いろいろなことを目指して頑張っていただきたいし、何よりもずっと『アニー』を愛していただきたいと思います」と、『アニー』への想いとともにエールを送ると、少女たちは「ありがとう！」と、元気よく答えた。

次に、23年間という長きにわたる協賛企業である丸美屋食品工業株式会社 取締役 マーケティング本部本部長の杉山典由氏が、ファイナリストたちと保護者たちに向けて、「ここにいる39名のファイナリストの皆さん、後ろにいらっしゃる（保護者の）方々にもご苦労があったと思います。これから、私じゃなくて、こちらの山田和也先生から合格発表がある……（ファイナリストたち「キャー！」）。名前が呼ばれて夢が叶う方、残念ながら夢に届かない方もいらっしゃると思いますが、大きな可能性を秘めた方ばかりだと思うので、さきほど澤（桂一）さんが言われたように、これからも次の目標に向かって頑張っていただきたいと思います。もしかするとこの中に、第二のアンナ・サワイさんがいるかもしれません。合格者の皆さんは、来年の公演に向けて稽古をすると思います。丸美屋食品としても応援しますので、来年、元気な姿を舞台で披露していただきたいです」と、ここにいる「未来のスター」全員を応援する。

続いて、演出の山田和也が立ち上がると、ファイナリストたちは、「ワー！」「キャー！」と緊張を隠せない。しかし山田は毅然と、演出家として言葉を進め、まずはオーディションに参加してくれたこと、『アニー』が40年続けられていることへの感謝を述べたあと、講評を述べた。

「オーディションだけでも何ヶ月、あるいは何年も、保護者の皆さんの力添えで、その子たちがやりたいことをやってきたと思います。合格する人もいれば残念ということもある。それは毎年のことですが、合格しなくても、またみんな（『アニー』オーディションに）来てくれるんです。みんな必ず機会がある、この作品以外にも機会はある。ぜひ（またオーディションを）受けてほしいと思います。

（オーディションは）選ぶのが本当に難しい。毎年言っていますが、本当に僅差なんです。ちょっとした差、あるいは並んだときのバランスなので、優劣ではない。みんな優れていたと思いました。なので、みんな自信を持ってほしい。ただ講評としては、毎年そうなんですが、みんなのやってくれる歌とかお芝居が、ちょっとお行儀が良いのよね（ファイナリストたち「えー！」「ふふっ（笑）」）。孤児たちの話なのに、年々お行儀が良くて、しっかり教育を受けた学校の優等生みたいに見える子が少なくない。『アニー』にはそういうキャラクターは出てこない。（大富豪ウォーバックスの秘書）グレースをやるなら、そこを狙ってほしいけれど、（孤児なら）もう少しバイタリティ、生命力、したたかさ、ずる賢さ、そういうところがもっともっと出てくると、もっともっと楽しいオーディションになると思って、みんなの耳に入れます。拡散してくださいね」と、SNS時代の子どもたちに拡散希望の旨を伝えた。そして5時6分、山田が、「さて、では……」と合格者発表に移ろうとすると。ファイナリストたちが「ギャー！！」と悲鳴を上げる。

まずは各孤児役に選ばれた少女たちの名が告げられる。

＜合格者＞ ※名前右横は受験番号

◆モリー役
大草 愛咲（オオクサ アイラ）B15
戸川 稀琴（トガワ キコ）A16

◆ケイト役
門前 りりか（モンゼン リリカ）B8
本間 彩心（ホンマ サコ）C9

◆テシー役
飯田 音桜（イイダ ネオ）D46
嵇 娅希荷（ジ ヤシホ）C25

◆ペパー役
木村 律花（キムラ リッカ）F24
吉田 璃杏（ヨシダ リアン）F20

◆ジュライ役
細川 優月（ホソカワ ユヅキ）F30
原 ののか（ハラ ノノカ）E35

◆ダフィ役
吉岡 風帆（ヨシオカ カホ）E23
木村 友泉（キムラ ユミ）G4

そして最後に、2025年のタイトルロールを務める2名が発表された！

◆アニー役
丸山 果里菜（マルヤマ カリナ）D15
小野 希子（オノ キコ）D51

 

 

続いて、オーディションの最後を飾る恒例行事として、全員で立ち上がり「Tomorrow」を合唱。名前を呼ばれなかった年少者が、合唱の声より大きな声で泣いてしまい、連鎖的に他の年少者が泣いてしまった。それを合格した年少者がなぐさめ、一緒にオーディションを戦い抜いた同士で健闘を称え合う場面も見られた。合格した子どもたちも大勢泣き出したため、振付・ステージングの広崎うらんが「落ちた人の分まで頑張るんだよ！」とハッパをかけ、合格者たちも「頑張る！」と気を引き締めた。

その後、合格者たちのフォトセッションが行われた。

まずは長年『アニー』をスポンサーとして支え続ける、丸美屋食品工業株式会社 取締役 マーケティング本部本部長 杉山典由氏と記念撮影。

そしてチームごとに撮影。＜チーム・バケツ＞は、孤児役たちが、アニー役に選ばれた丸山に抱きつく。ここでも振付・ステージングの広崎が、並ばせたり、「今年一番の笑顔～！」「うぉっしゃ～！」と盛り上げ、その間待機する＜チーム・モップ＞ へも、「ちゃんとヤンチャにね」と念押ししていた。

合格者たちは、やはり『アニー』公式HPに載ることが一番興奮するようで、オフィシャルカメラに「イエーイ！」と盛り上がり、広崎も、「HOOOOO！」と合格者のノリ以上に嬉しそうだった。子どもたちと同じ目線に立つ仲間として、かつ指導者として、広崎はもうすでに、合格者たちをステージングしていたのが印象的だった。

＜チーム・バケツ＞ ※チーム分けは変更する場合あり
◆アニー役：丸山 果里菜（マルヤマ カリナ）D15
◆モリー役：大草 愛咲（オオクサ アイラ）B15
◆ケイト役：門前 りりか（モンゼン リリカ）B8
◆テシー役：飯田 音桜（イイダ ネオ）D46
◆ペパー役：木村 律花（キムラ リッカ）F24
◆ジュライ役：細川 優月（ホソカワ ユヅキ）F30
◆ダフィ役：吉岡 風帆（ヨシオカ カホ）E23

＜チーム・モップ＞は、カメラマンの要望を受けた広崎から「今年一番の笑顔！」と言われ、すかさずモリー役の戸川 稀琴が「やってるんですー！！」と生意気に返す。広崎も、「だよね」と応じて、なんだか孤児院でのモリーとハニガン（ハニガンはとても怖い孤児院の院長だが、モリーのほうが一枚上手な部分がある）を観ているようだった。

＜チーム・モップ＞ ※チーム分けは変更する場合あり
◆アニー役：小野 希子（オノ キコ）D51
◆モリー役：戸川 稀琴（トガワ キコ）A16
◆ケイト役：本間 彩心（ホンマ サコ）C9
◆テシー役：嵇 娅希荷（ジ ヤシホ）C25
◆ペパー役：吉田 璃杏（ヨシダ リアン）F20
◆ジュライ役：原 ののか（ハラ ノノカ）E35
◆ダフィ役：木村 友泉（キムラ ユミ）G4

アニー役2人の撮影では、まず2人がハイタッチ。演出の山田も加わると、なぜかアニーに対してではなく、「山田さん、笑顔で！」とオーダーが入る。硬い表情から一転、「えへへ」と可愛くほほ笑んでいた。

フォトセッション後、新アニー2名と演出・山田和也による囲み取材が行われた。

丸山 果里菜（チーム・バケツ）は、「受かると思ってなくて、本当に嬉しくて飛び跳ねちゃいました。」、小野 希子（チーム・モップ）は、「アニーになれると思っていなくて。とてつもなく嬉しい。嬉し涙が止まらない」と、チャーミングに語る。

「アニーの夢は両親と暮らすことですが、2人の夢は？」と問われ、丸山は、「両親とたくさん旅に出たい」、小野は、「ミュージカルにいっぱい出ること」とそれぞれ答える。

演出の山田は、今年のオーディション総評を問われ、「毎年そうなんですが、アニーがいるかな、という状態で（オーディションの）初日が始まるんです。けれど、なかなかそのアニーが姿を現してくれない。初日が終わり（10月13日・14日）、2週目（10月20日）があって、今日（10月27日）まで、内心ドキドキしながら、今年はもしかしたらアニーの発表はないかも……というのは嘘ですが、ちょっとヒヤヒヤしていました」。

2025年のミュージカル『アニー』は40年目を迎えるが、山田は、「今までアニーを手がけてきた皆さん、出てくださった皆さん、そしてご来場くださった皆さんの積み重ねで40年なので、僕はたかだか2017年から（の演出）、だから責任重大です。しっかりと、今まで以上の『アニー』にして、皆さんにお届けできたらと思っています」。アニー2人も、「嬉しいが、選ばれなかった人への責任を負うので頑張ります」と、あらためて気を引き締める。

なかなかアニーが現れない中、この2人になった決め手を問われ、山田は、「僕ひとりでアニー探しをしているわけではなく、ほかの皆さんと一緒に探していたんですが、皆この2人がいい、と思った。音楽・ダンス・（山田の担当である）芝居、何かがあった。まだ稽古に入ってないけれど、これからいろいろな顔を見せてくれると思う。2人はタイプが違う予感があるので、どんな『アニー』になるか、僕自身も楽しみにしている」。

アニーにいつから憧れていたのか問われた2人。丸山は、「2022年に初めてミュージカルを観て、それが『アニー』だった。レベルがすごく高くて、絶対に出てみたいと思って応募した」とのことで、その2022年観劇後から毎年受け続けた。最初は年齢的にモリー役を目指し、今回3回目のオーディションでアニー役を掴んだといい、「素直で元気のいいアニーを目指す。いつもの自分も元気なので、そのままの元気を出したい」と元気いっぱいに意気込んだ。今回のオーディションでも元気を出せるよう挑んだという。

小野は、「2023年の『アニー』を観て、アニーの元気さに憧れました」とのことで、その2023年観劇後に、「何役というのではなく、とにかく『アニー』の舞台に立ちたい」と思ってオーディションを受け、今回2回目のオーディションでアニー役を勝ち取った。「ずる賢くて、とても可愛いアニーになりたい」と抱負を語り、今回のオーディションではダンスの顔を頑張ったそうで、「（広崎）うらん先生に『顔を買おう』と言われた」という。

アニー2人は、2024年のミュージカル『冒険者たち～この海の彼方へ～』にて、共演経験がある（Wキャストだが、2人とも同じ「月組」）そうだ。そのことに演出の山田も「え、あるの？」と驚いていた。丸山は小野に対し、「すごく元気で、思いっきり演技に出せる子」、小野は丸山に対し、「明るくて、怒られた時もすぐ立ち直って、前向きな子」とお互いを見ていたそうだ。

丸山は合格発表を待っている時、すごくリラックスして周囲とおしゃべりして騒いでおり、対して小野は、割と静かにいた印象があった、という記者の問いに対し、丸山は、「カメラの数、マイクの数は何個あるのか、そんなことを周囲と言いながらリラックスしていました」と余裕を見せる。小野も、「カメラいっぱいあるな、と思って」と、カメラの数で答えがシンクロした。『アニー』のオーディションでは、合格者発表後の恒例行事として、全員で「Tomorrow」を合唱する。きょう、丸山は、「受かった、本当にアニーなのか、っていう嬉しい気分で歌いました」。小野は、「私はまず歌えなかったです。泣きすぎて歌えない。でも、これから『アニー』の舞台を頑張っていこう、と思いました」と、合格直後の心中を明かした。

そんな2人の得意技と好きなことは、丸山「得意なことはアクロバットで、マットなしで転回という技をやること。好きなことは友達とのおしゃべりとダンス」、小野「得意なのはダンス。好きなことは友達と変顔をすること」だそうだ。

40年にわたり、多くの才能あふれる子どもたちがオーディションに挑み続けてきたミュージカル『アニー』は、今日ここからまた、新しい第一歩を踏み出す。

丸美屋食品ミュージカル『アニー』は、新国立劇場 中劇場にて2025年4月～5月、東京・新国立劇場中劇場で上演される（東京公演ほか、夏には各地公演を予定）。ダンスキッズオーディションは11月に開催予定(アニー公式HPにて発表)。大人キャストなどの詳細情報は、続報を待ちたい。

なお、2024年12月21日（土）には、2024アニー（岡田 悠李・絢田 祐生）・2023アニー（深町 ようこ・西光 里咲）、2024アニーズ（孤児役）＆ダンスキッズが参加する、「丸美屋食品ミュージカル『アニー』クリスマスコンサート2024」が開催される。さらに大人出演者として、ウォーバックス役の藤本隆宏、2010年ハニガン役・2018年クリスマスコンサート出演の森口博子の参加も発表された。

ミュージカル『アニー』の楽曲と、誰もが知っているクリスマスソングが、オーケストラの生演奏で楽しめる。2024年は、1日だけの特別なコンサートとなり、会場もかつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホールで行われる。選ばれたばかりの2025年アニー役2人のお披露目も行われるであろう。『アニー』未見であっても、80分という凝縮された上演時間で、その魅力がじゅうぶんに堪能できるひとときになりそうだ。

取材・文＝ヨコウチ会長
写真撮影＝安藤光夫（SPICE編集部）、ヨコウチ会長