坂東玉三郎、新春から大阪松竹座では19年ぶりとなる片岡仁左衛門と共演「運命的に、時代ごとに偶然生まれるコンビになったのかな」

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坂東玉三郎

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2025年1月、大阪松竹座では松竹創業130周年として1月3日(金)から8日(水)まで『坂東玉三郎 初春お年玉公演』を、1月11日(土)から1月26日(日)まで『片岡仁左衛門 坂東玉三郎 初春特別公演』を上演する。これに先駆け、大阪市内で坂東玉三郎の取材会が行われた。近年の恒例となっている『お年玉公演』の新たな趣向や、同座では久しぶりとなる「仁左玉コンビ」に向けての思いなどが語られた。

2025年で5年目を迎える女方の至宝・玉三郎による『初春お年玉公演』。今回は「口上」から幕を開け、地唄「残月(ざんげつ)」を披露。「残月」は峰崎勾当(みねざきこうとう)の門下である松屋某の息女が夭折したのを偲んでつくられた曲で、曲題はその戒名にちなんだものと伝えられている。そして、明治末期から大正、昭和にかけて人気を博した画家・竹久夢二の代表作に数えられる名画をもとに、唯是震一(ゆいぜしんいち)が発表した組曲「長崎十二景」の音楽と舞踊が渾然一体となった舞踊劇「長崎十二景」を36年ぶりに披露する。

「残月」との出会いは歌舞伎座で上演した「新版 雪之丞変化」だったという。「雪之丞が敵討ちをした後、仇討ちの虚しさにさめざめと泣く場面の曲を考えていた時、(「残月の」)<今はつてだに朧夜の/月日ばかりは巡り来て>という歌詞と曲が素晴らしさに気づき、そこで使ったんですね。それが出会いでした。早くに亡くなった女性がよみがえって、しばし二人での時間を楽しみ、そして月が出た時にはやっぱり彼女はいなかったんだというふうな振り付けにさせていただいています。お正月ということで清々とした清涼感を感じてもらえたらと思います」。

舞踊劇「長崎十二景」を創作したのは玉三郎が20代後半の時だった。「音楽は組曲「長崎十二景」を使用していますが、曲は入れ替えています。夢二の絵を想像できるようなシーンがそれぞれにあり、長崎の女の人が男の人と出会い、別れて……という物語が十二景から見えるように作っています。また、ちょっと目じりが下がったような、竹久夢二の絵にぴったりな扮装もしていました」。

俳優の小波津亜廉が男役で登場。玉三郎いわく「竹久夢二の男性像に合うかなと思って」起用したという。今回が初共演。どんなコラボレーションを見せてくれるか期待が募る。

坂東玉三郎

坂東玉三郎

『坂東玉三郎 初春お年玉公演』は、2024年の初春公演に続き、観覧料はD席1500円からと求めやすい設定にした。「去年も話題を呼び、好評でしたので、今回も」と玉三郎。歌舞伎初心者にもうってつけだ。

1月11日(土)から始まる『片岡仁左衛門 坂東玉三郎 初春特別公演』は、今年4月に歌舞伎座で上演し、大きな話題を呼んだ二演目を披露する。

大坂で起こったお染久松の心中事件の舞台を江戸に移して描かれた世話物で、土手のお六と鬼門の喜兵衛という夫婦が活躍する場面を中心に描く四世鶴屋南北の「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」。悪婆と称され、凄みのあるせりふで啖呵も切る一方、愛嬌もある土手のお六を玉三郎が、お六の夫で悪の色気に満ちた鬼門の喜兵衛を仁左衛門が勤める。「神田祭(かんだまつり)」では、祭囃子に浮足立つ江戸の町を背景に、粋な姿の鳶頭(仁左衛門)と艶やかな芸者(玉三郎)が賑やかに、仲睦まじい様子で踊る。

大阪松竹座での「仁左玉コンビ」は実に19年ぶり。仁左衛門とは「運命の出会いだった」と振り返る。「南座や新橋演舞場などで『花形歌舞伎』と銘打って若手公演をしてきました。仁左衛門さんや先代の市川團十郎さんと度々コンビを組ませていただき、今に至ります。21歳の時、「於染久松色読販」の「お染七役」を初めてやらせていただくことになり、前進座の河原崎國太郎さんのところへお稽古に伺いました。その時、「亭主役にしっかりついていくことが大事よ」と國太郎さんがおっしゃったんです。当時はどういう意味なのかわかりませんでしたが、40年経ってみると、こういうことなのかなと思いますね。その時代、時代に偶然生まれるコンビといいますか、夫婦役が出てくるのですが、仁左衛門さんとも運命的にそういう流れになっていったのだと思います。縁といいますか、それは組もうと思ってもなかなかできないものです」。

半世紀以上にわたり共演をかさね、歌舞伎界屈指の黄金コンビと称される二人。息の合ったやり取りをぜひ劇場で堪能してほしい。

取材・文=Iwamoto.K

公演情報

『坂東玉三郎 初春お年玉公演』
2025年1月3日(金)~8日(水)午後2時
劇場:大阪松竹座
 
料金(税込):
S席14,000円/A席8,000円/B席5,000円/C席3,000円/D席1,500円
演目と配役
一、口上(こうじょう)
坂東 玉三郎

二、地唄 残月(ざんげつ)
坂東 玉三郎
竹邑 類 構成
三、長崎十二景(ながさきじゅうにけい)
坂東 玉三郎
小波津 亜廉

公演情報

『松竹創業百三十周年 片岡仁左衛門 坂東玉三郎 初春特別公演』
2025年1月11日(土)~26日(日) 午後2時~
【休演】15日(水)、21日(火)
劇場:大阪松竹座
料金(税込)
1等席22,000円/2等席11,000円/3等席6,000円
演目と配役
四世鶴屋南北 作
渥美清太郎 改訂
一、於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)
土手のお六  
鬼門の喜兵衛 
土手のお六  坂東 玉三郎
油屋太郎七  坂東 彌十郎
番頭善六   片岡 松之助
山家屋清兵衛 中村 錦之助
鬼門の喜兵衛 片岡 仁左衛門

二、神田祭(かんだまつり)
鳶頭 片岡 仁左衛門
芸者 坂東 玉三郎
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