「おもろいことをするしかない!」四星球、地元徳島でワンマン&『ふざけてナイト』開催ーーバクホン、accobin、金属バットらが集結した、笑い泣きの2日間を振り返る
四星球ワンマン『令和6年度 四星中学校文化祭』2024.11.23(SAT)徳島・BOAT RACE鳴門
BOAT RACE鳴門すなわち鳴門競艇場で、2024年11月23日(土)に『BOAT RACE鳴門PRESENTS 四星球 ONE MAN SHOW』、11月24日(日)に『BOAT RACE鳴門PRESENTS 四星球企画「ふざけてナイト」』が開催された。2023年は1日間のみで四星球が様々な出演者を迎えて開催されたが、2024年は四星球のワンマンライブが初日という2日間開催に。
まるで学校の体育館みたいな”UZU HALL”を中心に、BOAT RACEに来場される観客用のフードコートやコンビニや展示やコンパクトな舞台も設置された”なるちゃんホールステージ”、そして、そのふたつのホールの間にある芝生広場と敷地内を目一杯に使用する。まるで学園祭みたいな催し物だが、初日は、その名の通り『令和6年度四星中学校文化祭』。この場所がぴったりな催し物だが、関西在住の私は2023年の前回同様に高速バスで高速鳴門まで向かい、そこから徒歩。入り口がガラス張りで中身丸見えのUZU HALLは早朝からの仕込みが終わり、昼1時からのリハーサルが始まるところ。北島康雄を中心に、スタッフ全員が床に座り、片手には台本が持たれている。四星球のライブは仕掛けが多いため、構成演出の流れが事前に紙にまとめられているが、本番では生の衝動で、そこからはみ出していくところに胸が打たれる。だからこそ、より土台が大切となる。何度も参加しているが、康雄が毎回マイクを握りしめて丁寧に説明していく様は何とも言えない。特に問題なく進み、サウンドチェックも滞りなく、後は夕方4時30分の開演を待つのみ。前回一度経験している場所だけに、楽屋も舞台袖も、そこまで緊張感はない。
ヴィヴァルディの「春」が流れて、学生服を着た4人が登場。U太・まさやん・モリスは美術部という設定で、観客からお題をもらい絵を描いていく。京都の先輩バンドROTTENGRAFFTYのメンバーや徳島らしいものを描いたりしていくが、最後にモリスが突如狂乱してスケッチブックをビリビリに破いてしまう。康雄は「今日のワンマンはややこしいことはしません。スパッとわかりやすいです。でも長いです!」と話していたが、そうは言うものの四星球のワンマンライブは一筋縄ではいかない。ちょっとした出来事が仕掛けとなり、伏線となり、みんなが楽しめる。この序盤も後々に活きてくる。
どこから来たかを康雄が観客に聞くと、西は京都から福岡まで、東に上っていくと富山・東京・北海道と四国だけではない全国各地から集まっていることがわかる。人数は600人だが、人口比率で言うと徳島の600人は大阪の9000人であり、東京の1万3000人だという。康雄ならではの説明だが、この説明だけで、どれだけ多くの人が地方に集まってるかの凄さが理解できる。感心する暇もなく、康雄によって映画研究会が紹介されていく。まさやんは「ゴーストバスターズ」、U太は「踊る大捜査線」の室井慎次、モリスは「スラムダンク」のロン毛時代の三井寿のコスプレで登場。三井は鼻血を流しているシーンのコスプレであり、その鼻血をバケツで受け止めるが、康雄の学生服に鼻血がついたことから脱ぐと緑の全身タイツ姿で、すなわちピーターパンということで「ミッドナイトレインボーピーターパン」へ。美術部の流れからは「僕らの絵描き歌★」が歌われたし、序盤1曲目2曲目は、この流れで始まる。
それこそ先程書いた台本をはみ出すところに胸を打たれるというのは、早くも3曲目「クラーク博士と僕」でやってくる。モリス以外の3人は鳴門教育大学出身であり、この街で青春を過ごして、四星球を結成した。「クラーク博士と僕」は19歳の秋に作られた曲であり、そこから現在に至るまでの22年間ずっと歌われ続けてきた。しかし、この夏の野外フェス『MONSTER baSH』での出番では暴風雨に襲われ、あわや中止寸前になったが、長年四星球を担当し続けてきた舞台監督は「「クラーク」までは何とかやらせて下さい」と主催者側にかけあってくれたという。嵐で大変な時に、この曲が光になりますようにという想いだったと康雄は明かしたが、どれだけ大切な曲かということが、それだけで伝わる。無論、そんなくだりは台本には全く書いていない。決められたことと決められていないことが絶妙にマッチングして大爆発を起こすのが四星球のライブなのだ。
4曲目「Yeah!むっちゃ武者修行」では曲の途中で、まさやんが何故か修行をしたくなったと言い出して、UZU HALLのフロア側面にあるボルダリングスペースになぞって、段ボールで作られたボルタリングの壁を登ろうとするが登れず、壁の後ろからU太扮する登山部の顧問の先生が出現する。この文章だけを読んでいる人は意味がわからないかも知れないが、だからこそ生で体感してもらうしかない。それでいうと四星球のライブは全部が突如、途中に突然なにかが起きる。それも全てがアホらしくてバカバカしくてという最上級の褒め言葉を並べたくなる突拍子もない出来事が起きていくから目が離せないし、面白くて楽しい。
この日も文化祭にはゲームコーナーもあるということから、モグラたたきゲームが始まり、モグラではなくて室井や三井らが顔を出す素敵な茶番が繰り広げられる。すると康雄によく似たでお馴染みの四星球オリジナルキャラクター“ちょんまげマン”が現れて、軽音部としてメンバーが中学時代に聴いていた曲をコピーバンドとして演奏することに。スピッツ・THE BLUE HEARTS・GLAYが歌われ、その流れで「FLAG」へ。
「FLAG」では康雄が、この場合はボーカルを務めるちょんまげマンが赤い旗と白い旗を上げて歌うのだが、観客にも何かしら赤い旗を配ることに。ここで最初にモリスがビリビリに破いたスケッチブックが白い旗の替わりとして役立つ。では、赤い旗はどうするのかと思っていたら、三井が流した鼻血を受け止めたバケツを持ってきて、スケッチブックをビリビリに破いた白い紙を赤く染めていく。芸が細かいというか、何というか、とにかく感心してしまう。例えば、この流れも台本に書かれている。或る意味、その通り行われているのだが、肉付けされるというか、文章だけの平面で読んでいるのとは違って目の前で立体化されると流れを知っているはずなのに感動してしまう。もう完全にバンドのライブの域を超えている。
バンドのライブの域を超えている点では、30分15曲トライアルもそうだ。中学校がベルマークを集めて新しい時計を購入したので、その時計のストップウォッチの機能を使ってトライアルに挑戦する。持ち時間30分のイベントで15曲をやるトライアルは観たことがあるが、ワンマンライブでは中々のチャレンジだ。康雄いわく「ガチでやる」ということで、タイマーも隠されて、いざチャレンジ!
「レッツ・エンターテイメント」からスタートして、「Teen」・「HEY!HEY!HEY!に出たかった」・「SWEAT 17 BLUES」で、ちょうど10分のチャイムが鳴る。そこから「UMA WITH A MISSION」を経た「馬コア」ではサークルモッシュが観客に促されて、ボルダリングスペースでは親が子供と共にゆっくり回っている。そして「四星球を聴いたら馬鹿になる」からの「ふざけてナイト」では、鳴門のゆるキャラBOATRACE鳴門のキャラクターなるちゃんも観客フロアから現れる。曲数稼ぎの「時間がない時のRIVER」は数秒一瞬で終わり、「オーバーグラウンドとアンダーグランドのちょうど中間地点!」と四星球のシーンでの立ち位置を叫び「世明け」へ。
この秋リリースされたばかりのニューアルバム『音時計』から「エラ‐むかしむかしあるところに‐」、でもって「シンデレラストーリーには興味が無いんです!」という言葉が印象的だったメジャーデビュー前のエモーショナル過ぎるナンバー「出世作」や初期楽曲「ギンヤンマ」と畳みかけたところで2回目となるチャイムがなる。つまりは13曲で20分経過。最後2曲は「刹那くんおはよう‐86400歩のパンク‐」と「薬草」。15曲トライアル終えたところでタイマーを観ると27分32秒!
ちょうど1曲分残ったという事で「カーネーション」を歌いきったところで3回目のチャイムが鳴り、30分終了。出来過ぎているが、これは本当にガチであり、台本では描ききれないことが起こるのが現実の奇跡である。ラストナンバー「オモローネバーノーズ」で〆るが、モリスが某国の人の格好をしており、某国の歌が流れるという明らかに愉快な伏線が張られて本編は終わる。
そんな衝撃的でけったいな終わり方だったが、終わる直前のMCで、康雄は大事なことを語っていた。『四星中学校文化祭』というワンマンライブシリーズを約15年に渡ってやっていると話して、バンドは30代後半から40代に差し掛かる時が苦労することも打ち明ける。それは子供が出来たり、親の面倒をみたりとお客さんの環境が変わることも大きいので必然だと言いながらも、「そこを変えますので。方法としてはおもろいことをするしかないので!」と決意表明を。もちろん、こんなことも台本には書いていない。リミッターが振り切れた時の康雄から飛び出すエモーショナルでパッションな言葉たちには、いつも痺れてしまう。
撮影=鈴木洋平
アンコール。最初にも同じ様なことを言っていたが、「ワンマンは頭を使うやつが多いですけど、今日はバカバカしく」なんて呑気に改めて康雄が言うが、ライブでの何でもない言葉や何でもない出来事が全て「ふざけてナイト」歌詞と同じで繋がっていたという伏線回収という名の検証が行われる。本当に四星球のライブは気が抜けない。でも決して小難しくなくて、おもろい。大丈部という部活として紹介されて、「大丈夫」という歌詞が肝となる「ノーフューちゃん」が歌われたり、粋を感じさせるのも四星球。最後は観客に赤い旗と白い旗として配った紙をちぎってもらい紙吹雪にしたりと大団円。
終わるかと思ったら終わらないのが四星球なわけで、メンバー全員が緑の全身タイツ姿になり、芝生広場にビールケースで作られて「ミッドナイトレインボーピーターパン」と書かれたアーチパネルが飾られた特設ステージでラストナンバー「ミッドナイトレインボーピーターパン」を。観客も全員がUZU HALLから外の芝生広場へ向かうが、全員がしっかりと言うことを聞いて、列を乱さずに外へと礼儀正しく出て行く模様は、前回も観た光景ではあるが、それでも観客皆様のマナーモラルルールを守る姿に感心してしまう。
康雄が一度外へ出たにも関わらず、思わず「さっぶ!」と一度UZU HALL内へと戻った姿には笑ってしまった。外へ出たらマイクの電源も届かないわけで、生歌のアコースティックでバンドは演奏する。その原始的な音楽の鳴りを、約600人の観客が何重にも輪になって見守っている。温かい屋内で電源を通して音を鳴らせばいいだけのことなのだが、そんなアホでバカバカしいことを一生懸命本気でやり続ける四星球に、我々は笑わされて時には泣けてしまう。UZU HALLからはチャイムが鳴っている。あおとがよろしいようで。1日目が終わった。
撮影=鈴木洋平
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