『帝国劇場展~THE WORLD OF IMPERIAL THEATRE~』レポート~森公美子・井上芳雄も登場!

レポート
舞台
2025.3.28
『帝国劇場展~THE WORLD OF IMPERIAL THEATRE~』プレス・イベントにて(左から)井上芳雄、森公美子 (撮影:安藤光夫)

『帝国劇場展~THE WORLD OF IMPERIAL THEATRE~』プレス・イベントにて(左から)井上芳雄、森公美子 (撮影:安藤光夫)

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「今日は三越で帝劇!」~帝劇+三越のコラボ展覧会で思い出の劇場を追体験


『帝国劇場展~THE WORLD OF IMPERIAL THEATRE~』が、2025年3月28日(金)~4月27日(日)、銀座三越 新館7階 催物会場にて開催される(※3月28日はエムアイカード プラス会員さま 特別ご招待日)。

「今日は帝劇、明日は三越」という広告コピーが大正時代に流行した。その当時から、共にモダンで洗練された文化の象徴として縁のあった帝国劇場と三越が、令和の今、コラボレーション・イベントを実現させた。それが今回の『帝国劇場展~THE WORLD OF IMPERIAL THEATRE~』。建替えのため先頃惜しまれつつ休館となった帝国劇場への観客の想いを、未来につなぐ展覧会である。


 

<プレスイベント>

オープン前日の3月27日(木)には、アンバサダーを務める森公美子・井上芳雄をゲストに迎えたプレス向けのイベントが実施された。

森公美子は帝国劇場で、『レ・ミゼラブル』『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』など、長年にわたり数々の作品に出演、『イーストウィックの魔女たち』では、森が客席上をフライングするために4千万円かけて天井が補強された、という逸話を持つ。2025年2月28日に日本テレビでオンエアされた「さよなら帝国劇場 最後の1日 THE ミュージカルデイ」では、斎藤司(トレンディエンジェル)が、パーティ会場の様子を「(前田)美波里が舞い、(森)公美子が歌う」とレポートしたことで、その姿を想像した人も多かったはずだ。

一方、井上芳雄は、初舞台が2000年6月『エリザベート』の帝国劇場公演だった。そして、帝劇クロージング公演となったCONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』には全日程出演、前述の「さよなら帝国劇場 最後の1日 THE ミュージカルデイ」でもMCをつとめたことは記憶に新しい。

そんな、帝劇にゆかりの深い両人ならでは、プレスイベントの壇上で森と井上のために用意された椅子とテーブルを視界に捉えるなり、「(帝劇2階にあった)Café IMPERIAL のものですよね」、と即座に見抜いてみせたのはさすがだった。

初舞台が1983年の日生劇場『nine(日生劇場開場20周年特別公演)』だった森は、翌1984年の『屋根の上のヴァイオリン弾き』で初めて帝国劇場の舞台に立った。「『nine』も『屋根の上のヴァイオリン弾き』もアンサンブル出演だった。主役より目立ってはいけない、支える立場だった」と彼女は語った。最初は3列目の一番端から始まり、徐々に立ち位置がセンターに近づき、2014年の『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』で、とうとう0番(センター)に立った。その経験から「サポートとはどういうことかをよく知ることができた」といい、今でも「このアンサンブルは素晴らしい」と感じることができるという。

初舞台が2000年6月の東宝版『エリザベート』帝国劇場公演での皇太子ルドルフ役だった井上は、いきなり3ヶ月のロングラン、しかもシングルキャストだったので、務めることで精一杯だったという。司会者が、当時の写真(帝劇9階稽古場で、トート閣下役の山口祐一郎と一緒に撮ったもの)を紹介すると、「『エリザベート』は人気の作品で、日に日に出待ちの列がのびていった。でもその裏側では、みんなで一緒にご飯を食べたりと、すごく温かかった。そのギャップが面白い劇場だった」と述べると、森も「そうそう、(役柄で)敵対する人たちはみんな仲良しだよね」と相槌を打つ。

森は昭和音楽大学、井上は東京芸術大学音楽学部、と、ともに音大出身の2人がミュージカルで活躍していることについて、井上が「今でこそ多いけど、公美子さんが先駆けですね」と話を向けると、森はイタリア留学中に落ち込んでしまった時に、ロンドンで『マイ・フェア・レディ』を観て、「オペラって(高音で)眉間にしわを寄せているけれど、ミュージカルはニコニコ楽しそう! 私こっちがいい!」と思ったのだそう。そして、なんとその翌年に『nine』出演の話が来たという。

「昭和・平成・令和と41年間、帝劇にお世話になった」という森は、“帝劇の生き字引”とも呼ばれているそうだ。井上も、デビューの2000年から2025年までの25年間で、帝劇に立っていない年は2003年・2017年だけ。であるにもかかわらず、帝劇クロージング公演までは意外にも共演経験がなかったという2人だが、今日はともにアンバサダーとなり、『帝国劇場展』のグッズからお気に入りを選ぶことに。森は「今日は帝劇、明日は三越」ポスターバージョンの赤坂柿山『帝国劇場展』記念缶を選択。

井上は「ミュージカル関係のグッズでライオン?ってドキッとしたけれど」といいつつも、三越のライオンであることを認識し、シアターベア衣裳ライオンスタイルを選択。

その他、帝劇の外観や帝劇の袋を模したお菓子の缶が、ちょうどの半券が入るサイズであることに感心した井上が、「デジタル化の時代に逆行していて、愛おしい」と口にすると、森も「は思い出になるから紙で欲しい。いつも裏に感想を書いている」と明かし、食べた後も芝居の思い出が詰められるグッズに感激していた。

展示会場の中で気になったコーナーについては、井上が「稽古場のソファが説明なく置かれていること」をあげ、「僕たちはよく見ているから、ああ~!ってなりますけど、これを誰が懐かしんでくれるんだ(笑)」。森も「すごい沈む。クッションなんかほぼ役に立っていない」。すると、事情通の井上が「もともとは東京宝塚劇場の貴賓室で使われていたものが古くなって、それが帝劇9階稽古場に来た。最初は鏡の前にあって、みんなが休む場所だったんです。が、最後は更衣室に格落ち。いわれを知らないと、ただの汚いソファですが、実は一個一個に帝劇にかかわるみんなの思い入れがあって、それも含めて楽しんでいただけるのかな」と解説、「僕がツアーガイドをやりたい」と立候補し、会場の笑いを誘った。ちなみにこの代物は、三越の若いスタッフさんたっての希望で展示されているという。

森は「稽古場の箱馬まで置いてあるのが面白い。あとは、誰も入ったことがない貴賓室。本来は尊いお方がお休みになるところですが、後々は取材で使わせていただくようになりました」という。司会者が「貴賓室は『ラ・マンチャの男』の時に(数千万円かけて)改装した」と明かすと、森は「完全再現されている。椅子もあまり座られていないので、へこみません!」と、貴賓室を強くおすすめしていた。

箱馬と、井上おすすめのソファ

箱馬と、井上おすすめのソファ

そんな楽しいアンバサダーの2人が楽屋に差し入れているものも、9階に復元された「Café IMPERIAL」にて、ここだけの限定商品として購入できる。

森差し入れ:まい泉ポケットサンド オリジナル焼き印入り。井上差し入れ:福砂屋キューブ のし紙・千社札つき。

森差し入れ:まい泉ポケットサンド オリジナル焼き印入り。井上差し入れ:福砂屋キューブ のし紙・千社札つき。

記者からの質問で、演劇作品やミュージカル作品での共演はないが、帝劇クロージング公演となったCONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』(A・B・Cプログラム)が初めての共演となったことについて、その時の印象を問われた2人。

まず井上が森について語った。「稽古場でご一緒したのも初めて。まずびっくりしたのが、ずっと喋っているんです。公美子さんの周りはにぎやかで明るく、公美子さんがいないとすごい静かなくらい、本当にムードメーカー。それでいて、やることはやる。当たり前なんですけど、想像していた以上に真面目。『レ・ミゼラブル』出演中に『THE BEST…』の稽古もされて大変だったと思うのですが、曲がすぐに頭に入らなくても諦めず、最後の最後、直前まで稽古していた。パフォーマンスにかける真摯な面ととムードメーカーという面の両方があり、だからこそずっとみなさんに愛される」。森は井上について次のように述べた。「地頭がめちゃくちゃいい。MCとして紹介するくだりも一つも間違えずスムーズ。複数回公演があるから、ベテランのかたが同じエピソードを繰り返し話してくださるんだけど、毎回新鮮に、『えー!帝劇の後ろに馬が!?』って、違う反応をしていて。他のかたが同じエピソードをおっしゃっても、初耳のように『えぇー!!!』って。おもてなしの心ですよね」。

ホスピタリティあふれる2人。森はフォトセッションでも「ムービーさんありがとうございます」「こちらからぐるっと向いていきます」と、自ら身体の角度調整をしてくれた。井上は、取材陣がエレベーターで別室に移動する際、一緒に乗り込もうとするなど、気さくでファニーな一面を見せてくれた(しかも、あと1人乗ったら、「ブー!」と鳴る状態で!)。場を円滑に回し、必要なことはしっかり言い、面白く〆る。そんなエンターティナーの2人は、展示会場にも現れ、展示衣裳や座長楽屋でのフォト・サーヴィスにも応じた。


<帝劇の裏側を体験できる企画が盛りだくさん~展示会場レポート>

2025年2月28日、114年の歴史を誇る帝国劇場が惜しまれつつ休館した。この『帝国劇場展』では、帝劇の名舞台の記憶をたどるのみならず、今だけ、ここだけの体験ができる要素が盛りだくさんだ。帝劇を愛する者なら、ぜひ足を運びたくなるポイントを紹介する。

■帝劇の名舞台が蘇る!貴重な展示

エントランスには、普段は見ることのできない、キャスト着到板の実物を展示。出演者ごとに異なる年月をまとった木の質感を楽しめる。

キャスト着到板

キャスト着到板

また、本物の劇場看板も、移設されて展示されている。

帝劇で生まれた数々の名作。その歴史を彩るパネル・貴重な資料・代表的演目の衣裳などを展示、衣裳には着用者名も記載されている。

衣裳展示前で森と井上

衣裳展示前で森と井上

また、帝劇クロージング公演となったCONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』の出演キャストから寄せられた帝国劇場への直筆メッセージも公開される。


■貴賓室&座長楽屋をリアル体験

通常は関係者しか入れない「貴賓室」や「座長楽屋(5-1楽屋)」が、本展示で再現。キャストが過ごした空間を体感することで、新たに熱い感動が生まれる。楽屋への道にも、ちゃんと「帝国劇場 楽屋入口」の案内が出ているのも楽しい。

座長楽屋では、実際に使用されていたソファや鏡前など、貴重なアイテムを間近で見ることができる。

再現された座長楽屋で森と井上

再現された座長楽屋で森と井上

貴賓室内では、豪華な内装を体感できるほか、「帝国劇場アニバーサリーブック NEW HISTORY COMING」に収録されている、『レ・ミゼラブル』ゆかりのメンバーによる座談会の映像が初公開される(下記イベント情報欄参照)。

帝国劇場CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』最終日、マイ・ファースト・バルジャンである滝田栄が登壇せず、いささか残念に思っていたが、ここでゆっくり映像で楽しめることが嬉しい。

へこまない椅子が置かれた貴賓室

へこまない椅子が置かれた貴賓室


■「Café IMPERIAL」が銀座三越で復活!

帝劇2階ロビーの喫茶店「Café IMPERIAL」。今回、実際に使われていた椅子とテーブルを使用し、名物メニューの数々とともに期間限定復刻される。イートインでのコールドドリンクにはオリジナルコースター、ホットドリンクにはオリジナルスプーン、ケーキにはオリジナルフォークがプレゼントされる。懐かしいメニューとともに、劇場の思い出を語り合いたい。

再現された「Café IMPERIAL」

再現された「Café IMPERIAL」

仕事帰りにダッシュで入った帝劇で、豚まんの温かさに救われた人も多いだろう。"帝劇名物幻の豚まん"も、イートイン/テイクアウト可能だ。


■フォトスポットで帝劇の世界を体験!

ミュージカル上演時はオーケストラピットが設置されるため、観覧席として使用されることが少ない「1階XA列」の座席や、帝国劇場展オリジナルデザインの背景とフレームで写真が撮れるブースなど、舞台の世界に入り込んだようなフォトスポットが登場。思い出のワンショットを撮影できる。

通常オーケストラピットが設置されるため観覧席として使用されることが少なかった1階XA列の座席を設置

通常オーケストラピットが設置されるため観覧席として使用されることが少なかった1階XA列の座席を設置

帝国劇場展限定「フォトブース」(協力:PicTokyo)

帝国劇場展限定「フォトブース」(協力:PicTokyo)

さらに本館7階 銀座シャンデリアスカイ(別会場)では、<着到板体験フォトスポット>として、帝国劇場で上演されたミュージカル53作品のタイトルを、「着到板」の形で掲出。グッズ付きで手に入る「着到板キーホルダー」をかけることもでき、出演者気分を味わうことができる。

また、「あなたの好きな帝劇作品は?」のカードを、ボードに貼ってシェアすることも可能だ。銀座シャンデリアスカイの大きな窓からは、和光や鳩居堂といった銀座ならではの景色を間近にのぞめるのも、三越の立地ならではだ。

銀座シャンデリアスカイの窓からの眺望

銀座シャンデリアスカイの窓からの眺望


 

■帝劇の思い出とともに、新たな未来へ

多くの演劇ファンに惜しまれながら閉館した帝国劇場。しかしこの展示を通じて、帝劇の歴史は、あらためて私たちの心の中に刻まれる。

帝劇の記憶を持ち帰ることができる限定グッズ、三越というデパートならではのお菓子とコラボした特別グッズも豊富だ。また入場特典として、『帝国劇場展』のキービジュアルを使用した「帝国劇場展オリジナルケース」も、有料入場者全員に配布される。

帝劇の思い出に浸れる書籍「帝国劇場アニバーサリーブック New HISTORY COMING」(2024年12月20日発売)は、『帝国劇場展』で購入すると、帝劇着到板クリアファイルがプレゼントされる。さらにこのたび、同書発売後に上演された『レ・ミゼラブル』帝劇クロージング公演と『THE BEST New HISTORY COMING』の模様を追加した2025年増補ページが完成したため、『帝国劇場展』・日比谷シャンテ内のTOHO ENTERTAINMENT STORE・オンラインの東宝モールでの購入者には、A3サイズ2つ折りオールカラー小冊子の特典として配布される(限定10,000部/※3月28日10:00より帝国劇場クロージング特設ホームページ https://teigeki.tohostage.com/closing/goods.html からダウンロードも可能)。

そして最後のブースでは、新・帝国劇場、3代目の姿を建築コンセプトやイメージパースを通じて見ることができ、新しい劇場への期待も膨らむ。

銀座三越で開催される『帝国劇場展~THE WORLD OF IMPERIAL THEATRE~』は、これまでの観劇を思い出しつつ、帝劇の裏側までもじっくり没入できる体験が盛りだくさんだ。

再び帝国劇場を訪れる、その日に想いをはせながら、ひとときの幕間を楽しみたい。

取材・文=ヨコウチ会長  撮影=安藤光夫(SPICE編集部)

イベント情報

『帝国劇場展~THE WORLD OF IMPERIAL THEATRE~』


■会期
【一般会期】
2025年3月29日(土)~4月27日(日)午前10時~午後8時[最終日午後5時終了]
※入場は、各日終了1時間前まで
※全日程、日時指定制での有料展覧会となります。
【エムアイカード プラス会員さま 特別ご招待日】(完売)
2025年3月28日(金)1日限り 午前10時~午後8時

■会場:銀座三越 新館7階 催物会場

 
【貴賓室内、映像上映スケジュール】
 
【1】3月28日(金)~4月12日(土):初演のジャン・バルジャン役である鹿賀丈史と、2024−2025公演のバルジャン役である吉原光夫、佐藤隆紀、飯田洋輔による座談会
 
【2】4月13日(日)~4月27日(日):初演キャストの滝田栄、岩崎宏美、島田歌穂と、『レ・ミゼラブル』音楽監督の山口琇也による座談会
 
 
■主催:銀座三越
■企画・制作:東宝 銀座三越
■企画協力:東宝エージェンシー
■制作協力:TOHOマーケティング スタジオアルタ TOHOリテール

 
■販売:3月29日(土)午前0時~4月27日(日)正午
 https://eplus.jp/teigeki-ex/

 
■「帝国劇場展~THE WORLD OF IMPERIAL THEATRE~」公式サイトURL:
 https://www.mistore.jp/shopping/event/ginza_e/teigeki_51

 
■「帝国劇場 NewHISTORYCOMING」公式X(旧Twitter): @NewHISTORY2025
 https://x.com/NewHISTORY2025
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