UNFAIR RULE、レトロリロン、ACE COLLECTION、YUTORI-SEDAI、Fish and Lips、Baby Cantaら次世代アーティストが大阪『NEW GRAVITY -SPECIAL-』に集結
2025年4月2日(水)、大阪・心斎橋BIGCATで『NEW GRAVITY -SPECIAL-』が開催された。『NEW GRAVITY』こと『ニューグラ』は、「宇宙空間のように想像できない「空間」を創れたら」という願いを込めて、2024年に始動した新しいイベント。2024年8月から5回の開催を経て、初めてBIGCATで行われる。「-SPECIAL-」というサブタイトルがつけられた今回は、UNFAIR RULE、ACE COLLECTION、Baby Canta、Fish and Lips、YUTORI-SEDAI、レトロリロン(50音順)の6組が出演。Baby Canta以外の5組は、過去の『ニューグラ』に出演したアーティストでもある。新年度が始まったばかりの春の日に、今注目の次世代アーティストたちがそれぞれの表現でエネルギッシュなライブを届けてくれた、貴重な1日だった。
『NEW GRAVITY -SPECIAL-』2025.4.2(WED)@大阪・心斎橋BIGCAT
『NEW GRAVITY』というタイトルには、「NEW=新しいアーティスト/新しいオーディエンス/新しい空間 + GRAVITY=重力・引力(引かれ合う・惹かれ合う)」という意味が込められており、「アーティストとオーディエンス」、「アーティスト同士」、「オーディエンス同士」など、強いエネルギーを持つ者同士が惹かれ合う場として、このイベントがあれば良いという想いも同時に込められている。
会場には、春休み中の大学生から年配の方まで幅広い年齢層のオーディエンスが集まった。桜も咲いて新年度が始まったということで、穏やかな春の気配が漂っていた。
Baby Canta
トッパーを飾ったのは、大阪でのバンドセットのライブはこの日が初めてというBaby Canta。まずはギター、ベース、ドラムのサポートメンバーがパワフルにビートを刻み、歪みギターを繰り出した。同時に総立ちのフロアからクラップが発生。やがてBaby Cantaが「Are you ready、大阪!」と叫んで意気揚々とステージに走り込み、1曲目の「696936」をキレキレでプレイ。さらに1stシングル「ビビってバビってブー」をグルーヴィに演奏した。洋楽ライクなサウンドメイクとボーカル、ギミックやこだわりが詰め込まれているであろうフレーズやリフに思わず心がワクワクし、自然に身体が揺れる。
MCでは「こんにちは、Baby Cantaです! BIGCATほんとに楽しみにしてました!」と元気に挨拶し、鍵盤の同期も使ったダンスナンバー「SHYBOY」でステージを動き回りながらフロアを扇動する。その後もクリアに突き抜けるギターリフが印象的な「HOME」、ハイトーンボーカルがメロウな「揺れる」と、幅の広い楽曲で表現力の豊かさを提示した。
花粉症で辛いと話していたBaby Cantaだったが、「皆さんの笑顔が僕を楽しませる余裕になってます!」と太陽のように笑い「まだまだ盛り上がれるよなぁ!」と叫んで後半戦へ。スピード感あふれる「アークサーチライト」ではタンバリンを全力で叩き、ラストは2月にリリースされたファンキーな新曲「The Weak」で華やかに締め括った。勢いのあるグルーヴィなライブで、トッパーらしい盛り上がりを作り出した。
Fish and Lips
2番手は、西村大地(Vo.Gt)、岩本柊平(Ba.Cho)、岩田雄大(Dr.Cho)からなる埼玉県鳩ヶ谷発の青春ロックバンド・Fish and Lips。今年2月に行われた『ニューグラ vol.4』にも出演した。アークティック・モンキーズの「Leave Before the Lights Come On」をSEにステージに現れると、「HERO」から爽やかに音を飛ばしていく。サビでは一斉に手が上がり、その様子を見た岩本は嬉しそうに笑顔を浮かべる。続く「会いたくなったら」ではクラップも発生。耳馴染みの良い歌声とキャッチーなメロ、シンプルかつ丁寧に奏でられるロックサウンドが会場を満たしていく。
ここからは雰囲気を一転。ピンスポに照らされた西村はシリアスな表情で「もう2度と話せないし、会えなくなってしまった人に向けて作った曲です」と、実体験を元に書いたロックバラード「遥」を披露。続き「散々幸せにさせられて、散々ラブソングを作らせられて、知らぬ間にすれ違っちゃって。ずっとその人が心配で仕方なくて、本能的にその人の歌は歌わずにいたんだけど、やっと本当の意味であなたの歌が歌えると思います」と想いを口にして、新曲「本音」を感情を込めて歌い上げた。
ラストスパートは「今日は様々な音楽の素晴らしさに触れられる日だと思って。俺は俺なりに1番素直で優しい音楽がしたいと思って立っています(西村)」と述べ、3月に配信リリースされた最新曲「青春が鳴り止まない」を披露。作詞作曲を手がける西村が「今の自分にしか作れない」と言うように、彼自身がリアルに抱えている将来への不安や悔しさ、それでも前に進む想いを赤裸々に歌で吐き出した。そして「俺は良い音楽の正解や成功はわからないから、ありのままの音楽をやって終わります!」と「青春ロックを歌って」でフィニッシュ。全6曲を、ただひたすら真っ直ぐに駆け抜けた。
YUTORI-SEDAI
西東京市発の3ピースバンド・YUTORI-SEDAIも、『ニューグラ vol.4』以来2度目の出演。金原遼希(Vo.Gt)が「一緒に楽しんでこーぜ!」と叫び、「23x3」から気持ち良くライブをスタートした。間髪入れずキュートな恋愛ソング「ぎゅっとして、」を、とびきり明るく軽やかに放っていく。金原は「音楽が大好きな、音楽に恋する全ての人へ!」と、ロックチューン「恋しちゃったんだ」を投下し、一層疾走感を増してサウンドを届けていく。上原駿(Ba)はリラックスして楽しそうにベースを弾き、櫻井直道(Dr)も見事なスティックコントロールで安定感のあるビートを繰り出した。
金原は「新年度始まった時の平日のど真ん中にこんなに人が集まるって、みんな大丈夫かと勝手に心配してたんだけど(笑)、曜日関係なく音楽大好きな人が集まってることが素敵だなと思うし、僕はそんな人が大好きです!」と喜びを伝え、片思いの切ない想いを歌ったバラード曲で、メジャー1st EP「blanket」のリード曲「私だって、」をしっとりと披露した。
ここからはラストスパート。コール&レスポンスで盛り上げた「すき。」、動きのあるベースラインやギターリフが軽快な「アイラブユーベイビー」に続き、ラストは「足りないくらいがちょうどいい」でジャンプとシンガロングでひとつになり、最高にポップにライブを終えた。「楽しむぞ」という3人の気持ちが全面にあふれ出た、元気をもらえる30分だった。
ACE COLLECTION
「いこうぜやろうぜー!」とのっけからハイパワーでフロアを揺らしたのは、『ニューグラ vol.1』ぶりに登場したACE COLLECTION。一聴するだけで感じられる、ハイスキルなたつや◎(Vo)のボーカル、わななくLIKI(Gt)のギター、確実にボトムを支えるMochi(Ba)のベース、タイトで底力のあるRIKU(Dr)のドラムに釘付けになる。フロアも前のめりで食らいつき、1曲目の「LIFEメーカー」から熱を高めていく。「短い時間だから思い切りいこうぜ!」と2月リリースの最新シングル「ヘンゼルとグレーテル」、「モノクロシティ」とアッパーチューンを連投し、ジャンプでフロアをひとつに導いていった。
たつや◎は「BIGCATってバンドマン的には夢のハコというか。でっかいライブハウスという感じでステージも広くて……やりたい放題できるね、みんなね?」とメンバーに呼びかけ期待を高める。そして「春なのでとっておきのバラードを」とストリングスも入った王道バラード曲「70億にただ1つの奇跡」をたっぷりと響かせた。
ピアノとバンドサウンドの音色が美しい「シンデレラ」で再びギアを上げると、たつや◎はお立ち台の上にしゃがみ込んでフロアと目線を近付けて、「今日は特に1人ひとりの表情が見えるし、想いと感情が伝わる気がするし、手も触れるし、大きいハコだけど近い感じで、特別な感じで、最後思い切り盛り上げていこうぜー!」と「December 9」を披露。MochiとLIKIも前へ出て躍動し、楽しそうに笑顔を見せる。前向きなマインドと抜群の巻き込み力で、見事な熱狂を作り上げた。
レトロリロン
ACE COLLECTIONの熱を引き継ぎ、圧倒的なライブパフォーマンスで魅了したのはレトロリロン。彼らも『ニューグラ vol.2』ぶりの出演となる。SEに合わせて永山タイキ(Dr)、飯沼一暁(Ba)、miri(Key)、涼音(Vo.Ag)が順に登場。フロアは早速クラップで迎え、涼音は「よっしゃー大阪ー! どうぞよろしくー! 自由に感じてくれー!」と叫び「ワンタイムエピローグ」を投下。さらにホーンも入ったファンキーな「DND」を連投して独自の世界観へいざなっていく。筆者は彼らのライブを観るのは約2年ぶりだったが、すさまじい進化を遂げていて驚いた。前へ前へと放つグルーヴィで豊穣なバンドサウンドはもちろんながら、涼音の圧倒的なボーカルスキルと堂々たる佇まいは、目を見張るものがあった。
MCで「平日ど真ん中、皆さん今日は何をサボってここに来たんですか?(笑)」と冗談交じりに話しかける涼音。レトロリロンは3rd EPのリリース記念で全国ツアー中だとして、「4日前には北海道にいたけど、今日は大阪。寒いのか暑いのかわからない(笑)」と笑い、「北海道から東京飛び越えて大阪来たから、アゲていこうよ!」とmiriの鍵盤が軽快に走った「ヘッドライナー」、フロア全体でジャンプして音の波に乗った「Document」と続けて最高のアンサンブルを響かせていく。
そして「僕らはいつもステージで歌わせてもらう限りは、思い切りみんなに音をぶつけにいくんだけど、返ってくる感じが全然各地で違ってて。大阪は良い意味でうるさい。元気(笑)。僕らもボルテージが上がって一緒にライブを作っている感じ。一緒に進んでいけたらいいなと思っております(涼音)」とはにかみ、永山のカウントから始まった「深夜6時」に続け、最後は華やかに「アンバランスブレンド」でシンガロング。極上の音楽で会場を幸福感で包み込んだ。
UNFAIR RULE
トリは『ニューグラ vol.1』にも出演した岡山発のUNFAIR RULE。山本珠羽(Gt.Vo)、杉田崇(Dr)、悠瑞奈(Ba)は集まって気合いを入れ、「始めます!」とミドルナンバー「内緒」を伸びやかに放ってゆく。そして「馬鹿みたい」で一気にテンションアップ! オーディエンスは真っ直ぐに拳を突き上げて応える。透明感と力強さを併せ持つ山本の歌声と上質なメロディーラインはとても耳障りが良く、スッと身体に染み込んでいく。
山本は「『NEW GRAVITY』2回目の出演です。今日はBIGCATのトリを任せてもらいました。任せてください!」と頼もしく宣言。「初めて観る人もいると思うんですけど、私は恋愛の歌を歌ってます。私の歌だけど、自分の大切な人と重ねて、自分だけの解釈で大切に持って帰ってください」と「バーカ!」「悲しくないよ、」を、感情を乗せて切なく歌いあげた。山本が書く楽曲は、全てが彼女の実体験が元になっている。恋をしたことがある人なら、誰もがどこかに共感できる歌詞が広がっていて、心のひだに深く入り込むことができる。オーディエンスは手を上げながら、そんな彼女の歌声を受け取っていた。
続けて山本は「今日を作ってくれたキョードー大阪に、私は大好きな大人がいます。BIGCATの楽屋の階段で相談を聞いてもらったこともあります。去年20歳になって、大人になることは我慢できるようになることだと思ってました。でもその人は「大丈夫。ワガママにそのまま突き進め」と言ってくれました。「失敗は消すんじゃなくて、失敗まで大事にできるように」と背中を押してくれた大切な人が作った1日です。私はそんなカッコ良い大人になりたいと思いました」と想いを述べて「消しゴム」へ。リスペクトを込めて優しく鳴らされるギターや凜とした歌声が大人っぽく、力を感じる演奏だった。
そして「大好きなカッコ良い人がいるから出たいと思った日です。『NEW GRAVITY』は普段交わらないようなバンドといつも出会わせてくれます。素敵な機会をありがとうございます! 最近やっとメンバーが3人揃いました!これからもUNFAIR RULEをよろしくお願いします!」と、サポートメンバーだった悠瑞奈が正式加入したことを嬉しそうに報告し、「ずるい約束」「君にさよならを言わない」をとびきり熱量高く駆け抜けた。3ピースだからこその生々しさと輝きを放ったUNFAIR RULEだった。
『NEW GRAVITY -SPECIAL-』はこうして幕を閉じた。出演した6組は、それぞれに強いエネルギーをライブに宿し、オーディエンスと結びつきを作り上げた。
5月29日(木)には大阪・心斎橋JANUSで、おもかげ、ガラクタ、KOHAKUほかが出演する『NEW GRAVITY ~vol.7~』を開催。さらに5月31日(土)には大阪・LIVE SQUARE 2nd LINEで、空白ごっこ、至福ぽんちょ、HINONABEほかが出演する『vol.8』が行われる。これからも『ニューグラ』は、新たな出会いや空間を創り出していってくれるだろう。
取材・文=久保田瑛理 撮影=ハヤシマコ
セットリスト
2025年4月2日(水)@大阪・心斎橋BIGCAT
X:https://x.com/newgravity_2024
Instagram:https://www.instagram.com/newgravity_2024/
<セットリスト>
Baby Canta
1.696936
2.ビビってバビってブー
3.SHYBOY
4.HOME
5.揺れる
6.アークサーチライト
7.The Weak
1.HERO
2.会いたくなったら
3.遥
4.本音
5.青春が鳴り止まない
6.青春ロックを歌って
YUTORI-SEDAI
1.23x3
2.ぎゅっとして、
3.恋しちゃったんだ
4.私だって、
5.すき。
6.アイラブユーベイビー
7.足りないくらいがちょうどいい
1.LIFEメーカー
2.ヘンゼルとグレーテル
3.モノクロシティ
4.70億にただ1つの奇跡
5.シンデレラ
6.December 9
レトロリロン
1.ワンタイムエピローグ
2.DND
3.カテゴライズ
4.ヘッドライナー
5.深夜6時
6.アンバランスブレンド
UNFAIR RULE
1.内緒
2.馬鹿みたい
3.バーカ!
4.悲しくないよ、
5.消しゴム
6.ずるい約束
7.君にさよならを言わない
イベント情報
日程:2025年5月29日(木)
会場:大阪・心斎橋JANUS
時間:OPEN 18:30 / START 19:00
出演:おもかげ / ガラクタ / KOHAKU / and more
・一般 ¥2,500(税込)
・学割 ¥2,000(税込)
※整理番号付き ※入場時、別途ドリンク代必要
※未就学児入場不可
<オフィシャル先着先行>
受付:4月19日(土)19:00~5月9日(金)23:59
『NEW GRAVITY ~vol.8~』
日程:2025年5月31日(土)
会場:大阪・LIVE SQUARE 2nd LINE
時間:OPEN 17:30 / START 18:00
出演:空白ごっこ / 至福ぽんちょ / HINONABE / and more
■オフィシャル先行早割り
・一般 ¥2,500(税込)
・学割 ¥2,000(税込)
※整理番号付き ※入場時、別途ドリンク代必要
※未就学児入場不可
<オフィシャル先着先行>
受付:4月19日(土)19:00~5月9日(金)23:59