花總まりと森公美子が初共演!ミュージカル『バグダッド・カフェ』製作発表記者会見レポート 「愛を語るには非常に良い作品」
(左から)小山ゆうな、花總まり、森公美子
1983年に公開され、記録的ロングランを果たした映画『バグダッド・カフェ』。アメリカ西部の砂漠の真ん中にある「バグダッド・カフェ」の女主人ブレンダと、偶然現れたドイツ人旅行者ジャスミンの出会いと友情、そこから広がる国籍も人種も立場も異なる人々の絆を描いたファンタジックコメディだ。そんな本作をパーシー・アドロン監督と妻のエレオノーレ・アドロンが自ら脚本を手がけたミュージカル版が小山ゆうなの演出で日本初演される。
ミュージカル『バグダッド・カフェ』製作発表記者会見での歌唱披露の様子
2025年8月5日(火)には製作発表記者会見が東京都内で行われ、主演の花總まりとブレンダ役の森公美子、演出の小山が登壇。本作の劇中で歌唱される「Calling You」を披露するとともに、公演への意気込みを語った。
ミュージカル『バグダッド・カフェ』製作発表記者会見での歌唱披露の様子
ミュージカル『バグダッド・カフェ』製作発表記者会見での歌唱披露の様子
今回、オファーがあるまで映画を知らなかったという花總。「お恥ずかしながら映画は知らなかったですが、『Calling You』という楽曲は知っていたんです。今回、お話をいただいてから、何の予備知識もなく映画を観たんですが、ところどころに面白いものが散りばめられていて、コメディだなと思うところがたくさんあって。どんどん引き込まれていって、最後には心が暖かくなる作品だと思いました。映画の最後にはショーアップシーンも作られていたので、これはうまくミュージカルができるかもしれないと思いました」と映画の印象を語り、続けて「いただいた台本とその中に入ってくる音楽で舞台を作っていきたいと思って、映画は1回しか観ていませんが、その1回の印象は盛りだくさんで、大好きな映画になりました」と笑顔を見せた。
花總まり
「(映画の)レーザーディスクをもっていた」という森は、「あの時代をどう表現すればいいのかと今、悩んでいます。ジャスミンはドイツから来たという服装をしていて、私は砂漠の真ん中でいきているけれどもカーディガンを着ている。それは、砂漠の夜は寒いという象徴です。砂漠の荒んだ、砂まみれの生活からジャスミンと出会って変わっていく姿が音楽で表現されていると思うので、音楽も含めて楽しんでいただければと思います」とアピールした。
森公美子
また、演出の小山は「(原作映画は)カルト的な雰囲気があり、特に日本でファンが多い作品です。なので、ファンの方ががっかりしないように、きちんと映画の世界観を再現できればなと思っています。それから、映画は1980年代に作られていますが、ミュージカル版は2000年代に作られていて、同じ監督が本を書かれていて、音楽も同じボブ・テルソンさんが作られています。ミュージカル化するに当たって、映像で表現した部分を音楽にしたところがあったり、時代の流れの中で多様な人のあり方も変わっていたりするので、そうしたミュージカルならではの部分も大切に作っていければと思っております」と演出について言及した。
小山ゆうな
花總が演じるジャスミンは異国の地で一人カフェにやって来て、徐々にその場に溶け込み、多くの人を惹きつけるというキャラクターだ。花總は、そんなジャスミンについて「人との間に壁を作らないということなど、きっとたくさんの彼女のならではの魅力があるのだと思います。私だったら、きっと自分の持っていた荷物が夫のものだったと気づいたらそのまま帰っていたと思うんです。でも、彼女は居続けた。しまいには、そこで生きていた。そんな不思議な魅力をこれから深掘りしていきたいと思います」と語った。
ミュージカル『バグダッド・カフェ』
公開された本作のメインビジュアルで、森が演じるブレンダはジャスミンに対して警戒心を抱いているかのような表情を浮かべているが、森は「最初にジャスミンが現れたとき、『この汚い宿に泊まりたいなんて、変な人だ』と(ブレンダは)思います。その後も、彼女の行動を見て、『やっぱり変な女だ』と思って、違和感を感じている。もしかしたら、本当は男なんじゃないかということまで考えるようになって、信用できなくなって警察まで呼ぶんですよ。でも、そんなジャスミンにみんなが夢中になっていく。花總さんが演じることで、みんなに愛されるジャスミンがここに誕生するんです。でも、ブレンダはずっと疑っている。子どもたちもジャスミンに懐くのが許せなくて…。(ポスターの)怪訝な表情は、それが全てつまった顔ですが、そのブレンダが徐々に変わっていくというお話でもあります」と説明した。
花總まり
意外にも本作が初共演となる花總と森。花總は森の印象を「森さんの舞台を観ているととてもスッキリするんです。楽しいものは楽しい。怒っているときはものすごく怒っている。パワーやエネルギーが伝わってくるんですね。嫌味もないから、お芝居が作り物に見えないんですよね。本当にそこで生きていらっしゃる方と感じてすごいなと思います」と語る。
森公美子
一方、花總の印象を聞かれた森は、「花總さんは“華”がある。この場に二段の楽屋花があるような、何もないところもパッと明るくなるような存在です。ところが、普段はジャージで移動しているんです。でも、そのジャージ姿も品がある」と絶賛し、「ジャージメーカーの方がいたら、ぜひ着せてみてください。これがドレスコードなのかなと思うくらい」と話して笑いをとった。映画の中で登場する手品のシーンはミュージカル版にも登場するそうで、二人は現在、苦労をしながら練習中だという。森は「先生にやり方を教えてもらったのですが、もしかしたら客席にはバレバレかもしれません(苦笑)」と苦笑いを浮かべながらも、「夜に練習をしているから、(魔法に使う)スティックがリビングに置いてあります」と明かす。そして、「もし、これが成功したら、私と花總さんでいろいろな演芸場や施設を回ってご披露したい」と夢を語ると、花總も「できたらいいですね!」と同意して盛り上がった。
ミュージカル『バグダッド・カフェ』製作発表記者会見
最後に改めて小山は「作品の中で、『二人は太陽である』と表現されていますが、まさにお二人自身がパワフルでキラキラしています。そんなお二人がどういうふうにブレンダとジャスミンを立ち上げていかれるのかを楽しんでいただければと思います。他のキャストの皆さんも個性的なメンバーが揃っているので、ぜひたくさんの方に観ていただきたいです」とコメント。
森は「この作品のテーマは本当の愛だと思います。家族愛や親友との愛など、愛を語るには非常に良い作品です。きっと心が温まる作品になっていると思うので、小山さんがおっしゃるような太陽になっていければと思っております」と意気込んだ。
そして、花總は「知る人ぞ知る映画『バグダッド・カフェ』のミュージカル版が日本初演されます。ぜひいろいろな国の方にも観ていただけるように、日本初演を頑張って生きたいと思います」と力を込めて、会見を締めくくった。
取材・文・撮影=嶋田真己
公演情報
音楽:ボブ・テルソン
歌詞:リー・ブルーワー /ボブ・テルソン/パーシー・アドロン
演出:小山ゆうな
翻訳・訳詞:高橋知伽江
音楽監督:荻野清子
製作:東宝
ほか
【日程・会場】
2025年11月2日(日)~11月23日(日)東京 シアタークリエ