小野大輔×斎藤栄作が語る“予定調和じゃない面白さ”と進化~Voice Boxシリーズ節目の第5弾、朗読『グレート・ギャツビー』インタビュー 

インタビュー
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左から 斎藤栄作、小野大輔

左から 斎藤栄作、小野大輔

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小野大輔、下野紘、羽多野渉、森久保祥太郎、岸尾だいすけと豪華声優陣が揃う朗読劇、Voice Box 2025 朗読「『グレート・ギャツビー』 〜恋に落ちることは運命を変えてしまう・・・永遠に〜」が、2025年9月に東京・日本青年館にて上演される。

不朽の名作小説を原作にした朗読劇シリーズとしてスタートしたVoice Boxは、今回で5作目。人気声優たちが公演ごとに役替わりで多彩な人物を演じ分けるスタイルで、毎回大きな話題を呼んでいる。

節目の5作目を迎えるにあたり、Voice Boxはどんな進化を遂げているのか。シリーズ初回から出演してきた小野大輔と、脚本・演出を手がける斎藤栄作にインタビューした。稽古と本番で生まれる化学反応や、役替わりがもたらすライブ感など、朗読劇ならではの魅力について語ってもらった。

――Voice Boxは今回が5作品目となります。まずは本作の見どころはどんなところでしょうか。

小野大輔(以下、小野):変わらずにお届けしてきた思いというのは、「声優の朗読劇ってこんなにすごいんだ」という部分です。声優として自分のスキルを一番端的に、そして効果的にお見せできるのが、このVoice Boxという作品だと思っています。朗読劇では、僕らの声で様々な像を立ち上げて、お客さんの頭の中に無限大の景色を広げることができる。

過去の作品に出演してくれた下野紘くんと羽多野渉くん、そして初めて参加していただく森久保祥太郎さん、岸尾だいすけさんとの5人で、無限大の広がりを楽しんでいただけるというのが、今作の見どころだと思います。

斎藤栄作(以下、斎藤):小野さんが話してくれたように、男性も女性も登場する物語ですが、それをたった5人の男性声優さんだけで全て演じ分けるというところが見どころの一つだと思います。

――公演ごとの役替わりも見どころかと思います。役替わりについて、大変なことや挑戦だと感じることを教えてください。

小野:「いろんな役を演じて大変そう、難しそう」と言われることもあるのですが、僕からすれば「いや、これこそが声優の仕事だよ」と思うので、やりがいしかないんですよ。

デビュー当時を振り返ると、番組レギュラーというものがあって、1クールの作品が13話あったら、その13話全てに出るというお仕事がありました。村人Aや兵士Bのような、いわゆる端役で毎回違う役を演じるという経験を、若いときにずっとしていて。新人が必ず通る道ではあったのですが、それが本当に楽しかったし、一番青春を感じていたなと思うんです。

Voice Boxはその時のことを思い出す作品ですね。何をやっていても楽しい。斎藤さんは「この一瞬でその演じ分けは無理だよ」と思うような無茶な脚本や演出をつけられるんですが(笑)。

斎藤:すみません(苦笑)。

小野:でも、やってみたら出来てしまうんですよ。しかも、難しそうであればあるほどやりがいがあるので、大変なことがあることが、この作品の“正解”だと思っています。

斎藤:やっぱり声優さんの演じ分けというのは、本当に腕の見せどころだと思うので、僕も毎回皆さんの手腕に驚かされています。

――これまで上演してきた八王子を飛び出し、今回は日本青年館での上演となりますが、ほかに回を重ねてきたなかで、変化や進化を実感するポイントがあれば教えてください。

小野:斎藤さんの脚本ですかね。1回目から、いい意味で演者に挑戦状を叩きつけてくるような、「さぁ、これをどう料理する?」と言わんばかりのギラギラ感は、回を重ねるごとにパワーアップしている気がします。

斎藤:アハハ(笑)

小野:導入部分にかなりメタ表現が入るんですが、それが面白いんですよね。

斎藤:この作品では、物語を始める前に、必ず一つ設定を噛ませていて、すぐに本編に入らないんですよ。第1回で上演した『王子と乞食』では、サラリーマンがカラオケボックスにやってきて、選曲本を開くと『王子と乞食』がスタートするようにしました。幕が開いたから、声優さんがお客さんに物語を聴かせる、という形ではなく、本を開くことで声優さんもお客さんも唐突に一緒に物語の中に入っていくというギミックを入れることは、初回から継続してやっています。

小野:あれはVoice Boxならではの構成ですよね。

斎藤:大体その役は小野さんが担当されていますね。小野さんが突然、周りの人たちに読まされる形で物語に引き込まれていく。同じようにお客さんも引き込まれていって、物語がどんどん進んでいくという仕掛けを作っていますが、それが次第に強引になっていっている気がします(笑)。

小野:次第に、というより初回からだいぶパワープレイだったと思いますよ(笑)。でも、Voice Boxというタイトルは、カラオケボックスから始まっていて。今はもっぱら端末入力ですが、選曲本を開くと始まるというところから、本の形をしたものを開くと物語が始まるというスタイルになっているのですが、あのギミックは本当に秀逸だなと思っています。毎回、手を変え品を変え、思いも寄らない導入パートを書いてくださるので、今後も斎藤さんの進化が楽しみです。

斎藤:いやぁ、もう毎回必死ですよ(苦笑)。

小野:あと、進化とは別に、毎回想定外の面白いハプニングも起こるんです。僕は予定調和だと面白くないなと思うタイプなので、このハプニングも楽しみにしています。

斎藤:公演ごとの役替わりがあるので、1つの役を3公演あれば3人の方が演じるわけです。稽古だとまだ皆さん探り探りなのですが、本番ではお互いに「そう来たか!」と化学反応が生まれる。声優さん同士のお芝居勝負みたいなところも、想定外という意味では面白いところだと思います。楽屋では「そう来たか~、先に教えておいてよ」のようなやり取りもあって、僕はそれを面白いなと思いながら眺めています(笑)。

小野:そこは斎藤さんの演出の特色ですよね。稽古の段階で、細かく指示はあるんですが、本番が始まったら役者に委ねてくださる。演じ分けってやっぱり瞬間的なひらめきの部分もあるので、アドリブが入ったり、とっさに「こう演じたい」と思ったりするわけで。それを任せてもらえるのは本当にありがたいです。

――過去の公演で印象的だった“想定外”なエピソードを教えてください。

小野:印象的だったのは、やっぱり『フランケンシュタイン』のさとたく(佐藤拓也)が演じたフランケンシュタインですね。怪物は怪物のままという終わり方なんですが、彼は最後の最後に“美しい怪物”に変化するという演技プランで来て。あの発想は僕にはなかったので、「やられたな」と思いました。

斎藤:あれは印象的でしたね。ずっと怪物らしい声で演じていて、ラストのラストで美青年の声に変えたんです。僕は事前に「こうしたいです」と聞かされていたので、「どうぞどうぞ」と。実際に演じてみたら、みんなが「ワッ!」となりましたね。

小野:あれは驚きましたよ。昼公演で三宅健太くんがフランケンシュタイン役を演じたのですが、それが本当に素晴らしいフランケンシュタインで。あれを超えるものはないんじゃないかというくらい、説得力のある形で演じられていたんですよ。内心、「さとたくはこの後、同じ役をどうするのかな」と思っていたら、最後に美声になったので、あれは忘れられないですね。

――今回のキャストについてもお聞かせください。Voice Boxに出演経験のある下野さんと羽多野さん、そして初参加となる森久保さんと岸尾さんと豪華な顔ぶれが揃っています。

小野:下野くんと羽多野くんは“戦友”感を抱いているので、彼らと一緒の現場は本当に楽しいんです。若手時代の青春を一緒に分かち合った感覚もありますし、Voice Boxでも支えてくれてありがとうという気持ちがあって。本当に信頼しているので、「絶対間違いないな」と思っています。

森久保さんと岸尾さんは非常に個性の強い方々で、このお二人がVoice Boxの演じ分けをどう演じられるのか、僕が後輩ではあるんですが僭越ながら「お手並み拝見」と(笑)。文字にすると生意気に見えてしまうかもしれないのですが、僕よりキャリアを重ねてらっしゃるお二人が新しい扉を開いてくださるんじゃないかと、すごく楽しみにしています。

――では最後に、Voice Boxとして今後、挑戦したいことはどんなことでしょうか。

小野:『王子と乞食』から始まり、『フランケンシュタイン』、『かもめ』、『山椒大夫』、そして今回が『グレート・ギャツビー』となるわけですが、“題名は知っていたりどこかで触れていたりするけれど、どんな内容だっけ?”という作品が多いと思います。

これは実は僕らの狙いでもあって。そういった作品を僕らの新しい解釈を入れて表現しながらも、「やっぱり名作は名作であり、いい作品だな」と思ってもらえるよう、毎回仕掛けています。

作品自体はいつもプロデューサーや斎藤さんが選出しているわけですが、毎回、絶妙なチョイスですよね。それが嬉しいので、僕はあまり挑戦したい作品を言わない方がいいのかなと思っています。でも、ここまで大人っぽい話が続いているので、童話とかいいんじゃないかなと。

斎藤:いいですね。僕は普段、演劇畑で脚本・演出をしているのですが、毎回、作品を選ぶ基準というのは、名作であるというのは前提として、演劇で表現するには大変なものをあえて選んでいます。例えば『王子と乞食』だと、設定上、似ている役者を呼ばないといけなくて大変なんですが、声の表現であればそこを飛び越えられる。『フランケンシュタイン』もそうですよね。

なので、先ほどおっしゃった童話やファンタジーの方が面白くなりそうだなと思っています。『ピーターパン』や『アリババと四十人の盗賊』、『西遊記』とか。40人の盗賊やいろいろな妖怪を声だけで演じてもらえると、僕が考える朗読劇にピタッとハマるなと考えています。

小野:40人の盗賊の演じ分け、いいですね。面白そうです。

斎藤:40人、いけそうですか?

小野:全く問題ないですね。長尺の戦争映画で、やられる兵士を若手数人でひたすら演じ続けた際は、40人どころじゃない人数をやりましたから、40人の盗賊もいけそうです(笑)。

斎藤:今後はそういうチャレンジをしてみるのも面白そうですね。

取材・文=双海しお 撮影=奥野倫(GEKKO)

公演情報

Voice Box 2025 朗読 「グレート・ギャツビー」〜恋に落ちることは運命を変えてしまう・・・永遠に〜
 
原作 F・スコット・フィッツジェラルド
脚本・演出 斎藤栄作
 
公演日
2025年9月27日(土) 18時00分 開演
2025年9月28日(日) 12時30分 開演 / 17時00分 開演
※開場は開演の30分前
※各公演ごとに役替わりがございます
会場 日本⻘年館
 
出演 小野大輔 / 下野紘 / 羽多野渉 / 森久保祥太郎 / 岸尾だいすけ
料金(全席指定) 8,800 円(税込)
※未就学児入場不可
 
主催・製作 株式会社オフィスサイン
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