cali≠gari 必要最小限のバンドアンサンブルで魅せた、『TOUR 18』初日公演レポート

レポート
音楽
2025.11.4
cali≠gari

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TOUR 18
2025.10.7(火)新代田FEVER DAY1

この9月に最新アルバム『18』をリリースしたばかりのcali≠gariが、年明けまでかけて全国を巡る『TOUR 18』を開催。そのキックオフとして10月7日、8日に新代田FEVERにて2デイズ公演が行われた。『18』の収録曲はもちろん、2000年代の楽曲を新装した年初のセルフカヴァー集『30』からも多く披露されることが予告されていた今回のツアー。言わば、2025年の総決算とも言えるパフォーマンスを期待できそうだ。
 
10月7日。ツアーの初日を目撃しようと新代田FEVERを訪れたオーディエンスの頭上からは、金属の欠片がシャラシャラと擦れ合うかのようなSEがしんしんと降り注いでいる。最終的には80~90年代色の強いロックアルバムとなったものの、元々はインダストリアルな方向に向かうはずだったという『18』。カン、カン……というメタリックなリズムが刻まれるなかで登場したメンバーたちは、ドカドカと打ち込まれるパワフルなドラム(サポートのササブチヒロシ)、挑発的に軋むギター(桜井青)、地を這うようにうねるベース(村井研次郎)……と金属音を塗り潰すかの如くギアを上げながらバンドアンサンブルを組み上げていき、石井秀仁のニヒルな低音ヴォイスが加わったところで『18』の音世界へと接続完了。オープニングは性急さのなかで刹那的な感傷を迸らせる「藍より蒼く」だ。そのままスターリン仕込みの(?)毒々しい歌詞をグラマラスなサウンドとド派手なコーラスで放出する「ニッポニアニッポン」、2009年の復活劇からライブの定番曲であり続けている「-踏-」へと間断なく演奏は続き、フロアはのっけから拳が上がりっぱなしの状態に。
  
さらにはスカ調の「ギャラクシー」、ユーモラスなグルーヴを這わせた「マス現象 ヴァリエーション2 諸事万端篇」と、バンドの佇まいがエキセントリックだった『第6実験室』時代のナンバーを2025年仕様で披露すると、石井流の〈ダサカッコ良さ〉が表出した『18』屈指のポップチューン「ポポネポ」、リズミカルなフレージングで観客からシンガロングを引き出した「コバルト」へと移行。フロアのあちこちで柔らかく揺れる色とりどりのジュリ扇が、楽曲のポップさをそのまま体現しているようだ。

桜井青(Gt)

桜井青(Gt)

4つ打ちに乗るレトロフューチャーなシンセサウンドに導かれて突入したのは「フラフラスキップ」。観客による息の合ったクラップとコケティッシュなエレポップを並走させると、場のテンションは一気にフルマックスへ振り切っていく。そんな電気仕掛けの音世界を引き継いだのは、『18』で唯一インダストリアルな意匠を纏った「“Hello, world!”」。本来はちゃめっ気たっぷりのAI目線によるナンバーだが……ライブで体感するともはやパンク。混沌を物凄い勢いで転がしていくような巻き込み型のロック感がめちゃくちゃカッコイイ。

村井研次郎(Ba)

村井研次郎(Ba)

 はちゃめちゃなカオスの後を休む間もなく追いかけるのは、石井と桜井の掛け合いがクールな「ダ・ダン・ディ・ダン・ダン」。さらには「-踏-」と同じくライブ時の常連曲であるスピードチューン「ハイカラ殺伐ハイソ絶賛」、『30』のリリースツアーで初披露されたファンクラブ限定配布曲「破滅型ロック」とシンガロング系の2曲が投入されると、場の昂揚感はどんどんアップ。

石井秀仁(Vo)

石井秀仁(Vo)

かと思えば、次の「スクールゾーン」ではいつもよりBPMを速めることでこの曲の持つセンチメンタリズムがいっそう強まり、切実な青さが会場全体を包み込んでいく。 
そして、時計の針のSEを背にアンビエントなシンセと断片的な石井の声がエコーの彼方に消え去ると、いきなりのギアチェンジで「その行方 徒に想う…」へ。ドライブ感が増していくほどに切なさを募らせるというcali≠gariらしいエモーションを爆発させた後は、『18』のポップサイドとも言える「素知らぬ夢の後先に」と「グン・ナイ・エンジェル」、“弥勒菩薩の降臨”を暗示するタイトル通りの途轍もなくドラマティックなロックチューン「5670000000」を立て続けて本編は終了。「5670000000」はアルバムだと中盤に位置する楽曲だが、プログレばりに場面転換していく壮大さには妙な大団円感があり、華やかなエンディングにぴったりだ。

ところどころに煽りのような呼びかけはあったものの、ここまでMCは一切なし。アンコールも言葉を発しないまま、まずは『18』のリードソングである「東京亞詩吐暴威」をプレイ。80年代の日本のビートロックを我流に鳴らしたような陰影あるギターサウンドでフロアを酔わせると、そのままメロディアスな高速ハードコア「マシンガンララバイ」へと突撃し、最後は桜井の「ありがとうございました!」というシャウトと共に「龍動輪舞曲」でフィナーレ。《ロンドン・ロンド……♪》というフロアからのシンガロングを誘いながら明るく晴れやかな空気を醸造したところで、メンバーは去っていった。
 
コンパクトに、ストイックに。ツアーの幕開けは、“必要最小限のバンドアンサンブルで魅せる”というここ数年のcali≠gariのモードをそのまま体現したステージだったが、さて、明日以降はどうなるか。まだ演奏されていない『18』の楽曲たちが今後、どのように組み込まれていくのかに期待しながら帰路に着いた初日のライブだった。


取材・文=土田真弓 撮影=マツモトユウ

ライブ情報

cali≠gari「TOUR 18」
2025年11月7日(金)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
2025年11月8日(土)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
2025年11月15日(土)盛岡CLUB CHANGE WAVE
2025年11月16日(日)仙台MACANA
2025年11月23日(日)KYOTO MUSE
2025年11月24日(月祝)名古屋Electric Lady Land
2025年12月13日(土)岡山image
2025年12月14日(日)岡山image
2025年12月21日(日)梅田バナナホール
2026年1月9日(金)札幌cube garden
2026年1月10日(土)札幌cube garden
2026年1月11日(日)室蘭KMC HALL
TOUR FINAL
2026年1月25日(日)EX THEATER ROPPONGI
※終了分は割愛

リリース情報

アルバム『18』
2025年9月24日発売
<良心盤(CD)>
HMMN-10003 3,520円(税込)
<狂信盤(CD+DVD)>
HMMN-10004 6,600円(税込)

セルフカヴァーアルバム『30』
2025年1月29日発売
<良心盤>
MSNB-154 3,520円(税込)
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