cali≠gari MCなし、ソリッドなパフォーマンスのみで勝負した『TOUR 18』の口火を切る東京2デイズ2日目公演レポート

レポート
音楽
2025.11.4

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TOUR 18
2025.10.8(水)新代田FEVER DAY2

最新アルバム『18』を引っ提げたcali≠gariのリリースツアー、その2日目は10月8日の新代田FEVER公演。金属音が淡々と鳴り響く寂れた工場に迷い込んだようなSEを、4人のバンド演奏が豪快にかき消したところで幕開けたステージは、「藍より蒼く」「ニッポニアニッポン」「-踏-」「ギャラクシー」「マス現象 ヴァリエーション2 諸事万端篇」「ポポネポ」と、初日と同様のラインナップをひと息で駆け抜ける滑り出しに。時には煽るように舞台のギリギリ前面まで乗り出し、時には見下すように微動だにせず、場の熱量をクールにコントロールしていくパフォーマンスは、前日よりもさらにタイトなものに感じられる。 

この日ならではのセットリストへ踏み込んだのは、続いての「虜ローラー」から。アップテンポながらもソフトな風合いのこのエレクトロポップでは、桜井青(Gt)がフロアを指差しながらコール&レスポンスを誘導。多幸感にも似た陶酔を引き出したかと思えば、続くスクエアなハードコアパンクの「x」では、一転して暗黒に叩き落とすかの如く殺傷力高めのプレイでフロアを撹拌していく。その不穏さを引き継いだ「昏睡波動」が怒涛のツーバスを敷いたゴリゴリのグルーヴで突っ走ると、前日はアンコールで披露された「東京亞詩吐暴威」がここで登場。殺伐とした翳りをニュアンスたっぷりのギターサウンドでたなびかせると、桜井の煽りに導かれて「ハイカラ殺伐ハイソ絶賛」「破滅型ロック」を連打。前日を凌駕するマッシヴなプレイでフロアを圧倒しつつ、後者では観客とのサビの掛け合いで場を照らす光量を爽快に上げてみせる。

石井秀仁(Vo)

石井秀仁(Vo)

そこからさらに一転して雪崩れ込んだのは、この日の最速チューンだったであろう、あらゆる意味で過激なハードコアチューン「まほらば憂愁」。合間にジャジーなブレイクも挟みながらトップスピードで激走すると、だんだんと奇妙に捩れたシンセのフレーズがフェイドイン。しんと静まり返ったフロアが見守るなかでブルージーな「パイロットフィッシュ」を聴かせると、続く「愛の渇き」では軽やかなポップネスで場の緊張感をふわりと解きほぐしていく。

桜井青(Gt)

桜井青(Gt)

そして本編のラストでは、シンプルかつポップな小品「素知らぬ夢の後先に」、ドリーミーな柔らかさを纏った「グン・ナイ・エンジェル」、劇的な展開を見せるロックチューン「5670000000」という初日と同じ流れの3曲を披露。前日にも感じたことだが、アルバムとは異なるこの並びがじつにいい。近年のcali≠gari曲には彼らの死生観が反映されたナンバーが多く見られるが、この3曲の連なりを浴びながら筆者が感じたのは、“死”を見つめた先にある“生”に向けた慈しみと、清も濁も呑み込んで刹那的に燃える生命の輝き、のようなもの。『16』あたりのライブでも感じた、“生”の持つエネルギーをダイレクトに受け取るような感覚にグッときてしまった。

村井研次郎(Ba)

村井研次郎(Ba)

2日目のアンコールは、クライマックスを盛り上げる曲でお馴染みの「紅麗死異愛羅武勇」でスタート。仏恥義理のスピードでドライブしまくるヤンキーロックだけに、桜井も村井研次郎(Ba)も煽る煽る。それに応えてフロアからは「クレイジー!」という大合唱とOiコールが沸き起こり、会場は一気に狂騒のダンスパーティーへと変貌。その勢いのまま「マシンガンララバイ」へ雪崩れ込み、セットリストはいよいよフィナーレを飾るナンバーへ──その大役を担ったのは、2009年に爆誕して以降、cali≠gariのライブにおいて不動のレギュラーであり続けているジュリアナロック「マッキーナ」だ。ミラーボールが回るなかでカラフルなジュリ扇が無数に舞う、ザ・90年代なお祭り騒ぎで会場全体を燃やし尽くすと、メンバーは「ありがとう」とお礼の言葉を投げかけながら和やかに退場していった。初日と同様にMCはなし。『TOUR 18』の口火を切る東京2デイズのステージは、ソリッドなパフォーマンスのみで勝負した、なんとも潔いものとなった。

そして終演後。この2日間を振り返ってみて気になったのが、『18』のジャケットともっともリンクしている終曲「スクラップ工場はいつも夕焼けで」が両日のセットリストから省かれていたこと。また、お蔵入りとなったのか、それとも隠し球として残してあるのか不明だが、『18』についての取材時に桜井が語っていた未発表曲(『18』の収録から漏れたナンバーと、『18』の世界観と地続きである制作中の新曲)もまだ披露されていない。年明け1月に予定しているEX THEATER ROPPONGI公演まで続くツアーの間にライブの形は変化していくのだろうが、これらの楽曲たちが今後どのようにお目見えするのか楽しみなところ。
 
オープニングSEで聴かせたおぼろげな工場の風景が最終的に投影するのは、果たしてどんなサウンドスケープなのか。ツアーの全行程を終えたときに完成するであろう、『18』という物語の行く末に期待したい。

取材・文=土田真弓 撮影=マツモトユウ

ライブ情報

cali≠gari「TOUR 18」
2025年11月7日(金)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
2025年11月8日(土)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
2025年11月15日(土)盛岡CLUB CHANGE WAVE
2025年11月16日(日)仙台MACANA
2025年11月23日(日)KYOTO MUSE
2025年11月24日(月祝)名古屋Electric Lady Land
2025年12月13日(土)岡山image
2025年12月14日(日)岡山image
2025年12月21日(日)梅田バナナホール
2026年1月9日(金)札幌cube garden
2026年1月10日(土)札幌cube garden
2026年1月11日(日)室蘭KMC HALL
TOUR FINAL
2026年1月25日(日)EX THEATER ROPPONGI
※終了分は割愛

リリース情報

アルバム『18』
2025年9月24日発売
<良心盤(CD)>
HMMN-10003 3,520円(税込)
<狂信盤(CD+DVD)>
HMMN-10004 6,600円(税込)

セルフカヴァーアルバム『30』 
2025年1月29日発売
<良心盤>
MSNB-154 3,520円(税込)
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