今年も開催決定!岡山・瀬戸内の風光明媚な景色の中で「衣・食・住・遊」が楽しめた、郷土愛に溢れた新フェス『Setouchi Contemporary 2025』を振り返る
2026年10月24日(土)・25日(日)の2日間、『Setouchi Contemporary 2026 -MUSIC FESTIVAL- 』が岡山・UNO SEASIDE PARK(宇野港)で開催が決定。そこで今回SPICEでは、初開催となった昨年の様子をレポートで振り返る。
『Setouchi Contemporary 2025』2025.11.15(SAT)岡山・UNO SEASIDE PARK、たまの湯
2025年11月、岡山県玉野市で新たなフェス『Setouchi Contemporary』(以下、『セトコン』)が誕生した。玉野市は、岡山県の南端に位置する人口約5.4万人の港湾都市。豊かな自然と、温暖で過ごしやすい気候に恵まれている。会場となった宇野港は、『瀬戸内国際芸術祭』の舞台である直島(香川県)や、瀬戸内海に浮かぶ島々への玄関口。街全体がアートと密接に結びついており、港や駅周辺にはアート作品も点在している。そんな土壌があることから、アートや自然、カルチャー好きの人々が国内外から集う街だ。
当フェスは、東京でクロスオーバーカルチャーを発信し、新たなカルチャーの中心として注目を集めながらも、2022年に惜しまれつつ閉館した「hotel koe tokyo」を支えてきたメンバーを中心に立ち上げた。
地元岡山の企業をはじめ、アパレルブランドから病院まで幅広い企業団体、地元メディアや玉野市の商工会議所、青年会議所、公共交通機関も全面協力で、「一致団結してこの新しいフェスを成功させよう」としていることが伝わってきた。
それを一番感じたのは、朝、会場に到着した時のこと。エントランスの前では、オシャレなユニフォームを着たスタッフたちが「おはようございまーす! 会場はこちらでーす!」と来場者に呼びかけながらプログラムを配っていたのだが、みな今日の日を楽しみにしていることがわかる笑顔で、ワクワクとウキウキが全身からあふれ出していた。また、商工会議所か青年会議所の会員とおぼしき人が、やはり笑顔で「晴れてよかったね。今日はよろしく」とスタッフと肩を叩き合って挨拶を交わす場面を見かけた。地元の人たちの期待と喜びが垣間見え、「きっとこのフェスは成功するな」と確信した。
会場内では、岡山最大規模の70ブースが出店した入場無料のマーケット「LIFESTYLE MARKET」と、有料の音楽フェス「MUSIC FESTIVAL」が同時開催されていた(マーケットは翌16日も開催)。
マーケットでは、ラーメン女子・森本聡子氏プロデュースのラーメン店をはじめ、岡山が誇るミシュラン店、東京・大阪・京都の岡山県外で注目を集める有名店、地元岡山の人気店やソウルフード、スイーツ&ベーカリー、ワインショップ、人気のフードトラックと、全国各地の最強グルメが大集結。そのほか、古着やデニム、アウトドアグッズなどのアパレルも勢揃いだった。
オフィシャルストアでは、オリジナルデザインのスウェットを販売。NANO universeのブースでは、絵本作家・芸人とマルチに活躍する田中光が描いた出演者の似顔絵Tシャツが人気を博していた。
マーケットは基本キャッシュレス決済で、フェス会場を結ぶ動線もわかりやすく、非常にスムーズに行き来しやすかった。エコステーションと仮設トイレの多さも嬉しいポイント。授乳室や救護室、喫煙所もしっかりと区画を分けて設置されていて、子どもから大人まで、誰もが過ごしやすい配慮がなされていた。
特筆すべきは、ライブとマーケットの電源を全て再生可能エネルギーで賄っていること。玉野市に本社を置く蓄電池メーカー・株式会社パワーエックスの設備を使って太陽光と風力を会場まで送り、それを会場に作った蓄電池に貯めて使用しているのだ。今回のために、送電用の立派な電信柱を建ててしまったというから、その情熱と技術に感服する。クリーンなエネルギーで地球環境に配慮しつつ、極上のロケーションの中で好きなカルチャーを楽しめるサスティナブルなフェス。そんなフェスに参加しているというだけで、自己肯定感が上がる気がする。
ライブが始まる前に軽く腹ごしらえをしようと思い、目に止まった宇野発祥のブックカフェ「うのまち珈琲店」の「瀬戸内白桃豚汁」を購入してみた。なんと自家製の豚汁に、岡山の桃の最高峰・清水白桃「ぞもも」のピューレを加えたという逸品。豚汁のコクの中にほんのり桃の甘味が感じられ、七味のピリ辛もアクセントになって非常に美味しく、一瞬で完食してしまった。その後、ミシュランの「くらしき 窯と南イタリア料理 はしまや」で「自家製ベーコンと美星町の赤卵のカルボナーラ」もゲット。濃厚でスパイシーなカルボナーラに舌鼓を打ったのだった。
ライブ会場は広大な芝生広場。防波堤を越えたすぐそばには穏やかな海が広がり、太陽の光を反射した水面がきらきらきらめく。抜けるような青空、対岸には直島が見え、時々行き交う船の姿も。反対側には山も間近に迫る、最高のロケーションだ。
ライブは、隣り合ったふたつのステージで交互に行われた。海を背にして立つと、上手にSTAGE SEASIDEが、下手にSTAGE ISLANDが設置されていた。観覧エリアの後方には「椅子エリア」が設けられ、のんびりとライブを楽しみたい人たちが、各自持参したアウトドアチェアに座って気持ちよさそうに思い思いの時間を過ごしていた。
ライブ開始5分前になり、ステージにはMCでFM802 DJの加藤真樹子が「『Setouchi Contemporary』第1回目を見届ける皆さん、スタートからありがとうございます!」と明るく登場。注意事項を述べ、電源が再生可能エネルギーで賄われている旨を説明して、「最後まで皆でピースに過ごしていきましょう!」と開幕宣言した。
【Jairo】
『セトコン』の幕開けはSTAGE ISLANDから。トップバッターを担うJairoは、ヒューマンビートボクサーのJohn-TとYAMORIによるビートボックスデュオで、昨年世界大会『Grand Beatbox Battle 2024』で優勝した実力者だ。2人背中合わせでステージに立つと交互にビートを放ち、オープニングから大迫力のテクで圧倒する。
John-Tが「今俺らがビートを止めたらこの会場の音がなくなります。ということは、俺ら2人のビートボックスと皆さんの歓声で盛り上げるしかないんじゃないですか?Make some noise!」と煽り、YAMORIがビートを、John-Tが歌とベースを担った「S.T.I.M」をお見舞い。最初は興味津々で観ていたオーディエンスも、目の前で浴びる世界一のヒューマンビートボックスのクオリティの高さに息をのみ、歓声を送る。
リリースされたばかりの最新曲「Dynamite!」をはじめ、世界大会の予選でも披露した宇多田ヒカルの「One last kiss」〜ダフト・パンクの「Get Lucky」のメドレー、後半はビートを加速して「Blue Girl」、ダンスチューン「Dance Alive」まで、あっという間に駆け抜けた。縦横無尽に走るベースからトランペット、シンセなどの楽器、曲の起伏と機微までを、マイク2本で繊細かつダイナミックに表現し、会場を沸かせたJairoだった。
【YONA YONA WEEKENDERS】
STAGE SEASIDEのトッパーはYONA YONA WEEKENDERS。サポートに一戸祐介(Gt)、高橋遼(Key)、西恵利香(Cho)を迎えた6人編成だ。磯野くん(Vo.Gt)がビール片手にステージに現れ、それはそれは見事な「プシュッー(エコー)乾杯ー!」からライブをスタート! 実は磯野くんは玉野市出身。この日は彼にとって初の凱旋ライブとなった。
「誰もいないsea」「君とdrive」「寿司と酒」と、超絶気持ち良い歌声とアンサンブルを響かせて早速聴衆を虜にする。磯野くんは「良いとこでしょ、玉野。まさか自分の地元でフェスが始まって、そのステージに立てる、こんな夢みたいなことないです」と嬉しそうに笑い、小原“Beatsoldier”壮史(Dr)のドラムロールで2本目のビールを一気飲み! 最新曲「予酔いの宵」で<還ると 誓った 玉野にもう一度>と歌詞を変えて歌うと、オーディエンスは手を上げて歓喜した。
ラーメン愛を詰め込んだ「R.M.T.T」では、スズキシンゴ(Ba)のグルーヴィなソロを皮切りにメンバー全員の見せ場を作る。磯野くんは「僕が住んでる時、正直玉野には何もなかったんですよ。でも土地柄とかすごい最高で。そこに新しいフェスができて、人が集まる日ができてめちゃくちゃ嬉しい。このフェスが続いていくなら、僕らも関わっていきたいと思ってます」と想いを述べて、ラストの「シラフ」をメロウに歌い上げた。磯野くんの地元愛溢れる凱旋ライブを祝すように、会場には終始あたたかな空気が流れていた。
【水曜日のカンパネラ】
怪獣の着ぐるみを着た(怪獣部分は下半身のみゆえ「乗った」というべきかもしれない)サウンドプロデューサーのケンモチヒデフミがDJブースに立ち「怪獣島」を流し始めた。「皆さんこんにちは〜!」と挨拶する詩羽は、ステージからではなくフロア側から歩いての登場! そのまま丸ごと1曲オーディエンスの間を練り歩きながら歌い、続く「聖徳太⼦」でステージ上に姿を見せると、水色を基調にしたキュートな衣装で、ダンサー2人と踊りながら、ポップで不思議な独自の魅力を爆発させてゆく。
クラップでひとつになった「バッキンガム」を経て、MCでは「早起きした甲斐があるくらいすんごい快晴で、皆さんとライブを楽しむことができているので、本当に良かったなと思います。盛り上がっていけますかー!」とコール&レスポンスから「シャトーブリアン」へ。ケンモチが牛の着ぐるみに着替え、ボードを持って煽る姿もユニークだ。後半も「たまものまえ」「ウォーアイニー」と踊れるハウスミュージックで盛り上げると、「マーメイド」で美声を響かせ、代表曲「エジソン」に続き、ラストは巨大な招き猫がステージに現れた「招き猫」でフィニッシュ。一糸乱れぬ振りで素晴らしい一体感を生み出した。
【Ovall】
ロケーションと音楽があまりにもマッチして溶け合い、極上のサウンドスケープを描き出したのは、メンバー全員がソロアーティスト/ミュージシャン/プロデューサーとして活動するマルチプレイヤー集団・Ovall。Shingo Suzuki(Ba)がリーダーをつとめるトリオバンドだ。スティックカウントが響き渡り、サポートキーボードの村岡夏彦がシャイニーなサウンドを奏でる。
関口シンゴ(Gt)のソロが天を貫いた「Velvet Dusk」、mabanua(Dr)がボーカルをとった「影」と、じわじわと演奏に熱も宿しながら、景色にぴったりの気持ち良い楽曲を連投。Shingo Suzukiが「岡山のみんな、晴れましたね」と一言挨拶すると、エフェクターを駆使したアンサンブルがグッドな「Come Together」、爽やかな風が吹き抜けるような「Bloom」、個々の妙技が際立ったインストナンバー「Green Glass」と、Ovallの表現力がありありとわかる楽曲でオーディエンスを引き込んでゆく。ラストパートは、グルーヴィーなスキャットがゴキゲンなパーティーソング「Cubism」でハッピーに踊らせ、勢いそのままに「It’ s all about you」で疾走した。
【SCANDAL】
続いては、来年8月に結成20周年を迎えるSCANDAL。SEをバックに、パステルサーモンピンクのつなぎ姿で元気にステージに現れたHARUNA(Vo.Gt)、MAMI(Gt.Vo)、TOMOMI(Ba.Vo)、RINA(Dr.Vo)の4人は、青空に似合う「Stamp!」をのびやかにプレイ。続き、HARUNA、MAMI、TOMOMIの揃ったステップがキュートな「one more time」、TOMOMIがボーカルを担う「愛の正体」とミドルナンバーを続けて演奏し、ゆったりと良い温度感を醸成していった。
HARUNAは「めちゃくちゃ眺めがいいね! SCANDALには色んなタイプのライブがあるんだけど、今日は「『セトコン』仕様」でセットリストを組んでみました」と、瀬戸内の穏やかな気候に合わせた楽曲をチョイスしたことを明かす。和やかにオーディエンスとコミュニケーションを取りつつ距離を縮め、少し大人なナンバー「Plum」を魅力たっぷりに響かせた。後半は「ハイライトの中で僕らずっと」「最終兵器、君」「テイクミーアウト」と代表曲のオンパレード! 最後はアンセム「瞬間センチメンタル」を思い切りロックに叩き込む。シンガロングもバッチリで、最高の一体感に包まれた。初見の観客を受け入れるSCANDALのウェルカム感と、SCANDALが玉野に優しく迎えられる感、どちらも感じられたピースフルなライブだった。
【SKRYU】
のっけから観客の熱い歓声を浴びていたのは、元銀行員のラッパー・SKRYU。大歓声に迎えられて「Heated」からスタートしたライブ。パワフルかつ小気味良いラップをガンガンぶち込み、いきなり熱狂の渦を巻き起こす。ステージを動き回り、茶目っ気のある煽りと仕草で観客の心を掴みながら、テンポよく楽曲を投下して盛り上げる。
MCでは「出身が島根県で、ラッパーになったのが愛媛県なんですけど、岡山っちゅうのはほんまに第二の地元、第三の地元。中四国は、どこに行ってもすごく元気をもらえる場所になってます。ふるさとを思い返した時に、今まであまりやったことのない曲をやってみたいと思います」と期待を高めると、ニヤリと笑って<おはようございアース>と囁き、ライブでも鉄板の「How Many Boogie」へ。
「騙されたんじゃないの〜?」と楽しそうに破顔する。まるで友達のようにフラットだ。「この景色が今日は一番のハイブランドだぜ!」と「ハイブランド」を披露した後は、郷愁を感じる楽曲たちを紡いでいく。「Screw Driver」では<瀬戸内に繋げるBig Up! また遊びたい!>と叫び、「東京でひとり寂しくなる夜に書いた曲、ふるさとに近いから歌わせてください」と「Country Roads」をノスタルジックに響かせると、「今日の経験を経て、Zeppツアーも成功させて、俺は超Super Starになってやる!」と堂々宣言して「超Super Star」で締め括った。愛用のスーパースターを脱ぎ、盛り上がりに応じて3枚重ねたタンクトップを脱いでいく……というパフォーマンスも、夢を抱いた地元だからこその盛り上がりに。キャッチーながらもエモーショナルなライブを魅せてくれたSKRYUだった。
【Jeremy Quartus】
STAGE ISLANDにはJeremy Quartusが登場。昨年活動休止したバンド・Nulbarichのボーカル・JQのソロプロジェクトだ。Jeremy Quartusとしてのライブはこの日が3度目。サポートベースとキーボードを迎えた3人編成でステージに立った。1曲目は「Knife & Fork」。「知らない曲ばかりだと思うけど、調子どうですか! 踊っていきましょう!」とプチョヘンザでフロアをゆったりと導いていくと、曲の後半ではJQ自らドラムセットに座り、華麗にビートを叩き出した。楽しそうに演奏するJQを見て、オーディエンスも嬉しそうに音に身を委ねる。
MCでは「新人です。とにかく一緒に踊りたい、それだけです」と想いを口にして、完全セルフプロデュースの最新曲「Relapse」を滑らかに披露。そして、昨年12月にNulbarichが出したアルバム『CLOSE A CHAPTER』から、「Lights Out feat. Jeremy Quartus」としてJeremy Quartusをフィーチャーした楽曲をチルに歌うと、Nulbarichの代表曲「NEW ERA」をソロver.で投下。 その後もコール&レスポンスとプチョヘンザでひとつになった「On and On」、海と空に溶けるような「Beat Tub」をプレイ。「なんだよ、楽しいじゃねえか」と思わず発した言葉とJQの笑顔にギュッとなる。
JQは「色々終わって色々止まって、色々なくなって、帰る場所もわかんなくて。やることをとりあえずやってたら、いつの間にかここにいた。僕にはこれ(音楽)しかないんです、死ぬまで」と決意を述べて、STUTSプロデュースの2ndシングル「Beat Tub」、Chaki Zuluプロデュースのソロ1stシングル「Back To Paradise」を情感豊かに表現し、「皆さん、またどこかで!」とステージを後にした。
【SE SO NEON】
今回、唯一の海外からの出演となったのが、韓国のインディーロックバンド・SE SO NEON。現在はファン・ソユン(Vo.Gt)の1人体制となり、LAを拠点に活動しているが、坂本龍一ら国内外の巨匠も賛辞をおくるほどの実力者。ベースとドラムのサポートメンバーが音を鳴らすとソユンがステージに現れ、全身からエネルギーを激らせるかのような爆音で「3 Revolution」をプレイ。1曲目から全力でギターをわななかせ、叫ぶように歌う。気迫と本気が伝わってきて、観客もハッと息をのむ。
ソユンは「こんばんは、初めまして」と日本語で挨拶し、「This is first time playing OKAYAMA to amazing view,ship,mountain,ocean,house,みんな」とにこやかに述べて、今年8月リリースの最新アルバム『NOW』にも収録された「멍청이 겨울 Twit Winter」「비밀경찰 Secret Police」とアルバムタイトルチューン「NOW」をヒリヒリするほどの激しさでロックにぶつける。
そして「あなたが誰であるかを忘れないでほしい」という想いが込められた新曲「Remember!」を、日本にいる友人に伝えたいと言葉を添えて、ゆったりと大切そうに歌い上げた。ラストスパートは再び勢いを加速。感情を込めてエッジーに「파도 The Wave」を奏でると、オーディエンスも牽引されて思い切り身体を揺らす。ラストの「심야행 Midnight Train」はこれまでで一番巨大な熱を宿し、バンドメンバー全員がひとつの塊になって、オルタナティブな轟音を弾き出した。シャウトし、大きくのけぞり、床に寝転んでギターを弾くソユンはまるで炎が燃えるようだった。確実に見る者の耳と目の記憶に刻まれたに違いない。
【中村佳穂】
陽が落ちて会場がライトアップされた頃、STAGE ISLANDのトリを飾ったのは中村佳穂。最初に披露された即興が本当に素晴らしく胸を打たれたので、歌詞を残しておきたい。<初めてこの土地で 音楽のフェスティバルをするから 佳穂ちゃん出てほしいなって 言われたから 私はご存知の通り歌が好きで そして岡山が好きだから><歌があると音楽があると食べ物があると思い出があると その土地が好きになるってわかる 私は京都がルーツでありますが 歌を通してふるさとが広がってるみたい 歌があって良かった ただいまと言える土地が増えて><一瞬で快諾して 初心に帰った気持ちで私の全力を出して あなたの思い出の一部に そして『Setouchi Contemporary』の幕開けを>。祝辞のようなあたたかな言葉を紡ぎ、「全ての皆様どうぞよろしくお願いします! 40分頑張ります! 中村佳穂でーす!」と大声で叫んだ瞬間、涙腺が緩んだ。何て幸せなフェスなんだろう。
間髪入れず、「私が初めて作った曲を」と「口うつしロマンス」を奏でていく。歌と鍵盤だけでこの迫力。ロングトーンやスキャット、喉を震わせる発声の妙に釘付けになる。歌が魂を宿して生き物のように会場を飛び回る。これが中村佳穂だ。しかし本人は「ちょっと歌が上手い友達くらいに思ってもらって」と言うラフさ。口と声をも楽器にして歌われた「きっとね!」では観客のクラップも発生し、心底嬉しそうに笑顔を浮かべる。フロアにどっちが聴きたいかと多数決をとった結果、「じゃあメドレーでやりまーす」と大盤振る舞いで「get back」「忘れっぽい天使」「そのいのち」の3曲を繋げて歌う。
「全力を置いて帰ります。ほんとに歌えて良かった。ありがとう!」と披露された「さよならクレール」の冒頭では、<明かりが見える 船の灯り 蛍みたいに光ってる>と即興をナチュラルに挟み込む。きっとステージから見えた景色だろう。瞬間をとらえて歌に変換する。乙女のような表情で無邪気に音楽を楽しむ。何よりも『セトコン』への想いを全身で添えてくれる。彼女の人柄が存分に伝わる生命力に満ちたライブで、会場にいた人全員の心を震わせた。ライブ終了後は言わずもがなの大喝采。記念すべき『セトコン』の初回に彼女が出てくれたことは、宝物になったに違いない。
【SIRUP】
辺りはすっかり真っ暗になった。大トリはSIRUP。ステージの照明が消え、HISA(Gt)、RaB(Dr.Manipulator)、熊代崇人(Ba)のバンドメンバーがセッションを始めるとSIRUPのロゴネオンが点灯、会場が大歓声に包まれると、いよいよSIRUPが登場した。「盛り上がっていこうぜ!」と気合いたっぷりに「KIRA KIRA」「PARADISE」「Need You Bad」「Superpower」とアッパーでグルーヴィーな楽曲群でアゲていくと、オーディエンスも待ってましたとばかりに手をあげて歌い、踊りまくる。SIRUPの力強い歌声と躍動するバンドアンサンブルがただ気持ち良く、ポジティブなパワーを生み出していく。
MCで「『Setouchi Contemporary』調子Do!」と笑顔で呼びかけ、コール&レスポンスでゆるりコミュニケーションを取ったと思いきや、空気を引き締めるようにパワフルなアカペラで圧倒。よりクールかつどっしりとした雰囲気で「Rain」をプレイした。「楽しんでますか?こっちは暑くなってきましたよ」と上着を脱いで披露されたのは、アンセム「LOOP」。ゆったりとシンガロングして身体を揺らした後は、D’Angeloの「Cruisin’」をソウルフルにカバー。さらに「みんなで最高のロケーションを楽しんでいこう!」と放ち、音楽プロデューサー・Taka Perryと共に手がけた「LOCATION」と「GAME OVER」を美しく響かせる。
SIRUPは「マジで最高の景色ですね。ずっとやってほしいよな。そういうの大事ですよね。手をあげていきましょうね」と要望を届けていこうと述べて、<僕らはいつでも自由になれる>というメッセージを極上のロングトーンで聴かせた「今夜」、ファンキーでポップな「SWIM」に続けてアンセム「Do Well」を思い切りグルーヴィーに投下。オーディエンスはこれでもかと熱狂し、サビではジャンプでひとつに。SIRUPは「次で最後……あ、今で最後の曲やった(笑)。じゃあアンコールをもらったということで!」と笑いを起こし、ラストに「GO!!」をとびきりゴキゲンに演奏してライブを終えた。今年9月にリリースされたアルバム『OWARI DIARY』の収録曲も多めのセットリストで、アルバムの世界観と今のSIRUPの現在地をはっきりと提示した50分だった。
全てのアクトが終了し、MCの加藤が「音楽好きの皆さんに支えられて、最後まで楽しく過ごせました! またこの場所で会えますように!」と挨拶。これにてフェスは閉幕したが、イベントはまだ終わらない。帰路の混雑緩和のためとアフターパーティーを楽しめるように、マーケットを21時までオープン。DJブースから流れる音楽に身体を揺らし、バースペースでドリンクやフードを楽しむ人々の姿が多く見られた。夜になり気温が下がったので、筆者も岡山市の南インド料理専門店「パイシースパイス」で「ロイヤルスパイスカレープレート」をいただいて身体を中からあたためた。
一方で、帰宅する人にも不便が出ないようにと、各交通機関が対応してくれていた。岡山と宇野を結ぶJR宇野みなと線は、通常2両で走っている列車を3両編成にした上で臨時列車を増便。両備バスも臨時でバスを出して、輸送力を増強。寒空の下で長時間待たなくてよかったのは本当にありがたく、駅員さんも乗組員さんも優しく声をかけてくれたのも嬉しかった。
瀬戸内の絶景を前に音楽やグルメ、ファッションを楽しめる『Setouchi Contemporary』、記念すべき初回は大団円で終了した。ゴミの分別もパーフェクトで、会場はずっと綺麗な状態が保たれ、大きな混乱もなかったのは、スタッフの対応はもちろん、来場者の意識の高さゆえ。岡山県内をはじめ、県外や関東からも多く来場していたようだが、終始土地柄を表すようなあたたかな空気に満ちたフェスだった。ぜひこのまま来年再来年へと繋がっていくことを、切に願っている。
取材・文=久保田瑛理 写真=『Setouchi Contemporary』提供(撮影:Sotaro Goto、 matsuura tatsuya)
『Setouchi Contemporary』は、今年も同じく岡山・UNO SEASIDE PARK(宇野港)で10月24日(土)・25日(日)の2日間で開催が決定! 第1弾アーティストとして、adieu、Ginger Root(Solo Set)、Jeremy Quartus(Nulbarich)、luv、SIRUP、YONA YONA WEEKENDERSの出演が決定した。
そのほか出演者や出店情報など、詳細は後日発表となるので公式サイトやSNSを要チェックだ。
お得な早割はイープラスにて受付中。
本文では掲載しきれなかったアザーカットを公開!
『Setouchi Contemporary 2025』Photo gallery
Jairo
YONA YONA WEEKENDERS
水曜日のカンパネラ
Ovall
SCANDAL
SKRYU
Jeremy Quartus
SE SO NEON
中村佳穂
SIRUP
イベント情報
時間:開場10:00、開演11:00
-MUSIC FESTIVAL-
出演:adieu/Ginger Root(Solo Set)/Jeremy Quartus(Nulbarich)/luv/SIRUP/YONA YONA WEEKENDERS/and more
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