Element Sicks、わずか1年で辿り着いた満員のZeppファイナルで見せたのは無限大の可能性
Element Sicks
Element Sicks『1st Live Tour「RWY」』2026.03.30(mon) KT Zepp Yokohama
最初に告白しておきたいことがある。自分は、Element Sicksどころか、歌い手のカルチャーのど真ん中に触れること自体、今回のライブが初めて。まったくの門外漢だ。しかし、新しい体験に対する興味は高く、当然、この未知の経験には胸が高鳴った。だからこそ、敢えて事前に情報は入れないようにして、Apple Musicで聴くことのできる全音源と公式サイトをチェックするに留めた。音源を聴いた印象は、歌い手ということを知らなければ、歌唱力の高いボーイズグループ。オリジナリティが高いビート感の強めのトラックが印象的で、特定のジャンルで表現するのが難しい。だけど、明確な「色」がある。なんで今まで知らなかったんだろう、と少々悔しくなった。そして、次の瞬間に思った――これ、ライブだとどうなるんだろう。
その謎を解いたのが、3月30日にKT Zepp Yokohamaで行われた『1st Live Tour「RWY」』のツアーファイナル公演だ。このツアーは全国16箇所32公演に及ぶ大規模なもので、歌い手グループとしては過去最速、最大規模のものだという。オープニング映像では、これまでのツアーの足跡を辿ったあと、メンバー紹介、そしてカウントダウンが始まる。
6人のメンバーがステージに登場し、オープニングナンバー「RWY」が始まった……が、いい意味で拍子抜けしてしまった。目の前で繰り広げられたのは、音源の印象と変わらない、質の高いパフォーマンスだったからだ。作り込まれたサウンドと照明、その上でダイナミックに歌い、踊る6人。グループの始動は昨年3月だという。まだ1年1か月しか経っていないのに、このパフォーマンスと演出。歌い手とかそういうくくりを抜きにしても、これはすごくないか? たった1年でこの域に達しているなんてにわかに信じがたい。改めて公式サイトを見ると、「昨今の歌い手グループに付き纏うレッテルを根底から覆す」とある。正直、そのレッテルがどういうものなのかはわからないが、このグループは普通にすごい。歌唱後のMCも堂に入っているし、どうやらステージ度胸もあるようだ。
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事前に音源をチェックした時点で最も気に入っていた「ENGAGE」は、誰もが知る「結婚行進曲」の名フレーズを引用したトリッキーかつ、中毒性の高い楽曲。個人的にはヒップホップ的なアプローチが特に気に入っていた。複雑な構成で一筋縄にはいかない展開で、低音の春希と高音の832による男臭いラップとツバサ、JIL、ねいろ、ていくによる抑揚のあるボーカルが織りなすコントラストが楽しい。加えて、この曲は照明のデザインもカッコいい。どちらかというとサビがわかりやすい曲ではなく、人によっては難解に聞こえるかもしれないが、メリハリのあるクールな照明がドラマチックにステージを彩る。話の流れで書くが、本公演では照明が随所で効いていた。「Chug!Chug!Chug!」でど派手なレーザーが登場したときには思わず声が出たし、1曲として同じようなデザインがない(「TOKI」はアンコールも含めて2度披露したが、勘違いでなければ、同じ曲なのに照明が違った気がした)。これもElement Sicksの世界観を作り上げる上で決して欠かせない要素だと思った。ライブが始まってまだ30分足らず。しかし、Element Sicksというプロジェクトがどれだけ気合の入ったものかということは、この時点でもう十分に伝わっていた。
ねいろ / 832
JIL / 春希
ツバサ / ていく
続いてのブロックはカバーコーナー。最初はメンバーが2~3人のユニットに別れ、ボカロ曲のカバーを繰り出す。そうだった、彼らがネットカルチャーのグループだということをすっかり忘れていた。それと同時に、これは新しいと思った。アメリカのR&BやHip Hopからの影響がメインとなる通常のダンスボーカルグループではこうはいかない。もちろん、Element Sicksにもそういった要素はあるが、様々なサウンドアプローチをとりながらも、幅広く大衆を意識した内容に落とし込もうとはしていない。あくまでも、楽曲としての質の高さを追求しているように感じたのだ。彼らのような実力派ダンスグループは、シーンにおいてはまだ異色の存在なのでは。他にもいるなら知りたい。筆者は、自分がこの場でしか味わえない唯一無二のエンターテイメントの真っ只中にいることを、この段階でようやく理解した。
話をステージに戻す。再びメンバー全員がステージに集結し、ツバサがアカペラで歌い始めた瞬間、大歓声が上がった。TK from 凛として時雨「unravel」のカバーだ。キーが高く、難しい曲ではあるが、これを6人は難なく歌いこなすどころか、原曲とは異なる解釈でよりエモーショナルに歌い上げるのだった。
幕間映像では、場内の雰囲気がガラッと変わる。スクリーンにはインディアンポーカーに興じる6人が映し出され、832が最弱王に輝くまでの一部始終を、観客はほっこり楽しんだ。そして、映像が終わるとまた空気が引き締まる。後半戦のスタートだ。
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ゴシックでほんのりとTimbaland的なビートが心地よい「XXI」、攻撃的なハードチューン「TRIGGER」、ラテンな「フランマ」、どれも明確なコンセプトをもつカッコいい曲だ。最新曲「FUGAKU」は結成1周年を記念した楽曲だが、先陣を切ったていくのボーカルにぶっ飛ばされた。調べてみれば、彼は元ボイストレーナー。道理で……と納得するのと同時に、ここにはどんな才能が集まってんだと驚く。ていくは、各メンバーにボーカル指導もしているのだろうか。だとすれば、このグループの歌唱力の高さにも納得がいく。そして、「FUGAKU」もこのあとに続く「TOKI」も、タイトルから推測できるように和モノの曲なのだが、三味線など和楽器の使い方がかなり洗練されている。この音楽を潜在的に欲している人はけっこういるはず。いやあ……これでまだ1年か。この日、何度目になるかわからない「すげえな……」という言葉が頭に浮かんだ。
6人の歌唱力の高さをまざまざと感じたのは、関係者やファンへの感謝の言葉を伝えたあとに披露した本編ラストの曲「This song」だ。このミディアムバラードで響かせたクリーンで伸びやかな歌声に、6人の歌心を感じた。一つひとつの言葉を丁寧に紡ぎ、自分たちの想いを乗せていく。彼らの活動はまだ2年目。ここからもっともっと成長していくんだ。それを思うと、可能性は無限大ではないか。
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アンコールは「Secret Answer」からスタート。そして、アンコールの声に感謝したあと、サプライズ告知が。まずは、ワーナーミュージック・ジャパンよりメジャーデビュー決定の報。ファンから一斉に「おめでとー!」の声が上がる。しかし、その声はすぐに驚きに変わった。告知はそれだけではなかったのだ。なんと全国5大都市を回るZeppツアーも大決定。結成2年目でのZeppツアーはジャンル問わず極めて異例だ。
最後のMCでは、ツバサが楽曲の振付にも携わっていることを知り、静かに驚いた。一体、彼らは何度驚かせるんだ。かと思えば、涙ながらにファンへの感謝を伝えるねいろにグッときたり。ねいろの涙で感極まった彼らは、このあとに披露した「DAYS」では溢れ出す涙で歌えなくなってしまうシーンも。こんな人間味溢れるところも魅力なんだろう。しかし、最後は「しんみりしたまま終われねえよなあ!」と再び「TOKI」をカマして終了。6人は名残惜しそうにフロアへ向けて何度も言葉を投げかけたあと、ゆっくりとステージを去るのだった。
ライブスタートからここまで2時間半弱。新たな価値観を植え付けられるには十分な時間だった。今後、彼らがどんな物語を綴っていくのか、俄然気になってきた。もしかしたら、自分は歌い手グループの正しい楽しみ方はできていなかったのかもしれない。しかし、Element Sicksという音楽集団の魅力はよく理解できたと思っている。これは間違いなく、いい出会いだった。明日以降、自分は得意気に音楽仲間に話すだろう、「ねえ、Element Sicksって知ってる?」と。
取材・文=阿刀"DA"大志
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ツアー情報
02.Hotshot
03.ENGAGE
04.Payback
05.Chug!Chug!Chug!
06.VCR
07.アスノヨゾラ哨戒班(832/ツバサ/JIL)
08.ロキ(832/ねいろ)
09.Nectar(春希/JIL)
10.エンヴィキャットウォーク(ツバサ/ていく)
11.unravel
12.ジャンキーナイトタウンオーケストラ
13.XXI
14.TRIGGER
15.フランマ
16.FUGAKU
17.TOKI
18.This song
EN1.Secret Answer
EN2.DAYS
EN3.TOKI
ツアー情報
8月11日(火祝)大阪 Zepp Osaka Bayside
8月23日(日)北海道 Zepp Sapporo
8月28日(金)愛知 Zepp Nagoya【2回公演】
9月6日(日)東京 Zepp DiverCity【2回公演】
9月19日(土)Zepp Fukuoka【2回公演】